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子供先生と仮面の男 第十一話(ネギま!×仮面ライダー (オリ主・オリ有) 投稿者:紅 投稿日:04/08-02:27 No.35

子供先生と仮面の男

第十一話 『二つの戦い 前編』





雲ひとつ無い空にぽつんと浮かぶ月。

満月に成り切っていないその月を見上げながら、ベガはベンチで横になっていた。



「あ~~、しかしコッチは星がアンマ見えネェな」



などと独白しながら寝るわけでもなしに、腕を枕にしながら夜空を仰ぐ。

結城丈二による『彼の体の調査』が一段落してからかれこれ二時間が経っていた。





結論から言えば彼の身体に『危惧していたようなモノ』は見当たらなかった。



ベガの身体にはBADAN時代の改造の跡があっただけ。

表面上は何もされていないように見えた。



だが調査を進める内に、丈二は恐るべき事実に気づく。

ベガの『神経の数』が常人のモノより増えていたのだ。

しかもその用途のわからない神経は体中を駆け巡っているのだ。



試しにベガに『光の弾丸』を使用させた所、その神経は発光現象を起こした。

丈二はその反応を見て一つの仮説、いや確信に思い至る。



これが『怪人に魔法能力を付加する要因』なのだと。



丈二は仮にこの神経を『魔法神経』と名付けた。





ここで「なんで魔法なのか?」とベガが疑問を口にしたので、丈二は軽く魔法についてのレクチャーを行った。

最初こそ半信半疑だったベガだったが、自分の力の説明をされる内に「そんなもんもあるのか」程度に納得している。





さらに細かい調査を進めると二つの事が発覚した。

一つ目はこの魔法神経にはそれぞれに術式が刻み込まれているという事。

ベガの魔法神経に刻み込まれていた術式は二つ。



『魔法の射手』と『戦いの歌』



『魔法の射手』の術式はいわゆる遠距離攻撃の術だ。

ベガが丈二に見せた光の弾丸は、彼がこの術式を持つ魔法神経を半ば無意識に発動させる事で放ったモノである。



そしてもう一つである『戦いの歌』の術式。

これは肉体強化の術であるこの術式を持つ魔法神経を発動させると素手で岩も粉砕できるパワーを発揮できるようになるというモノである。



そして二つ目の調査結果。

それは『怪人としての力』と『魔法神経の能力』は完全に共有しているという事実だ。

簡単に言えば、どちらかの能力を使っている時にもう片方の能力は使用できない。



この『魔法神経』は彼の『怪人化』の要にもなっているらしく、彼が怪人化した時に、『神経に付加された全ての魔力』をそちらに振り分けてしまうのだ。



もしもむりやりにでも両方の能力を同時に使おうとすれば。

魔法神経は過負荷に耐え切れなくなり、ベガは力の全てを失うだろう。

いや下手をすれば死ぬ可能性もある。



何故なら魔法神経は彼の脳に直結している。

この神経への過負荷はそのまま直接、脳に届いてしまうのだ。

最悪の場合、神経が焼き切れ、脳細胞が死滅し、彼は死ぬ。



そして脳に直結している魔法神経を取り除く事は事実上、不可能。

他の神経同様、もはやソレは彼の体の一部なのだから。



ただ無茶な使い方をしない限り、そのような事態にはならないとも丈二は言い添えている。



「この改造を施した男は間違いなく天才だ。そのやり方は同じ科学者として決して気持ちの良いものでは無いし、肯定する気はないのだがその方法、論理は確立されたモノだ。完璧にな。つまり使い方を誤らなければ害にはならない。これをどう使うかは……君次第だ」

「イイのか? ソンナ事言って……。人殺しに使ウカモしれネェぞ?」



冗談めかした彼の言葉に丈二は真剣な表情で答えた。



「安心しろ。その時は『ライダーマン』として君を討つ」

「クククッ! ああ、その時ハよろシく頼むゼ」



そう言って彼は丈二の研究室を後にし、ブラブラと学園都市を徘徊して今に至る。





「とりアエず生きテテも良イってのはわかったガ。……かと言ってナァニをしたラいいんダカねぇ……」



ぼやきながら手の中でサングラスを玩ぶ。

その猛禽類の瞳が闇夜の中でも爛々と輝いているが周囲に人気が無い事は確認済みなので気づく者などいない。



「……イッソ派手に暴れテ派手に散っちマウか?」



冗談めかした独白を聞く者はいない。

実行するつもりなどまったく無いセリフに彼は大仰なため息をついた。



「アーア、マジでどーするカ。……ん?」



近づいてくる人の気配を敏感に察知し、サングラスを掛け直すベガ。

鷹の瞳を細め、近づいてくる人影を凝視する。



こんな夜に外を徘徊する物好きは小柄な少女だった。

中等部らしい制服を着て、何を怖がっているのかビクビク震えながら手に持っている箒をぎゅっと握っている。



「(コンナ時間に一人でナニやってンダカねぇ。あーあ、アンナにガチガチになっちまって)」



興味無さげに少女から視線を外し、目を閉じる。



「(……今日ハ色々あり過ぎタな。メンドクセェ事、考えンのハ明日に回すカ)」



自己完結し、そのまま眠りに付こうとする。



「あ、あの……」



だがそれは少女の蚊の鳴くような小さな問いかけに遮られた。



「アァ?」



のっそりと身体を起こしながら気だるげな返事をするベガ。



「す、すみません! えっと……こ、この辺りで聖ウルスラ高等部の制服を着た金髪の女性を見かけませんでしたか?」



少女の問いかけに首をひねりながら答えるベガ。



「アー……いや見てネェケド。なに? 嬢チャン、その人と待ち合ワセデモシテンノ? こんな夜更ケニ」

「あ、えっと……はい。ちょっと用事があって……」



逆に問いかけると少女はしどろもどろになりながら答えた。

曖昧に誤魔化そうとしているのがベガには手に取るようにわかったが。



「ンーー、まぁイイケドな。でも一人歩キはヤメた方ガイイゼ? この国がイクラ平和ダッつってモナ」

「あ、ハイ。あ、あの……ご忠告、ありがとうございました」



そう言ってペコリと頭を下げて来た道を戻っていく少女。

その背中をなんとなく見つめながらベガは首を捻った。



「……ナァンか変だナ。あの嬢チャン」



それは何の確証もないただの勘だったが、彼にとってのソレは墓荒しとして生きてきた頃からずっと頼りにしてきた指針だ。

だから彼はその漠然とした勘を信じ、少女の後を尾ける事にした。



「(まぁドーセやる事モ無くテ暇ヲ持て余してタンダシな)」



もしもこの時、彼が少女の後を尾けなければ。

彼が物語の渦中に放り込まれる事は無かったのかもしれない。





ソレが現れたのは突然だった。



最初に気づいたのは少女ではなくベガ。

その超視力が少女の足元の『亀裂』を捉えたのだ。



「ッ!! 嬢ちゃん、横ニ跳べッ!!」

「えっ!?」



唐突にかけられた声に一瞬、棒立ちになる少女。

ベガは短く舌打ちし、丈二からもらった助言を思い返した。



『認識するんだ。魔法神経は君の脳と繋がっている。今まで君が『魔法の射手』の術式を無意識にでも使えていたのは脳の方がその神経を『認識』していたからだ。認識する事でいついかなる時でも術式は使用できるようになる』



「(サッソク助言が役に立ツナンテな)オリャァアアアアア!!!!」



彼の意思に答え、『戦いの歌』の術式が発動する。

地面を蹴り、少女を抱きかかえ、その場から横に跳ぶ。

瞬間。



ドガァアアアアアアア!!!



先ほどまで少女がいた地面を突き破り、大蜘蛛がソノ姿を現した。



「ギィシャァアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「ッキャァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!



突然、出現したその醜悪な化け物に絶叫する少女。

その甲高い声を間近で受けたベガの顔が盛大に歪む。



「ダァッ! 耳元で叫ブンじゃネェ!!」

「あ、ああああああ、だ、だってアレアレアレ……!!!」

「アア、鬱陶しい! 少し黙ッテロ!!!(っつーカ俺はナンデこの嬢ちゃんを助けテんダ?)」



混乱状態の少女を強引に黙らせつつ、心の中で自問する。



そうだ。

なんで助けた?



前は……墓荒らしとして生きていた時は、目の前で罠にかかったヤツがいたって助けようなんて思わなかったのに。



BADANとして生きていた時なんて、率先して……人を殺して、捕まえて、改造してきたってのに。



「(ナンデ俺は、コイツを助けたンダ?)」



チラリと腕の中に納まっている少女に視線を向ける。

だがその一瞬の隙を大蜘蛛は見逃さなかった。



前足を横薙ぎに振るう。



ブォオン! という風を切る音に気づいた時には既に遅かった。



目前にまで迫った太い前足。



ベガに出来たのは少女を抱えたまま、迫る前足に背中を向ける事だけだった。



バキィッ!!!



「ガフッ!!」



吹き飛ばされるベガ。

少女を抱きかかえたまま地面を転がる。

すぐ傍に生えていた木に激突したところでようやく止まる事が出来た。



「ゲホッ!! チィ、しくジッタな……」

「だ、大丈夫ですか!?」



ベガが庇ったお蔭で怪我一つなかった少女が、蹲ったままのベガの身体を起こそうとする。



「俺の事ナンテ良いカラ、さっさと逃ゲロ……(ナニ、言ってンダ? この期ニ及ンデまだ他人の心配カヨ?)」



自分の心情とは裏腹の言葉ばかり口から出る事に彼の苛立ちは募っていく。



「チィ……どうシチまッタんだヨ、俺ハよ」

「えっ?」



背中の痛みに耐えながら、少女の手を振り払い自力で立ち上がる。



「(……ナンデだろうナァ?)」

「あ、あの……うっぷ!」



少女の肩を掴み、ムリヤリ自分の胸に引き寄せる。

突然の男の行動に異性と関わる事に慣れていない少女は顔を真っ赤にした。



「逃げンゾ。掴マッテろ(ナンデかわからネェが……)」

「ふ、ふぁい!」



顔を押し付けられている為、篭もった声になったが彼女はベガの言葉に従ったようだ。

彼の腰に両腕で手を回している。

かなり切迫した状況とは言え、恥ずかしそうにしているのは変わらないが。



「じゃアナ、蜘蛛野郎!(……コノ嬢ちゃんヲ見捨てンノハなんか嫌ダ)」



戦いの歌の術式を発動させ、脱兎の如く駆け出す。

大蜘蛛は二人をターゲットにしたようで追いかけてくるが、ベガの強化された足の方が速度は上だった。

徐々に離れていく両者の距離。



「……マズイな。(頭、痛ぇ。キリキリしやがる)」



今まで使わずにいた神経を使用したせいだろう。

彼の脳、そして神経には今、想定以上の負荷がかかっていた。



「オイ、どっかに人目のツカねぇ場所はネェか?」

「え? えっと……この先に最近の怪事件の現場と言う事で立ち入り禁止になった場所がありますけど……」

「怪事件? マァんな事はドウデモイイぜ。真っ直グでイイのか?」

「は、はい!」



頭痛が酷くなっていく。

気を抜けば顔に出てしまいそうになるのをなんとか抑え付けながら速度を上げる。

先ほどまで遠目に見えていた森が目前にまで迫ってきた。



「じゃ、アバヨ。嬢ちゃん」

「えっ?」



彼女が言葉の意味を問い返す暇はなかった。

何故なら彼女の身体が宙を舞ってしまったからだ。

ベガが無造作とも言える動作で少女を投げ捨てたのだ。



「キャアアアアアア!!!!」



悲鳴を上げながら放物線を描いて跳んでいく少女。

軽く笑みを浮かべながらそんな彼女を見送るとベガは森へと突っ込んでいった。



チラリと後ろを窺う。

大蜘蛛は投げ捨てられた少女には目もくれずベガを追ってきていた。



「好都合ダナ。(いい加減、逃げ回ンノは終わりニするカ。頭も痛ぇシ)」



術式を解き、強化の術無しで駆けるベガ。

徐々に近づいていく両者の距離。

周囲の木々をなぎ倒しながら進む大蜘蛛の目に自分しか映っていない事を確認する。



「コンダケ距離稼げバ、アノ嬢ちゃんの方は平気ダナ」



唐突に視界が開ける。

そこは木々の自生していない不自然に開けた広場だった。



遮蔽物の何も無いただ広いだけの野原。



「コイツはイイ。さぁて……」



広場の中心まで出た所で彼は足を止めた。

振り返り、大蜘蛛が到着するのを待つ。



ドシャァアアアーーーンッ!!!!!



木々を破砕しながら迫ってくる大蜘蛛を、笑みを浮かべながら待ち受ける。

その余裕を持った態度に疑問を抱いたのか大蜘蛛は、彼との距離を保ったままその場に立ち止まった。



「タブンお前は俺ノ同類ナンだろうなぁ。ま、俺は裏切り者ダケドな……」

「シィイ?」



目の前に立つ獲物の言葉が理解できず首をかしげる大蜘蛛。

ベガは大蜘蛛の仕草にさらに笑みを深くすると自分が人間ではないという『証』を曝け出した。



バサァアアアッ!!!



背中から飛び出す一対の翼。

サングラスも外し、その猛禽類の瞳も曝け出す。



「ギィッ!?」

「へへへ、驚いたカ? じゃあ驚きツイデにくたばれッ!!」



背中の羽を何本か毟り取り、大蜘蛛に投げつける。

風を切りながら飛翔するソレらは彼の狙い通りに大蜘蛛に突き刺さると。



ドガァアアアアアアアアン!!!!



彼の意思と同調して爆発した。





あとがき

皆さん、こんにちは。紅です。

再投稿分の掲載を終えて初の更新になります。と言ってもこれは修正点を見つけて改竄した後のモノですが。

今回は終始、ベガにスポットライトを当ててみましたがいかがだったでしょうか?

題名から察しがつかれるかと思いますが、この話は平行進行でベガ、そして嵐の戦いを描くモノです。ですので次は嵐の話になります。



皆様からの感想、ご意見をお待ちしております。

それではまた次の機会にお会いしましょう。

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