第17話
騒動がありながらも、一同は京都の観光名所、清水寺に着いた。 のっけからハイテンションの3−A。 飛び降りろー、とか言う声が聞こえる。 「ここが、京都か………」 眼下に広がる町並みを見ながら呟く機龍。 少し侍の血が熱くなった。 「わーースゴイ。京の街が一望ですねーー♪」 ネギもはしゃぎ気味だ。 (ああいうところは、まだ子供だな………) 微笑ましい光景に笑顔がこぼれる。 「ネギ先生ーー!! 機龍先生ーー!! 早く行こうーー!! こっちに恋占いがあるんだってーー!!」 そんな声が聞こえ、機龍とネギは生徒たちの方へと歩いていった。 最初にきたのは恋占いの石だった。 目を瞑って20メートルほど先の石にたどり着ければ、恋が成就するらしい。 「何か神秘的だな」 とか言う機龍を横目にあやか、のどか、まき絵の三人が挑戦を始めた。 わりとまっすぐ進むまき絵とあやかだが、のどかだけは検討違いな方向へ進む。 「あらら………おーい! 宮崎くーん!! そっちは違うぞ!!」 見かねた機龍が声援を飛ばす。 と、猛烈な勢いで走っていたまき絵とあやかの姿が忽然と消えた。 「何だ!?」 慌てて近寄ってみると二人はカエルの入った落とし穴にはまっていた。 (また西の仕業か………生徒にまで手を出しやがって!) 怒りを覚えながら、二人の引き上げる。 「大丈夫か?」 「すみません、機龍先生」 「ありがと〜、先生」 その間に結果的に迂回していたのどかがたどり着いた。 「ゴ………ゴールですーーーー」 拍手が送られる。 (彼女、案外大物になるかもな) 一同は気を取り直し、音羽の滝へと向かった(穴はちゃんと塞いだ)。 「機龍殿も大変でござるな〜、真名殿」 その様子を見ていた楓が呟いた。 が、話し掛けた相手はいなかった。 「あれ? 真名殿??」 辺りを見回すと、真名は恋占いに石に挑戦していた。 「何やってるでござるか?」 「話し掛けるな! 気が散る!!」 呆れるほど真剣だ。 「あいあい………」 楓は何も言えなかった。 音羽の滝にたどり着いた一同は、群がるように縁結びの滝を飲む。 「コラコラ、他の一般人に迷惑掛けるなよ!」 そんな機龍の言葉を聞いているのかいないのか、グビグビと飲んでいく3−A。 「まったく………ん?」 と、機龍は何かの臭いを感じ取る。 「アルコール臭?………って、まさか!?」 はっ、として3−Aの方を見ると、既に大量の泥酔者が出ていた。 「こりゃイカン!!」 慌てて駆け寄り状態を調べる。 「ああ、滝の上にお酒が!!」 上からネギの声が聞こえてきた。 「みんな、手を貸してくれ!」 酔っていない生徒に応援を要請し運んでいく。 「急いでバスに詰め込め! バレたらややっこしくなる!!」 と、命令を飛ばしていると、左腕に重みを感じた。 「龍宮くん?」 見てみると、真名が左腕にしがみ付いていた。 「ちょうど、良かった。君も手伝って………」 「機龍せんせ〜〜〜♪」 真名はやや呂律が回らない口調で機龍を見上げる。 顔にはほんのりと赤みが掛かり、目は焦点が合っておらずトロ〜ンとしている。 「龍宮………くん?」 嫌な予感を感じる機龍。 「あたし〜、なんか〜良い気分なの〜♪」 「君も酔ってるのか!?」 思わず大声を挙げる。 そこへ楓がやってきた。 「スマンでござる、機龍殿。止めたのでござるが、聞かずに20杯ほど………」 「あ〜、もう!! 全員、バスに放り込め!!」 結局、バスにはアルコール臭が漂い、泥酔した生徒たちはイビキを起てて眠ってしまった。 「う〜〜〜〜ん、頭が………」 「20杯も飲むからだ」 と言いながら、水で冷やした手ぬぐいを布団に寝ている真名の額にのせる機龍。 他の泥酔した生徒たちは、ネギ先生と無事だった生徒たちが手分けして見ている。 ほとんどが深く眠っているが、真名は何とか目を覚ましていた。 しかし、大量に飲んだ影響か、完全な二日酔い状態である。 「すまない………手伝うとか言っておきながらこのざまとは………あ、イタタタタ!」 頭を抑える真名。 「気にするな。気づけなかった俺の責任だ」 ずれた手ぬぐいを直してやる機龍。 「今日はゆっくり休め。警備は俺とネギ先生で何とかする」 「すまない………」 「気にするなって」 落ち込む真名の頭を優しく撫でてやる。 「あ………」 その行為に真名は再び思い出す。 (そういえば、彼もよく頭を撫でてくれたな………あの大きい手で………) 機龍の手のぬくもりを感じながら、真名は眠りについた。 起こさぬよう、そ〜と立ち去る機龍。 (さて………これからどうするか?) これからのことを考える機龍。 「とりあえず、風呂にでもはいるか………」 湯船に浸かって考えようと風呂場に向かう。 入浴道具一式と念のため武装入りケースを持って、男と書かれたのれんを潜った。 と、脱衣所に入ると風呂場からスゴイ音が聞こえてきた。 「!! 敵襲か!?」 ケースからサブマシンガンを取り出しながら、風呂場へと突入する。 「動くな!!」 サブマシンガンを湯船の方に向けて警告する。 そこには全裸の刹那が、同じく全裸のネギの首と股間を締め上げている光景が広がっていた。 「き、機龍先生!?」 「き、機龍さ〜ん………」 驚く刹那と大事なところを握られて息も絶え絶えなネギ。 「………どういう状況だ………コレは?」 思わず呆気を取られる機龍。 「いや、その、あの、これは………」 慌てふためく刹那。 しかし、手はしっかりとネギの首と股間を締めたままだ。 「………とりあえず、手を離せ。あと、身体を隠せ………」 と言いながらタオルを投げて、目を伏せる機龍。 「あ………」 自分の状態を思い出し、慌てて手を離すとタオルを受け取ると身体に巻く。 「す、すみません!!」 「あう、あう、あう………」 「兄貴! しっかり!!」 すっかり混乱状態のネギ。 と、その時、 「「ひゃあぁぁぁぁーーーー!!」」 今度は脱衣所から悲鳴が挙がった。 「!! あの声は、神楽坂くんに近衛くん!?」 「お嬢様!!」 そう叫ぶないなや、刹那は脱衣所に突入した。 「刹那さん!?」 「お嬢様?」 遅れて機龍と立ち直りタオルを腰に巻いたネギも突入する。 「いやああ〜〜〜〜ん!!」 「ちょっ………ネギ!? なんかおサルが下着をーーーー!?」 見ると、デフォルメされた小猿がアスナとこのかの服を引っぺがしている。 「アスナさん!! このかさん!!」 「なんだ!?」 呆気取られる機龍たちに小猿が襲い掛かる。 「うわっ!!」 「む!?」 咄嗟にサブマシンガンで撃ち抜く。 弾丸が当たった小猿はポンッと音を発てると紙になった。 「!! 式神!!」 それはヌエのコックピットに残されていた式神の紙型に酷似していた。 「ああーー!! このかがお猿に攫われる!!」 それに気をとられているうちに、別の小猿たちがこのかを担いで運び出す。 「!! しまった!!」 と、その時、刹那が飛び出した。 「神鳴流奥義………百烈桜華斬!!」 神鳴流の技が決まり、小猿は一瞬で消え去った。 「きゃっ!!」 支えを失ったこのかを刹那が受け止めた。 「お怪我はございませんか? お嬢様」 「せっちゃん………」 安堵する二人。 「よかった〜」 「何なの一体?」 同じく安堵するネギと理由が分からず混乱するアスナ。 と、 「!! そこか!!」 機龍が垣根の傍の木の中を目掛けて、ケースからコンバットナイフを取り出し投げた。 木に中に消えると、少し遅れて下に落ちるナイフ。 その刃先には、護符のようなものが刺さっていた。 「逃がしたか………」 忌々しげに呟く機龍。 「どうしたんですか? 機龍さん」 「気配を感じたんだが、一足遅かったようだ」 尋ねてきたネギにナイフを回収しながら言った。 「さて、まずは情報整理………いや、その前に………後始末か」 斬られた湯船の岩に脱衣所に空いた無数の弾痕、そして、辺りに散らばった式神の紙型の残骸を見ながら言った。 「これは………大変ですね………」 一同はタメ息を吐いた。 NEXT |