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時計が刻む物語 第二十三話(×足洗い邸の住人たち オリ有り) 投稿者:紅(あか) 投稿日:11/02-19:55 No.1547  

時計が刻む物語
第二十三話  『図書館島 遭難及び接触編』


 今回の事件の発端とも言えるネギたちの様子。

「こ、ここはまさか幻の地底図書室!?」
「地底図書室!?」

 夕映の言葉に意味も分からず驚嘆するバカレンジャーの面々。

 嘘のように高い天井と降り注ぐ昼間の太陽のような光。
 それを支えているのは冗談のように太い木の数々。
 そして目の前に広がるのは湖とそれに浮かぶように、あるいは沈むように散乱する本棚。
 じっと目を凝らしてみれば奥の方に遺跡のような建造物が見える。
 ここが地下である事など忘れてしまいそうになるようなそんな光景だった。

「夕映。なんやのん、それ?」

 常識外れな周囲の景色を一望しながらいつも通りのおっとりとした調子を崩さずに質問する木乃香。
 現在進行形で遭難しているというのに大した胆力である。
 単にマイペースというだけかもしれないが(それでもこの状況で自分のペースを崩さないのだから大したものである)。

「地底なのに暖かい光に満ちて数々の貴重な本が置かれているという……本好きにとってまさに楽園と言う幻の図書館」

 授業では決して見せない年相応に輝いた瞳で木乃香の問いに答える夕映。

 そんな彼女の様子など気にせず、「へーー」などと相槌を打ち、あまつさえ「図書室しては広いなーー」などとコメントできる木乃香はやはり大物だろう。

「ただし、この図書室を見て生きて帰った者はいないとか……」

 そんな木乃香の相槌に気を良くしたのかノリノリで皆のテンションを下げるような言葉を言い放つ。

「えーーっ!?」
「じゃなんで夕映が知ってるアルか?」

 そんな彼女の言葉を完全に鵜呑みにし、本気で涙目になりながら悲鳴を上げるまき絵。
 勉強ではまったく使われない脳細胞が活性化でもしているのか的確な突っ込みを入れるクーフェ。

「……とにかく脱出が困難である事は確かです」

 先ほどまでの高揚していた様子が嘘のように素面に戻る。
 真剣みに欠けるが現実的な物言い。
 その他の面々もそんな彼女の言い回しにようやくこの状況に対して明確な危機感を抱いたようだ。

「ど、どうするアルか? それでは来週のテストに間に合わないアルよ!!」
「それどころか私たち、このままおうちに帰れないんじゃ……? あの『石像みたいなの』もまた出てくるかもだし!!」

 慌てふためくクーフェと自分が抱いてしまった最悪の憶測に顔を真っ青にするまき絵。


 彼女の言った『石像みたいなもの』というのは図書館島の防衛装置の一つである『動く石像(ゴーレム)』の事である。
 彼女たちは裏口から中へ侵入した後、幾多の罠を越えて目的である『魔法の本』の安置室にまで到達。
 噂など宛にはならないと心のどこかで思っていた面々の前には魔法使いの間では知らぬ者などいないほど有名な『メルキセデクの書(ただし偽物)』が確かに安置されていた。
 だが喜び、勇んで本を取りに行った彼女らはゴーレム二体に足場を破壊され、ここまで落下してしまったのだ。
 それだけを聞けば彼女らが被害者のように聞こえるが元を辿れば原因は彼女らの公共の場への不法侵入なので自業自得である。
 おまけに直接的な原因がツイスターゲームによる敗北では同情の余地はあまりない。
 ゲームの敗北の結果が遭難というのは罰というには少々度が過ぎているが。


 不安が伝播したのか他のメンバーの顔色も悪くなっていく。
 次第に暗くなる彼女の雰囲気。
 なんとかしなければと思ったネギは息を吸い込み、皆を励ますべく声を上げた。

「み、皆さん! 元気出してください! 連絡係ののどかさんやハルナさんが異常を察知して助けを呼んでくれてるはずです。そ、その、根拠はないですけどきっとすぐに帰れますよ!! あきらめないで期末に向けて勉強しておきましょう!!」

 この中で最も年の小さい子供の突拍子もない励ましに一瞬、その場にいた全員が静まり返る。

 そして次の瞬間。

「べ、勉強~~~!!!?」

 爆発した。

「………」
「プッ、アハハハ! この状況で勉強アルかーーっ!?」

 心を覆っていた不安を打ち消すように笑みを浮かべるクーフェ。
 まき絵もその横で笑うのを堪えている。

「は、ハイ! きっとすぐに出られますから!!」
「なんかネギ君、楽観的で頼りになるトコあるな~~」

 広がっていた暗い空気はいつの間にか散り、面々の顔には自然に笑顔が浮かんでいた。
 ただ一人を除いて。

「………」
「アスナ? どないしたん?」

 傍目から見ても意気消沈している少女。
 普段の明るさなどなど微塵も感じさせない彼女の様子に気付いたのはこの中で最も付き合いの長い友人だった。

「え? あ、ああ、うん。……なんでもない」
「そ~か? なんや暗いえ? いつものアスナらしくないわ」
「あ、あははは……大丈夫だって。ほら、この通り!」

 いつものほほんとしている友人の鋭い指摘に心配かけまいとムリヤリ身体を動かして元気さをアピールする。
 木乃香は何かあるとは感づくもののそれ以上は突っ込まずに話を終わらせた。

「(なんや難しい事、考えてるみたいやなぁ。相談してくれへんのやろか?)」

 友人の態度にほんの少し寂しさを覚えながら。

「はぁ……(このかに心配かけちゃったわね。あ~~もう、最悪だな、アタシ)」

 明日菜がここで目を覚ましてからまったくと言っていいほど喋らなかった理由。
 遭難した直接的な原因が自分にある事へ責任を感じていたからだ。
ましてネギは自分が半ば強引に連れ出している。
 その事を責められる事くらいは覚悟していた。
 ただそれを言われるのが怖くて少しでも先延ばしにしたいから黙っていたのだ。

 ところがネギは明日菜を見ても糾弾しない。
 それどころかいつもと変わりない屈託のない笑みを浮かべてすらいる。

「明日菜さんも勉強、がんばりましょう! 絶対に帰れますから!!」

 責められる事を怖がっていた自分が馬鹿みたいに思えた。

「(まぁ実際に馬鹿なんだけどね、アタシ……)
 ありがと、ネギ。……ごめんね」
「? アスナさん、何か言いましたか?」
「ううん、なんでもない。よっし、そうと決まったらさっそく……!」

ぐ~~~~!!

 声を張り上げようとした明日菜の気勢を削ぐ様に空腹を告げる轟音が周囲に響き渡った。
 全員の視線が自身の腹部に集中する。

 彼らは何度か小休止を挟んでここまで来たのだがおにぎりやサンドイッチといった軽めの物しか食べていない。
 ゴーレムにここまで落とされた際に全ての人間が気絶していたので具体的な時間の経過まではわからないがさすがにもう限界だったらしい。

「あはは、勉強の前に……」
「「「食料捜しだーーーっ!!!」

 元気一杯に駆け出すバカレンジャーとそれを追いかける木乃香。

 ネギも遅れまいと駆け出す。
 すると彼が走りだすのと同時に彼の右腕が淡く光り四本のうち『Ⅰ』と書かれた線が淡い輝きを発し始めた。

「あ……」

 慌てて右腕を隠す。
 明日菜には既に魔法はばれてしまっているが、他の人間には見せられないのだ。
 万が一にも自分が『魔法使い』だとばれてしまえば彼の夢が、目標が遠ざかってしまう可能性がある。

 輝きは数秒ほどで収まり、彼の右腕にあった線は三本になっていた。

「……一つ目の封印が解けたんだ。朝日と一緒に解けるようになってるから……もう木曜の朝か」

 自分の右腕をじっと見やる。
 彼の頭に浮かぶのは副担任の姿。

「バロネス先生。明日菜さんたちを止めなかった事とこんな事になってしまった責任は僕が取ります。必ず皆で帰りますから……それまでの間、クラスの事をお願いします」

 魔法を封じられた状態では念話など当然のように出来ない。
 よって今のような独白には意味がない。
 それでもネギはなんとなく呟いていた。
 それはバロネスに届かせるというよりも言葉に出す事で自分の教師としての責任を確認しているようだった。

「よし、頑張ろう!」

 自分の頬を叩き、気合を入れ直すと彼は先に行ってしまった少女たちを追いかけるべく駆け出していった。


 このように遭難したにも関わらず存外、元気にやっていた。


「あら? こんな所にまで書物の閲覧希望者が来たのかしら?」

 彼女らが食料を捜しに向かっている廃墟のような遺跡。
 その横に並ぶように建てられていた古さを感じさせる西洋建築の館の窓から外を覗き込んでいるのは長く艶やかな髪を特徴的な巻き毛にした女性だった。
 若く見えるようでその実、長い年月を生きている事を匂わせる落ち着いた雰囲気を持つこの女性は久しぶりの来訪者とその騒々しさに笑みを浮かべていた。

「ちょうど朝食の時間になりますしおいしい食事でも振舞って差し上げましょうか」

 クスクスとその雰囲気にそぐわない子供のような笑みを浮かべ、そっと安楽椅子から立ち上がった。


 この同時刻。
 外で連絡係として残っていたのどかとハルナが教室に駆け込み、2-Aの面々とバロネスに事の詳細が伝わる事になる。

 さらに同時刻。
 ネギらが行動を開始したこの頃、二人の侵入者が着々と真の地下書庫を進行していき、目的の『メルキセデクの書(本物)』に近づいていた。




 並行して動き続ける三つの時間。
 その内、二つが到達する場所は同じ。





 床に敷き詰められた複雑な魔法陣。
 その中心にただひっそりと存在する台座。
 そこに重力を無視して浮かんでいる本が在る。

 ソレはただひっそりとその時を待つ。
 
 否。
 正確には『その本が』……ではなく。
 本の魔力を利用した魔法陣によって封じられた『存在』が、だ。

 『鬼』は静かに時を待つ。
 獲物が、『身体』が己の手の届く所まで来るその時を。


 世界の終わりを実現する『虚言の鬼』は時を待つ。

 世界を還元する役目を持つ『忘れられた神』は時を待つ。

 己が顕現するその時を。



あとがき
お久しぶりです。紅(あか)です。
リアルの生活が忙しくなり、中々更新までこぎつける事ができませんでした。
この作品を読んでくださる皆様。本当に申し訳ありません。
とにかく二、三週間を目途に更新する事を目標にこれからも執筆に励みますのでこれからもよろしくお願いいたします。

さて今回はネギたちのお話になりました。
とはいえ大体が原作通りの流れなので面白みには欠けるかもしれません。
ですがようやく次回には戦闘に突入できると思います。
長い話になりましたが物語は一つの節目に入りますので今後の展開にご期待ください。

ご指摘、ご感想などありましたらお気軽に感想掲示板にお書きください。
それでは皆様、また次の機会にお会いしましょう。

時計が刻む物語 時計が刻む物語 第二十四話

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