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子供先生と仮面の男 第八話(ネギま!×仮面ライダー (オリ主・オリ有) 投稿者:紅 投稿日:04/08-02:23 No.32

子供先生と仮面の男

第八話 『結ばれる信頼』





二人の男が舗装された道を連れ立って歩いている。



褐色肌の男『ベガ』は周囲のモノが珍しいのかキョロキョロと視線を彷徨わせているが、長い白髪の男『嵐』はその様子に苦笑するだけで特に何も言わない。



その容姿のせいでただでさえ目立つ二人が並んで歩いている姿は、周囲の関心を一心に引き付けていた。

やっぱり本人たちは気づいていないが。



「お? おい、アラシ。アリャなんだ?」

「ああ、あれは大学部の校舎ですよ。この学園都市は小、中、高、大学の全てが敷地内に収まっているマンモス校という所ですから」

「ハァ~~、金ってアルところにはあるもんダネェ。ちっとでいいカラ恵んでホシイぜ」



そんな取り止めの無いやり取りを二人は目的地につくまで続けていた。



「着きましたよ、ベガさん。ここに結城さんがいるはずです」



二人の目の前には小さな病院と言った感じのする建物が建っていた。

昨日、彼が運び込まれ、今朝まで世話になっていた場所である。



「オウ、そうカ。道案内、アリガトよ。アラシ」



ベガの感謝の言葉に彼は笑いながら「いいえ」と首を振る。



「それじゃあ俺はここで。まだ仕事がありますから」

「アア、縁があっタらまた会おうゼ」



ひらひらと手を振るベガに軽く会釈をして背を向ける嵐。



彼の姿が見えなくなるとベガは先ほどまでの陽気な雰囲気を消し、剣呑とした顔つきへと変わった。



「サテと。どー接触したもんカ……」



真っ白な建物を見やりながら頭を掻く。



「正攻法で話が通じリャそれに越した事はネェんだガ……なんつっても『カザミ』の戦友だカラな。警戒しテコッチの話ヲ聞いてクレルかどうか怪しいし」



顎に手を当てて考え込む。

だが良い案が浮かばないらしく、しばらくすると「あ~~っ!!」などと奇声を上げて自分の頬を叩いた。



「深く考エンのはヤメッ! 当たっテ砕けりゃイイだけダ! どーせ一度、死んダ身だし今更怖ぇもんなんざネェ!!」



そう言って気合を入れると彼は、病院もどきの敷地内に入り荒々しく玄関のドアを叩いた。



「おーーーーーイ! ユウキジョウジさーーーん!!」



馬鹿でかい声で呼びかけるベガ。

ここが人通りから外れた場所だったから良かったもののそうでなければ間違いなく文句を言われていただろう。

それほどに近所迷惑な大声だ。



「……」



沈黙するベガ。

今の声が聞こえていないはずはないという自信の表れだ。



彼の頭にはドアの右上にあるインターフォンにあるチャイムを押すという選択肢はない。

なぜなら彼にとっての地元『エジプト』にはそんな気の利いたモノなど滅多にお目にかかれないのだから。



だから他人の家を訪ねる時は、自然と声を張り上げて呼び出すというモノになってしまう。

都会の文化に触れたことがほとんどないベガに文明の利器であるインターフォンの存在を察しろと言う方が無理な話なのだ。



ドッゴーーーーーン!!!!



突如、目の前の建造物から聞こえてくる轟音。



「な、なんダぁ!?」



さすがにこういう反応が返ってくるのは予想外だったらしく素っ頓狂な声を上げるベガ。

爆発音は数秒後には止み、しばらく沈黙が続くと病院の中からトトトトトという足音が聞こえてきた。



どうやら足音の主は走っているらしい。

徐々にベガがいる玄関先に近づいてきているようだ。

それを察した彼は、外開きのドアに巻き込まれないようにニ歩ほど後ろに下がる。

そしてドアが壊れかねない勢いで開かれた。



「はー、はー、はー……。どちら様ですか?」



息を切らせながら唖然としているベガに声をかけたのは彼が待ち望んだ人物である結城丈二だ。

だがその姿を見てベガの顔は盛大に引きつった。

それもそのはず。

彼の着ているスーツは爆発にでも巻き込まれたかのように焦げており、その顔も真っ黒になっている。

なんとか笑顔を浮かべてはいるが煤塗れのその顔ではむしろ不気味だ。



実際、直に向き合っているベガは三歩ほど彼から間合いを取っている。

完全に腰が引けていた。

これで彼の形相が鬼のような怒りから来るものであったならベガは一目散に逃げ出していただろう。



「あー、えっト……。アンタがユウキジョウジで間違いネェの?」

「確かに私は結城丈二で間違いないが? ……君は誰だ? 恐らく会った事はないと思うんだが……」



息を整え、煤けてしまった顔を手の甲で拭ってからキリッとした表情になる丈二。

とはいえ今更、真面目ぶったところで先ほどの姿を見てしまってはとてもシリアスにはなれないのだが。

余談だがまだ顔に煤が残っている。



「(ヤベェ。もの凄く不安になっテきた……ええい、ままよ!)そりゃそうだぜ。会った事なんてネェんだかラよ」



彼の言葉に怪訝そうな表情になる丈二。

彼が言葉の意味を問いかけるよりも早くベガは言葉を続ける。



「俺は元『BADAN』の怪人だ。エジプトでアンタの戦友であるカザミ、いや『V3』トやりあって死んダ男だヨ。『ライダーマン』さん」



瞬間、場の空気が凍った。



「……BADAN。それも風見と戦って死んだという男が、私に何の用だ?」



間合いを計りながら問いかける。



もうその場に教師としての結城丈二の姿はない。

そこにいるのは一人の戦士。

戦う事を決意し、傷付く事を覚悟した一人の気高き男の姿が在った。





「あ……」

「む……」



その頃、ベガと別れた嵐は中等部校舎へと続く通路で新田と遭遇していた。

気まずい空気が流れる。



新田は丈二から彼の境遇を知ってしまった為に何を話したら良いかわからない為の沈黙。

下手な言葉をかけてしまえば彼を傷付けてしまう事になる事への恐怖からくる沈黙だ。



嵐は自分の正体を知った彼が自分に対してどんな言葉をかけてくるかわからないが故の沈黙。

彼に『化け物と罵られるのでは』という恐怖から来る沈黙だ。



五分ほどその沈黙は続く。



新田はその沈黙の間、丈二から聞いていた彼の過去を思い出していた。



幼き頃に悪党に捕まり、改造人間にされてしまった事。

これほどの体躯でありながら年齢的には十歳に過ぎないという事。

改造の後遺症なのか、助けられるまでの記憶、取り分け捕まる前の記憶を失っている事。

そして自分の持つ力の暴走を誰よりも恐れている事。



そんな彼に自分は何がしてやれる?



自分には丈二のような明晰な頭脳などない。

ましてや共に戦う事など出来はしない。



ならば何が出来る?



話を聞いた後、彼はずっと自問していた。

だが彼とこうして会い、自分に怯えている様を見て。

新田は自分が出来る唯一の事に気がついた。



気がついてしまえば簡単な事だ。

彼が怯えるのは周囲から隔絶した自分の力を恐れているから。

ならば自分は。



「おはよう、いやもう昼時だから『こんにちは』になるな。本郷君」



こうして普通に接してやればいい。

彼が持つ力の事も、その異様な姿の事も。

些細な事なのだと彼に伝えてやればいい。

どれだけの力を持っていようと、自分は彼に怯えたりはしないと伝えてやればいい。



何故なら彼は。



「(私を助けてくれたのだから……)」



自然に笑みを浮かべる彼に嵐は慌てて言葉を返す。



「え、ええ。……こんにちは、新田先生」



戦いの最中に見せていた雄々しい戦士はそこにはいない。

ただ優しく、不器用で、怖がりな少年の姿しか見当たらない。

新田は、そんな彼を見つめながら最初に言おうとしていた言葉を告げた。



「君のお蔭で私はこうして生きていられるよ……助けてくれて、ありがとう」



その言葉に乗せられた彼の想いは、確かに嵐に届いた。

その瞳から溢れ出した涙がその証拠だろう。



「あ、あれ……? なんで……」



止まらない、むしろさらに勢いをつけて溢れ出してくるソレを止める術は彼にはない。

哀しさや悔しさから来るモノではないソレは。

嬉しさから来るソレは、彼には暖かく感じられた。



泣いている嵐の肩を優しく叩く彼の手から感じられる温もり。



「(俺は守る事が出来たんだ……)」



嵐にはそれがかけがえのないモノに思えた。



この後、二人は良い時間だという事で共に昼食を取った。

生徒から『鬼の新田』と恐れられている教師と、若い警備員(しかもそれがなかなかの容姿)が笑顔で会話する様子は生徒側から見れば凄まじい光景に見えたらしく、彼らは昼休み中、絶えず注目される事になった。



さらにどこからかこの話を聞きつけた麻帆良新聞部の人間が、彼らに突撃インタビューを敢行。

鬼の新田の本領発揮によって玉砕した上、一週間の活動停止と学園の除草作業を言い渡されたのは余談である。





「ヘェ? さすが『仮面ライダー』ダな。さっきのアリャ芝居かい?」

「使い分けているのさ。私たちが戦いに生きるのは『何かが起こる時』であってそうでない時にまで気を張り詰める理由はないからね……」



さも楽しそうに口元を歪めるベガに対し、丈二の表情は真剣そのものだ。

隙や油断など微塵もない。



「オーケー。そウいうヤツなら信用できソウだ」



丈二の言葉に満足したのかベガはもう一度笑うと身体に漲らせていた緊張を解いてしまった。



その突然の行動に困惑する丈二。

だがそれでも緊張は解かない。

何故なら『油断させて後ろから……』と言う一種の卑怯な真似が戦いの定石である事を知っているからだ。



「そのままで良いカラ聞いてクれ。俺はアンタに頼みがあってキタんだ」

「頼み? ……まさか私に自分を殺せとでも頼むつもりだったのかい?」



やや冗談めかした彼の言葉にベガはニヤリと歯をむき出して笑う。



「近いな。もしかシたらソウナルかもしレねぇ」

「なに……どういう意味だ?」



彼の物言いに眉根を寄せる丈二。



それはそうだろう。

今の言葉から推察するなら彼は自分の死を今後の選択肢に入れているという事に他ならない。

困惑するのも当然と言える。



だが丈二の困惑をよそにベガは落ち着き払った態度で言葉を続ける。



「なぁに。最悪、俺はアンタに『俺を殺してくれ』と頼むつもりダッタんだよ。わかリやすいダロ?」



気負いも迷いも微塵も感じられない軽い口調。

だがそのサングラス越しの視線は研ぎ澄まされており、その言葉に虚偽がない事を雄弁に語っている。



「……嘘は言っていないようだな。だが自分を殺せとは穏やかじゃない。……君は私に何をしてほしい? 何を望んでここまできた?」

「順を追って話すぜ。とりあえず警戒は解いてもらえるんだろ?」

「ああ。不明瞭な点が多すぎるが君が『本気』だと言う事は理解したよ。入ってくれ」

「おう。カザミと違ッテ話がわかるヤツで助かるゼ♪」

「風見は用心深い男だからな。……とはいえ断っておくが私もまだ君を信用したわけじゃない。もしも何かすれば……」



丈二が自然な仕草で玄関先の壁に触れる。

カチリ! と言う小気味よい音が聞こえると同時に。



ヒュン!!



「おわぁ!?」



ベガの鼻先を通過する金属製の矢。

たまらず仰け反る彼の鼻先をさらに二発目の矢が通過する。



壁に突き刺さる二本の矢に彼は口元を引きつらせた。

視線を巡らせ、矢の発生源の方を見るとそれの発射されたと思われる『穴』は彼の見ている目の前で閉じていく。

閉じた跡はその周りと完全に同化しており、他の壁との違いは寸分もない。

大した隠蔽能力である。



「こういうモノが体中に突き刺さる事になるので気をつけるように」



いけしゃあしゃあと笑顔で言い切り、靴を抜いで奥へと消えていく丈二。

その背中を見つめながらベガは盛大なため息をつくと毒づいた。



「やっぱアンタ、カザミの戦友だよ」



遠い空の下でバイクを走らせていた男がクシャミをしていたかどうかは不明である。





おまけ

気になったので聞いてみた。



「そういや気になったんだが罠の類ってあれだけなのか? アンタラが敵に回すヨウな相手にアンナノだけじゃ対処できネェような気がするんダガよ?」

「いやあれはいわゆる『お持て成し用』のおもちゃだ。本当ならあの位置には面を吹き飛ばすショットガンが配置されている。さらに天井には捕縛用の電磁ネット。最悪の場合を想定し、研究室には自爆装置もつけてある。他にも……」

「……いや、とりアえずこの建物がアンタの領域なのは良くワカッタからモウいいや(っつーかアレでお持て成しって……誰を持て成すんだよ?)」

「むぅ、そうか? 他にも○○○を×××するという仕掛けや………」

「マジで勘弁してくれ! 頼むから!!! (本気の罠が仕掛けられてたら俺ぜってぇ死んでるし!?)」



彼は思う。

「カザミよりコイツの方がタチ悪ぃ」

と。

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