第7話



楓の修行場から帰って二日がたった。

帰った翌日、ネギは果たし状を持って、エヴァの家に乗り込んだが、どういう理由かボロボロになって果たし状を持って帰ってきた。

その翌日、エヴァが授業に出席してきた。

ネギは自分の頑張りが伝わったと喜んでいたが、機龍は不安を覚えていた。

今夜は学園都市全体メンテによる大停電が起こるのだ。

もし、エヴァが動くなら今夜しかない。

機龍はそう踏んでいた。

(杞憂に終わればいいが………)


午後8時。

ついに大停電に突入した。

暗闇の学園内を見回る機龍とネギ+カモ。

「う〜ん、まっ暗な寮ってなかなか怖いねー、カモ君」

「むむむ………」

「どうかした? カモ君」

「兄貴!! 何か異様な魔力を感じんねーか!? 停電になった瞬間現れやがった!!」

「確かに邪気のようなものの気配がする………」

と、二人と一匹の前に光るものが現れる。

「!! 誰だ!」

懐中電灯の灯りで照らすと、裸体のまき絵が現れた。

「佐々木くん!?」

「なっ、なな、ダメですよ、裸で外出しちゃ………」

「………ネギ・スプリングフィールド………神薙機龍………エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさまがきさまにたたかいをもうしこむ………」

開いた口から牙が露出する。

「えっ!!」

「10ぷんごにだいよくじょうまでこい」

「操られているのか!?」

「じゃーね、まってるよネギくーん、機龍先生!!」

言うやいなや建物から飛び降りるまき絵。

「まき絵さん!?」

驚くネギをよそにまき絵はリボンを使い、建物を渡っていく。

「なっ!?」

「スパイ○ーマンかよ………」

「半吸血鬼化してるな」

「しかし、マズイな。マクダウェルの狙いはネギ先生だ。この停電に乗じて何をしてくるか………」

「兄貴、アスナの姐さんを呼んで仮契約しねぇと!!」

「う、うん。分かった!」

慌てて携帯を取り出し、番号を打ち込むネギ。

しかし、その手が止まり思いつめた表情をする。

「………いや、そうはいかないよ、カモ君。ここは僕一人で行く!」

「ええ〜〜!!」

「危険です! せめて自分が一緒に………」

「これは僕の問題です! 僕が解決します!!」

どこからか取り出した装備を身につけ、静止を振り切りネギは大浴場へと向かった。

「兄貴!!」

「ネギ先生!!」

取り残される一人と一匹。

「こりゃ、マズイぜ」

「アルベール、お前は神楽坂くんに連絡をとってくれ!!」

「わ、わかった!! ダンナは!?」

「………切り札を切る!!」

「えっ!?」

「急げ!!」

「お、おう!!」

カモがアスナを呼びに行ったのを確認すると、機龍は近くにあった『使用禁止』と書かれたダストシュートに飛び込んだ。

ダストシュートを滑り降りると、秘密研究施設だった。

「超! ハカセ! いるか!?」

「ああ、機龍さん。どうしたんですか? そんなに慌てて」

「何かあったネ?」

いつものようにコンパネの前にいる二人。

「Jフェニックスを出すぞ!!」

「ええ!! 無茶ですよ!!」

「修理は完了しているが、対魔法用の装備のテストがまだネ」

「なら、実戦投入と同時に行なう!!」

「それこそ無茶ですよ!!」

「ふむ、エヴァンジェリンが何かしたネ」

「説明している時間はない! 急いでくれ!!」

「でも……」

「わかったネ」

「!! 超さん!」

「彼を信じるネ。私たちの副担任ヨ」

「ありがとう、超」

すぐさま出撃準備に入る機龍。

「いいんですか?」

「彼を見てるとなぜか大丈夫な気がするヨ」


パイロットスーツに着替え、フェニックスに乗り込む機龍。

[お久しぶりです、少尉]

「ジェイス、早速で悪いがすぐ出るぞ!!」

[Yes!! 全システム起動]

フェニックスの目に光が灯る。

それと同時に格納庫の床がフェニックスごと上昇する。

地上では麻帆良大学工学部の裏手の山の一部が展開し、カタパルトが展開する。

「カタパルト展開。進路クリア」

コンパネをいじりながらオペレートするハカセ。

「Jフェニックス!! 出撃………承認ネ!!」

叫びと共に、ガラスにカバーされたボタンに鉄拳を浴びせる超。

(一度言ってみたかったヨ………)

カタパルトが起動し、シグナルが赤から緑へと変わる。

「神薙機龍!! Jフェニックスカスタム!! 行きまーす!!」

お約束の台詞と共に、カタパルト発進するフェニックス。

ウイングを展開し、夜の空へと飛翔する。

「機龍さん、新しく装備した対魔法戦用装備は魔力転換機関とマジックコーティングメタルです」

超とハカセから通信が入る。

「魔力転換機関は自然界に存在する魔力を取り込み、それをエネルギーへと変換する動力機関ネ。これで、Jフェニックスの機能と攻撃は全て魔力によって強化されるヨ」

「マジックコーティングメタルは対魔法攻撃に強い合金です。ちょっとやそっとの魔法攻撃ではまず傷つきません」

「ただ、どちらもまだテスト前ネ。実戦で使うのはこれが始めてヨ」

「十分だ。不安要素は勇気とガッツでカバーする!」

「………非科学的です」

呆れて言うハカセ。

「あと、オプションとしてマシンガンを持たせてあるネ。それと、必要な武器はここから転送して使うことができるネ」

「ありがとう、使わせてもらうよ」

[魔道レーダーに感知あり。データ照合の結果、98.25%の確立でネギ・スプリングフィールドとエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルと思われます]

「よし、ジェイス、すぐにその場所に急行だ!」

[Yes!!]

バーニアから青い炎を上げ、マッハで飛ぶ。

(ネギ先生………今行きます!!)


ネギは学園外近くの大橋でアスナとともに戦っていた。

駆けつけたアスナと正式に仮契約し茶々丸を抑えることには成功したが、武器は全て使いつくし、頼みの父の杖もエヴァに捨てられてしまった。

今は昔使っていた練習用の杖でもちこたえているが、長くはもたない。

「ハハハ、どうしたぼーや! その程度か? あの男がいなければ何もできんか!!」

「くっ!!」

徐々にエヴァに押されるネギ。

と、長時間の戦いの疲れか、足をもつらせ転んでしまう。

「あう!!」

「もらったぞ、ぼーや!!」

その隙を見逃さないエヴァ。

「リク・ラク ラ・ラック ライラック 来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス) 闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース)!!  闇を従え(クム・オブスクラティオーニ) 吹雪け(フレット・テンペスタース) 常夜の氷雪(ニウァーリス) 闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)!!!」

エヴァの手から放たれる黒い吹雪。

「ネギ!!」

「兄貴!!」

「う、うわああああああぁーーーー!!」

だが、それは、ネギに届く前に間に割って入った巨大な影によって防がれた。

「!! 何!」

「えっ!!」

[あれは!!]

「なんだ!?」

10メートル近くの大きさの人型。

赤と白のカラーリング。

背中に羽をつけ、左腰に二本の刀を差し、右腰にマグナム、後腰にショットガンを携帯、左手には盾、右手にマシンガンを装備している。

まごうことなき、巨大ロボットだった。

「か、カッコイイ!!」

思わず言うネギ。

「間に合ったようだな………」

フェニックスから声が響く。

「「「「!!」」」」

全員が驚愕した。

その声はこの場にいる全員が知っている声だった。

「き、機龍さん! 機龍さんなんですか!?」

「遅れて申し訳ありません、ネギ先生」

ネギの方を振り返るフェニックス。

「貴様、あの時の侵入者だったのか!!」

「あの時のリベンジといこうか」

フェニックスはエヴァに向き直る。


不死鳥対吸血鬼。

勝利の女神はどちらに微笑むのか?


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