第五十話 『さくらと無残ヘルマン伯爵』
―――外は雨だった。 夕方の4時頃から麻帆良学園都市内に降り続いている雨は道路に水溜りを作り生徒達は傘を指しながら下校をしている。 そんな中麻帆良学園の生徒とはとても思えない黒い帽子を深く被った全身黒ずくめの白髪の髭を生やしたおじさん、それは見た目からして怪しげな雰囲気を醸し出していた。 「ふむ、逃げられたか・・・」 「まあ行き先は分ってるから良いんじゃねぇかヘルマンのおっさん」 おじさんが下を向き話しかけているのは唯の水溜り、だがその水溜りからは声が聞こえなにやらウネウネと動いている。 「行き先は麻帆良学園女子中等部女子寮か、さてはてネギ君はどの位あの時から成長しているのかな」 「しかし気を付けろよおっさん、たしか女子寮にはAAA+ランクの魔法使いが入るって言う情報が入ってるしよ」 「わかっている。 確か木之本桜嬢とか言ったね、一番気を付けなければいけないのはこのお嬢さんだろう。 しかし13歳にしてAAA+ランクとは末恐ろしいお嬢さんだはっはっは」 「おいおい笑っている場合じゃないぜヘルマンのおっさん、この学園には闇の魔王もいるんだしよ」 怪しげなおじさんはすでにネギの事や桜の事は知っているらしく少し笑いながら先程の水溜りと話をしツッコまれている。 「いやいやすまない、私は少々才能ある子供と言うのは大好きでね。 まあ今回は会う事もないだろう作戦通り事が運んでくれさえすればだが」 「まあそうだな」 「しかし、木之本桜は情報によりますと異世界の魔法使い、その特殊能力はまだまだ謎な所が多くどんなに隠したとしても気づかれてしまう可能性があります」 「まあその時はその時だよ、当たって砕けるさ。 どうせ倒されたとしても召還を解かれ自分の本国へと帰るだけだからね」 そして水溜りの形状が変わり可愛らしい女の子三人に代わっていく。 だがその時このヘルマンと言う白髪のおじさんは桜の『特殊能力』がどういうものなのかを知らなかった。 6年前、ネギの住む村は悪魔達の襲撃を受け大勢の人々は悪魔達の手によって石化させられていた。 その村はサウザンドマスター、ナギ・スプリングフィールドを慕っているクセのある者達の多い村、大方誰かに恨みでもある者の仕業だと考えられる。 村は火に包まれそれを見たネギは泣きながら自分の姉ネカネ・スプリングフィールドの名を呼びながら村の中へと入っていく。 だが村には石化された村人達以外にいるのは大勢の悪魔達、ネギは絶体絶命のピンチでもうダメだと思われたその時現れたのは死んだと言われていたネギの父親と思われるナギ・スプリングフィールド、ナギは現れるや圧倒的な力差で悪魔達を蹴散らした。 だがそんな事のつかの間逃げる前に現れたのは一匹の上位級悪魔、悪魔は大きく口を開け口の中から光を走らせるとネギの目の前にあったのはどんどん石化していくネカネの姿とよく知るスタンお爺ちゃんの姿であった。 スタンお爺ちゃんは自身が石化仕切る前に現れていた上級悪魔を封印、お爺ちゃんは封印が終わると数刻経たぬ内に全身石化してしまった。 その後すぐにまたネギの前へ現れたのはナギ・スプリングフィールド、ナギはネカネの石化を止めるとネギの頭を一回なで自分の持つ杖をネギに託しその場から去っていった。 そこまでされるとネギも自分の父親だと気づき泣き叫びながらナギの事を呼ぶがもうナギは再びネギの前に現れる事はなかった。 ―――その後ネギとネカネは三日後に救出され、ウェールズの山奥にある魔法使い達の町に移り住む事になった。 朝倉に起こされ、桜が見たのはのどかの『いどのえにっき』を通してのネギのこの6年前の過去、桜はネギが死んでいるかも知れないお父さんを探しているのは知っていた。 桜はそのお父さんであるサウザンドマスターが確実に生きている事はこの前その友人であるクウネル・サンダースから聞いて知っていた。 ネギ自身話に出てきた人が本当に父親だったと確証はしていない。 皆もこれから確証はしていないものの涙しながら絶対にお父さんだよとか一緒に探すとか言い出している。 桜自身も涙しながらこれなら話しても良いんじゃないかと言う考えがふと頭をよぎったが、 「ううん、クウネルさんの言った通り学園祭まで待たなくちゃ」 と過ぎった考えをかき消していた。 「うわ〜凄い雨だね夕映ちゃん」 「桜ちゃんウチ一本だけ傘もってきとんのやけどこりゃ全員入らんえ」 「これは皆濡れて帰るしかないです」 「あれっ? 僕ってエヴァちゃんの家でなにしてたんだろ?」 「あはは・・・」 その後一日別荘内で住み終わりエヴァ宅から出てくるとやはり外は雨だった。 ユエはエヴァ宅を出た時点で雪兎と交代、雪兎は首をかしげ周りの者は笑ってごまかしている。 「桜、こんな雨だ桜だけでも今日泊っていったらどうだ?」 「ううん、知世ちゃんが夕飯作って待ってるから」 「そうや知世の飯はうまいからな」 傘を持っているのは木乃香一人、エヴァはその事を考え桜が濡れない様家に泊まっていく様に勧めたが、桜は断り明日菜達と共に濡れながら女子寮へと帰っていった。 「ネギ君、私達先に部屋に戻っておくけど何かあったらいつでも言ってね、私がこの世界にいるのは学園祭までだけどお父さんは絶対に大丈夫、きっと生きてるから」 「は はいありがとうございます桜さん」 女子寮に着きネギにお父さんは生きているとは言えないので、ニッコリとした顔でこの言葉だけ残して夕映達と一緒に各部屋へ帰っていった。 「うえ〜知世ちゃん濡れちゃったよ〜」 「もうずぶ濡れやで、風引かん内に知世早く着替えるもんとタオルや〜!」 「はいな」 そして桜が知世の待つ部屋に帰ってくるとすぐに知世にタオルや着替える物を出してもらう。 「桜ちゃんずぶ濡れの様ですし夕食の前に大浴場に行かれてはどうでしょう?」 「いや、知世もう夕飯できとるんやったら絶対に先夕飯や、はよ夕飯食いたい」 「もうまたケロちゃん食い意地はっちゃって、エヴァちゃんの別荘であれだけ食べたでしょ」 ケロちゃんも綺麗好きだが判断基準がお風呂より食べ物、花より団子の様だ。 「それとこれとは話がべつや」 「まあ良いか」 「それなら先に夕飯に致しましょう」 そして夕飯に入る桜達、その時ヘルマンと言うおじさんがすでに女子寮の前に来ていた。 女子寮の廊下、桜達が夕食を召し上がろうとしていた時、夕映とのどかはずぶ濡れになった身体を温めようと大浴場へと向っていた。 「ネギ先生があんな大変な思いをしていたなんて・・・」 「ええ・・・」 ネギの過去の体験が効いているのか少し頭を下に下げて歩いている二人、普通の女子中学生からしてみればネギの体験はそれだけショックな事であったのだ。 「夕映、私ネギ先生が魔法使いだと知ってドキドキワクワクしてたんだ、戦っているネギ先生もカッコイイと思っちゃったし」 「私もです。 少し浮かれすぎていましたね」 そして二人そろってしょぼ〜んと落ち込み周囲には暗い雰囲気が立ち込める。 「私達にも桜ちゃん程じゃないけど少しでも力があったらよかったんだけど」 「ですけどのどか、私達には力がありませんが、私達にもできる事を考えるですよ」 「うん」 自分達にはネギや桜の様な魔力もなければ明日菜や刹那と言った体力もない。 しかしできうる事は必ずある。 修学旅行の時のどかが『いどのえにっき』を使いファイの頭の中を読み敗北寸前のネギとケロちゃんを助けた様に適材適所、自分の在るべき位置でネギを助ける事ができる。 「しかし、あの時の桜さんの言葉は引っかかりますね」 「えっ、桜ちゃんがどうしたの夕映?」 夕映はイキナリ話の方向性を変え指を一本立てて話し出した。 「桜 さんは今日ネギ先生と離れる際に「お父さんは絶対に大丈夫、きっと生きてるから」と言っていました。 これは普通に聞いていればネギ先生のお父さんは生き ていると信じていると聞こえますが、すこし考えました所これは私の推測ですが桜さんはネギ先生のお父さんが絶対に生きていると確信しているのではないか と」 「えっそれって?」 「皆でネギ先生の過去を見た後です。 皆さんあの後からネギ先生のお父さん探しを協力する等言っておりましたが、 実際の所本当にあの人物が100%ネギ先生のお父さだと言う確信はないのです。 ですがあれを見てしまったら普通100%生きていると考えてしまうのが普 通、しかし桜さんは「お父さんは絶対に大丈夫、きっと生きてるから」とあの人物が100%お父さんであると言い切れない所をつきながら自信に満ちた笑顔で 生きていると言っているのです」 これが夕映の適材適所の場所であろう、夕映は観察眼と洞察力に優れている。 あんな桜の少ない言葉からここまで行き着いているのだから本物であろう。 「ここから推測される事は桜さんはネギ先生のお父さんが100%生きていると言う情報を得ている・・・こういうことです」 「でも桜ちゃん知ってたら言ってくれる筈だよ?」 「まあこれはあくまで私の推測です。 間違って入るかも知れませんが、誰かに口止めされていて桜さんも黙っている事を了承しているとしたらだうですか?」 「桜ちゃんの性格だから絶対に喋らないよね」 「そうです」 夕映の話はどんどんと物事の解答へと一直線に走っていく、だがこれは言ってみれば夕映の推測でしかなく夕映とのどかは二人してそのまま大浴場の脱衣所へと入っていった。 女子寮の大浴場、それは男からしてみれば楽園だが当然その浴場に入っている男はいない。 いるとすれば時々ネギが入っているだけで後は女性徒達だけ、のどかと夕映は大浴場に入ると古菲と朝倉と共に一緒に湯船に使っていた。 「それはいくらなんでも考えすぎだよゆえっち」 「そうですか、少々考えすぎでしたか?」 「そうアルよ、それだったら考える前に桜に聞いてみるアルよ」 「そうですね」 夕映はまだ自分の考えた推測の事を考えていた。 朝倉と古菲にも自分の推察の事を話し、二人からの感想を聞いている。 やはり桜に聞いてみた方が良いのか二人の回答はこんなもの、夕映はこれに頷いて話をするのをやめた。 ―――その時だった。 四人にイキナリ白髪のおじさんと一緒にいた水溜りのうねうねした物体が四人に襲い掛かり四人を湯船の中へと引きずりこんでいった。 「知世お代わり〜!」 「ケロちゃんまたお代わり? いい加減にしないと太るよ」 「わいは太らんから大丈夫や」 そんな事態が起こっている事も知らずに夕食を楽しんでいた桜達、しかしケロちゃんも桜も魔力の気配を感じる事ができる。 であるから四人が湯船の中へ引きずり込まれた時、 「ケロちゃん、今一瞬変な気配感じなかった?」 「桜もか、なら勘違いやないな」 二人共やはり気配を感知していた。 「でもこの気配大浴場の方から感じてきたよ」 「なら急ぐんや、確か今頃夕映やのどかが入っとる筈やからな!」 分かれたのも一緒だからのどか達もお風呂に入っている事を知っているケロちゃんに桜、桜達はすぐに大浴場へと向かい服着たまま大浴場へと入っていったが、 「何もない?」 「あれっ桜ちゃんそんなに慌ててどうしたの?」 一見何事も起こっていない大浴場、桜が浴場内を見渡すとなぜか失神しているまき絵の姿があった。 「まき絵ちゃんどうしたの?」 「ぬるぬる〜」 「裕奈が入れたぬるぬるしたヤツでこうなっちゃったのよ」 ハルナが言うには裕奈が持ってきた『ぬるぬる君X』と言う全身パックでぬるぬるしたものが苦手なまき絵が失神してしまったという。 「でも私はお風呂の中に入れた覚えないんだけどな」 「誰かがこっそり入れたんじゃない?」 しかし誰も入れていない筈なのにぬるぬるしたと言う湯船、桜も何かあったと考え他の事もハルナ達に聞こうとした時、また別の場所で魔力の気配がした。 「また、今度は廊下の方から・・・知世ちゃん!」 「はい」 「・・・で桜ちゃんに知世ちゃんも何しに来たのかな?」 「さあ?」 気配を感じると即浴場から急いで出て行く桜、事情を知らないハルナ達は首を傾げていた。 廊下に出ると気配がした方向へと走っていく桜達、するとすぐに向こう側から走ってくるネギとはち合わせした。 「ネギ君、ネギ君も気配を追ってきたの?」 「はい、桜さんも感じましたか」 「さっきとはまた違う気配だけどこの部屋は確か千鶴さんやあやかさんの部屋だよね」 鉢合わせした場所は丁度あやか達の部屋、しかしなぜか部屋の中から気配を感じる。 浴場内で感じた気配とはまた違うが、その部屋の中から異様な気配が漂っていた。 「委員長さん!」 「あやかさん大丈夫ですか!?」 「桜大丈夫や、この姉ちゃん気絶しとるだけや」 部屋の扉を開けると玄関で気絶して倒れているあやかの姿、しかしそれは失神しているだけでなんの外傷もない。 「きゃああ!」 「ちづ姉―!」 「夏美ちゃんの声!」 「桜行くで!」 そして部屋の置くから突如として聞こえて着たのは夏美の叫ぶ声、桜達がすぐに声のした方へと行くと、そこにはヘルマンに抱えられた千鶴の姿があった。 「やあ早かったね、ネギ・スプリングフィールド君」 「那波さん!」 「千鶴さん!」 「し かしやはりお嬢さんにはバレてしまった様だ、さすがはAAA+ランク、闇の福音と肩を並べる程の実力者だ。 しかし今回私はお嬢さんと戦う気はない、やら れるのは目に見えているからね。 だがこちらも7人の人質を取っている。 無事返してもらいたくば私とネギ君の勝負に手を出さない事だ」 すると水の渦に包まれていくヘルマン、最後に二言残してヘルマンは水の中へと消えていった。 「学園中央の巨木の下にあるステージで待っている。 仲間の身を案じるならそこにいる小太郎君以外の助けを呼ばない事だ。 そこにいるぬいぐるみも同様、力の差が激しすぎるからね」 「ちっ見ぬいとったかおっちゃん」 「小太郎君?」 ヘルマンが去った後、すぐに部屋の片隅で気絶している小太郎を見つけた桜達、小太郎はネギが声を掛けるとすぐに目を覚まし小太郎も助けに行く事に決まった。 「桜さんは戦えませんからここで委員長さん達を見ていてください!」 「あんな奴すぐにギッタギタにして戻ってくるから安心して待っときや」 「あっネギ君、その前に夏美ちゃんの記憶処理は〜!?」 桜達にあやかの事を任せて一目散に走っていくネギと小太郎、しかし急ぐのも良いのだが夏美の記憶処理の事も忘れると言う魔法使いとしては有るまじき失態を犯している。 だから変わりに 「夏美ちゃん、ゴメンね」 「えっ桜ちゃん?」 「彼の者のこの数時に関する記憶を消去せよ、『消』(イレイズ)!」 桜が夏美の先程の記憶を消去した。 消去すると眠りに付く夏美、 「やっぱり私心配だからちょっと見てくるね、知世ちゃんとケロちゃんはあやかさんと夏美ちゃんの二人を見てて!」 やはり心配になったのか桜は先にでたネギを追って女子寮から出て行った。 外に出てみるとやはり外はまだ雨だった。 桜は『翔』(フライ)のカードを使い空を飛んで指定された場所へと向っているが、その時もネギや小太郎の事を心配していた。 「二人共本当に大丈夫かな、なにかあのおじさんからは人じゃない気配がでてたし」 桜は感じていた。 ヘルマンという男からは人じゃない、化け物と同じ様な気配が出ていた。 その事から桜はヘルマンは人間ではないと察知し、二人の事を心配しているのである。 「桜!」 「あっエヴァちゃん」 指定された近くまで来ると世界樹木の枝の所に立っているエヴァに呼び止められた桜、傍には楓と茶々丸の姿もあり何かを見ている様でもあった。 「エヴァちゃんこんな所でなにしているの?」 「なに、坊やがどう戦うのか見物しているだけだ」 エヴァが指をさした先にはヘルマンと戦っている二人の姿があった。 「まあ桜の事だから助けに来たと思うが、手助けはするなよ。 毎回毎回助けていたら坊やにも助けられ癖が付いてしまうから「ぷつん」ぷつん?」 ネギの戦いを見ながら桜に話しかけているエヴァ、その時エヴァの横に居た桜の方から何かが切れる様な音を聞き、振り返ってみると、 「明日菜さんにあんなエッチな格好をさせるなんて、のどかちゃん達も裸のままだし・・・」 「さ・・・桜?」 そこに居たのはサウザンドマスターをも超える魔力を発している桜の姿があった。 桜 が見たのはエッチな格好をさせられている明日菜の姿に裸のまま監禁されているのどか達の姿、ヘルマンはやってはいけない事をやってしまった様で、どんなに 人質を取るなど悪どい事をやってしまっても、女の子にエッチな格好をさせるは桜の見ている前でやってしまってはいけなかった。 「エヴァちゃん、ちょっとあの人にお仕置きしてくるから」 「ちょ ちょっと桜・・・」 「こ 怖いでござるよ桜殿・・・」 あまりの桜の迫力に押されエヴァと楓にはもうこうなってしまった桜を止める事はできない。 その時、ヘルマンがネギにぶっ飛ばされ悪魔みたいな姿になったが、エヴァ達にはそんなもの見る余裕はない、桜はそれ程の魔力をエヴァ達に感じさせていたのだ。 そしてブチキレ状態になった桜は下に降り始めると同時に『力』と『闘』のカードを使用する。 「ネギ君」 「さ・・・桜さん なんですかその魔力は!?」 ステージの所まで降りるとやはりその魔力にすぐ気がついて振り向いてくるネギ、ネギはその修学旅行の時以上の凄まじすぎる魔力に一歩引いてしまった。 「ネギ君達を助けに来たのかねお嬢さん、しかし行ったはずだ、こちらには7人の人質が・・・何!?」 ヘルマンも桜を見るや戦いを避けようと人質の話題にするが、桜は一瞬にして明日菜の前へと現れた。 「明日菜さん助けにきました」 「桜ちゃんこのネックレスりを取って、これのおかげであいつに魔法が聞かないのよ」 すぐに明日菜に掛けられているネックレスを桜はブチ取った。 「次のどかちゃん達、そこの子達のどかちゃん達を解放してくれるかな」 「分りました!」 ブチとるとすぐに小さなスライムみたいな女の子達に物凄い殺気混じりの魔力を感じさせながら話しかける桜、女の子達もその凄まじいものに恐れを抱き、ヘルマンの事などお構いなしでのどか達を解放してしまった。 「何をしている!」 「ヘルマンのおっさん、こいつに勝てると思うか?」 勝てません、どんなに人質をとったとしても暖簾に腕押し、考えるまでもなく桜のこの凄い魔力と殺気を見てしまっては勝てないのは分りきったことだった。 そしてまだまだ増大する桜の殺気に膨大な魔力、桜は明日菜達を助けるとすぐにヘルマンへ目線を傾けた。 「明日菜さんをエッチな格好にしてのどかちゃん達にはあんな恥ずかしい姿のままなんて、・・・許さないんだから!」 そしてついに大声をだして怒りだしてしまった桜、ネギや小太郎もその凄まじさに足がガクガクしもう動く事さえできない。 「『剣』(ソード)!」 今の状態はすでに『力』と『闘』のカードを使っているのだから『剣』のカードを使用する桜、その瞬間また桜の姿は消えヘルマンの後方へと現れたの思いきや。 「う・・・うが〜〜〜!!!!」 ヘルマンの身体からは右肩から左腹にかけ一直線に黒い血が噴出した。 「くっ・・・一瞬にしてやられてしまうとはさすがだ、私はこれで召還を解かれてしまうだろう」 「まだ帰さない『盾』(シールド)・『霧』(ミスト)」 するとどうだろう、倒れているヘルマンの周りには『盾』が形成され、その中には黄緑色の『霧』が充満していく。 「うぐぉ〜か・・・体が・・・」 ヘルマンの身体は『霧』のカードの効果で表面から腐食し始めた。 「なぜだ・・・なぜ召還が解かれない!?」 それは『盾』のカードによる効果から召還が解かれない、言ってしまえばヘルマンは出られない腐食の牢獄に閉じ込められたのだ。 「叔父さん、質問しますがなぜ明日菜さんはあんな格好を?」 「ぐぁ〜そんな事よりもこの魔法を解いてくれお嬢さん、本当に悪魔なのに死んでしまう!」 桜がゆっくりとしている間にもヘルマンの身体は表面から表皮・真皮・皮下組織とどんどんと腐りただれ落ちていく。 それは悪魔形態になろうと人間形態にもどっても変わる事のない地獄、雨の振る夜の夜空に響き渡るヘルマンの悲鳴り、ネギ達はその光景を見ながらただただ震えるしかなかった。 「おじさん悪魔だからちょっとやそっとの事じゃ死なないでしょ、大丈夫死の一歩手前で魔法を解いてあげるから」 その時ヘルマンが見たのは管●局の白い魔王でも格下に思える位の殺気・魔力・表情をした一人の少女の姿であった。 「い・・・いっその事すぐに殺してくれた方がマシだ〜!」 その後、桜の『盾』と『霧』のカードの持続は30分にも渡り、ヘルマンの身体はあちこち骨みたいなものが見えてしまう位にまで腐食してしまっていた。 本当に死の一歩手前でカードを解いた桜、ヘルマンはこの日悪魔と言う長い人生史上最強の悪夢を味わったのであった。 「ふう・・・大丈夫だったネギ君に小太郎君、どこも怪我していない? ?」 「はいぃ!」 「大丈夫や桜姉ちゃん!」 小太郎とネギも今日の出来事は絶対に忘れないだろう、特に『女の子を決して怒らせてはいけない』と言う事を。 ―――その後、残ったスライムの女の子達は自分達自ら桜の下僕になる事を志願、しかし桜は下僕なんて作る気もないし、封印してしまうのも可愛そうだから木の上に居たエヴァと相談、エヴァ宅に住む事になったのである。 <第五十話終> 『桜&小太郎による次回予告コーナー』 「なあ桜姉ちゃんちょっと聞いてええか?」 「なに小太郎君?」 「桜姉ちゃん今回ちょっとやりすぎやなかったんか?」 「やりすぎじゃないよ、女の子にあんな格好をさせるんだからちょっと足りない位だよ」 「そうか、(桜姉ちゃんって普段優しいねんけど怒らしたら怖いねんな・・・)」 「それよかもう始まっとるんやけど桜姉ちゃんわいが次回予告してええか?」 「うん良いけど」 「うっしゃじゃあ次回のタイトルは」 「『さくらとまじかにせまった中間テスト』や」 「テストか〜明日菜さん達は大変だけど私はテスト免除だから出番はないかな」 「何言っとんや桜姉ちゃん、今回は桜姉ちゃんも受けるんやで」 「え?」 「前回は学園に着てすぐやったから学園長も免除しとったんやけど今回はすぐやないから免除はせえへんて学園長がいっとったで」 「ええ〜!!!」 「なんや桜姉ちゃんそんな大声だして?」 「じゃあ早く終わらしてテスト勉強に入らないと・・・」 「そんな慌てても仕方ないやん」 「次回の司会者は私と明日菜さんです!」 「って桜姉ちゃん勝手に勧めんといてや、まっテストやから仕方ないけど」 「それでは私次回はテストですので早いようですが最後の挨拶に行きます」 「それでは皆も小太郎君も一緒に〜!」 「桜と一緒に〜レリーズ!」「そんじゃあな」 <終> |