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時計が刻む物語 第十三話(×足洗い邸の住人たち オリ有り) 投稿者:紅(あか) 投稿日:05/13-13:22 No.507
『時計が刻む物語』
第十三話 『その男の授業』
バロネスの朝は早い。
毎朝、四時きっかりに起床し起き抜けの頭のままふらつく足取りで風呂場へ向かう。
冷たいシャワーで速やかに意識を覚醒させ、シルキーの用意した服に着替える。
その後は広い庭(彼の私有地ではありません)に散っている外住まいの妖精たちを一体ずつ訪ね、コミュニケーションを取る。
彼らに食事をやる事も忘れない。
そうやって有意義な時を過ごす事、二時間後。
午前六時半には館に戻り、それから三十分は学校に向かう支度を整える。
全ての準備が終わる頃には朝食が出来ているので、そのまま食堂へ。
シルキーの甲斐甲斐しい給仕を受けながら優雅な食事を楽しむ。
そして教師としてではない別ベクトルの『装備』を済ませ、家を出るのだ。
恐るべきはその一連の行動が全て『秒単位』の正確さで行われている事だろう。
時間に神経質だとか正確だとかそういう次元ではないのだ。
ごく自然にそうなると言っても過言ではない。
『時間を力の象徴』としている彼はごく自然に時間を守れる男なのである。
その代わり、どうでも良い事柄に関しては殊更に無関心で投げっぱなしなのだが。
八時。中等部校舎に到着。
周囲の喧騒など歯牙にもかけず、堂々と職員室へ向かう。
「(じじいのヤツ、昨日頼んでおいた件はしっかりやってあんだろうなぁ?)」
廊下ですれ違う生徒、教師から挨拶をされるが彼は考え事をしながらおざなりに手を挙げるだけで対応する。
ネギとはエライ違いである。
職員室へ着くと、彼の机には分厚い紙の束が置いてあった。
鞄を置いてから紙の束に目をやり、表紙に視線を走らせる。
「ほう。ちゃんとやってたみてぇだな」
ニヤリと笑いながら紙の束を手に取る。
表紙には『2-A組個人情報』と書かれていた。
昨日の顔見せの際、彼は何人かの生徒に『常人にはないモノ』を感じ取っている。
それも一人や二人ではない。クラスの『半数近く』に、だ。
幾らなんでも異常だと踏んだ彼は彼女らが『自分の敵』になり得るかどうかを調べる為に、学園長に『2-A』の詳細な資料を要求したのだ。(ちなみにその代価として契約条件の上乗せを要求されたので、昨日の昼休みの騒動に発展している。)
ペラペラと適当に捲り、軽く目を通していく。
「一日でやった割にはずいぶんと細けぇな。仕事に妥協はしねぇらしい」
資料の出来に満足げな笑みを浮かべると引き出しにしまう。
「今日は一時間目がP組、二時間目がF組、三時間目がL組………」
担当の組を確認しながら鞄の中から授業には必要の無いモノを取り出す。
その中に青一色の布に丁寧に包まれた四角形の箱があった。
隣に座っていた教師『瀬流彦君信(せるひこ・きみのぶ)』がそれを見て、疑問の声を上げる。
「あれ? それってお弁当ですよね、バロネス先生。あなたが作ったんですか?」
言外に『似合わない』と言われているように感じられるが彼にはそのような他意はない。
ただ純粋に聞いているだけだ。
「ああ? 外れだ。あいにく家事全般は最低限しか出来ねぇしやらねぇ」
おざなりな回答をして席を立つ。
時計を見るともうそろそろ八時半に差しかかろうという時間だ。
職員室内にも「そろそろ教室へ」と言う空気が出来ている。
何故かまだネギがいない事にバロネスは軽い疑問を抱いたが、とりあえず気にしない事にした。
「ちょ、バロネス先生! それじゃ誰が作ったんですか!?」
出席簿と教科書一式を手にバロネスを追いかけてくる君信。
「しつこい野郎だ」などと内心で毒づきながら彼はまたしてもおざなりに対応した。
「こりゃウチの家事担当が作ったんだよ。扶養家族の一人がな」
「あ、そうだったんですか。いいですねぇ、僕なんて一人住まいですからいつも食堂かコンビニですよ。あははは」
横並びになって歩く。
バロネスは先ほどから視線で『失せろ』と語りかけているのだが、君信にはまったく効果がない。
「(神経が太いのか単なるアホか。……ただのアホっぽいんだがなぁ)」
君信が魔法に関わりをもつ者であるという話を、バロネスは既に本人と学園長から聞いている。
だがこの男はコッチの世界に来てから関わった裏の人間に比べて余りにも普通過ぎた。
タカミチのような内面から滲み出る『強さの片鱗』もなく、学園長のように仙人然とした風貌や雰囲気を持っているわけでもない。
ただ魔法を齧っただけの一般人、ぶっちゃけ『カス』。
それがバロネスが彼に抱いている印象だ。
第二視力でも確認してみたが魔力の隠蔽すらしていなかった。
それはつまり本当に『今、目視できる程度』の魔力しか持っていない事になる。
そしてその魔力量はネギに及ばない。
相手を侮る事が死に直結する世界を生きてきたバロネスですら君信には警戒心が働かない。
それほどまでに彼は『放っておいても害にはならない』と思われているのだ。
仮に、彼の弁当について言及したのが他の名も知らぬ魔法生徒や魔法先生、一般の教師などだったとしたら彼は無視するか一睨みで黙らせていただろう。
なんとも珍妙な話であるがその『無害さ』とでも言うのかそれのお蔭でバロネスは態度こそ変わらないが君信にほんの少しだけ心を許していた。
「それじゃ僕はC組なんて」
立ち止まって目の前の教室を指差す君信を尻目にさっさと去っていくバロネス。
その背中に軽く頭を下げ、君信は教室のドアを開けた。
「さてHRを始めたいんだが……」
新しく配置された教卓を出席簿で軽く叩きながら生徒らを睥睨するバロネス。
その視線は不自然に空いている二つの席で止まる。
出席簿で空席に座っているはずの人物を確認してから疑問の声を上げる。
「コノエとカグラザカはどーした? 誰か知ってるヤツは?」
首を傾げる者、バロネスと目を合わせてしまい慌てて首を横に振る者と様々な反応が返ってくるがその意味は一つだけだ。
『自分は知らない』
「オマケにネギも来ねぇ、と。なにやってやがんだか……まぁいい。こっちから伝える事も特にねぇからこのまま次の授業が始まるまで待ってろ」
そう言って彼は教室を出て行く。
ここ数日、ずっと感じられる突き刺さるような視線を無視しながら。
ちなみにいない三人だがネギは真夜中まで勉強(魔法関係)をしていたせいで寝坊してしまい遅刻。
明日菜は新聞配達のアルバイトが無かった為に気を抜いてしまった結果、やはり寝坊して遅刻。
木乃香はこの二人を起こすのに奮闘したが結局、時間を浪費してしまい巻き添えで遅刻。
三名とも生活指導を担当している『鬼の新田』にこっぴどく絞られる事になった。
「あー、この問題は126ページの公式を元に作られてる。つまりこの公式さえ理解できていれば解答できるって事だ」
カツカツとチョークで黒板に書いた計算式を叩きながら力説する。
「計算問題で大事なのは公式の暗記とそれの使用法の理解。『こういった問題』には『この公式』が使えると自力で判断できるだけの熟練が必要だ。なぁに、そう難しい事じゃねぇ。まず覚えろ。そんで実際の問題に当てはめて使えるかどうかを判断していけばいい。そこからさらに『応用できるか』はてめえらのやる気と根気次第だ」
そう言うと彼は教卓の上に置いていたプリントを配り始める。
「今の俺の言葉をお前らが理解したと仮定して作った問題だ。納得できるまで考えて答えを書いて提出。終わったヤツから自習だ。周りに聞くのは禁止。『自分』で考えて答えを出せ。間違えるのが嫌だ、なんていうちっぽけなプライドは捨てろ。時間ギリギリまで待ってやる。チャイムが鳴ったら終了で全員提出だ。例外はねぇ」
バロネスの言葉を聞きながらプリントに目を通す生徒たち。
だがその顔色がどんどん青くなっていくのがバロネスには良くわかった。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
一人の女生徒が立ち上がる。
「ああ? なんだぁ?」
ギロリと意見した女生徒を睨みつける。
バロネスにやぶ睨みされ、一瞬怯んだものの勇気を振り絞って抗議した。
「こ、これは高等部レベルの問題です! 以前、先輩に見せてもらった事があるから間違いありません! 解けるわけないです!!」
その言葉にバロネスは予想通りだと言わんばかりに笑みを湛えて答えた。
「よく気付いたな。そう、そっちは高等部用の問題だ。お前らがやる問題はコッチだよ」
別の紙束を手で示す。
その言葉に生徒たちはホっとするものすぐにその顔は疑問に彩られる。
何故、解けるはずのない問題を渡したのか?と。
「それは別に間違えて渡したわけじゃねぇ。その問題用紙は各自で保管しろ。それじゃ改めて問題を配るぞ」
そうして配られた問題は確かに今、説明を受けた範囲のモノであり生徒たちは一様に胸を撫で下ろした。
「それを解いた後、時間のあるヤツはさっき配った方に挑戦してみろ。それでお前らがどれだけこの問題の公式を理解しているかがわかる」
バロネスの意図が理解できないままに、プリントをやり始める生徒たち。
真剣に問題に取り組む彼らを尻目にバロネスは黒板の上に配置されている時計に視線を走らせる。
「(十時少し、か。さて何人が俺の意図に気付けるか……)
彼が高等部の問題を渡した意味。
それは先ほどから彼が言っている『公式』の理解度をチェックする為だ。
では何故、高等部の問題を解かせる事がそれに繋がるのか?
その理由は至って単純。
彼らが今、解いている問題に使われている公式。
それを『応用』、『発展』させたものが高等部の問題に組み込まれているからだ。
つまりその問題を解く事ができると言う事は公式の概要を理解していると言う事に繋がる。
さらに彼の思惑としては解く事ができない『はず』の高等部の問題に『自主的』にチャレンジさせる事で、生徒自身の向上心、探究心などを調査する意図もあるのだ。
それらのデータを元に今後の授業のやり方を思案するつもりなのである。
「(やる気がねぇならそれでもいい。やりたかない事を無理矢理やらせた所で意味なんぞねぇからな。それで困るのは俺じゃねぇし……)」
あくまで『自主的』に授業に取り組ませる。
彼は生徒たちに『宿題』を出すつもりも無かった。
それは彼の方針である『自主的』に反する事だからだ。
予習や復習と言った行いは、自分でやろうと思わなければ意味が無い。
宿題という形で強制的に復習させた所で、果たしてどれほどの効果が望めるか。
『この問題のどこそこがわからない』と言う事は究極的には自分にしかわからないのだから。
だから彼は宿題など出さない。
彼の価値観ではソレに意味は無いからだ。
その分、一回一回の授業の密度を濃くし出来うる限り早く進める自習の時間を増やしていく。
「わからなければ聞きに来い。『答え』じゃなく『やり方』を教えてやる」
どのクラスでも彼は最初にこう言っている。
彼の意図を理解している者は、残念ながらほとんどいない。
大多数の人間は『自習が増えてラッキーだ』程度にしか考えていないのだ。
だが彼は『そんな事』は気にしない。
それが自主性を重んじた結果であるならば構わない。
何故ならば。
「それで困るのは俺じゃねぇんだからな。クックック!」
こうして彼の授業はつつがなく進行していった。
昼休み
職員室でシルキー特製の『愛妻(?)弁当』を食していたバロネス。
そこにトタトタと小走りになりながらネギがやってきた。
「バロネスさん!」
「あー? なんか用か?」
黙々と箸を進めながらおざなりな返答をするバロネス。
だがネギはそんか彼の態度に気分を害する事も無く話を続ける。
「授業の方はどうでしたか?」
「……まぁボチボチってとこか。最近の中坊ってのはどうもてめえで考える事をしねぇらしい」
先ほどの課題プリントの結果を思い出して、呆れの意味を込めてため息をつく。
高等部の問題は彼の予想を大きく下回り、たったの五人しかやってこなかった。
残りの者は『出来ない事が当たり前』だとでも思っているのだろう。
提出すらしてこない者が続出していた。
『向上心、探究心が限りなくゼロに近い』
面白く無い結果にバロネスの機嫌は今、最高に悪くなっている。
そんな殺気立ってさえいる彼に声をかけられるネギは大物なのか空気が読めないだけなのか。
判断に苦しむ所だ。
恐らく後者なのだろうが。
「確か六時間目はA組だったな。さてあいつらはどういう反応をしてくれるか……。(せいぜい俺を楽しませてくれりゃいいが)」
伝説のタコさんウインナー(ちゃんと八つ足まで再現)を口に含みながら邪悪思考を巡らせるバロネス。
「お二人とも、午前中の授業はどうでしたか?」
二人の視線が声をかけてきた人物に向かう。
そこにはウェーブかかった金髪を流した美女が立っていた。
「あ、しずな先生。うーーん、僕なんてまだまだですよ」
「フン。ガキ臭い連中ばかりでやり難い事この上ねぇな」
二者二様の言葉に微笑みながら相槌を打つしずな。
バロネスの教員としては過ぎた言葉にも特に反応を示していない。
大人の余裕というヤツなのだろうか?
見た目の『清楚な熟女』な雰囲気の中にも芯がしっかりしている事を匂わせる態度だ。
その落ち着いた物腰が、どこか浮世離れしたものに感じられる。
「(そういう意味じゃ『普通過ぎる』セルヒコよりもコイツの方が『こっち側らしい』んだがな……)」
『得体が知れないがとりあえず害はない女』
それがバロネスの彼女に対する認識である。
彼が無言で食事を再開している間にもしずなとネギの会話は続く。
だが彼が弁当を綺麗に平らげたのとほぼ同時に。
「うわぁーーーん、センセーーーー!!!」
平和な昼下がりは終わりを告げた。
泣きながら職員室に駆け込んできた二人『佐々木まき絵(ささき・まきえ)』と『和泉亜子(いずみ・あこ)』の二人の話はこうだ。
昼休みに校庭でバレーボールをしていた所、高等部の女子に場所をとられた。
ボールをぶつけられる等して軽い怪我をしてしまい、自分たちではどうしようもないと感じてネギに助けを請いに来た。
と言う事らしい。
これを聞いたバロネスの感想は。
「アホか」
である。
勿論、『高等部の連中が』である。
精神的に熟練してくる頃だろう高校生にもなって年下から力ずくで遊び場を奪って何が楽しいのか?
「ネギ、さっさと行って止めて来い」
「え!? バロネスさんは来ないんですか!?」
「これくらいてめえでなんとかしろ。担任はお前だろうが」
まき絵、亜子、ネギの縋るような視線などまるで気にかけずに追い出す。
ところが弁当箱をしまい、今朝の資料を読もうとした所でその腕を掴まれた。
「バロネス先生……」
「……なんだ?」
静かな声音に潜む重圧に気付かぬフリをしながら腕を掴んでいるしずなを見やる。
「ネギ先生を手伝ってあげてください」
「…………ちっ」
肩を落とし、軽く舌打ちしてから席を立つ。
重い足取りで職員室を出て行く彼を、しずなは笑みを浮かべて見送った。
その時、職員室にいた教師たちが思ったことはたった一つに集約されていた。
『女は強い』
と。
バロネスがその場に到着した時、現場は既に混沌とした様を呈していた。
「誰がババァですってーー!! クソガキーーーー!!!」
「あんた達の事に決まってるでしょー、この年増どもーーーー!!!」
ギャーギャー喚きたてているのは初日からバロネスに『馬鹿認定』をされた鈴の少女。
『2-Aバカレンジャー筆頭』の『神楽坂明日菜(かぐらざか・あすな)』である。
その横にはネギに対して異常な愛情を傾けている少女、2-Aの委員長である『雪広あやか(ゆきひろ・あやか)』も一緒だ。
どうやら相手は話に聞いた高等部の生徒らしい。
そして何故かネギが高等部側に捕まっていた。
取っ組み合いを始めている彼女らの論点は既に場所の横取り云々では無くなっている様子だ。
高等部は何を思ったのか『子供先生を譲らないか?』と言えば、明日菜やあやからは『年増が子供いじって楽しんでんじゃないわよ』と言い返す。
膨れ上がる様々な感情。
もはや本格的な喧嘩は避けられない所まで来ていた。
バロネスはガリガリと自身の白髪を掻きながら、無造作に彼女らに近づいていく。
「そこまでだ」
そしてこれまた無造作に明日菜とあやかの襟首を引っつかみ持ち上げて止めた。
細めの体躯からは想像しづらい腕力である。
「「バロネス先生ッ!?」」
自分たちを止めた意外な人物に声をあげる二人。
バロネスはそんな二人を後ろに放り投げると、高等部の女子たちと対峙した。
「あら? 自分たちじゃ適わないと知ったら先生に告げ口? これだからお子様は……」
「なんですってーーー!!!」
彼ではなく、その後ろに下がらされた明日菜たちを見下しす女子。
あくまで生意気な後輩をいびるつもりのようだ。
そしてそんな彼女らのあからさまな挑発にあっさり乗っかってしまう明日菜。
その精神的な『ガキさ加減』にバロネスは失望の意味を込めてため息をついた。
「両方、黙れ。……殺すぞ」
シーーーーーーーーン
一瞬で場が沈黙する。
それだけの殺気と怒気を込めた言葉だった。
「さっきから聞いていればくだらん事をグダグダと……。おい、高等部のクソガキども」
半眼でさっきまで余裕ぶっていた女子たちを睨みつける。
「まず根本的な問題を作ったのはお前らだろう。何が年上だから場所を譲れだ。んなもん早いもの勝ちに決まってる。自分たちが年上だと自負するなら潔く諦めるか、筋道立てて話をつけてみろ。初っ端から力ずく~なんてのは小学生並の発想だ。ちったあ恥じろ、ボケ」
所々に容認しがたい暴言が入っているが言っている事は極めて正論である為、高等部の女子たちは反論できなかった。
苦々しげにバロネスを睨みつけているその様子には悔しさが滲み出ている。
そしてそんな彼女らを見て『いい気味だ』とほくそ笑む明日菜らだったが。
教授の攻撃はこれでは終わらなかった。
「次におまえら」
クルリと振り返り、明日菜たちを睨みつけるバロネス。
「こんなくだらん問題で俺たち教師を担ぎ出すな。こんなもん、てめえらで片付けろ。こちとら忙しいんだよ。あと相手がいくら暴言を吐こうと先に手を出した方が負けだ。悪口を言われるのと殴られるのとじゃまったく違うのと同じでな。裁判ならお前らの有罪で終わりだ。猿じゃねぇんだから頭使え。わかったな、馬鹿ども」
言いたい事を言って高等部生徒らに捕まっているネギの襟首を引っつかむと猫のように連行して去っていく。
後には呆然とした様子の高等部女子と2-Aの生徒だけが残された。
「やれやれ。僕の出る幕は無かったな。……しかしやっぱり言い方がキツ過ぎるな、あの人は……」
木陰から事態の推移を見守っていた影はタバコを吹かしながら呟く。
「でも言っている事は確かに正しい。……もう少し、様子を見よう」
携帯灰皿にタバコの灰を落としながら、影は森の奥へと消えていった。
あとがき
最新話をお送りしました。いかがだったでしょうか?
今回は原作のドッチボールにバロネスを交える形になりました。
お蔭で彼の出番が減っています。ちゃっかり出てきていますが。
さて次回はドッチボールの後編です。
彼がどう絡むのかを楽しみにしていてください。
皆さんからのご意見、ご感想を待っています。
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