爆発による気泡と泥煙が上がる。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
苦悶のような声を挙げる怪物。
そして、Gマーメイドの姿を見つけると、怒りを露にして襲い掛かる。
「………こっち」
Gマーメイドは、そのまま一定の距離を保って怪物を水上へと誘導する。
時折、触手が伸びてくるが、プラズマトライデントで薙ぎ払う。
(………もう少し!!)
*
湖の畔に立っていたJフェニックスに通信が入った。
「………こちらアキラ! 怪物を発見! 現在、水上に向かって誘導中!!」
「了解!! 大河内くん! 気を付けろ!!」
と、機龍が言った時、水面が弾け、Gマーメイドが姿を見せると、機龍達の方へと向かってくる。
続いて、大きく水面が弾けて、怪物が姿を見せた。
「「「出た〜〜〜〜!!」」」
[メーサー光線発射用意、お願いします]
驚くまき絵達に、冷静に言う茶々丸。
機龍達と田中戦闘車両部隊も怪物に狙いを定める。
「まだ撃つな! 射程距離まで惹きつけるんだ!!」
「「「「了解!!」」」」
Gマーメイドを追って、岸へと向かって行く怪物。
機龍達は、怪物が射程距離に入るまでじっと待つ。
(まだだ………あと500メートル………あと400………300………200………100………)
そして怪物は、全機の射程内に入った。
「今だ!! 撃て〜〜〜〜っ!!」
機龍の号令と共に、全員が一斉攻撃を開始した。
怪物の周りで、爆煙と水柱が上がる。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
と、怪物が大きく咆えたかと思うと、背中に竜のような翼が生えた。
「何!?」
そして、その翼を羽ばたかせると、空へと舞い上がった。
「奴め、もうあそこまで進化を!?」
怪物は、そのまま反転すると、街の方へと向かう。
「イカン!! 街に向かっている!!」
「あんなのが街に行ったら大変だよ〜〜〜っ!!」
[逃がしません!!]
飛び去ろうとする怪物の背に、茶々丸がメーサーを発射する。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
怪物は、報復とばかりに口から火炎弾を発射した。
火炎弾は戦闘車両部隊に直撃する。
「「「キャアァァァーーーーーーッ!!」」」
「大丈夫か!? 被害は!?」
[こちら茶々丸! 田中戦闘車両部隊、45%撃沈!! メーサーの出力低下!! 攻撃力30%低下!!]
茶々丸が報告する。
怪物は、再び街の方に向き直り飛び始める。
「クソ!! 行かせるか!!」
バーニアを全開にして、怪物の後を追う機龍。
「「リーダー!!」」
「「「機龍(先生)!!」」」
慌ててそれを追従するPF部隊。
だが、怪物が飛ぶスピードは信じられぬほど速く、PF隊はなかなか距離を詰められない。
「マズイ!! このままでは、街に入られてしまう!!」
「アイヤー!! 何か手はないアルか!?」
「こうなれば………ジェイス!! ハイパーモード発動!! エネルギークラッシュ!!」
[YES!! ハイパーモード発動!!]
その瞬間!!
Jフェニックスの全身から、赤いオーラのような物が放出され、機体に纏わりつく。
そして、まるで光の矢のように、怪物に突撃し、体当たりした。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
「やった!!」
「凄い!! リーダー!!」
バランスを崩し、落下していく怪物にさらに連続で体当たりを食らわせるJフェニックス。
[タイムリミットまで、あと120秒………119………118………117………116………]
「時間切れになる前にケリをつけてやる!!」
ついに怪物は、地面に叩きつけられる。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
苦悶気味に咆える怪物。
「これで、トドメだ!!」
Jフェニックスは一旦、距離を開け大きく旋回すると、最大スピードで怪物へと突進する。
だが、その時!!
怪物が体勢を整え、至近距離まで迫ったJフェニックス目掛けて火炎弾を発射した。
「!? 何!?」
避ける間もなく、火炎弾はJフェニックスに直撃し爆発する。
「ぐわぁぁぁーーーーーーっ!!」
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
大きく吹き飛ぶJフェニックスと怪物。
「「リーダー!!」」
「「「「「機龍(先生)!!」」」」」
「機龍ーーーーーーっ!!」
Jフェニックスと怪物は、互いに背中を削りながら地面を滑って止まる。
「ぐうぅ………」
ヘルメットを脱ぎ捨て、飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止めながら、機龍はJフェニックスを起き上がらせる。
しかし………
プシューーーーッという音と共に全身から煙を上げ、カメラアイから光が消え、再び倒れるJフェニックス。
[エネルギークラッシュ、使用タイムリミットオーバー………機体オーバーヒートにより、強制冷却に入ります]
「くっ………さっきの火炎弾か………」
エネルギークラッシュのエネルギー放出と火炎弾の高熱で、Jフェニックスの装甲は所々溶解していた。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
「!! まだ生きているのか!?」
エネルギークラッシュと至近距離での火炎弾の爆発を受けて、なお立ち上がる怪物。
見ると、怪物の傷は徐々に再生していく。
「再生速度が早まっている………このままではマズイ!」
「「リーダー!!」」
「「「機龍(先生)!!」」」
「機龍!! 大丈夫か!?」
Jフェニックスの周りに降り立つガイアセイバーズPF隊。
「俺よりもヤツを!! これ以上放ってはおけんぞ!!」
そう機龍が言った時、怪物は再び空へと舞い上がり、街を目指した。
「!! しまった!!」
「ああ!!」
虚を衝かれた一同が、慌てて追いかけようたしたその時!!
上空から、2つのビームが怪物の翼を撃ち抜いた。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
錐揉みしながら墜落する怪物。
「え!?」
「あ!?」
「何だ!?」
驚く一同の前に、ライトグリーンの装甲をしている右肩に弾丸のエンブレムがある天使の翼を思わせるウイングパーツをつけたPFと、黒いマントを羽織ったPFが舞い降りた。
「PF!?」
「あの外見!? もしかして!?」
そうこう言っていたところに、その2機から通信が入った。
「セイバー小隊か? こちらは、ガーディアンエルフのゼライド・コルコットだ」
「同じく、レッディー・ブルニートだ」
それを聞いて、慌てて返信する機龍。
「セイバー小隊及び機甲兵団ガイアセイバーズ隊長、神薙機龍です。助かりました、感謝します」
「機甲兵団ガイアセイバーズ?」
「何だそれは?」
聞きなれない部隊名に首を傾げるゼライドとレッディー。
と、
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
土煙を上げて、怪物が起き上がる。
「む? 話をしている暇はないか」
「そうですね、大佐」
怪物の方に向き直るゼライドのJスパイラルパワードと、レッディーのJエアロ。
「あの、アルサレアからの2人の方は?」
「今来た」
そうゼライドが言った時、
「死神様のご登場よぉ!」
という声が響いて、黒い影が怪物の左腕を根元から切断した。
「えっ!?」
素っ頓狂な声を出す機龍。
響いてきた声に、機龍は聞き覚えがあった。
影は、怪物から距離を取ると、機龍達の近くに降り立つ。
現れたのは、黒や紫等のカラーリングの巨大な翼を生やして長柄の大鎌を持った死神そのものの外見をしたPFだった。
特に頭部は悪魔と髑髏をかけあわせたような感じで、側頭部と額から角が生えた三本角の特異な形状をしていた。
「よう! 久しぶりだな、戦友!!」
そんな機体からは想像しにくい陽気な声で通信が入ってきた。
「その声!? やっぱり、レイか!?」
驚きの声を挙げる機龍。
「驚くのはまだ早いぞ、神薙」
新たに通信が入ってきたと思うと、今度は、両肩に龍の頭部、頭部にモヒカンのような飾りを付け、両脇腰に青龍刀のような刀と後ろ腰に短くした槍のようなものを携帯したPFが舞い降りた。
「ま、まさか!? アルバトス大佐!?」
「リーダー?」
「お知り合いですか?」
ジンとサクラが理由が分からず、?な顔をする。
「ああ、俺が士官学校の同期で」
「私が士官学校で上官だったのさ」
機龍の代わって答えるレイ・クルーウェルとアーノルド・アルバトス。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
突然の来訪者に置いてけぼり気味だった怪物が咆哮する。
穴が開いた翼と、切断された左腕を再生させる。
「何!?」
「再生能力か!?」
驚くレイとアーノルド。
「アルバトス大佐、どうやら機甲兵団ガイアセイバーズは被害甚大のようです」
「ここは俺達が前面に出ましょう」
そう言ってスピアを構えるJエアロと、ビームシールドを展開してビームソードを構えるJスパイラルパワード。
「そうだな、折角やって来たのだから、一暴れさせてもらうか」
「賛成ですね、大佐」
それを聞いてJヘルが対機斬鎌『リグレット』を、Jクーロン・アーノルドカスタムが対PF用斬機刃『青龍』を構える。
「何とか怪物を弱らせてください。そこへこちらにある特殊弾丸を撃ち込めば、勝てます!」
機龍の頼みに、全員が力強く答える。
「「「「任せておけ!!」」」」
そして、一斉に怪物へと向かって行った!
ヒット&ウェイの戦法で、徐々にダメージを与えていく。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
怪物は触手を使って叩き落そうとするが、動きが速く、捕らえられない。
「そら! くらえ!!」
と、レッディーのJエアロが、スピアで怪物の右腕を地面に串刺しにして動きを封じる。
Jエアロを振り払おうと、触手が伸びる。
「やらせはせん!!」
が、Jクーロンが青龍で全て斬り落とす。
「今度は私の番だ!」
触手を斬り落とされ、怯んだ怪物を見て、Jスパイラルパワードがマントを外す。
青いウィングブースターを装備し、赤と青で統一された機体色に、刀を構えた侍のエンブレムを持った姿が露になる。
そして、4門のレールキャノンを展開し、至近距離で発射した。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
紫色の血を流しながら、苦悶気味の声を挙げる怪物。
「まだまだ!! コイツも喰らいな!!」
今度は、Jヘルがリグレットで背中の腕と甲羅の一部を削ぎ落とし、左手の指部超硬度アンカー『スパイダー』を5つ全て打ち込み、高圧電流を流した。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
バリバリと感電すると、黒い煙を立てて動きを止める怪物。
「今だ!!」
真名はトロンベの全開のローラーダッシュで怪物へと走る。
特殊弾丸の入ったケルベロスを抜き、構える。
だが!!
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
怪物は最後の力を振り絞り、火炎弾を吐く。
「真名!! 危ない!!」
しかし、真名は前回転するように火炎弾を飛び越すと、怪物の眉間部分にケルベロスを衝き付けた!
「JACK POT!!」
そして、決め台詞と共に弾丸が発射された。
シャアァァァァァァァァーーーーッ!!
怪物は、眉間から紫色の血を盛大に噴出すると、やがて弾丸を打ち込まれたところからドロドロに溶けて無くなった。
「「「「やったーーーーーっ!!」」」」
歓声を挙げ、PFを飛び跳ねさせて喜ぶガイアセイバーズメンバー。
「終わったか………」
それを見ながら、安堵の息を吐く機龍。
「あれがお前の仲間達か」
そんな機龍のところに、通信を入れてくるアーノルド。
「若い………と言うより、幼い子供ばかりではないか」
メンバーの声を聞いて、驚きを示すゼライド。
「アルサレアでも少年兵、少女兵は多くいたが、あれは幾らなんでも多すぎる気がするが………」
レッディーも不思議そうに言う。
「申し訳ありません………でも、彼女達に頼らなければならないのが、我々の現状です………」
「苦労してるなー、おい」
JヘルでJフェニックスに肩を貸して立ち上がらせながら言うレイ。
「ああ………でも………頼りになる仲間達なんです」
ハッキリとした口調で機龍は言うのだった。
*
数日後。
厳戒警報も解除され、麻帆良の街に活気が戻っていた。
そして、アスナ達入院メンバーも無事退院した。
そのガイアセイバーズ基地では………
「では、皆に改めて紹介しよう。アルサレア本国より、我々を支援に来てくれた人たちだ」
メンバーを集め、改めて増援メンバーの紹介を始めていた。
「レッディー・ブルニートだ。傭兵だから階級はない。歳は20歳だ。よろしく頼むよ」
最初に名乗ったのは、わりとフランクな感じで、結構美形で黒の髪に黄色の瞳でスタイルもかなりいい男………レッディー。
しかし、何処となく頼れるということを感じさせていた。
((((できる………)))
そんなレッディーの実力を武闘四天王は瞬時に見切っていた。
「ゼライド・コルコット。同じく階級はない。歳は30。レッディー共々よろしく頼む」
続いて、結構渋い顔で銀の髪に黒の瞳、左目に傷を負っている男………ゼライド。
ただ立っているだけで、戦士の風格が感じ取れる。
「し………渋くて素敵!!」
それを見て、目がハートマークになるアスナ。
どうやら彼女のストライクゾーンだったようだ。
「………は!! いけないわ、私には高畑先生という人が………」
などと呟くアスナを無視し、自己紹介を続ける。
「俺はレイ、レイ・クルーウェル。階級は准尉。よろしくぅ! ダチが世話になってるな」
金髪で、前髪は目にかかるくらいで、後髪は肩甲骨が隠れる位まで伸ばし根元で一つに束ねた髪型の、両目とも紫の瞳で、二枚目系の顔の男………レイ。
「いえいえ、こちらこそ。機龍さんにはいつもお世話になってます」
ネギが丁寧に返す。
「へへ、そうかそうか。じゃ!」
ネギに右手を差し出すレイ。
「え? あ、どうも」
やや戸惑いながらもネギも、右手を出して握手する。
「これで、お前も俺の友達だな」
「え?」
「握手をしたら、そいつとはもう友達だ。だから、俺とお前は友達だ」
にこやかな顔で言うレイ。
「あ………はい!!」
つられてネギも笑顔になるのだった。
「変わってないな」
戦友の変わらない様子になんとなく安心感を覚える機龍。
「へへ、まあな」
「最後は私だな。アーノルド・アルバトスだ。階級は大佐。よろしく頼む」
「「「「よ、よろしくお願いします」」」」
やや畏縮するネギ達。
しかしまあ、スポーツ刈りの赤髪で身長2メートル近くの長身。
深紅の両眼に、かなり強持てな顔つきで左頬に切り傷と思われる大きな古傷がある。
ゼラルドの方は渋さが前に出てたが、こっちはワイルドさが前に出ている。
これで初対面でびびるなと言われても、無理だろう。
「皆、大佐は強面だが、いい人だぞ。そんなに畏縮するな」
「神薙。強面は余計だ」
「は、はい!! 申し訳ありません!!」
途端に直立不動の体勢になる機龍。
「おいおい、お前こそ畏縮してるじゃないか。もう俺はお前の上官じゃないし、今この部隊の隊長はお前だろう」
「いえ、しかし、大佐の方が階級が上ですし………」
「やれやれ………相変わらず真面目な奴だな」
半分呆れ気味に言うアーノルド。
「お前もそういうところは変わってないよな〜………そう言えば、あん時も………」
「わ〜〜〜っ!! レイ!! その話はやめろ!!」
何か言いかけたレイの口を慌てて塞ぐ機龍。
「え〜〜!! 何々!?」
「教えて教えて!!」
しかし、時既に遅し。
機龍が秘密にしたがる話とあって、甘いものに群がる蟻のように問い質す和美達。
「いや!! 何でもないって!! ホント!!」
「あれは確か………神薙が士官学校の………」
しかし、今度はアーノルドが語りだす。
「大佐〜〜〜〜っ!!」
必死になって話を阻止しようとする機龍と、語りたがるレイとアーノルド。
そして、懸命に聞こうとする和美達。
そんな集団から離れて、ジンとサクラに話しかけるレッディーとゼラルド。
「やはり………」
「元気の良い仲間達だな」
半分呆れ、半分驚いた様子で言うレッディーとゼラルド。
「と、いうより、騒がしいかも………」
「………否定はしませんね」
サクラとジンは苦笑いを浮かべながら、そんな機龍達を見やるのだった。
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