第四十九話『さくらと小太郎とネギの過去』




夜の麻帆良学園校舎、朝は生徒達で賑わっていたのだが生徒達が下校してしまった後は誰も居ない静かな建物である。

夜の学校の校舎内と言えば『学校の怪談』などと言われちょっとした怪談スポットになったりもしているが、その当の幽霊さえも怖くて近くの明るいコンビニ等に行ってしまったいる。

そんな校舎の学園長室、学園の校舎内に残っている数少ない人間の一人である麻帆良学園学園長、近衛近右衛門はふと鳴り響いた学園長室の電話を取り応対していた。

「おお、詠春か？」

電話の相手は木乃香の父親であり関西呪術協会の長近衛詠春、こんな夜の遅い時間になぜ関東魔法協会と対立する関西呪術協会のトップが関東魔法協会のトップに電話を掛けてくるのか、それはちょっとした事情と言うものがあった。

「実は少々問題が起こりまして、それ程心配はないと思うのですが。　今日の夕方説教部屋から犬上小太郎君が脱走しました」
「なんじゃと、脱走！？」

犬 上小太郎、それはネギ達３−Ａが修学旅行に京都へと行っている際に天ヶ崎千草に雇われネギ達と敵対する関係であった男の子、『人』と『狗族』とのハーフで 獣化すると狼男の様な風貌となり、前にネギ達はこれを見たが、その時はキャプテントンボーグによる格闘ゲーム対決だった為に獣化してすぐにライフ切れでネ ギに敗北、正座を三時間させられていたと言う。

「はい、もう少しで彼も説教部屋から出られる筈でしたのですが、どうしても早くネギ君と勝負の決着を付けたかったようでして・・・」
「なら大丈夫じゃろ問題なかろうて、まあ麻帆良学園の方へ来た時には連絡するわい」
「すみません、ご迷惑おかけします」

後もう少しで普通に出られた所だが小太郎も子供、待ちきれずに脱走してしまったのだろう。
だがこの二人からしてみれば小太郎の行く先等分りきっているのでそんなにたいした問題ではなかった。




次の日の麻帆良学園女子中等部３−Ａのお昼休み時間、桜と知世はカフェテリアでエヴァと茶々丸と共に昼食を楽しんでいた。
しかし、茶々丸は物を食べる事、飲む事ができないので茶々丸様に頼んだものを食べているのはケロちゃん、昨日言ったように桜は今日ケロちゃんを麻帆良学園へ連れてきていたのだ。

「そうですか、本日ネギ先生の体調がよろしくないと思われましたがその様な理由がありましたの？」
「そうなの、エヴァちゃんが調子にのってタランチュラや大蛇やサソリ、怪獣なんかも出すからおかげで今日ネギ君フラフラじゃない」

今日のネギは昨日のエヴァによる無茶苦茶な修行のおかげでフラフラ状態だった。
それは誰から見ても分る程で３−Ａクラスの生徒大半から心配の目が向けられている程だ。

「しかし、私も今日はちょっとフラフラだ。今でも少し大蒜や葱が瞼の上にチラつく」
「それはエヴァちゃんの自業自得だよ」

その無茶苦茶な修行の後に桜から手堅いお仕置きを食らったエヴァも少しフラフラ状態、昨日はエヴァも桜を本気で怒らせてはいけないと身にしみて分った日であった。

「しかし、エヴァンジェリンちゃんの別荘ですか、私も行ってみたいものですわ」
「ああ、別に来ても構わんが・・・女には勧めんぞ、歳をとるからな」

『浦島太郎の竜宮城と逆』という事はドラ●ンボールで言う精●と時の部屋と同じように別荘内で一日入っていたとしても外では一時間しか経過していない。

・・・と言う事は外の時間で一日中使っていれば中では２４日、二日使っていれば４８日と単純計算で１５日ちょっと使っただけで自分の身体が１年間も歳をとってしまうと言う計算になる。

「えっでもエヴァちゃん私の時何も言わなかったよね」
「それは桜の寿命が普通の人間と比べて１０００年と長いからだ」
「まっそう言う事やな、桜の寿命は普通の人間と比べて１０倍以上あるんやから一日や二日位どってことないと言う事や」

１０００年もの寿命、それはエヴァさえもまだ生きてはいない時間で人間の寿命をおよそ８０年とすると１０００年もの時間は１２．５倍、そんな所から桜がエヴァの別荘で一日や二日過ごしたとしてもケロちゃんの言うとおりまったくどうって事はない。

「そうですか、私としては桜ちゃんの勇姿をビデオに収める機会なのですが、この場合は茶々丸さんにお任せいたしましょう」
「分りました知世さん」

そこまでして桜の勇姿を撮りたいのか理由も話すと知世は残念そうな顔をしながらも茶々丸に自分の持っていたビデオカメラを茶々丸に渡した。

「所で桜、この前の予知夢以来何かの予知夢は見てないのか？」
「予知夢？」
「あれだ、前に言っていただろ。　近い将来私と坊やがナギと会っていると」

桜は少し首を傾げたがエヴァが言うと思い出したかの様に手掌をポンと合わせる。

「あっ予知夢の話だね、でもエヴァちゃん近頃は見てないよ」
「そうか、桜、今後なにかナギに関るような夢を見たら私に言ってくれ」
「うん」

桜が答えると一回頷いてその話を切り上げるエヴァ、するとそこへケロちゃんが口を開いた。

「あっでもな、この前会ったクウネル言うやつがネギ坊主の父ちゃん生き「ケロちゃん！」むがが・・・」
「ん？」

言いかけた瞬間桜がケロちゃんの口を慌てて塞ぐ、確かケロちゃんが言おうとした話はクウネルに口止めをされていた話だ。

「クウネルとか言う奴がどうしたんだ？」
「いや、何でも・・・何でもないよエヴァちゃん！」

よかったエヴァはケロちゃんの話を殆ど聞いちゃいなかった。
でも桜はケロちゃんの口を止めるとグイグイとテーブルの上にケロちゃんを押し付けていた。



その夕方、桜はなんとか誤魔化し雪兎を連れてエヴァやネギと共にエヴァの別荘へ行っていた。
雪兎は別荘に入る前にエヴァの家に入った瞬間にユエと交代、昨日と同じ様に桜はエヴァの別荘内へ入っていった。

「さて、今日は桜とぬいぐるみとユエ三人相手に実践訓練だが、その前に先ずは三人一人一人相手に基礎訓練２時間だ！」

そして別荘内で始まった今日のネギの特訓メニュー、先ず初めは一人一人相手の基礎訓練で先ず一人目の相手は

「さて、先ずは接近中距離専門のぬいぐるみだ！」
「だからいちいちぬいぐるみ言うなや、名前位覚えとるやろ小娘！」

ケロちゃんだった。

「ぬいぐるみの戦闘方法は主に接近戦でのライオンの様な攻撃方法と口から吐く大火炎攻撃だ。　なるべく苦手な遠距離戦闘に持ち込み戦え！」

ケルベロスが使うのが使うのは近接では前足等を使ったライオン等と同じ様な攻撃、中距離戦闘ではどんなものでも焼き尽くす程の強力な大火炎、であるから遠距離攻撃と言うものがなく、なるべく遠距離攻撃をした方がよかった。

「さて、４０分経過だ・・・次は中遠距離専門のユエが相手だ」

４０分後次の基礎訓練の相手は中遠距離専門のユエ、ユエは中距離では手の先を魔力の刃の様にして敵を攻撃し、遠距離では魔力での弓矢のような物を放ってきたり、氷を大量に放ってきたりする。

「ユエに坊やお得意の『風』系の魔法は一切利かん、それを気をつけて戦え！」

ケルベロスとユエ二人共ネギに合わせてゆっくり戦闘訓練の相手をしてあげている。

「さて最後は桜相手をしてやれ、桜の戦い方は大体遠距離専門の用に思えるがそれは間違いだ。　戦闘方法は様々で近接・中距離・遠距離全てにおいて坊やを遥かにりょうがしている！」

桜の戦い方は近接戦闘だと『剣』や『闘』や『力』があり、近接戦闘において武術ができたり剣術ができたり、はたまた凄い力を出したりできる。
しかもこの三枚の内二枚は人間の様な形にして使うこともできるので前衛としても使うことができてしまうカードだ。

中・遠距離になってしまえば桜に勝てるものはいない、位に激ヤバだ。
『火』＋『地』を使われてしまえばゲームオーバー確実だし、他にも『雷』や『砂』や『嵐』といった様々なカードがある。

よってネギに付け入る隙等全くない、しかも桜にとって足下にも及んでない格下のネギの相手等『闘』のカード一枚限りで事たりるのである。

「えっ？　桜さんが消えた！？」
「ネギ君後ろだよ」

３ｍ位前にいた桜がネギの目の前から消えていつの間にか気がつくと後方へと桜は回り込んでいた。

「ほう、桜は瞬動術も使えるのか。　まあ『闘』（ファイト）のカードの効果のお陰だが、『達人同士の戦いでは必須科目』だ、坊やもこの技を覚えておくんだな」

瞬動術、それは足の裏に気や魔力を集中させ、瞬間移動のようなステップを行う歩法である。
これは発動させると急な方向転換が効かないのが弱点であり、移動後狙い撃ちを受けやすいなどのリスクもあるが、ネギはこの瞬動術と言うものはまったくできないしやり方さえ知らなかったのである。

「はぁ・・・はぁ・・・」
「ふぅ、いい汗欠いたねネギ君」
「よし、２時間経過だな、少し休憩するぞ」

そして２時間経過してネギは次々に自分より各上の相手をしていたので汗びっしょり、呼吸も乱れている。

「ネギ君もちょっと凄くなってきたよ」
「そうですか、でも桜さんの方がやっぱり凄いです」
「休憩したら次実戦訓練桜達三人いっぺんに相手をしてもらうぞ」

そして屋根のついた休憩所で喋りながら休んでいるネギと桜、エヴァはまたネギに対して無茶な事を言っている。

「・・・次の実戦訓練は手加減なしでいくぞ」
「ってユエさん手加減しなくちゃダメです！」
「そや、手加減せなネギ坊主死んでまうで！」
「そうなのか、実戦だと聞いていたが？」

ユエは何を勘違いしているのか実戦だけに本気で戦おうと考えていた。
そんな事をすれば自分達の足下にも及ばないネギだから死ぬのは当たり前、すかさず桜とケロちゃんにツッコまれていた。

「死ぬってどんな修行しているのよ？」
「あっ明日菜さん」
「夕映ちゃん達も」
「なんだ桜？」
「ユエさんの事じゃなくて夕映ちゃん、漢字で夕方の夕に映画の映の字を書いて夕映ちゃんです」

そんな所になぜか現れた明日菜達、ユエもまた間違えたのか桜に呼ばれたのかと勘違いしてしまった。

「でもどうして明日菜さん達が？」
「いや、私達今日のネギのやつれ様が気になってね、ちょっと見に来たのよ」
「ほら、エヴァちゃんがあんな修行するから明日菜さん達も着ちゃったじゃない」
「・・・もうあんな修行絶対にせんよ。　もう懲りたしな」

明日菜が言うには自分達も昨日の夜からのネギのやつれ様を心配しネギの様子を見に来たのだと言う。
その原点となったのは昨日のエヴァによる無茶苦茶な夜の訓練、桜もまたエヴァにその事で起こっていたがエヴァは桜のお仕置きを食らった為すでに懲りていた。

「明日菜さん、ここはエヴァちゃんの作った魔法のアイテムの中で『ＤＢの精神と●の部屋』と同じ様な時間の流れをした場所なんです」
「しかも一回入ると一日間はここからでられん、・・・ま外では一時間しか経ってないから別になんら問題はないけどな」

やってきた明日菜達にこの別荘の説明をする桜とケロちゃん、その後古菲達が何それや凄い等のリアクションをしていた。

「あれ、そう言えばいつも一緒にいるのに知世ちゃんは着てないのね？」
「ああ、それはここにいると歳をとってしまうからです」

それを説明するとすぐに理解した様な顔をする明日菜達。

「あっそういう事なのですね。しかし桜さんはなぜこちらに？」
「私は魔力が高く寿命が千年もあるから・・・」

その瞬間桜の寿命を知らない明日菜・刹那の二人以外に稲妻が落ちた。

「桜さん、千年と言うのはあの千年ですよね？」
「うん、ケロちゃんが高い魔力を持つ魔術師は普通の人間と比べて凄く長生きするって・・・」
「はいは〜い皆大声は出さない様に、桜ちゃんは異世界の魔法使いなんだから特別特別〜」

驚きの中大声を出そうとするや明日菜に止められる夕映達、さすがに魔法の事を知っていてもコレばかりは驚いたらしくそのまま少し体が硬直してしまった。
それからまた説明をしてみると・・・

「そうなのですか、しかし今度ばかりは驚きました」
「桜ちゃんこの可愛らしさのまま千年やろ、めっちゃ凄いやん」
「でも千年って言われてもあんまりピンとこないもんだね」

やはりいつもどおり思った通りの反応、しかしまだ１５年位しか生きてない朝倉達にとっては１０００年と言われても膨大な時間なため案外ピンと来ないものであった。

「しかし坊や、こいつらが着てこのまま今日は休めると思ってないか？」
「えっいやそんな事は」

そして明日菜達が別荘にやってきてから修行の事がうやむやに生りかけていたその時、ネギの頭の上に右掌を置きながらズモモモモモ〜っと現れ修行の話に切り替えた。

「本編ではこのままうやむやになって休んでいただろう、しかしこの小説と本編は違う。私はそんなに甘くない、今から桜・ぬいぐるみ・ユエと３対１の実戦訓練をやって貰うぞ」
「コラコラー！！！」
「―――エヴァちゃん鬼や！―――」
「―――いや、あの子の三人相手は些か無茶なのでは？―――」

その無茶難題な修行に明日菜がツッコミを入れ木乃香と刹那が目を丸くしていた。

「なんだ文句あるのか神楽坂明日菜？」
「あるに決まってるでしょ、桜ちゃん一人ならともかくケロちゃんとユエさんも含めた三人となんて絶対無理よ！」

まあ明日菜の言う事もごもっとも、しかしエヴァは聞く耳を持たなかった。

「なら貴様も参加したらどうだ、オイ刹那、貴様も坊やの方に付け！」
「えっ　私がですか？」
「そうだ、これなら文句あるまい一人の魔法使い＆従者二人による３対３のチーム戦だ」

明日菜もこれなら納得するだろうとエヴァが即座に考えたのは３対３のチーム戦、明日菜は少し腕を組みながら考えたが、エヴァの考えどおり、

「うん、それならいいわ」

とＯＫした。

「明日菜さん達とチーム戦か・・・」
「桜さん、お手柔らかにお願いしますね」

そしてチーム戦が決定し、夕映やのどか達と言ったギャラリーが居る中６人は広場へと出て行く。

「３対３のチーム戦ですか」
「うーんどちらが勝つんだろ？」
「ネギ先生・桜さんもガンバってください」
「面白そうアルな〜私もやりたかったアル」

しかし、桜の戦闘能力をハッキリとあまり見たことないのどか達はこの圧倒的実力差を知らないで応援等をしている。

「まっ９９．９９９％桜達が勝つだろうが、坊や達には良い経験になるだろう」
「そうですねマスター、今後ネギ先生は明日菜さん達と一緒に戦う事が多いでしょうし」

一方圧倒的実力差を知っているエヴァと茶々丸はどちらが勝つのかやる前から分っているので平然としていた。
だが今回の実戦訓練、エヴァは最初ネギ一人にさせようとしていたのだが明日菜が文句を言ってきた事によってチーム戦になった。
よく考えればこちらの方が都合がいい、茶々丸が言うようにネギは明日菜や刹那をパートナーとして仮契約している以上、一緒に戦う事が多くなるのだから一人で実戦訓練よりここでチームでの実戦訓練をしておいた方が効果的だからだ。


「まあ結果の分っている勝負だが、初め！」
「行きますよネギ先生、当たって砕けろです！」
「はい！―――シス・メア・パルス・・・（以下省略）」

そしてエヴァが声を上げて始まったチーム戦、イキナリネギは早速明日菜に『契約執行』執行し、刹那が明日菜と共に前へ飛び出したのだが、その瞬間桜達の方は不穏な動きを見せた。

（ケルベロスさんもユエさんも動いてない・・・）
「『力』＋『剣』＋『闘』＋『翔』（パワー・ソード・ファイト・フライ）！」（バトルマスター＋α）

二人が飛び出したと言うのにまったく動こうともしないケルベロスとユエ、桜達の目前へ二人が来た時桜のカードを使う声が二人の耳に入り、ケルベロスとユエの二人は双方横へどいた。

「えっ！？」
「桜さん一人でですか！？」

明日菜と刹那が見たのは体が光手に剣を持ち翼を生やした桜の姿、イキナリだが今回は桜が一人で三人の相手をするらしく、その時それを見ていたエヴァが少し笑い始めた。

「ふふふ・・・驚いただろう神楽坂明日菜と刹那、しかし貴様ら程度三人で相手をするほどでもないだろうからな」
「ではマスター今のは」
「そうだ、私が桜に一人で相手をしろと言っといたんだよ」

それはエヴァがチーム戦を行う前に桜言っておいた策略、本当に３対３でやったのでは面白くないからエヴァは桜に「一人で相手をしろ」と言っておいたのである。

そ んな間に続いているチーム戦ではなくなった模擬戦闘、桜の方にツッコんで言った刹那と明日菜はそのまま二人同時に（明日菜はハリセンだが）桜に切りかかっ たのだが、三枚のカードを同時使用している桜は明日菜のハリセンを左手で受け止め、刹那の剣戟を右手で持った剣で受け止めた。

「私の剣戟を片手で止めるとは！」
「やっぱりカードの力！？」
「はい、『力』さんの効力です」

『力』のカードの効力で桜の力は象をも空高く投げられる程に上げられていて、ハリセンの先を持たれた明日菜は微動だにできないし、刹那の方も両手で切りかかった剣戟を片手で受け止められて驚愕している。

「桜ちゃんってこんなに強かったの！？」
「驚きです！」
「今度桜とやりあってみたいアル」

今頃桜の強さを知ったのか驚愕している朝倉達ギャラリー、古菲は指をくわえて混ざりたそうな顔をしていた。



「ウンデキム・スピーリトウス・ルーキス『光の精霊１１柱』！（中略）サギタ・マギカ（魔法の射手）！！」

明日菜と刹那が桜の方へ突撃している間に呪文を詠唱していたネギ、ネギは破壊属性『光の矢』を１１本出し、桜の方へ放った。

まっすぐ桜の方へと飛んでいく１１本の光の矢、それは甲を描きながら桜の方へと着弾し、小規模に爆発し粉塵を上げた。

「やった！」
「やってないぞ坊や！」

ネギがやったとガッツポーズをとった時エヴァが声を上げる。
すると粉塵の煙がはれていき、その場にあったのは光の矢をくらったのか少しボロボロになって半分気絶している明日菜の姿であった。

「あれはれひろ・・・」
「明日菜さんどうして！？」

ボロボロ状態になっている明日菜を見ながら驚愕の表情となるネギ、だがそんな驚愕な表情をしている時間はなかった。

「さ・・・桜さんと刹那さんは？」

ネギが周囲を見渡しても桜と刹那の姿は見えない、しかしネギが上空に目線を移動させたその時、剣と剣を何度も合わせている二人の姿があった。


「ふん、ようやく見つけたか。　桜と刹那は光の矢の爆発の直前に上に飛び上がってたのだ。　まっ飛べない神楽坂明日菜は代わりに爆発に巻き込まれてしまった様だがな」

そして明日菜の脱落となり残りは刹那とネギの二人、ネギは二人を見つけると杖で飛んで二人の場所まで向った。

「桜さん接近戦でも強いですね、実はこれでも手加減していますね？」
「あっすみません、刹那さん分りましたか？」

上空で剣を交えながら話し合っている二人。

「聞いた話によれば桜さんの『剣』のカードは桜さんの心によってどんなものでも切る事の出来る剣、桜さんがその気ならこの私の『夕凪』ももうすでに真っ二つの筈です」
「すご〜い、さすが刹那さん　じゃあちょっと本気を出しますね」

刹那が言っていた事は正解、桜が始めからその気なら最初に剣を交えた時すでに刹那の『夕凪』は真っ二つになっていた。
桜はそれを聞くと刹那の所から消え、一瞬にしてこちらへ向っていたネギの目の前に姿を現した。

「はい、これでネギ君の負け」

桜は『剣』を振るとネギの首筋の所でピタリと止めた。

（今のは『虚空瞬動』！？　『闘』のカードによる効力か）

虚空瞬動とはいわゆる空中で行う瞬動術のこと、虚空を蹴ることで瞬動術のように動く事ができるハイレベルな技である。
桜がこれができるのは『闘』のカードによるものの効果であり、これで残るは刹那唯一人となったが、

「桜さん、私達の負けの様ですね。　これ以上やり合っても結果が見えています」

すぐに刹那が降参し、チーム戦はこれにて終了となった。

桜は模擬戦が終わると地面へと着地して背中に広げていた『翔』をカードに戻し明日菜の方へと歩いていく。

「すみません明日菜さん、大丈夫ですか？」
「はっ大丈夫・大丈夫、それにしても桜ちゃん強すぎだわ」

桜の問いかけにより明日菜は気がつく。
そして二人して喋りながらギャラリーの待つ屋根のある場所へと戻ると桜を待ってたのは、

「桜ちゃん凄かったやん〜！」
「桜ちゃん強かったよ〜！」
「凄かったアルな、今度私とも戦うアル！」
「ほぇ〜！！？」

ちょっとした朝倉と古菲、木乃香の抱きつきによる手荒い歓迎だった。



「どうだ坊やに神楽坂明日菜、桜一人に１分持たず倒された感想は？」
「正確には刹那さんが降参するまでの時間が５４秒２３ですマスター・・・」
「はい、さすがは桜さん凄く強かったです。　僕もまだまだ修行が必要、未熟だと言う事を思い知らされました」
「って言うか桜ちゃんが強すぎなだけなんじゃ・・・」

一方明日菜とネギ、刹那はエヴァによる反省会、今回の模擬戦により自分がまだまだ未熟だと言う事を思い知らされていた。

「そう桜は強いだろう、修学旅行の時もそうだが坊や達はそうだな、私の好きなＲＰＧゲームに例えるとレベル１０位にしてレベル９９の仲間を味方につけて戦っていたんだ」
「しかし、これは学園祭までの期間限定、桜は学園祭の時に自らの世界へ帰ってしまう。　その後何かしら戦闘がある時坊や達は今まで味方につけていた桜達抜きで戦わなければならなくなる」
「せいぜい坊や達はその時まで強くなって置くんだな、まあ私もそれまで坊やに地獄の修行を科すが神楽坂明日菜の方も刹那と共に腕を磨いとけ」
「分ってるわよそんなこと」

桜は学園祭の時に自分達の世界へ帰ってしまう。
今の所はその時し帰られないので避けられない事、桜自身もう一回こちらへ来るとエヴァに言ってあるがいつになる事やら、なのでネギ達は学園祭までにできるだけ自分達だけで戦える位にレベルアップしておかなければならない。

いつまた修学旅行の様に戦わなければならない事がやってくるか分からないからだ。


それからしばらくして桜達はエヴァの秘蔵の食料等を持ち出し飲んだり食べたりしていた。
空は今夕方で、綺麗な赤色の夕日が桜達の目に入ってくる。
その時ふと桜に話しかけてきた夕映、

「桜さんに少々魔法を教わりたいのですが？」
「えっ、私に？」

桜に魔法を教わりたいと言ってきたのだ。

「あ〜夕映、桜には無理やで、桜はカードを使う以外の魔術を知らんしもし知っとったとしてこことは違う世界の魔法やからな、習わん方がええ、習うんやったらネギ坊主あたりええんとちゃうか？」

しかしサクラカード以外桜の魔術を桜は使えないし、たとえ使えたとしてもそれはこの世界とは違う世界の魔法、教わらない方が良いのだ。
・・・と言うわけで夕映が魔法を教わる事になったのは、

「では一番簡単なのから行きましょう、お二人には初心者用の杖をお渡しします」

ネギだった。
ネギは少し教えて良いものだろうか考えたが、エヴァは教える気まったくなし、エヴァのどうでも良い言葉に押されて教える事になったのだ。

「プラクテ ピギ・ナル アールデスカット『火よ、灯れ』」

ネギが初心者用杖を持ちながら唱えると杖の先端にライターの様な火が灯る。
それを見てのリアクションは夕映は首を上下に傾げのどかは手をパチパチと叩いていた。

「まあこんなものよりライターを使った方が早いのですが・・・」
「お　何なに、面白そうな事をやってるね」
「アタシ達も混ぜるアルー！」

そして古菲や朝倉、木乃香達そろって皆がネギから魔法を教わる事に、皆それぞれ練習杖を持ちまずのどかネギに教わった呪文を唱えた。

「プラクテ ピギ・ナル アールデスカット『火よ、灯れ』」

一瞬の沈黙、まったく出ようともしないライターの様な火、その後夕映がやろうとも木乃香がやろうとも全くでなかった。

「皆でぇへんもんやな〜、わいなんかほれできるやろ？」

皆火がまったくでない中ケロちゃんが手の先からライターの様な火を出してみせる。

「いや、ケロちゃんは出てあたり前じゃないの？」
「まあそうやな、「ケロちゃんできたよ〜！」って桜できたんかい！？」

その後すぐに朝倉がケロちゃんにツッコミ頷いている時に、なぜか桜が先に火の灯った初心者用練習杖を持ちながらケロちゃんの方へとやってきた。

「桜自分のカードあんのに何やっとるんや？」
「ほや〜桜ちゃん凄いな〜」
「いや、ちょっとやってみようかなと思ってやってみたらできちゃった」
「桜さんは元々魔力の使い方になれていましたから」

自分にサクラカードがあると言うのにこの世界の魔法を試していた桜は頭の後ろに右掌を当てながら笑っている。

「まあええ、それはそうと桜　ちょい皆に『灯』（グロウ）のカード使って見してみ」
「あ　うん」
「『灯』（グロウ）のカードですか」
「『灯』（グロウ）のカードは蛍みたいで綺麗やで〜」

ケロちゃんがそう言うと桜は自分の持っていた星の鍵を取り出し『封印解除』、そしてまた『灯』のカードをポケットの中から取り出すと呪文を唱えながら使用した。

「『灯火』（グロウ）！」

使用すると杖の先の上方に浮いていたカードは光だし、明日菜達の周囲にはまるで蛍の様に綺麗でいっぱいの灯火が現れた。

「わー綺麗やな〜」

それは心を奪われそうな位の綺麗な光景、明日菜達は本当に皆その蛍の様な綺麗な光に心を奪われその日の別荘内の夜も更けていった。







桜ちゃん・・・・



桜ちゃん・・・・


「ほぇ？」

別荘内で就寝していた桜の名前を呼んでいる声、そして自分の身体を揺さぶる手、

「朝倉さん」
「桜ちゃん向こうで面白い事やってるよ」

桜はそれに気づき目を開けてみると目の前に朝倉の顔、桜は起き上がると朝倉に連れられて屋根の付いた場所からでていった。

「何やってるののどかちゃん・エヴァちゃん」

出てみればその場にいたのはアーティファクトの『いどのえにっき』を見ているのどかとエヴァであった。

「桜か、まあこれを見てみろ。　坊やの過去だ」
「ネギ君の過去？」

桜はエヴァに言われるままその『いどのえにっき』に書かれたものを見てみる。
それはエヴァの言ったようにネギの小さい頃の話、桜はそのままそのお話を皆で見始めた。







その頃麻帆良学園の女子寮のある部屋で一人の男の子がかなりの量の食事を取っていた。

「うひゃー良く食べるね」
「コレうまい、うまいわ」

男の子は関西呪術協会の反省房から脱走してしまっていた小太郎、彼のいる部屋は千鶴・夏美・あやかの部屋で千鶴が食事を作り、夏美は多量の食事が小太郎の胃袋に収まってくのを驚いた目で見ていた。

「う〜んわいほんまなんでここにおるんやろ？」

ふと零した小太郎のこの言葉が何を意味しているのかは分からない、だがひと波乱ありそうな事は確かで、その足音はもう女子寮近くまでやってきていた。


＜第四十九話終＞

『桜＆ネギによる次回予告コーナー』


「おいネギ、何で俺最後の方少しだけやねん！」

「仕方ないよ小太郎君、これも作者さんの都合と言うものがあるんだから」

「それにしても、今回の桜姉ちゃんは強かったな」

「そうだね、元から強かったんだけど近頃よりいっそう強くなっている気が」

「戦士系でもないのに『虚空瞬動』まで使うんやもんな〜、このまま行ったら『咸卦法』まで使うんやないか？」

「そうだね、桜さん魔力持ってるし作者さんの事を考えると否定できないね」

「それが桜姉ちゃんの怖い所や、作者に好かれとるし元からかなり強い、わい等の出番がなくなるの当たり前や」

「まあまあ小太郎君、この小説はあくまで桜さん中心主義で始まったものだから仕方ないよ」

「ネギはそれでええんか、っま次回強い奴と戦えるみたいやからええ、そろそろ次回の予告いくで」

「次回のタイトルは」

「『さくらと無残へルマン伯爵』・・・・」

「なんや怖い題名やな、題名からおっさんの死亡フラグ立ってないか？」

「桜さん一体何するんだろ・・・」

「まあ次回ならなわからん話やけど俺らの出番次回もない様な」

「それも次回にならないとわからないよ、そろそろ終りの時間だし次回の司会者紹介して終りにしよ」

「次回の司会者は俺小太郎と桜姉ちゃんや！」

「それではそろそろお時間ですので今回はこれぐらいで」

「さようなら」「それじゃあな！」

＜終＞


前へ　戻る　次へ