第37話



動く通路にしばらく乗っていると、PF格納庫へと辿り着く一同。

灰色の鉄板で造られた空間に、ケースのような物で区切られたPFが造りかけを含め、ズラリと並んでいた。

さながら、巨人の森と言ったところか。

整備用と思われるロボットやメカが忙しく走り廻っていた。

「うわ〜〜〜、スゴイ!」

「壮観な光景ね」

目を奪われるネギとアスナ。

「おお、機龍。それに皆、待ってたネ」

「お待ちしてました〜〜」

機龍達の姿を見つけた超とハカセが寄って来る。

「超、ハカセ、皆のPFは?」

「あそこに並んでるネ」

「セイバー小隊の機体の奥のハンガーです」

超とハカセが指差した先には、ハンガーに収まっているセイバー小隊のPFの奥のハンガーに並んでいるPFの軍団があった。

「あれが私とハカセが持てる技術を全て注ぎ込んだPF………Gシリーズネ!!」

「Gシリーズ? Jじゃないのか?」

アルサレア製のPFは、頭にJの文字を冠しているJシリーズと呼ばれている物が多い。

しかし、超とハカセが言ったのはGシリーズだった。

「区別のためネ。惑星JのPFがJシリーズなら、地球のPFはGAIA………Gシリーズネ!」

拳をグッと握り締める超。

「さらに、私達が開発したATSによって高いポテンシャルを発揮します」

「ATS? 何だい、それは?」

聞きなれない単語に首を傾げる機龍。

「アビリティ・トレース・システム(ABILITY TRACE SYSTEM)………操縦者の能力・特殊技能を機体に乗った状態でも使えることを可能にするネ」

「つまり、魔法や特殊技術の技を機体で使うことができるんです」

「それはスゴイな………」

機龍は、超とハカセの技術レベルに感心する。

「では、手前から紹介していくます。着いてきてください」

超とハカセに続く一同。


最初に紹介されたのは、ローブを纏った魔法使いのようなデザインで、右手にネギと同じ杖を持った機体だった。

「Gウィザード………ネギ坊主の機体ネ」

「これが僕の機体か〜、カッコイイな〜」

「まさしく兄貴のための機体だな」

ロボットに乗れることが嬉しいのか目をキラキラさせているネギと感心するカモ。

やはり、こういうのは少年の憧れであろう。

「基本的には、ネギ先生の魔法攻撃をATSで機体にトレースして戦います。右手の杖………マジックスティックはサンダコン系の武器を改造した物ですから、棒術にも使えます」

「棒術か〜………使えるかな?」

やや不安がるネギ。

機龍はそんなネギの頭に手を置いて言った。

「な〜に、これから覚えれば良いんですよ。頑張ってください」

「兄貴! 俺も微力ながらお手伝いさせていただきやす!」

「はい!!」

機龍とカモに励まされて元気を取り戻す。

「この機体はコックピットに特別仕様の装置があるネ。説明するからついてくるヨ」

「あ、はい!」

超とハカセに連れられて、搭乗用エレベーターに乗ってコックピットに近づくネギ(+カモ)。

辿り着くと超がハッチを空けて中を見せる。

「うわ〜〜! スゴイですー!!」

「うほほ!」

機械が密集する空間に驚く。

「ちょっと入ってくれますか?」

「はい、わかりました!」

ウキウキとコックピットに潜り込む。

「座席の後ろに何かを立てるような機械があるネ?」

超に言われて座席の後ろを覗き込むネギ。

「あ、はい! あります」

「そこにネギ先生の杖をセットすることで魔力伝達回路が作動し、呪文詠唱することでGウィザードは魔法攻撃を行ないます。始動キーはいりません」

「ほ〜〜〜! ハイテクだな!」

超の技術に感心するカモ。

「では、次の機体に行くネ」


次に紹介されたのは、ややシャープな体型の西洋甲冑を身に纏ったようなデザインで、両足にエネルギー放射型コンバーター、首には真紅のマフラーを巻いた機体だった。

「Gヴァルキューレ………アスナさんの機体ネ」

「これが私の機体? へえ〜〜、イカスじゃない」

Gヴァルキューレを見上げるアスナ。

「両足のコンバーターからエネルギーを放射して叩き込む蹴りが強力です」

「これもコックピットに特別仕様の装置があるネ。着いて来るヨ」

「はいはい」

先ほどと同じように超とハカセに連れられて、搭乗用エレベーターに乗ってコックピットに近づき、ハッチを空けて乗り込むアスナ。

「左脇にあるカード差込口に仮契約カードを差し込んで、アーティファクトを呼び出してみてください」

「分かったわ………アデアット!!」

言われたとおりにしてアーティファクトを呼び出す。

すると、アスナの手ではなくGヴァルキューレの手にPF使用サイズのハマノツルギが現れる。

「わわっ!? どうなってんの?」

「ATSの機能の1つネ。アーティファクトの転送座標と粒子固定位置を………」

「ちょ、ちょっと! そんな難しいこと言われても分からないわよ!」

さすがにバカレンジャーでなくても、この説明は分からないだろう………


続いて紹介されたのは、白拍子の服を着ているようなデザインで、後ろ腰に長刀を携帯して白い翼を生やした機体だった。

「Gウイング………刹那さんとこのかさんの機体ネ」

ビシッと固まる刹那。

やがて、ゆっくりと口を開く。

「あの………超さん………聞き違いですか?………今、私とお嬢様のって聞こえたんですが………」

「うむ、言ったネ」

途端に超に詰め寄る刹那。

「何で私のだけ2人乗りなんですか!?」

「このかさんには戦闘補助をしてもらいたいネ。でも、それだと敵に狙われやすくなるヨ。だから、複座の機体に乗せて補助してもらうネ」

さも当然のように言う超。

「この機体もGヴァルキューレと同じく、アーティファクトを機体の武器として使用できます」

「刹那さんのアーティファクトを呼び出している時は戦闘型、このかさんのアーティファクトを呼び出している時は回復型にプログラムが入れ替わるネ」

「そーじゃなくて!!」

「せっちゃん………ウチと一緒に乗るのそんなに嫌なんか?………」

地面に蹲るとのの字を書き始めるこのか。

「あ、いえ!! お嬢様!! そうではなくて………」

「ええんや、ええんや………どうせウチなんか………」

なおもいじけるこのか。

「あの………その………」

しどろもどろする刹那の肩に手を置く機龍。

「諦めろ………なに、君なら大丈夫だ」

「………はい」

結局、刹那はこのかとタンデムすることになったのだった………


次に紹介されたのは、拳法道着を着て後頭部から弁髪のような飾りを垂らしたデザインで、両腕に布のようなものが巻かれ、左腰にトンファー、右腰にヌンチャク、後ろ腰に三節混を携帯した機体だった。

「Gカンフー………クーフェの機体ネ」

「アイヤー、随分と的を獲た機体アルな………」

なかなか気に入ったようなクー。

「格闘戦に特化させています。両腕の布は布槍術用の物で、鋼鉄製の繊維でできています」

「後頭部の弁髪も振り回して武器にできるネ」

「ウム、いい感じアルね。でも………大丈夫アルか?」

2人の発明に酷い目に合わされているので、超とハカセが造ったということに不安があるようだ。

「ああ〜〜、そういうこと言うんでしたら遠隔自爆装置取り付けますよ」

「核爆弾並みのネ………」

「や、やめるアル〜〜〜!!」

後ろで聞いていた一同は揃って思った。

((((あの2人ならやりかねない………))))


続いて紹介されたのは、忍び装束を着たようなデザインの、背中に大型手裏剣、後ろ腰に小刀を2本携帯した機体だった。

「Gニンジャ………長瀬さんの機体ネ」

「いや〜〜、拙者、忍者ではないでござるよ、ニンニン」

((((そんな風に否定されても説得力ないっつーの………))))

心の中でツッコミを入れる一同。

「ステルス性能と光学迷彩機能とスピードを極限まで高めています。隠密行動や奇襲には持ってこいの機体です」

「あの大型手裏剣と小刀2本以外にも様々な武装を隠し持っているネ」

「ほうほう………」

頷く楓。

「もちろん、お得意の分身もATSによって問題なく使えるネ」

「ただ、装甲が他の機体と比べて薄くなってますから気をつけてください」

「あいあい………ようは敵の攻撃に当たらなければいいんでござる」

「簡単に言ってくれるな〜」

そう言いつつも楓なら問題ないと思う機龍。


次に紹介されたのは、防弾チョッキを着たSWTA隊員のようなデザインで、後ろ腰にバレルが3つの拳銃を携帯した機体だった。

「Gガンナー………龍宮さんの機体ネ」

「うむ………悪くないな」

満足そうな顔をする真名。

「これの機体もGヴァルキューレやGウイングと同じようにアーティファクトを機体の武器として使うことができます」

「後ろ腰の銃はケルベロスと言って、パーツ交換をすることでマシンガン、ライフル、ハンドガンに使い別けられるネ」

「ほう………万能だな」

ふと、機龍の方を見つめる真名。

(これで………機龍と同じ戦場に立てるな)

と、その視線に気づく機龍。

「? どうした?」

「! い、いや!! 何でもない………」

慌てて視線を逸らす真名。

「??」

怪訝に思いながらも別に追求しない機龍なのであった。


次に紹介されたのは、蝙蝠の翼を生やした吸血鬼のようなデザインで、左腰に鉄扇が携帯され、両手の指先が鋭い爪になっていた。

「Gバンパイア………エヴァンジェリンさんの機体ネ」

「フフフ………なかなか私に相応しいデザインじゃないか」

笑みを浮かべてGバンパイアを見つめるエヴァ。

「これもGウィザードと同じく、エヴァンジェリンさんの魔法による攻撃を武器としています」

「お得意の合気鉄扇も使えます。それから、これはオプションです」

そう言って腕輪のような物を差し出すハカセ。

「これは?」

「エヴァンジェリンさんの呪いを遮断する装置です。ただ、完全に遮断はできません。精々、一般的な魔法使い並みに魔法が使えて、学園外への出入りができる程度です」

「ほう………そいつを聞いて安心したぞ」

腕輪を受け取って腕にはめながら、邪悪な笑みを浮かべるエヴァ。

「ただし………必要時以外にはプロテクトが掛かってるから、使用はできないヨ」

「何!?」

「プロテクトの解除は機龍さんしかできません」

エヴァはキッと機龍を睨みつける。

「すまないな。君の場合、それを悪用しかねないのでな………」

「貴様ーーー!!」

怒りを爆発させるエヴァ。

「怒るなって、この前、京都で買ってきた秘伝の緑茶、別けてやるからよ」

「………ならいい」

と、あっさり引き下がるエヴァ。

………よほど美味い緑茶なのだろう。


最後に紹介されたのは、戦闘機を人型に変形させたようなデザインをした、両肩にロングバレルキャノン、両手にレールハンドガン、両脇腰にレーザーブレードの柄、背部に戦闘機のような円形のミサイルポットを付けた翼とジェットエンジンをつけたリフターを装備した機体だった。

「Gジェット………茶々丸の機体ネ」

[私の機体ですか]

「あのフレーム構造………ひょっとして変形機能があるのか?」

外見を見て、超とハカセに尋ねる機龍。

「はい、そうです。この機体は戦闘機形態への変形機能を組み込んであります」

「空中戦および高機動戦に特化させているネ」

自慢げに話す超とハカセ。

[ありがとうございます、超さん、ハカセ]

ペコリと頭を下げる茶々丸。

「茶々丸、頑張ってね。貴女は私にとって、最高の娘なんだから」

[!! ………はい!!]

うれしそうに答える茶々丸。


「以上でそれぞれの機体の説明を終わるネ」

「後は訓練と実戦あるのみです」

「2人ともご苦労様」

「それじゃ、コレを渡しておいてください」

超とハカセはアタッシュケースを渡し整備に戻る。

機龍はネギ達に向き直り、アタッシュケースを開けて中を見せる。

そこには、機龍達セイバー小隊が持っているのと同じ、腕時計型通信機が並んでいた。

「これも支給品だ。オペレーター組にはサクラくんが配ってくれている。各自、1つ取ってくれ」

「これで僕達も、機龍さん達の仲間入りですね」

次々と腕時計を取っていくネギ達。

そして、全て取り終わると、機龍はネギ達に向かって演説を始めた。

「さて、皆! 改めて言う! 君達は今日から地球を守る戦士だ!! この先、様々な困難・苦難が待ち受けているだろう。 しかし!! 我々に敗北は許されない!! もし負ければ………地球はたちまちヴァリムに征服されるだろう」

「「「「……………」」」」

深刻な雰囲気に呑まれ、押し黙るネギ達。

「そんなことは許してはいけない!! 我々は断固としてヴァリムに立ち向かう!! だが………決して死に急ぐことはするな!! 生き残らなければ、真の勝利とは言えない!! これは俺からの………最優先命令だ!!」

「「「「了解!!」」」」

バッと敬礼して答えるネギ達。

「では、ここに………独立防衛部隊、機甲兵団ガイアセイバーズの結成を宣言する!!」


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