第四十四話『さくらとちうちう千雨さん』






「5番佐々木まき絵合格だ」

麻帆良学園体育館内に響く二ノ宮先生の声それはまき絵の選抜テスト合格の声、まき絵は桜と知世の手を取りながら大いに喜んでいた。


―――30分後、レオタード衣装から普通の服に着替えたまき絵は、桜と知世と共に寮へ戻り、亜子を連れて明日菜達の部屋へネギに合格の報告をする為で向いた。

「ネギ君ネギくーん、受かったよ選抜テストー!!!」

ネギのいる明日菜達に部屋へ行ってみるとネギは玄関前で茶々丸、明日菜と共になにやら話をしている姿が見えた。
だからまき絵はダッシュでネギに近寄りながら大声で選抜テスト合格の報告をした。

「えー本当ですかまき絵さん!」
「うんやったよネギ君!」
「おめでとうございます」
「へー丁度よかった、じゃお祝いのお茶会開こうよ」
「あ えーなーそれ」

すると明日菜の口からお茶会を開くと言う話が持ち上がり、桜達は明日菜の部屋へと入っていく。

「ネギ君・・・大丈夫?」

ふと部屋に入る際桜が気になったのは、昨日の弟子入りテストの際ネギの負った傷、ネギは顔の所々にバンソーコーを張り、左ほっぺには腫れを引かせる為のガーゼが取り付けられて見てるだけで痛々しい。

「あ・・・はい大丈夫です、それよりもありがとうございます。エヴァンジェリンさんに言って僕を弟子にしてくれたんですよね、ついさっき茶々丸さんが傷薬とお茶を持ってきてくれました」
「あ・・・いや、あれは知世ちゃんとケロちゃんのおかげだから・・・」
「そうなんですか、でもファイトさんの手加減せずに全力・・・ありがとうございます」
「ネギ君・・・」

ネギのまっすぐなその言葉、桜はファイトを出した以外自分はただ立っていただけなので何も言えない。

―――そして裕奈とアキラも部屋から呼んで来てお茶会が開かれる。
ケロちゃんはほっておくとまたぶつぶつ文句を言いそうだったので桜の部屋に茶々丸の持ってきたお茶とプラスしてお菓子を置いて説得してきた。

「でもよかったね〜、ネギ君もエヴァちゃんの弟子になれたし(なんの弟子か知んないけど)、まき絵も選抜テスト合格できたし」
「そうだね」
「うん、あれっ?・・・そう言えばファイトちゃんとパワーちゃんは呼んでないの?」
「ギクっ!」

桜はふとファイトとパワーの話を持ち出したまき絵の言葉にギクリとなる。
ファイトもパワーもちゃんと明日菜達の部屋に居る・・・部屋に居るんだけど今はカードの姿だからだ。

「ああ・・・それなら、二人は今ファイトさんは古菲と一緒に中国武術研究会の方へ、パワーちゃんの方はロボットやからちょっとメンテナンスに行っとるで」
「ふ〜んそうなんだ、しっかし強かったねファイトさん、ありとあらゆる格闘技技使うなんて一体何者なの?」
「「ギクリ」」

またギクリ、今度は桜と亜子二人そろってギクリ、さっきは亜子が何とかごまかしたが今度は二人共誤魔化す言葉が思いつかない・・・となるとやはり・・・

「ファイトさんは梁●泊と言うありとあらゆる武術を極めてしまった人達の集まる道場出身なので・・・」
「そんな道場あるの・・・凄いな〜」

知世の背後には光る目をした武人達が6人アパパパーやらチョエーやら悪人はいねーかー等と言いながら立っている様な空気が流れている。

「なあなあ、そういや桜ちゃん、まき絵の事も終わったんやしウチの魔法に関する記憶いつ消すん?」
「あ・・・・」

亜子がふと記憶の話を持ち出すと、ボケッと目を点にして固まっている桜・・・

「桜ちゃん・・・まさか忘れとったん?」
「う・・・うん」

桜はまき絵の事とかネギの弟子入りテストでついつい記憶を消すのをすっかり忘れてしまっていた様だ。

「あ・・・ゴメンね亜子ちゃん、今からでも消す?」
「うん、じゃあちょっと外でよか」

すると亜子と桜はちょっと物を取りに自分の部屋へといって廊下へと出て行く。
桜は廊下に出るとすぐに封印の鍵の封印を解除し、杖の形にした。

「じゃ・・・消すね亜子ちゃん・・・」
「なんや・・・変な感じがしてくるな、自分の記憶消すやなんて・・・・」
「ごめんね亜子ちゃん・・・」
「いいんやいいんや、じゃはよよろかー」
「うん・・・」

桜は亜子に言われると『消』(イレイズ)のカードを出した。

「彼の者の魔法に関する部分の記憶を消去せよ・・・『消』(イレイズ)!」

呪文を唱えカードを使うと亜子はなにやら光に包まれる。
そしてその光がなくなり、『消』(イレイズ)のカードが元のカードに戻ると、桜は一言・・・

「亜子ちゃん大丈夫・・・?」

・・・と亜子に話しかけた。

「桜ちゃん・・・どないなっとん・・・記憶消えてないで・・・」
「ほぇ?・・・えっ・・・どうして!?」

亜子から帰ってきた言葉はとんでもないものだった。
桜は亜子の記憶が消えていないのが分かると亜子の手を引っ張り自分の部屋へバタバタバタバタ・・・勢いよく自分の部屋のドアを開けるとケロちゃんに

「ケロちゃんケロちゃん、亜子ちゃんの記憶が消えないよ!」

・・・と大声で話しかけた。

「どないしたんや桜・・・うっさいな〜よお亜子っち!」
「よおっじゃないでしょ、亜子ちゃんの記憶が『消』(イレイズ)のカード使ってもなぜか消えないのよ〜!?」
「桜首しまっとる首しまっとる・・・もうちっと落ち着かんかい・・・」

桜はケロちゃんの首を力強く振りながら上下左右にガクガクと振っている。
そんな事したらケロちゃんは話を聞こうにも聞けない。

「・・・でなんや一体そんな事件でも起こったかのような顔して?」
「それがねケロちゃん・・・」

桜は『消』(イレイズ)のカードを使ったが亜子の記憶が消えなかった話をした。

「そうか・・・う〜んなんでやろ・・・・あっ!」
「何か分かったのケロちゃん?」

少し腕を組んで考えたケロちゃんは何か分かった様で大きな声を上げる。
するとケロちゃんは手を頭の後ろにやりながら大量の汗をかき始めた。

「え・・・え〜っと・・・桜・・・わい忘れとったんやねんけどな・・・実は・・・」
「実は・・・」
「『消』(イレイズ)は人の細かな記憶消す場合は一日以内に消さんと消えんようなるんや・・・(汗)」

いつもいつも忘れっぽい性格のケロちゃん、私もいつもそれに振り回されているから慣れっこだけど・・・今度は本当に大声で驚きます。

「ええええ〜〜〜〜!!!!!!」
「ケロちゃんそんな大事な事なんで忘れちゃうのよ!」
「すまん桜、でも消す方法ならあるで・・・」
「あるの?・・・」
「亜子っちの記憶を全て完全に空っぽに消去するんや」
「えっ?」

ケロちゃんの口走ったこの言葉・・・
ケロちゃん、亜子ちゃんの記憶を全て消すなんて・・・そんな事・・・そんな事・・・

「出来るわけないじゃない!!!」
「のわ〜〜〜〜!!!」
「あ・・・ケロちゃんホームランや!」

ケロちゃんは怒り心頭の桜の魔法の杖によって野球のボールのように打たれ窓の外へと空高く飛んでいった。

「うえ〜ん、亜子ちゃん本当にゴメンね〜もう亜子ちゃんの記憶消せない〜」
「い・・・いいんやて桜ちゃん、ウチ大丈夫やから泣かんといて・・・なっ」

桜は泣きながら亜子に迫り謝り、亜子も桜に泣かれては何も言えず許すしかなかった。




―――そして何とか亜子は桜を慰めると明日菜達の部屋へ戻った。

「知世ちゃん、亜子ちゃんの記憶消せなくなっちゃったんだけどどうしよ・・・」

桜は部屋へと戻ってきてから知世に記憶が消せなかった事の相談をする。

「そうですか、それは困りましたですわ。学園長さんには記憶は必ず消すようにと申し付けられているのですが・・これはもう・・・」
「「と・・・知世ちゃん・・・?」」

知世はそう言いながら亜子の方をチラッと見て二人には緊張感が走る。

「消せなかった事を黙っていてもらうしかありませんわ」
「そうきたか知世ちゃん・・・」
「やっぱりそれしかないのね・・・」

こうなったらやっぱり黙っていてもらうしかないカードの事、桜と亜子はやっぱりそれしかないのかと呆れた。




「あれっ?・・・そう言えばネギ君と明日菜さんは?」

そう言えば亜子の記憶の事でごたごたして気づかなかったけど、部屋に戻って着てから二人の姿が見えない、その事に気づいた桜は知世に話しかける。

「ネギ先生と明日菜さんは先程夕映さんとのどかさんが見えられたのでどこかへいかれましたが・・・」
「夕映ちゃんとのどかちゃんが・・・?(まさか魔法の事・・)」
「はい」

ま さか魔法の事?・・・と桜は一瞬そう思ったが、今ははっきりと分からないのでそれは今は流して置きネギが部屋に帰ってきてから聞こうと思う桜、そしてお茶 会も終わり、ネギが帰ってきてから聞いてみるとやはり魔法の事、呪術協会の長から貰った図書館島の地図、サウザンドマスターの手がかりについての話であっ た。

「それでネギ君、ネギ君のお父さんの手がかりを確かめに行くの?」
「そうですね、どんな危険な事があるのか分かりませんしまた後日・・・と言う事で(桜さんには世話になりっぱなしだから明日の朝にでも一人で行ってこよう)」

・・・ネギは桜の手前そう言っていたが、頭の中では世話になりっぱなしである為に、明日にでもこっそり一人で行こうと決心していた。

「そうか・・・それじゃあそろそろ帰ろう知世ちゃん」
「はいですわ・・・」

桜はもうそろそろ自分の部屋に戻ろうと知世に声を掛ける。
・・・だが、その時桜の目にネギが徐にパソコンを開いているのが見えたので何をしているのかと思いネギに声を掛けてみた。

「ネギ君、何してるの・・・ってネギ君これ?」
「ん?・・・どうしたんですか桜さん?」

桜の目に飛び込んできたのはパソコンの画面に出力された『ちうのネットワーク』と書かれたネットのホームページ、真ん中には可愛らしい女の子の画像があって、日記やらチャットやらの文字が見える。

「か・・・可愛い〜ネギ君、誰なのこの子?」

普通10歳の子供がこんなネットアイドルのホームページを見ていたら引くのだが、1999年から来てる&パソコンの事は良く分からない桜にとっては只の可愛らしい女の子の画像が乗ったものにしか見えない。

「あ・・・はい、ちうさんと言って「これは長谷川さんですわね」」
「え・・・千雨さん?」

知世が女の子の画像を見た瞬間ネギが答える前に千雨だと断言してくる。
・・・だが画像の子は桜にとっての千雨とは違い、眼鏡も掛けていないし、髪の毛がピンク色に見える。

「そうですよ、よく分かりましたね、はい・・・これは千雨さんですが・・・」
「ほぇ〜そうなんだ、良く分かったね知世ちゃん・・・」
「それほどでもありませんわ・・・」

ネギもネギで千雨に口止め等されている筈なのに知世にすぐ見抜かれると素直にそうですと答える。

「でも千雨さん、確かネットって言ったっけこんな所に自分の写真出して何をしてるんだろ?」
「僕も良く分かりませんが、これはネットアイドルと言うみたいですよ。千雨さん日記とか凄い分量で一日の入場者数も多い、僕もファンなんですよ」
「へぇ〜凄いんだね千雨さんって・・・」

しつこく言いますが10歳の男の子がこんなサイト見ていたら引きますが、桜はパソコンと言うものをあまり知らない女の子、判断基準は全く無くネギの話を聞いて感心すらもしている。
注)作者もネットやり始めたのは中学3年生位になってからです。<by2000年>

「それじゃあネギ君、私達そろそろ行くね」
「それではネギ先生さようならですわ」
「はいさようなら、桜さん、知世さん」

桜と知世は少しちうのホームページを見るとそろそろ時間も遅くなっている事もあり二人はネギ達の部屋を後にする。

「・・・千雨さん可愛かったね」
「そうですわね、パソコンも4年も立つとあれだけハイスペックになるなんて関心ものですわ」
「知世ちゃん・・・私パソコンとか本当に良くわかんないんだけど・・・」

桜達はいって見れば1999年の人間、よくてWIN●OWS98時代、だが2003年にもなるとWIN●OWSXPと4年分高性能になって大道寺コーポレーション社長の娘の知世も浮かれ気分になってくる。

「あ・・・そうだ、ちょっと千雨さんの部屋に行ってネットの事とか聞いてみようよ、今日の事本当に本人かどうかも聞きたいし・・・」
「それは良いですわね桜ちゃん、それでは参りましょう・・・」

そうと決まれば二人は一直線に千雨の部屋(ルームメイト不明作者の感だと夕映)へと歩いていく。
・・・だが当の本人ネットアイドルのちうちゃん事長谷川千雨はと言うと、

「いえ〜い皆元気〜ネットアイドルのちうだっぴょ〜ん」

まことに運が悪い事にネット更新中&コスプレして撮影中であった。

「く〜くっく・・・今日はどのコスプレをしようかな、っとその前にライバルのサイトにでもハッキングするかそれとも・・・ぶつぶつぶつ・・・・」

今日もネットアイドルとして暴走気味なちう事千雨、パソコンが大得意な千雨はプログラムも組めるしハッキングだってお手の物だ。

「じゃあ今日のコスチュームは、猫耳付けたメイドさんコスプレなのら」

まったくもってちうバージョンの時と千雨の時とは話す口調の全く違うし、しかもコスチュームをものすごい速さでも着替えている。

―――そして、部屋に備え付けた簡易スタジオみたいな物で写真パシャパシャ、写真を撮るときはちゃんと眼鏡を外しており、その可愛らしさは外へ出ていたら誰が見ていても千雨だと気づく人は居なさそうな位だ。

だが、さっきも言ったが今ここへは桜達が向かっている。
そんな事はつゆ知らず写真を撮っている千雨は次の瞬間固まる事になった。

「千雨さんいますか〜」
「ごめんくださいですわ」
「なっ!?・・・」

イキナリ唐突に部屋のドアを開けてしまった桜、そうまた千雨はネットやコスプレに集中するあまり部屋の鍵を掛け忘れていたのだ。

「な・・・なんで木之本と大道寺がここに・・・」
「え・・・何って、部屋の前に来ると千雨さんの大きな声が聞こえたから」

し かも部屋の外まで丸き声だった千雨の声「ちうだぴょ〜ん」、それだと桜も千雨は部屋の中に居ますと言っている様なものなので、桜は了解なしに千雨の部屋の ドアを開けたのだ。それでもノック位しろと言う人に一つ、3−Aクラスにはかって知ったる他人の家みたいな感じて何も言わずにズカズカと部屋に入ってくる 人(特にハルナや朝倉)も多い事から、桜もその癖が少しうつり勝手に開けたのだ。

「え・・・え〜私はちうだっぴょ〜ん、千雨ちゃんではないぴょ〜ん!」

あまりのイキナリの事に気が動転したのか千雨はちう言葉で自分は千雨ではないと言う。
だがここは千雨の部屋であるのだからそんな嘘まき絵ですらだませそうに無い程、そんなだから桜も騙せなかった。

「それよりも千雨さん可愛いです〜」
「だから私は千雨じゃ「ネギ君達の部屋で見たネットの写真通りだね」何!?」

千雨が桜達を騙そうとしている中で桜は話しを進め千雨はそれに驚愕する。
確かクラスの中で唯一千雨がちうだと知っていたのは先生であるネギ一人、と言う事は桜の言葉から解釈すると、口止めをしたにも関わらずネギは桜達に千雨の正体をバラしたと言う事になる。

(あ・・・あのガキ教師が〜〜〜あれだけ私がネットアイドルしている事を黙ってる様にと言っといたのに〜〜〜!)

もうすでに千雨の心はネギに対する憎悪で一杯、だがそんな事を桜は続いて千雨に話しかけた。

「このコスチュームも可愛らしいですね、これは千雨さんが作ったんですか?」
「あ・・・ああ・・・って何勝手に「私も桜ちゃんの衣装を作ってますがすばらしいですわ」・・・くくく・・・そうだろそうだろ・・・」

千雨はそこいらに置いてあったコスチュームを桜が触っているのを見て止めようとするが、知世のお世辞によって熱っぽくなり思わずうんうんと首を上下に振ってしまう。

「ん・・・そういや、お前等もコスプレとかしてるのか?」
「あ・・・はい、良く私が桜ちゃんのコスチュームを作り、桜ちゃんに着ていただいて、桜ちゃんをこのビデオテープに撮っていますので」
「なるほどな・・・(汗)」

知世の回答に直感的に百●を感じた千雨は汗を流しさらりと話を流す。

「あの千雨さん、一ついいですか?」
「なんだ?」
「今の千雨さん見ても分かるんですが、なぜ眼鏡じゃなくってコンタクトレンズを付けないんですか?」
「そうですわよね、そちらの方がずっと可愛らしいですわよ」
「う・・・」

千雨は痛い所を付かれた。自分は視力がいつもパソコンやらインターネットをいじくっている癖して1.2もあり千雨がいつも掛けている眼鏡は度数の全く入っていない眼鏡。
だからコンタクト付けなくても良いし眼鏡だって要らない・・・だがしかし、千雨と言う人間は眼鏡を掛けないと人前に立てない某幼稚園の先生とは全く逆の人間だ。

「え・・・えっとほら、私はコンタクトレンズは合わないんだ。前に付けようとは思ったんだけど一回取り付けるのに30分も掛かってしまってな、それからずっと眼鏡なんだ」

千雨は桜と知世を誤魔化す為に適当な嘘を並べる。
桜はそうなんですかと頷いているが、知世は全く頷きもせず千雨の方を見ている。

「な・・・なんだ大道寺・・・・」
「千雨さん・・・その話本当の事なのでしょうか・・・」
「ほ・・・本当の事だよ・・・」

知世にそんな嘘も通用するわけも無くもう一回問われると千雨は汗だらだら、右へ左へ視線をずらしている。

「千雨さん・・・私の目をじっと見てくださいな」
「じっとか・・・」

知世は千雨の目をじっと見ている。
これは脈拍や瞳孔の開き具合で嘘を見分ける嘘発見法、かの有名な探偵アニメでキャラクターが使っていた嘘発見法、知世がどこでこんなテクニック身に付けたのかは知らんがそれ以前に目の泳ぎまくっているので、もうすでに千雨の嘘は知世にバレバレである。

「・・・桜ちゃん、千雨さんの眼鏡伊達眼鏡みたいですわ」
「え・・・千雨さん伊達「ちが〜〜〜〜う!!!」」

知世は千雨の嘘を見抜くとすぐ伊達であると言う事を推察し桜に伝えるが、千雨はもうバレているのに関わらずしつこく大声で否定する。

「でも知世ちゃん、千雨さん否定してるよ?」
「ああ・・・違う絶対に違う断じて違う、大道寺も一体何を言い出すんだよまったく・・・」

この期に及んでまだ白を切りとおす千雨、だが桜ちゃんは騙せれても遠山の知世さんは騙せない。

「あ〜それでは桜ちゃん、この眼鏡掛けて見てくださいな」
「え・・・これ千雨さんの「って大道寺コラ、いつの間に私の眼鏡を!!!」」

千雨の目の前にはいつの間にやら自分の眼鏡を持ち桜に手渡してる知世の姿、だんだん千雨には知世の姿が悪魔のように見えてきた。

「木之本、眼鏡なんて目の良い奴が掛けると目が悪くなる掛けんな「あれ?・・・なんとも無い」ってすでに掛けてんじゃね〜!!!」

千雨が止める様とするがすでに桜は千雨の眼鏡を装着している。
桜は全くきつく無いのにあれっ?・・・と感じているがそれはそのはず、千雨の眼鏡は伊達眼鏡なのだから・・・

「千雨さんこれって・・・」
「すまなかった木之本、大道寺、実は言うとこの眼鏡は伊達で私の視力は1.2なんだ!」

こうなっては白を切ることも出来ず千雨はふかぶかと土下座まで使用かと言う勢いで桜と知世(特に後者の方)に頭を下げている。

「え・・・どうしたの千雨さん、それよりどうして嘘なんか?」

桜は騙されたことに怒りませず親身になって千雨の嘘を聞こうとする。

「じ・・・実は私眼鏡無しじゃ人前に出る事ができねぇんだ」
「え、眼鏡を?」
「ああ、眼鏡を掛けずに人前に出るのは恥ずかしくてな、この通りだ木之本・大道寺(特に後者)、他のクラスのやつ等にはこれだけは話さねぇでくれ(後ネットの話)」

深々と頭を下げる千雨はとうとう土下座までしてしまった。

「ち・・・千雨さんイキナリ土下座なんて頭を上げてください!」

当然こうなると人の良い桜は驚愕しオロオロとなる。
だが次の瞬間桜は千雨の左肩に右手を置いて落ち着いた表情で千雨に話しかけた。

「千雨さん、大丈夫です。私も知世ちゃんも誰にも言ったりはしません。―――あと人前に出るのが苦手なら努力して克服すれば良いじゃないですか、私も知世ちゃんもか応援しますので苦手ならがんばって克服してください」
「木之本・・・」

桜は千雨にそう言いながら手を差し伸べ千雨を立ち上がらせる。
すると桜に励まされていると千雨の目には桜は天使な様に見えてきた。

「木之本・・・おめえは良い奴だな」
「・・・桜ちゃんは誰にでも優しい天使の様な方ですから」
「大道寺・・・(私の嘘見破ったのてめえだろ)」

・・・千雨の目には知世の姿が悪魔の様に見えてきた。




そして何とか千雨を励まし終わると桜は千雨にパソコンやネットの事を教わる事ができた。

「・・・でここをこうするとこうなる訳だ・・・分かったか木之本?」
「あ・・・うん、分かったよ千雨さん」
「ところでな木之本、木之本の所はパソコンとか持ってんのか?」
「え・・・いえ持ってませんが?」

桜は当然パソコンなんて持ってないし、自分の世界の自分の家でも持ってるのは父の藤隆だけで桜は触るのは殆ど初めて見たいな物だ。

「じゃあパソコンに興味あるなら一台買ってみたらどうだ金があったらの話だがな」
「お金・・・」

お金・・・桜はそういわれるとはっと学園長から貰った30万円の事を思い出した。

「千雨さん、パソコンってどれくらいのお金が必要なのかな?」
「ん?・・・まあ色々あるが一般家庭とかになると大体一台相場が15万〜25万って所だな、木之本金持ってんのか?」

15万円〜25万円、今桜達が出せるお金は生活費を除くと20万円なので丁度よかった。

「・・・知世ちゃん、良いかな?」
「はい、私も前々からパソコン欲しかったのでよろしいですわ」

桜はちゃんと知世の分と言うのも頭にあったので知世に少し聞くが、知世は自分もパソコンがほしかったので全然OK、知世が了承すると桜は20万円の話を千雨に話した。

「あの、千雨さん20万円位ですけど、どれ位の物が買えるんですか?」
「20万円か、それなら余裕で大体の物が買えるな・・・なら私が直々良いもの選んでやるから今度にでも買いにいくか?・・・ネットとかも私がいろいろしてやってもいいし」
「え・・・本当ですか、ありがとうございます千雨さん!」

桜は喜び千雨の手を両手で握る。

「い・・・いやおめえには私の秘密黙っていてもらわにゃならんしな」
「顔真っ赤ですわ千雨さん」
「大道寺はだあってろ」

桜に感謝されると千雨は照れて顔がまっかっかに赤くなってしまう。
これで桜の30万円の重圧が消えて開放される桜、もうすでに桜の心の中はルンルン気分になっていった。



―――それから10分後、桜は自分の部屋へと戻ってきて布団に包まって鼻歌まで歌っている。

「やったよ〜やったよ〜これで30万円の事なんか気にしなくてすむよ〜♪」
「桜ちゃん可愛らしいですわ〜」

その桜のめちゃくちゃ可愛らしい行動をやっぱりビデオに撮っている知世、するとケロちゃんが桜に話しかけた。

「なんや桜めっちゃ機嫌がええな〜」
「うん、ついさっきは杖で飛ばしてゴメンね〜ケロちゃん♪」

ふよふよと浮きながら布団に包まりながら寝転がる桜の横に移動するケロちゃん、桜はものすごく機嫌が良くもうすでにお昼の事は気にしていない。

「あ・・・桜、そういやわいな飛ばされた後瀬流彦の兄ちゃんと会ってな、その時また出てきたモンスターを倒してんで」
「え・・・ケロちゃん・・・」

その時桜に悪い予感が過ぎり、少し固まったがケロちゃんは話を進めた。

「ちょいっと瀬流彦の兄ちゃんがモンスターに押されとったからな、わいが加勢してわいの炎でぶあ〜っとやっつけてん、桜にも見せたかったでわいの勇士を」
「まあケロちゃんそれは良い事をしましたね」
「・・・でケロちゃん、そのモンスター一体ランキングいくつだったの?」

知世はケロちゃんを褒めるが、悪い予感がした桜は固まったままケロちゃんにモンスターの強さのランクを聞いてみる。

「いや〜瀬流彦の兄ちゃんもわいの事褒めてくれたで〜、たしかランクAやったっけかな〜瀬流彦兄ちゃんも弱いで、あんなんに押されとったんやからな・・・桜・・・?」

Aランク、そう言えばAランクの報奨金は200万円・・・桜はケロちゃんが話すとそのまま固まり10分以上そのまま動く事も無かった。


―――ちなみに、次の日桜は学園長から呼び出しを食らい100万円(半分の100万円は学園長の懐へ♪)を手渡されたのは言うまでもなかった。


学園長は言う、その時、なぜ桜がお金を貰えるというのにこんなにも石化しているのかさっぱり分からなかったと・・・



<第四十四話終>



『桜&千雨による次回予告コーナー』

「ほぇ〜ち・・・千雨さんどうしよ〜今度は100万円だよ〜!」

「おいおい落ち着けよ木之本、てめーはなんで金貰えるってのにそんなに動揺してんだ!」

「だ・・・だって今度は100万円だよ、私こんな高額なお金持った事ないよ〜」

「おめえは欲ってもんがねぇのか欲ってもんが?」

「欲ならあるよ、新しい通学鞄ほしいし・・・」(←CC桜本編プロフィール参照)

「木之本・・・てめえは100万円貰っていてそれ位しかうかばねぇのか?」

「・・・うん」

「・・・ならこの世の恵まれない人達の募金とかに寄付でもしといたらどうだ?」

「あ・・・それ良いかも」

「おい木之本、冗談だから冗談・・・てめえはどこまでお人よしなんだコラ!」

「じゃあ何に・・・」

「私に言った20万円に+してもうちっと良い最新式の高性能パソコンを買うとか、女ならちょっと高いアクセサリーを買うとか色々あるだろ」

「・・・そんなに最新式の買っても私には猫に小判みたいだし、子供の私にはそんなに高いアクセサリーは早いよ」

「・・・なら大道寺とかに相談してみたらどうだ、あいつたしか良いとこのお嬢だっただろ」

「うん・・・知世ちゃんと相談してみる・・・」

「じゃあそろそろ次回予告するぞ」

「さて次回のタイトルは・・・」

「『さくらと図書館島の地下の人』です」

「・・・なあ桜、これちょっと次回の話ネタバレ要素に入るんじゃねーか?」

「うん、本編の単行本情報によると新刊は4月に発売するらしいから次回はちょっとネタバレになるね」

「単行本派の奴には悪いがこの作者はマガジン派だからな」

「じゃあ次回は話の本編始まる前に【ネタバレ注意】・・・を張っておかないと」

「そうだな、ちゃんとこれだけはしておかないと知らないで呼んだ奴にはミッシングリングが起こる場合があるからな」

「あ・・・そろそろおしまいの時間ですね次回の司会者はその地下の人さんとケロちゃんです」

「読者の皆も単行本派の奴は次回良く注意するんだぞ」

「それではそろそろお時間ですので、次回も桜と一緒に〜」

「「レリーズ!」(私もするのか?)」



<終>


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