ヴァリムの生物兵器の襲撃から一夜明けた麻帆良。
相変わらずの厳戒警報と曇り模様により、日曜にも関わらず、人っ子一人出歩いていない。
店も皆、臨時休業を取り、あの騒がしい麻帆良がゴーストタウンのように静まり返っている………
そんな中、機甲兵団ガイアセイバーズ基地では、作戦室に入院したメンバーとその付き添いメンバー(ネギ(+カモ)、刹那、楓、ザジ)とテクノオフィサーを除いて、全員が集合していた。
「機龍、入院したメンバーと付き添いのメンバー以外、全員揃ったぞ」
3−Aメンバーを代表して、真名が言った。
「うむ………では、これより、作戦会議を開く」
それを聞いて、重々しく話し出す機龍。
「昨夜、我々はヴァリムの生物兵器と思われる怪物と交戦した」
機龍がそう言うと、モニターに記録映像に残っていた怪物が映し出される
「「「「「……………」」」」」
直接見るのが初めてなオペレーター組が怪物の迫力に黙り込む。
「結果、怪物に中度の損害を与えることに成功したが………我々も多大な被害を被った」
悔しそうに言う機龍。
「PFはGレディが小破、Gマジシャンが中破、Gウルフ、Gヴァルキューレが大破。パイロットは神楽坂くんと小太郎が脳震盪で、雪広くん、近衛くん、鳴滝くん達が精神的ショックで入院中だ」
真名達も同じ気持ちで、顔に悔しさを浮かべる。
「怪物は逃走………現在のところ、その行方は分かっていない」
と、作戦室の扉が開き、紙の資料を持った超とハカセが入ってくる。
「失礼するネ」
「怪物の肉片の解析が終わりました」
どうやら、最初の事件の時に採集した肉片の解析ができたようだ。
「おお、どうだった?」
「結論から言うと、この怪物は様々な生物の遺伝子を合成し、さらに呪術によって強化されているネ」
「そうか! あの時、魔法が効かなかったのはそのせいか!!」
エヴァが昨日のことを思い出し、苦々しく言う。
「さらに、驚異的な再生能力を持っています。採集した肉片が一晩で倍以上までに増大しました」
「何!? 大丈夫なのか!?」
その報告に驚愕する機龍。
「はい、幸い破片から新たな個体を生み出すほどはありません。ただ………昨日、本体に与えたダメージは回復されていると見ていいでしょう」
「さらに悪いことに、怪物はまだ成長段階にあるネ。まだまだこれからも成長する可能性があるヨ」
「何てことだ………」
頭を抑える機龍。
怪物はさらに強くなる可能性があるというのに、ガイアセイバーズの戦力は半分も無力化されてしまっている。
さらに、魔法が効かないとなると、協会に援軍を要請する理由にはいかなかった。
「何か手はないのか………」
機龍は頭を悩ませる。
「あるネ」
しかし、超からあっさりと打開策を挙げられ、ズッコケた。
「あるなら早く言えぇーーーーっ!!」
「だって、聞かれなかったヨ」
今度はヘナヘナと脱力する。
「リ、リーダー、気を確かに!」
慌ててジンが、フォローする。
「まあいい………それで………その手っていうのは?」
「ウム………怪物の細胞に相反する細胞を作り出したネ。それをヤツに注入すれば、ヤツは細胞崩壊を起こして自滅するヨ」
「やるじゃん! 3−A天才コンビ!!」
「アイヤー! 流石、ハカセと超アル!!」
勝機が見えたことで、テンションが上がる和美とクー。
他の隊員も沸き上がる。
「ただし………生成できた量でも、弾丸1発分が限界ネ」
「え………じゃあ、もし、それを外したら………」
「それこそ、本当にお手上げになります」
しかし、ハカセの一言で、またも沈痛な趣となる。
「1発か………しかし!! やるしかない!! これ以上の敗北は許されない!!」
「それしかありませんね………」
「うん!! 絶対大丈夫だよ!!」
しかし、セイバー小隊のメンツは士気を上げる。
「よし!! では、怪物に弾丸を撃つ込む役は………」
「私がやろう………」
そう言って立ち上がったのは、真名だった。
「射撃なら私の専門だ、任せてくれ」
「真名………」
[援護は任せてください]
続いて、茶々丸が立ち上がりながら言う。
「まっ………それしかないんなら、仕方ないか」
ブツブツ言いながらも、続いて立ち上がるエヴァ。
「賭けはリスクが大きいほど面白いとテレビで言てたアルよ」
クーがワクワクといった感じで立ち上がる。
「私達も全力でサポートします!」
「が、頑張ってください!」
「失敗したら承知しねーぞ!!」
「燃える展開だね!」
「ファイトです! 皆さん!!」
夕映、のどか、千雨、和美、さよも激励を飛ばす。
「よし、対処法は決まった! 後は、怪物自体の行方だな………」
「水中を移動していますから、麻帆良の川か湖にいるのは確かなんですが………」
昨日から怪物の行方が掴めていない理由には、怪物が水中を移動していることにあった。
レーダーには引っかからず、かと言って水中に潜って探す理由にもいかなかった。
「ねえ〜〜、超ちゃん、ハカセちゃん。水中に潜れるPFなんて造れない?」
と、サクラが超とハカセに聞く。
「おいおい、サクラ。幾ら何でもそんな物、簡単に………」
「それならもう造てあるヨ」
今度は全員がズドドッとズッコケた。
「だから、そういうことは早く言えぇーーーーーっ!!」
いち早く立ち直ると、ツッコミを入れる機龍。
それを涼しい顔で聞き流しながら、話を続ける超。
「こんなこともあろうかと、製作していた新型機、その名も………Gマーメイドネ!!」
超がそう言うと、モニターにコバルトブルー色の人魚型で、大きめのバックパックを背負い、三又の矛を持ったPFが映し出される。
「水中戦を念頭において開発した機体です。もちろん、レッグパーツを変形させて2脚型になれるので、陸上戦にも対応しています」
「背中のバックは水中ブースターと、水中ミサイルを内臓しているネ。右手の矛、プラズマトライデントは電撃攻撃を使うこともできるヨ」
「コイツはまた………趣味的な………」
Gマーメイドのデザインに呆気を取られる一同。
「問題はパイロットネ」
「現在のガイアセイバーズの人員は、それぞれの持ち場で一杯一杯の状態です。補充パイロットでもいれば、話は別ですけど」
「パイロットか………」
そう機龍が呟いた時………
けたたましく警報が鳴り響いた。
「!! 出たか!?」
「巨大な生命反応出現!! メインコンピューターの分析によると、99.5%の確立で、昨日の怪物と同一個体です」
夕映が報告を挙げる。
「場所は………って!! 女子寮の近くじゃねーか!!」
「何!!」
「「「「「「!!」」」」」」
千雨の報告に全員が驚愕する。
「緊急出動!! 何としても、怪物の女子寮到達を阻止するんだ!!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
*
その頃、女子寮近くの道………桜通りでは………
「う〜〜ん………やっぱり、どこのお店も開いてなかったね」
「だから言ったやないけ。今日は買い物は無理やって」
「………厳戒警報中だしね」
「あーあ、コンビニの1軒ぐらいは開いてるかと思ったんだけどなー」
運動部仲良し4人組………明石 裕奈、和泉 亜子、大河内 アキラ、佐々木 まき絵が歩いていた。
実は、この4人………今日、ショッピングに出かけようと計画していたのだが、突然の厳戒警報により、取り止めになるハメになってしまっていた。
しかし、諦めきれなかった裕奈とまき絵が、亜子とアキラを巻き込む形で寮を抜け出し、街へ繰り出した。
だが、店は開いておらず、交通機関も全面ストップしていたため、諦めて寮へと帰るところであった。
「さ、はよ戻ろう。連続殺人犯にでも出くわしたら、エライこっちゃ」
「でも、連続殺人犯なんて本当にいるのかな〜?」
ややビクビクしている亜子に、懐疑的な意見を言うまき絵。
「パルの情報によると、実は麻帆良に潜伏しているのは殺人鬼じゃなくて、怪物だって話だよ」
「まさか………」
オーバー気味に話す裕奈に、ツッコむアキラ。
「いくら何でも怪物だなんて、ありえないよー」
「そや、そや」
と、その時………
突然!! 並木の向こう側から、巨大な黒い影か飛び出してきて、4人組の前方に着地した。
「「「「へっ!?………」」」」
それは昨日のダメージを回復させ、一回り大きく成長した怪物だった。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
咆哮を上げる怪物。
その叫びで、一瞬呆然としていた4人組は我に還る。
「キ、キャアァァァーーーーーッ!!」
「か、怪物ーーーーーっ!?」
悲鳴と驚愕の声を挙げるまき絵と裕奈。
「う〜〜〜ん………」
「亜子!! しっかりして!!」
恐怖のあまり気絶した亜子を、抱えるアキラ。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
そんな4人組に怪物は歩を進める。
「わあーーーっ!! こっちに来る!!」
「に、逃げよう!!」
慌てて逃げ出そうとするまき絵と裕奈。
しかし、アキラが気絶した亜子に肩を貸しているので遅れる。
「うう………」
「「アキラ!! 亜子!!」」
2人はそれに気づくと、まき絵がアキラとは反対の方から亜子に肩を貸し、裕奈が辺りにあった物を怪物に向かって手当たり次第に投げる。
だが、怪物はそれを気にも留めず、どんどん4人組に接近する。
「だ、ダメ!! 追いつかれる!!」
「誰か〜〜〜〜っ!! 助けて〜〜〜〜っ!!」
………と、その声は届いた!!
突然、爆音と共に、弾丸の雨が怪物に降り注いだ。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
甲羅によって防がれたが、怪物は足を止める。
「えっ!?」
「何!?」
驚くまき絵と裕奈。
「………!! アレ!!」
そう言ってアキラが指差した先には、変わった形の大型戦闘機が4人組と怪物の方に向かって来ていた。
「飛行機?」
まき絵が呟いた次の瞬間!!
[トランスフォーム!!]
大型戦闘機………GジェットがPF形態に変形し、怪物を勢いの乗った飛び蹴りで弾き飛ばした。
「「「え!!」」」
あまりの出来事に、またも我を失う3人。
Gジェットは怪物から4人組を守るように着地する。
[皆さん! 今の内に逃げてください!!]
「!? この声………茶々丸さん!?」
まき絵が驚きの声を挙げる。
「うそ!! 何で!?」
理由が分からず、混乱する裕奈。
と、
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
怪物が起き上がり、Gジェット目指して突進する。
[!! いけない!!]
慌てて照準を合わせて、両手のレールハンドガンを連射する。
しかし、怪物は構わず突き進み、右手のハサミを振り下ろす。
[クッ!!]
レールハンドガンの銃身で受け止めるGジェット。
だが、怪物のハサミは、いとも簡単にレールハンドガンを引き千切る。
[何と!?]
グリップだけになってしまったレールハンドガンを捨てると、今度はレーザーブレードを持ち、怪物に斬り掛かる。
[早く!! 早く逃げてください!!]
怪物を無理やり押さえ込みながら、4人組に向かって叫ぶ茶々丸。
その時!!
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
咆哮と共に怪物の背中に、新たな鋭い爪の生えた4本指の腕が、2本生える!!
[!! 何と!?]
その腕を、Gジェットの胸部と腹部に向かって突き刺す。
爪が胸部装甲を貫通し、コックピット内に現れる!!
[!!]
危機一髪、身を捩って回避する茶々丸。
しかし、Gジェットの目からは光が消え、力なく膝から崩れた。
[!! エネルギーが!!]
どうやら、腹部の損傷が、魔力転換機関まで届いていたようだ。
エネルギー値が0を示していた。
動かなくなったGジェットに向かって、怪物は巨大なハサミの右腕を振り降ろそうとする。
「危ないーーーーっ!! 茶々丸さーーーーんっ!!」
まき絵の叫びが響くと同時に、怪物の右腕が振り下ろされる。
そこへ!!
「神薙二刀流!! 飛空円斬!!」
回転しながら飛んできた2本の刀が、怪物の右腕を切断する。
そのまま、刀はブーメランのように弧を描いて飛んできた方向へ戻って行くと、その先にいたJフェニックスがキャッチし、納刀した。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
切断面から紫色の血を流しながら、怪物は川の方へと逃走した。
「リーダー!! 怪物が逃走します!!」
「やむをえない! 今は絡繰くんの救出と、佐々木くん達の保護を優先する!!」
Gジェットと4人組の元へと降り立つガイアセイバーズ。
戦力をさらに減らされ、怪物も逃走したため、仕方なく破損したGジェットと4人組を連れて基地へと帰還するのだった。
*
「またやられたのかネ」
「面目ない………」
破損したGジェットをハンガーに納めながら超が言った言葉に項垂れる機龍。
「ま、人助けのためという理由なら致し方ないヨ。茶々丸の方は無事だったし。それよりも問題は………」
そう言って、超が目を向けた先では………
「わ〜あ〜、スゴーイ!! 秘密基地だ〜〜〜っ!!」
「ガ○ダムみたいなのが沢山ある〜〜〜っ!!」
「コ、コレって、ホンモンなん!?」
「………そうみたい」
格納庫の片隅でワイワイ騒いでいる4人組がいた。
「彼女達の処遇ネ」
「ああ………俺からキチンと説明するよ」
そう言って、4人組の方へと歩いて行く機龍。
「管理職は気苦労が絶えないネ………」
超は機龍の背に、そんな言葉を投げ掛けるのだった。
*
「………という理由だ」
「「「「……………」」」」
全てを説明し終えた時、4人組は固まって仰天していた。
「できれば、今日見聞きしたことは、君達の胸の中だけにしまっておいてほしい………我々の存在が公になれば、パニックが起こるのは必然だ」
沈痛な顔で4人組に言う機龍。
しかし………
「「「スゴーーーーーイッ!!」」」
アキラを除いた3人がそう叫んだ。
「は?」
今度は機龍が固まった。
「つまり、機龍先生は、麻帆良を守るために銀河の彼方からやって来たスーパーヒーローだったんだね!!」
「しかも、ネギ先生やアスナ達まで仲間だったなんて!!」
「ウチ、こういうの昔テレビで見たことあるで!! クラスの皆が防衛組織で、ロボットに乗ったりして平和を守るんや!!」
「………絶対無敵ラ○ジンオー」
「いや、あの、もしもし………?」
完全に機龍を置いてけぼりにして盛り上がる4人組。
と思ったら、全員、バッと機龍の方を向いて言った。
「「「「私達も協力させてくいださい!!」」」」
「え!? いや、あのだな………」
申し出を断ろうとする機龍だったが………
「「「「協力させてください!!」」」」
そう言ってズイッと迫ってきた4人組の迫力に押され、思わず首を縦に振ってしまうのだった………
*
「………間もなく作戦開始時刻だ。全員、持ち場に着け!」
図書館島の浮かぶ湖の畔にて待機している入院中とその付き添いを除いたガイアセイバーズメンバー。
それぞれの愛機に搭乗している機龍、ジン、サクラ、真名、クー、エヴァ。
さらに、機体を破壊されたため、メーサー戦車に搭乗している茶々丸と、そのアシストのまき絵、裕奈、亜子。
ついでに、戦車や装甲車などの戦闘車両で援護する役の量産型田中さん軍団。(笑)
そして………
「………では、行って来ます」
湖から上半身だけ姿を見せているGマーメイドに登場しているアキラ。
「くれぐれも気を付けるんだぞ。何かあったら、直ぐに戻ってくるんだ」
「了解………」
そう言って、アキラはGマーメイドを潜行させて行った。
「頼んだぞ………」
Gマーメイドが完全に潜行した後、そう呟く機龍。
怪物は、右腕を切断された後、この湖へと逃走した。
超とハカセの推理によると、ダメージを回復させるため、湖底で安静にしていると思われる。
そこで、適正が一番高かったアキラの乗ったGマーメイドが、怪物を湖上へ誘き出し、一斉攻撃で弱らせた後に、真名のGガンナーのケルベロスに装填された相反細胞弾を撃つ込むという作戦を取ることにした。
「いよいよだね………」
「うう〜〜、ドキドキしてきた!」
「上手くいくやろか………」
緊張に包まれるまき絵、裕奈、亜子。
(………また生徒達を巻き込んで………俺は一体何をやっているんだ!!)
そんなまき絵達の会話を聞いて、機龍は自責の念に駆られるのだった。
*
「………どこにいるんだろう?」
光なき水中を行くGマーメイド。
湖底は驚くほど静かで、コックピット内にはソナー音だけが響いていた。
と、そのソナーに反応が返ってきた。
「!!」
慎重に反応が返ってきた先へと進むアキラ。
そして、湖底に亀裂を発見する。
その中を覗きこんでみる。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
「!!………いた!!」
亀裂の底では、怪物が右腕のハサミを再生させていた。
再生に集中しているためか、アキラのGマーメイドには気づいていない。
(………いける!!)
アキラは、Gマーメイドのバックパックから、水中用ミサイルを放った!
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