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時計が刻む物語 第二十一話(×足洗い邸の住人たち オリ有り) 投稿者:紅(あか) 投稿日:08/06-07:12 No.1043  

時計が刻む物語
第二十一話 『図書館島・騒動勃発』


 翌日。
 いつもと変わらない朝を過ごし、職員室までやってきたバロネスは少し離れた席に子供先生の姿が無い事に首を傾げていた。

「おいセルヒコ、ミナモト。ネギを知らねぇか?」
「えっ、ネギ君ですか? 僕は知りませんけど……しずな先生はご存知ですか?」
「いえ、私も知りませんよ? ……ああ、高畑先生。ネギ先生の姿がまだ見えないんですけど何か知りませんか?」
「えっ? いや僕も知らないなぁ。昨日は元気そうだったから病欠って事はないと思うけど……」

 たまたま傍を通りかかったタカミチを呼び止めて聞いてみるもその返答は要領を得ない。
 バロネスはタカミチの様子を横目で伺い、何か隠していないか探ってみたが嘘をついているような素振りは見られなかった。

 HRの時間が迫っている事もあり、バロネスはとりあえずネギの事を思考の隅に追いやり教室に向かう事にした。
 そこはかとなく嫌な予感を感じながら。
 そしてその予感は見事に的中する事になる。

「みんなーーっ、大変だよーーーーっ!!!  ネギ先生とバカレンジャーが行方不明にーーーっ!!!!」
「うぇえええ、ネギ先生がーーーっ!!」

 いざHRを始めようとしたその瞬間に乱入してきた出席番号十四番『早乙女ハルナ』と二十七番『宮崎のどか』の発言によって。

「「「「えええーーーっ!!!」」」」

 クラス中が突然の凶報に騒ぎ立てる中、バロネスはこめかみを抑えながら苛立たしげに呟く。

「あんのクソガキども……」

 ギャーギャーと混乱する生徒らを黙らせるべく彼は教卓の前で大きく息を吸い込んだ。


 十分後。

「つまりこう言う事か? あの馬鹿どもは今回のテストでウチのクラスが最下位だった場合、『小学生からやり直しになる』なんつーデマを信じたあげく、一週間で自分たちの学力を上げる自信がねぇから図書館島にあるっつー『持ってるだけで頭が良くなる魔法の本』を捜しに行き、さらにネギまで巻き込んで音信不通になったと……」

 ハルナとのどかによる説明を黒板に適当にまとめ、チョークを下ろして概要を確認する。
 彼は自分の解説に二人が頷くのを見て盛大なため息を漏らした。

「常識で物事を測れねぇのか、あいつらは……。なにが『持ってるだけで頭が良くなる』だ。んな便利なモンが実在するわけがねぇ。しかも小学生からやり直しってのはもっとありえねぇ。どこの学校方針だそりゃ。あの頭でっかち(学園長)がいくら道楽好きだろうと義務教育に反する行為はさすがに出来ねぇししねぇだろうに。あーー、うっとおしい」

 ガリガリと白髪を掻きながら教卓に何度も拳をぶつけ、堪ったイライラを発散する。
 だがそんな事をしても問題は解決しない。
 よりにもよって魔法関係者ではない一般人、それも中学生を巻き込んだ上での行方不明。
 話を聞く限り、ネギこそが巻き込まれた側なのだろうがそれでも図書館島への侵入を許可した上に同行までしているのだ。
 事が大きくなった事も含め、彼の責任が問われるのはまず間違いないだろう。

 そして自分の立場は彼の補佐をする事を義務付けられている。
 恐らく自分にネギらの捜索が言い渡されるのはほぼ間違いなく、その上で自分の管理責任も問われる事だろう。

 まぁそこまでは良い。
 いや、実際は決して良くないのだが少なくともバロネスは些細な事だと思っている。

 それよりも彼が懸念しているのは『魔法の本』と言う行(くだり)である。
 つい先日、彼は学園長から『国一つを滅ぼしかねない魔法書』の警固を命じられたばかりである。
 彼女らの話から推察するに噂の域を出ない情報のようだが、よりにもよってあの『図書館島にそんなものがある』などと言う話が広まっている上にそれを捜しに行く生徒まで出てきていると言う。
 それは決して看過できる話ではないのだ。

「(思いっきり一般に情報が流れてんじゃねぇか。……あのジジイ、どういうつもりだ?)」

 老人への不審は後で本人を問いただすとして今、彼に求められているのは未だに浮き足だっているクラスの人間を落ち着かせる事だろう。

 彼も教師としての自分の役目を忘れていたわけではない。
 一応は自分の立場は自覚しているのだ、彼も。

「とりあえず事態は飲み込めた。この件に関してはジジイに報告しておく。多分、誰かが捜索に狩り出されるだろうからすぐに、とは言えねぇがその内見つかるだろ。わかったら席に着け。授業を始めるぞ」

 どこか投げやりにそう言い放つ彼の背中にはこっちに来るまで決して背負う事などなかった哀愁が(微妙に)漂っていたのだがその場にいる人間に気付く者はいない。

 そしてそんな彼の気休めとも取れる言葉に納得できない人間がいた。

「ちょっとお待ちになってください、バロネス先生! 教師であるとはいえまだ子供のネギ先生に加え、明日菜さんたちが行方不明になったというのにそのおざなりな態度はなんなんですか! あまつさえ授業を始める? そんな事をされている暇があるのでしたら今すぐ学園長に報告に行ってください!!」
「………ああ?」

 心底、どうでも良さそうな態度で黒板に書かれた白文字を消しながら振り返る彼にこれ以上ないほど真剣な瞳を向けているのはネギ好きとして既に周囲からショタコン認定されている『雪広あやか』だった。
 ついでに周囲を見回すと声にこそ出していないが教室にいるほとんどの人間が彼の対応を不服に思っているように見える。
 特に一名、バロネスをまるで親の仇とでも言わんばかりに睨んでいるが、今の彼はあやかにのみ意識を向けている。
 実質、無視していると言っていい。

「ああ? ではありません! こんな大変な事態になぜ授業など……」
「ユキヒロ、お前は今回の件の責任が誰にあるかわかるか?」

 黒板消しを動かす手は止めずに彼は、少女の激情を完全に流しながら問う。

「責任、ですか? ………」

 彼の問いかけを反芻し、思考をまとめる為に黙り込むあやか。
 騒ぐ者がいなくなった教室は先ほどまでの混乱が嘘のように静まり返っていた。

 やがて結論に達したのかあやかは心持ち俯かせていた顔を上げる。
 その顔が沈痛な面持ちになっているのを見た彼は彼女が自分と同じ答えに行きついたのだと察していた。

「ネギ先生、ですね……」
「わかってるじゃねぇか」

 教室にいる面々の何人かが二人の会話の意味がわからず首を傾げる。

「あー、お前らにわかるように簡単に説明してやる。
まず今回、そもそもの騒動の原因は『図書館島への不法侵入』だ。バカ五人と関わっちまった阿呆が二人。その中の誰かがこの行動を実行前に阻止していれば良かった。そして本来なら断固としてそのバカな真似を止めなければならないのは……実習生とはいえ教師である『ネギ』だ。これでネギがただ拉致られただけだって言うなら話はまた変わってくるが……話を聞く限り、あいつはこの行為の目的を聞いた上で止めていない。どころかバカどもに協力すらしている。教師としてこれは明らかにNGな行為だ。カンニングみてぇなもんだし、何より窃盗で不法侵入だからな」

 あやかと生徒たちは黙って彼の講義を聞いている。

「つまり結果的にこういう事態になっちまった責任はアイツにあるって事だ。十歳の子供だから、なんて安い理由でアイツを擁護すんじゃねぇぞ。そんなもん言い訳にもならん。仮にもアイツは『教師』なんて役職を持ってるんだからな。そして自分の責任は自分で取らせるのが筋だ。あいつはこの事態を引き起こした責任を自分で取る必要があるんだよ。『全員で無事に戻ってくるという結果』でな。
 ジジイへの報告は俺に課せられた義務だから果たす。その後にあいつらの捜索を任された場合は対応もする。そこで俺にあいつらを助け出す『義務』が発生するわけだからな。
だが……俺はアイツがガキだから助けるつもりはねぇ。教師としてココにいる以上、あいつは同僚ではあるが庇護対象なんかじゃねぇんだからな。
 そしててめえらの意思で公共施設に忍び込もうなんて思い余ったバカどもにも同じ事が言える。全体の責任はネギにあるが個々の責任ってのはまた別の話だ。中学は義務教育だから死人でも出ねぇ限り退学にはならねぇだろうが……とにかくなんらかの罰が下るだろうよ。それはごくごく当たり前の事なんだからな」

 理路整然としたその言葉と普段、余り見せることの無い真剣な空気に生徒たちが呑まれていく。
 だがそんな中で彼女だけは彼の言葉に屈する事無く、また惑わされる事も無く反論して見せた。

「ですがそれでも……このまま黙って授業だなんてとても出来ません! 大体、責任と言うならばこういった非常事態に副担任である貴方がすぐさま対処する事もその中に含まれているのではないのですか!?」

 彼女の言葉に表にこそ出さなかったがバロネスは軽く驚いていた。
 まさか半ば無意識とはいえ自分の『職務放棄』に感づかれるとは思わなかったのだ。
 その事実を覆い隠せるくらいの理論武装をしていただけにこの展開は彼にとってはまったくの想定外の事態なのだから。

「(ほう、そこに気付いたか。長々と論じて面倒な問題を流しちまおうと思ったんだが。案外、冷静に聞いてやがる。他のは……半分くらいわかってねぇな)」

 心中であやかに対する認識に『頭が切れる』という項目を付け足しながら周囲を見回す。
 ゆっくりと視線を巡らしていると最後尾の席にいるエヴァと目が合った。

「(なかなか楽しい論議だったぞ、バロネス)」

 楽しげに目元を緩ませるエヴァ。
 その目に宿った感情を読み取ると、バロネスは鼻を鳴らしながら視線をあやかに戻した。

「……先生が行かれないのでしたら学級委員である私が学園長に報告に行きます。私にもこのクラスを率いる者としての責任がありますから!!」

 彼の沈黙をどう捉えたのか椅子を後ろに倒す勢いで立ち上がるあやか。
 バロネスはそんな彼女を見つめて口元を吊り上げると自分の鞄の中からプリントの束を取り出した。

「ユキヒロ、お前は残って自習を先導しろ。このプリントを配布し授業が終わったら提出。職員室の俺の机に届けに来い」
「えっ?」

 勇んで出て行こうとした彼女の足が止まる。

「クックック! それじゃ任せたぜ。俺の言葉に惑わされずに自分の問いを忘れなかったのは褒めてやるよ」
「はっ? あ、あのバロネス先生?」
「しっかり自習してろ」

 状況についていけないあやか以下生徒一同を置き去りにバロネスは教室を去っていった。

 彼女が『遊ばれていた事』に気付くのはこの五分後の事である。


 学園長室

「さてジジイ、色々と言いたい事はあるがまずは報告だ。ネギとバカが六人。図書館島で行方不明だとよ」

 実におざなりで適当な態度で報告するが学園長はその事を咎めるわけでもなく、己の顎髭を撫でながら思考に耽り始めた。

「ふむ。既に聞き及んでおるよ。しかし意外に早かったのぉ。と言うかネギ君が巻き込まれるのは予想外じゃったわ」
「あー、『意外に早かった』だ? つまりてめぇ、誰かしらがあそこに侵入する事は予測できてたってのか? 頭を良くする魔法の本とやらを手に入れる為によ」

 老人の独り言のような呟きの内容を聞きとがめ、眉間に皺を寄せながら問い返す。
 彼はそんなバロネスの態度に軽く頷くと話し始めた。

「うむ。元々、『魔法の本』の情報は我々が意図して流している事なんじゃ」
「はぁ? わざとだってのか? なんでそんな面倒な事をしてやがるんだ……?」

 学園長の説明に理解できないとばかりに疑問の声を上げるバロネス。

「まぁ話は最後まで聞け。まずこの学園には図書館探検部というサークルがあっての。それらは学園の秘境とされている図書館島の内部を全て知り、制覇しようという目標を掲げた団体なんじゃ」
「暇人の集まりだな。で?」

 身も蓋も無い突っ込みを入れて、先を促す。

「魔法の本の存在を意図的に流した目的はの。彼らの目的意識をそれとなく誘導する為じゃ。魔法の本という存在を噂という形で流布し、彼らの意識の片隅にでも認識させる。そうする事で彼らにわかりやすい目標を与え、結果的にそれ以上の深入りを避ける。そういうワケなんじゃよ」
「……つまり図書館島の内部を全て知られると厄介な事になるから当たり触りのない表面的で実害の及ばない部分の情報をそれっぽく流す事でそちらに目を向けさせ、本当に隠したい部分を目に付かなくしているってワケか?」
「その通りじゃ」

 彼の解釈にゆっくりと頷く学園長。
 だがバロネス自身の表情にはまだ彼への疑念が残っていた。

「納得できねぇな。なんで、んな面倒な真似をする? その探検部とかいう団体を潰せばそれで済む事じゃねぇのか?」
「規模が大きすぎるんじゃ。中、高、大合同のサークルじゃぞ? 所属している人数は熱心な者だけでも三百人以上おる。そこまで大きくなった団体を解体するのは容易な事ではないんじゃ」
「だが出来ないわけでもねぇだろう。やろうと思えば出来るはずだ。最悪、魔法って手もあるしな。そのサークルの関係者からやる気を削ぐ、とかいっそ記憶を改竄しちまう、とかな。他にも幾らでも手があるだろうが」

 指折り数えて対処法の例を挙げていく彼に学園長が眉を潜める。

「……そういう強行手段はタブーなんじゃよ。それに、じゃ。仮に解体したとしても個人単位で調査する者が出てくるじゃろう。今は団体として一つの意思の元に行動しておるがこれがバラバラになると対処が面倒な事になるんじゃよ。個人と言うのは権力的な側面では弱いが代わりに自由が利く。我々としては団体としてまとまっている方が対処しやすいんじゃ」
「………(一応の筋は通ってるがどうにも全部話してるって感じはしねぇな。なんだ? 何を隠してやがる?)」

 老人の説明に未だ納得できず顔を顰めたまま黙り込む。

「……まだ疑っとるな?」
「当たり前だ。全部、話さねぇヤツをどう信用しろっつーんだ? 疑われたくねぇなら洗いざらいぶちまけろ」
「むぅ……」

 唸り声を上げて、学園長も黙り込んでしまう。
 部屋は中に人がいるとは思えないほど異様な静寂に包まれていた。

カッカッカッカッカッカッ!!

 だが静寂であるが故に外からの音はとても良く響く。
 二人は徐々に近づいてくる乱暴とも言えるその音に同時に呟いていた。

「あん?」
「足音?」

 そう、足音だ。
 だんだんとこちらに近づいてくるのがわかる。
 一体誰が? と二人が思うのと同時に。

バタンッ!!

 ノックも無しにドアが勢いよく開かれた。

「学園長!」

 現れたのは遠目からでも分かるほどの褐色肌に白スーツの男、魔法教師である『ガンドルフィーニ』だった。

 彼はバロネスには一瞥をくれるだけでその横を通り過ぎ、学園長が付いている机に自身の両腕を叩きつける

「なんじゃなんじゃ? ガンドルフィーニ君、一体何が起こったんじゃ?」
「なんじゃではありません! 図書館島に賊が侵入したというお話を聞いていないのですか!?」

 よほど焦っているのかスーツの乱れを直す事も無く、普段は余り見られない乱暴な口調で詰問する。
 そんな彼の言葉に学園長は首を傾げた。

「賊じゃと? 昨日の内に2-Aの子達が何人かあそこに入り込んだ事ならとっくに知っとるぞ? 孫もおるしの」

 最後の方に妙な孫バカさを見せながらガンドルフィーニを落ち着けるようと犬でもなだめるかのようにゆっくりとしゃべる学園長。
 だが彼の方は学園長の言葉に苛立たしげに顔を歪めると声を大にして叫んだ。

「違います! その件とは別に完全な部外者があの場所に侵入したのですよ!! 恐らくはメルキセデクの書を狙っているという例の盗賊、『ハンター』です!!!」
「なんじゃと!?」

 目を見開き、椅子を後ろに倒しながら立ち上がる。

「何故、今の今まで気付かなかったんじゃ!?」
「恐らくはゲート(転移魔法)だと思われます。この学園の結界に引っかからずに侵入するほどの隠蔽能力などにわかには信じがたい話なのですが……」
「実際に起きている事態じゃ。信じないわけにも行くまい。じゃがそれほどの隠蔽能力を持つ敵の侵入をどうやって知る事が出来たんじゃ?」

 学園長の問いにガンドルフィーニは沈痛な面持ちを浮かべながら告げる。

「一般の警備員が二名、図書館島に程近い植木林で気を失っているところを発見されました。彼らからは魔力の残留が確認されていました。恐らく自分たちを目撃した記憶を消したのだと思われます。
ですがずいぶん荒いやり方で記憶を抹消されたらしくその二人は半ば植物人間のような有様で、記憶の復元なども不可能に近い状態です」

 深刻な事態に学園長は冷や水を浴びせられたかのように冷静さを取り戻した。
 自分が取り乱してどうすると言い聞かせ、ゆっくりと椅子に座りなおし組んだ両手に顎を乗せて考え込む。

「……これは結界を信用し過ぎていたようじゃな。仕方あるまい……バロネス君」
「あん?」

 事態の推移を静観していた男は学園長の次の言葉を半ば予期した上で笑みを浮かべていた。

「済まんが授業は自習にしてくれ。そして君にはすぐに図書館島に向かってほしい」
「何をしろってんだ?」

 わかっていながらあえて問い返す。
 彼はプロフェッショナルだ。
 そして彼は依頼とはきっちりと本人の口から聞き出し、その上で承諾する物だと考えている。
 これはその理念に基づいた上での言葉なのだ。

「学園外からの侵入者の排除、メルキセデクの書の安全の確認。この二つを改めて依頼しよう」
「侵入者の排除……生死は?」
「問わん」

 短いやり取りを終え、最後に盛大に口元を歪めると彼は学園長室を後にする。

 この采配に不満を抱いているのだろうガンドルフィーニはやはり不満を顔に出していたが文句は言わなかった。
 今はそれほどに切羽詰まった事態なのだ。
 手段など選んでいられない。
 勿論、彼一人で仕事をやらせる程に信用もしていないのだが。

「学園長、彼は何を仕出かすかわかりません。誰かしら監視をつけるべきだと思います」
「わかっておるよ。既に三名と連絡を取っておる。図書館島で彼と合流する手筈じゃ」
「誰を選出したのですか?」
「刀子君、龍宮君、そして……刹那君じゃ」
「なっ!?」

 余りと言えば余りな組み合わせに驚愕の声が上がる。

 それも当然だろう。
 刀子はまだしも他の二名は一度、彼と敵対し敗れているのだから。

「心配せずともバロネス君は気にせんよ」
「そうではありません! 確かに彼のあの傍若無人な性格なら気にしないでしょう。ですが相手までそうとは限りません。一分一秒を争う今回のようなケースで仲違いなどしている時間はないんですよ!?」
「重ねて言うが心配はいらん。彼はプロじゃからな。……それに現在、動ける者の中でそれなりの腕を有しているのは彼女らだけじゃ。残った者は君も含めてこの騒ぎに乗じてさらに侵入してくる者たちに対処せねばならん。タカミチ君は今朝方、早々に海外出張させてしまったからの」
「……どうなっても知りませんよ!」

 そんな捨てセリフを残してガンドルフィーニは学園長室を出て行った。

 一人残された学園長は窓から振り注ぐ日光をまぶしそうに見つめながら囁く。

「バロネス君、『君の力』を見せてもらおう。最悪の場合、君らには大量の書物と一緒に地下に沈んでもらう事になるのじゃから……」

 老獪なる翁は、その顔から全ての表情を取り払った冷徹な面持ちのまま目的地に向かっているだろう異世界の者に言葉を投げかける。
 察しの良い彼が失敗した時の自分の末路を予測しているだろうと半ば確信して。


あとがき
更新しました。紅(あか)です。
今回はネギらの行方不明を受けた学校側をメインに話を作りましたがいかがだったでしょうか?
あやかとの絡みなどがそれっぽく書けているかイマイチ不安なのですが、彼女らしいと感じていただければ幸いです。
このペースで行くと図書館島編はかなり長くなりそうです。
勃発編でこれなのですから解決までのネギらの動向と合わせると結構な話数がかかる事が予想できます。
可能な限り、短くグダグダにならないようストーリーを練って執筆していこうと思っていますのでこれからもよろしくお願いします。

皆様からのご意見、ご感想など心よりお待ちしています。
それではまた次の機会にお会いしましょう。

時計が刻む物語 時計が刻む物語 第二十一・五話

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