ガイアセイバーズ基地作戦室………
非常警報が鳴り響いて、隊員達が集合する。
「オペレーター! 敵は!?」
「敵の数は1! 有人機!! 例の機体です!!」
「やはりか!!」
「モニターに出します!」
メインモニターに敵機の映像が映し出される。
バイザー状のカメラアイを有し、背中にビームキャノンを付けたバックパックを装備し、両腕にシールドのようなものをつけた、無骨ながらもシンプルで『いかにも量産型』なデザインで、漆黒のカラーリングに、右肩部分にカラスを模したパーソナルマークの付いた機体が映し出される。
「またコイツか………」
「ここ数週間で何度も仕掛けてきてますね」
この機体は、これまでに何度も機甲兵団ガイアセイバーズの前に現れ、戦いを挑んでいた。
しかし、何時も奇妙なところで撤退を繰り返しており、決着が着かずにいた。
「一体何を考えているんでしょう?」
「ともかく、現れたのなら戦うまでだ! 総員、出撃!!」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」
*
山岳エリアの荒野………
そこに佇む1機のPF。
腕組みをして、悠然と構えている。
と、そこへ、ガイアセイバーズが到着した。
「謎のPF! 今日こそケリを着けさせてもらうぞ!! 全機! 攻撃開始!!」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」
機龍の号令の元、一斉に謎のPFに攻撃を仕掛ける。
しかし、驚いたことに謎のPFは圧倒的な戦力差にも関わらず、ガイアセイバーズからの攻撃を全て去なしている。
恐ろしい操縦テクニックと機動性だ。
「くっ!! 相変わらず、敵ながらいい腕だ!!」
と、機龍が苦々しく呟いた時、謎のPFが忽然と姿を消した。
「!! 消えた!!」
「落ち着け!! レーダーを見ろ!!」
全員がレーダーに目をやると、ちょうど自軍の中央に敵機を示すマーカーが存在していた。
「中央!? しまった!!」
機龍がそう叫んだ瞬間!!
自軍中心の景色が揺らぎ、鏡のような銀色の粒が四方八方に飛び散ったかと思うと、激しく回転している謎のPFが現れた。
飛び散った銀色の粒がガイアセイバーズの機体に損傷を与える。
「うわっ!!」
「キャア!!」
「大丈夫か!?」
「はい、何とか………」
[損傷軽微。問題ありません]
幸いにも被害は少なかった。
「この〜〜〜〜っ!!」
空かさず、機龍のJフェニックスが右手に持った刀で斬り掛かる。
しかし、謎のPFはジャンプしてかわすと、再び姿を消した。
「ぬう!! 今度はどこへ!?」
慌ててレーダーに目をやると、敵機のマーカーは戦場を急激に離れていき、やがてレーダーの圏外に離脱した。
「なっ!? また逃げた………」
呆然とする一同。
決着はまたも着かなかった。
*
翌日の日曜日………ガイアセイバーズ基地作戦室。
休日なので、軍関係メンバーだけを集め、謎のPFについて検討していた。
「それにしても、一体あの機体のパイロットの目的は何なんだ?」
疑問を口にするレイ。
「単に偵察なのか、他に目的があるのか………」
その言葉に機龍も頭を捻る。
「まったく分かりませんね………ある時刻になると突然撤退したり、回転攻撃を仕掛けてきたと思えば、そのまま離脱する」
ジンが謎のPFの行動を振り返ってみる。
「ホント、謎ですよね〜」
サクラもわけが分からないといった感じに言う。
「あ〜!! さっぱり分からん」
ガシガシと頭を掻くアーノルド。
「「……………」」
そんな中、レッディーとゼラルドの2人は黙って何かを考えていた。
「? どうしました? 御2人供」
それを疑問に思った機龍が声を掛ける。
「いや、実はあの機体………」
「どこかで見たような気がしてな………」
「ええ!? 本当ですか!!」
「一体、何処で!?」
全員の視線がレッディーとゼラルドに注目する。
「あれは確か………」
「傭兵組織『ワイズオウル』を訪れた時………」
*
一方その頃、麻帆良商店街では………
「今日の夕食、何にしようかな〜〜?」
メニューを考えながら、夕食の材料の買出しに来たこのか。
と、スーパーの前まで着た時、
「やっべぇ! 急がねぇとタイムサービス終わっちまう!!」
そう言いながら走ってきた少年と打つかってしまう。
「キャッ!!」
「うわっ!!」
お互いに尻餅をつく2人。
「いったいな〜〜」
相変わらずののんびり口調で言うこのか。
「大丈夫? 怪我とか無い?」
青少年は慌てて立ち上がると、このかに手を差し出す。
「うん、だいじょぶやで〜」
このかはその手を取りながら、改めて少年の姿を見やる。
伸ばし放題でボサボサの紺碧色の髪。
最長で背中の真ん中辺りで所々寝癖あり。
頭頂部からアンテナを思わせるアホ毛が生えている。
眠たげなタレ目気味の深紅の両眼。 温和な顔立ちで比較的美形な部類に入るが、無頓着な服装や髪型がそれを台無しにしている。
「そう、よかった………と、いけね!! タイムセールが!!」
慌ててスーパーの中へ消える少年。
「なんだか面白い人やったな〜」
そう言いながら、このかもスーパーの中へ入っていった。
*
「う〜〜ん………今日は肉料理にしようかな〜」
肉類が安売りなのを見て呟くこのか。
「え〜っと、特売品の牛肩ロースは………っと………売り切れかよ………」
と、そこへ、先ほどの青少年が現れた。
「あ! さっきの面白い人」
「ん? ああ、こんにちは」
ぺこりと頭を下げる少年。
「いや、ホント、さっきはゴメン」
「気にせんでええで〜。ウチもボ〜〜っとしとったし」
「いや、それじゃ、俺の気が済まない。お詫び・・と言っていいか分からないけど、今晩、お邪魔してもいいかな?」
「え?」
思わぬ少年の申し出に驚くこのか。
「俺が晩飯作るよ。あ、材料は自分で持ってくるから心配しなくていいよ。それに、味のほうも保障するよ」
「う〜〜ん、嬉しいんやけど………ウチ、女子寮住まいなんや」
「じょ、女子寮!? あ〜〜………ゴメン。そりゃ無理だわ」
ガックリと項垂れる少年。
「アハハ、ホンマ面白いな〜君。名前何ていうん?」
「ん? ああ………俺はゼオ。ゼオ・シュルトだ。君の名前は?」
「ウチ、このか。近衛木乃香や」
その日、このかはゼオと名乗る少年と友達になった。
この時、このかは、この後の起こる過酷な現実を知るよしもなかった。
*
さらに翌日の放課後………ガイアセイバーズ基地作戦室。
全員が集合した作戦室で会議が始まる。
「全員揃ったな」
機龍が確認するように言う。
「機龍さん、今日はどうしたんですか?」
皆を代表するかのようにネギが言う。
「うむ………例の謎のPFの正体が分かったんだ」
「えっ!? 本当ですか!?」
驚きに包まれるネギ達。
「ああ………レッディーさん、ゼラルドさん、お願いします」
「分かった」
「うむ」
機龍に代わって説明を始めるレッディーとゼラルド。
「あの機体は元アルサレア軍兵器研究所で開発されていた実験機………シャドウレイヴンだ」
「特徴的な機体だったからな、やっと思い出したんだ」
2人がそういうと、メインモニターに謎のPFの映像が映し出される。
その隣に良く似た機体の設計図が映し出される。
「元々はアルサレア軍兵器研究所で開発されていた新兵器を搭載した試作機だったんだが、研究所がヴァリムの強襲を受けて壊滅」
「その時に一緒に破壊されたものと思われていたんだが、どういうわけか傭兵組織『ワイズオウル』の手に渡り、そこの傭兵の1人に支給されカスタム化されたらしい」
「それで………パイロットのことは?」
最大の謎を問い質す。
「うむ………傭兵組織『ワイズオウル』組合No.4649………そいつがこの機体のパイロットだ」
レッディーがそう言うと、PFの映像が消えて、1人の少年の写真が映し出される。
「あ!!」
と、それを見たこのかが驚きの声を挙げる。
「このかさん?」
「どうしました? お嬢様」
「う、ううん、何でもない………」
不審に思ったネギと刹那が問い質すが、このかは首を横に振る。
「そいつが、パイロットか?」
「何か私達とそんなに歳が変わらないみたいに見えるけど?」
エヴァとアスナがもっともな疑問を挙げる。
「確かに、この少年の歳は16歳。君達と大差ない歳だ」
「しかし、実力は強者揃いのワイズオウルの中でもナンバー1と名高い」
それに答えるように話を続けるレッディーとゼラルド。
「さらに生身での戦闘能力もケタはずれに強い」
「こちらで例えるなら、高畑教諭並と言っておこう」
「タカミチと同じくらい!?」
「嘘!?」
驚きに包まれる一同。
自分等とそんなに変わりのない歳の少年が、学園最強の広域指導員と謳われているタカミチと同じくらいの強さと言われたのだ。
驚くなという方が無理だった。
「それで名前とかは分かりますか?」
「いや………流石にそこまでは傭兵の守秘義務で聞き出せなかった」
「この顔写真だけでも引き出すのに苦労したからな」
その後もアレやコレと話し合いが続いた。
そんな中、このかはただじっとモニターの顔写真を見つめていた。
その顔写真の少年………ゼオ・シュルトを………
*
翌日、商店街………
このかはゼオの姿を探していた。
探してどうする………会ってどうする………
そんな考えが頭の中を過ぎりながらも、このかはゼオを探し続けた。
そして、商店街の片隅の八百屋で、遂に彼の姿を見つけるのだった。
「おお〜〜! 安い!! やっぱりここは穴場だな〜」
このかの気持ちなど、これっぽちもしらないゼオは安売りの野菜に歓喜の声を挙げていた。
「ゼオくん!!」
「ん? ああ、このかちゃん。どうしたんだい? そんなに慌てて?」
「ええと………あの………ちょっと来て!!」
このかはゼオの手を取って、半ば強引に引っ張っていった。
「あ、ちょ、ちょっと、何!? まだ、何も買ってないのに〜〜〜!!」
*
しばらくゼオを引っ張っていたこのかは、人気のない公園を見つけると、そこへ入っていった。
「ハア………ハア………」
「どうしたんだい一体? そんなに息を切らしてまで走って? この後、笑点の時間だから、早く帰りたいんだけど………」
やや息切れ気味のこのかに対し、涼しい顔をしているゼオ。
「あの………ゼオくん!」
ゼオの方に向き直って言うこのか。
「ん?」
ゼオは何事かと首を傾げる。
「…………」
このかは一瞬無言になり、俯いて迷っている素振りを見せたが、やがて意を決したようにゼオに聞いた。
「ゼオくん………なん………あの謎のPFのパイロットは?」
「!!」
ゼオの目が驚いたように見開かれる。
「どうしてそれを!?………いや………そうか、そういうことか」
何かに納得したかのような顔になるゼオ。
「君も………機甲兵団ガイアセイバーズの隊員だったんだね」
「ゼオくん!! 逃げて!! ここから逃げれば皆も!!」
と、このかが言いかけた時、
「お嬢様!!」
「このか殿!!」
刹那と楓が現れ、2人の間に割って入った。
「!! チッ!!」
「!! せっちゃん!! 楓さん!! どうして!?」
慌てて距離を取るゼオと、2人の登場に驚くこのか。
「申し訳ありません、お嬢様………」
「昨日のこのか殿の様子が気になって、失礼ながら跟けさせてもらったでござるよ」
夕凪と巨大手裏剣を構える2人。
「フフフ………剣士に忍者か………随分とバリエーション豊かな隊みたいだな、ガイアセイバーズとやらは」
まるで人が変わったかのように不敵な笑顔を浮かべ、左手にリボルバー式の拳銃、右手に警棒のようなものを構えるゼオ。
「大人しくするでござる」
「お嬢様を悲しませることはしたくない………投降してくれ」
降伏を呼びかける楓と刹那。
「悪いが無理だな………軍は嫌いだが、傭兵のプライドに懸けて、引き受けた仕事は完遂させてもらう」
だが、ゼオはその申し出をきっぱりと拒否する。
「ならば………」
「覚悟!!」
それを聞いた刹那が飛びかかる。
「神鳴流奥義………斬岩剣!!」
岩をも両断する必殺剣を放つ。
しかし!!
「フッ………」
ゼオは、あっさりと右手に警棒のようなものでそれを受け止める。
「なっ!! ぐっ!!」
驚くと同時に手に痺れを感じ、刹那はバッと距離を取る。
よく見てみると、警棒のようなものからは電流が迸っていた。
「スタンロッドって言ってな………棒状の対人用スタンガンさ。受け止めても、電流からは逃れられないぜ」
相変わらず不敵な笑顔を浮かべて言うゼオ。
「ならば、これはどうでござる!!」
今度は楓が巨大手裏剣を投げるつける。
「無駄だ!!」
ゼオは巨大手裏剣に向かってリボルバーを5発撃った。
放たれた5発の弾丸は、巨大手裏剣のまったく同じ所に全弾当たり、巨大手裏剣の軌道が逸れ、地面に突き刺さる。
「なっ!? まったく同じところに全弾当てて軌道を逸らすとは!!」
「いや………まだ1発残ってるぜ」
最後の1発を楓に向かって撃つゼオ。
「がはっ!!」
銃弾は楓の胸を貫通し、血が吹き出る。
「楓!!」
「楓さん!!」
だが、次の瞬間にポンッと音がし、銃弾で撃ち抜かれた楓の姿が丸太へと変わる。
「何!?」
ここで初めて、ゼオは驚きの表情を示す。
「変わり身でござる」
忍者刀を構えた楓がゼオの後ろから姿を現す。
「もらったでござる!!」
「………何てな」
隙をついたと確信した楓の足元に、黒い物が転がる。
「なっ!?」
それが手榴弾だと理解した瞬間、眩い光が弾けた。
「「うわっ!!」」
「キャア!!」
まともに見てしまったこのか、刹那、楓は目が眩んでしまう。
「唯の閃光弾だ………決着はPF戦でつけてやる。この街の郊外の荒野で待つ。仲間達を連れて来い、そこで勝負だ」
ゼオは満足に動けそうにない3人を一瞥すると立ち去ろうとする。
「ゼオくん!!」
目が見えないながらも、声のした方へ手を伸ばすこのか。
一瞬だけ悲しそうな顔で振り返り言った。
「君とは………戦いたくなかった。だが……神様とやらは兎に角悲劇的展開を好むようだ」
そう言い残し、ゼオは立ち去った。
「ゼオくん!!………何で………何でこんなんなってしまう………なんでや………」
このかの閉じた目の間から涙が溢れ、地面に染みを作っていく。
「お嬢様………」
「このか殿………」
掛ける言葉が見つからず、黙り込む刹那と楓。
そして………
そのやり取りをやや離れた影から聞いていた者がいた。
「そういうことか………」
機龍だった………
*
ガイアセイバーズ基地作戦室………
あの後、刹那は仕方なくメンバー全員に連絡を取り、基地に集合し出撃しようとした。
しかし、どういうわけか機龍が姿を見せず、さらにこのかが出撃用ダストシュートの前に立ち塞がり、出撃不能状態に陥っていた。
「お願い! 待って!! ゼオくんと戦わないで!!」
「このか! 落ち着いて!!」
「このかちゃん………事情は聞いている。しかし、彼が敵である以上、我々は戦わなければならない」
「いやや!! そんなん!!」
このかは頑として出撃用ダストシュートの前を動かなかった。
「リーダーはまだか!?」
「さっきから呼び出しているんですが、応答がありません」
「一体どうしたんだろう? リーダーに限って遅刻なんて………」
さらに機龍の不在により、混乱に収集は着かずにいた。
と、オペレーター席の通信機が鳴った。
「!! 機龍さんですか!?」
「いえ、内線通信です。はい、こちら作戦室」
「こちら格納庫! ハカセです!! 一体どうなってるんですか!?」
格納庫のハカセから慌てた様子で通信が入る。
「どうしたんですか、ハカセさん!? そんなに慌てて!?」
「機龍さんのJフェニックスが、突然オートで出撃しました!!」
「ええ!!」
「何だ!? 何だ!?」
「どうした!?」
突然大声を挙げたのどかに全員が注目する。
「そ、それが………」
「ああ!!」
と、今度は夕映が声を挙げた。
「今度は何だ!?」
「シャドウレイヴンのいる場所に、機龍さんのJフェニックスが現れました!!」
「「「「「あの人、何してるの〜〜〜〜っ!!」」」」」
*
麻帆良の郊外の荒野………
距離を取って睨み合いとなっているシャドウレイヴンとJフェニックス。
「アンタは確か………ガイアセイバーズの隊長、神薙 機龍だな」
「如何にも、俺はセイバー小隊、及び機甲兵団ガイアセイバーズ隊長、神薙 機龍だ」
通信で遣り取りをするゼオと機龍。
「どういう事だ? 俺はガイアセイバーズ全員との勝負を要求したはずだ?」
「隊長である俺を倒せば十分だろ。もっとも………お前に俺が倒せればの話だがな」
Jフェニックスは二刀を抜き、構える。
「面白い………勝負だ!!」
という掛け声と同時に、シャドウレイヴンの右手のシールド先端から有線式大型クローがJフェニックス目掛けて飛ぶ。
「おっと!!」
難なく左の刀で弾く。
「隙あり!!」
しかし、その一瞬でシャドウレイヴンが一気に距離を詰め、左手のシールド先端から青い大型ビームサーベルを展開させ、斬り掛かる。
「ぬうっ!!」
だが、Jフェニックスは咄嗟に右の刀を逆手に持ち替えて受け止める。
「何!?」
特殊合金製の刀と交わったビームサーベルが粒子を散らす。
「頭部バルカン発射!!」
[YES!!]
そのまま、シャドウレイヴンの胸部目掛けて頭部バルカンを発射するJフェニックス。
「くっ!! MCS、機動っ!」
[了解]
しかし、シャドウレイヴンの胸部が鏡面を思わせる白銀色包まれ、弾丸を弾く。
「むっ!! ミラー粒子か!!」
「このっ!!」
空かさずシャドウレイヴンは前蹴りを放ち、Jフェニックスを弾き飛ばし、距離を取る。
「うおっ!! やるな! ならば!!」
姿勢制御して着地すると、右の刀を順手に持ち直し、腕を胸の前でクロスさせて構える。
「神薙二刀流!! 飛空円斬!!」
そして、勢いよく刀を投げつけた。
Jフェニックスの手から回転しながら放れた二刀が、シャドウレイヴンに襲い掛かる。
「なっ!!」
シャドウレイヴンは、何とか最初の一刀をかわすが、後から来たもう一刀に右腕を肩から切断された。
「ぐわっ!!」
切断面から火花を散らすシャドウレイヴン。
「もらった!!」
素早く、戻ってきた刀をキャッチすると、バーニアを全開に噴かして突撃する。
「まだだ!! まだ終われない!!」
だが、シャドウレイヴンはMCSを展開。
Jフェニックスの斬撃は空を斬る。
「チッ! 一筋縄じゃいかんか………ジェイス!! シャドウレイヴンの位置を検索!!」
[YES!! レーダー出力UP!!]
だが、その時!!
突如辺りに、銀色の紙吹雪が舞い散る。
[WARNING!! レーダー、動作不良!!]
「しまった!! チャフか!!」
機龍がそう思った次の瞬間!!
Jフェニックスの左足をビームキャノンが撃ち抜いた!!
「どわっ!! 不覚!!」
[左足損傷!! 姿勢維持できません!!]
左膝を付き、左の刀を杖代わりにするJフェニックス。
その瞬間!!
今度は頭部を有線式大型クローが貫いた。
途端にJフェニックスのコックピットが暗転する。
「くっ!! カメラまで!!」
[カメラ全壊!! 敵機位置、割り出し不可能!! DANGER!! DANGER!!]
警告音がコックピット内に鳴り響く。
大ピンチに陥る機龍。
と、そこへ、戦闘領域内にガイアセイバーズが駆けつける。
「機龍!!」
「敵機は!? 敵機はどこですか!?」
だが、その瞬間!!
シャドウレイヴンはJフェニックスの背後から現れ、残った左手に6m対機刀を構え、突き出しながらJフェニックスに突撃した。
「!! 危ない!!」
「機龍さん!! 後ろです!!」
「ダメだ!! 間に合わん!!」
「もらったーーーーーーーっ!!」
しかし!!
「えっ!!」
「あっ!!」
「何と!!」
シャドウレイヴンがJフェニックスを刺し貫くよりも先に、Jフェニックスが振り向き様に投げた右の刀が、シャドウレイヴンの腹部に突き刺さった。
「な、何故………?」
「勘………だ」
機龍がそう言った瞬間、シャドウレイヴンのカメラアイから光が消え、仰向けに倒れた。
「負けた………か」
(ゴメンよ………このかちゃん)
*
その後、コックピットから引きずり出されたゼオは、機龍の前に直っている。
ネギ達は、その周りを囲んで様子を見守っている。
と、機龍が右手用の刀・龍虎を抜く。
「覚悟はいいな?」
「………ああ」
ネギ達がざわめき立つ。
「やめて!!」
「お嬢様!! ダメです!!」
間に割って入ろうとしたこのかを刹那が止める。
「機龍さん!! お願いや!! やめてーーーーっ!!」
しかし、それを他所に、機龍は上段に構えを取る。
「…………」
目を閉じ、覚悟を決めるゼオ。
と、そこで機龍は、刀を峰に返した。
「ハッ!!」
そして、そのままゼオを叩いた。
「ぐっ!!」
ドサリと倒れるゼオ。
「ゼオくん!!」
刹那を振り切り、ゼオに駆け寄るこのか。
「ゼオくん!! ゼオくん!! しっかりして!!」
「う………うう………」
やや呻き声を挙げて、起き上がるゼオ。
「ゼオくん!! 大丈夫!!」
「………何故だ?」
何故、峰打ちにしたのか聞くゼオ。
機龍は刀を納刀すると、フッと笑って言った。
「ヴァリム軍に雇われた傭兵ゼオ・シュルトは、今この瞬間、俺が斬った………」
「え?」
「今ここにいるのは、只の近衛くんの友達の………ゼオくんだ」
「!!」
驚くゼオ。
「機龍さん………」
このかも感激の目で機龍を見ている。
ネギ達も感銘を受けていた。
「………さて、帰るか。全員、撤収!!」
「「「「「了解!!」」」」」
それぞれの機体の元へと戻って行くネギ達。
「ゼオくん………帰ろか?」
「………いいのかい?」
「ええって」
にこやかに微笑むこのか。
釣られてゼオも笑顔になるのだった。
その後、ゼオは持ち前の料理の腕を活かして、五月の店の従業員として働くこととなった。
ますます繁盛を極める五月にの店に、足繁く通うこのかの姿も、そこにあるのだった。
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