その日、非常召集を掛けられたガイアセイバーズメンバーが作戦室に集合すると、何時になく険しい表情を浮かべた機龍がいた。
「3−Aメンバー、整備員を含め、全員集合しました」
「惑星J出身者も全員揃っています」
それぞれを代表して、ネギとジンが報告する。
「皆、よく集まってくれた」
「何かあったのか? 機龍」
「うむ………これを見てくれ」
機龍がそう言ってオペレーター席を見る。
それを確認したオペレーター組がコンパネを操作すると、メインモニターが点灯する。
そこには、要塞に改造されている孤島に宇宙戦艦が入港する瞬間が映し出されていた。
「これは!!」
「日本の気象観測衛星に偶然映っていた物だ。気象庁や宇宙局には手を回して、記憶、記録共にを消去させてもらっているから大丈夫だ」
「機龍さん!! この戦艦って!!」
「………ヴァリムの物だ」
機龍に代わって、ジンが呟いた。
「ってことは、あの要塞島は!?」
「間違いない! ヘルキラーズ小隊の基地だ!!」
ざわめき立つ一同。
「静かに!」
しかし、機龍が一喝すると、途端に静かになる。
そして、機龍は立ち上がると語り始めた。
「3−Aの諸君………君達は元は民間人なのにも関わらず、この1年近くの間、ずっと我々と供に戦ってくれた。礼を言う………しかし!! この戦いもついに決着を付ける時が来た!!」
「「「「「……………」」」」」
全員が、機龍の演説に聞き入る。
「我々はやっと、ヴァリムの基地を突き止めた!! 最早これ以上、奴等の侵略行為に対し、黙っているつもりはない!! 我々はヴァリム軍基地に対して………決戦を掛ける!!」
「決戦………」
「いよいよってわけね………」
「へっ! 腕が鳴るわ!!」
「この1年が何か長く感じたね」
決戦と聞いて士気が上る3−A組。
「やりましょう、リーダー!!」
「これ以上、奴等の勝手にはさせないぜ!!」
「やろうよ! リーダー!!」
「決戦か………久しぶりに聞く言葉だ」
惑星J出身者も同じくだ。
「あの、機龍先生〜。ちょっと聞いても良いですか?」
とここで、のどかが怖ず怖ずといった感じで手を挙げた。
「何だ? 宮崎くん」
「その基地へは、どうやって行くんですか?」
その言葉にハッとして全員が機龍に注目する。
「心配するな! ちゃんと考えてある………超! ハカセ!」
「ウム、待ってたネ」
「皆さん、付いて来てください」
超とハカセの先導で、全員が作戦室から出て行く。
*
いつの間にか建造されていた新しい大型エレベーターに全員で乗り込み、さらに地下へと向かったガイアセイバーズ。
「随分下りるんだな………」
「一体何時まで下りるの?」
「もう少しヨ」
超がそう言った時、ガタンッと音がしてエレベーターに軽い振動が走り停まる。
「着きましたよ」
扉が開き、奥にコンパネが置かれガラスが張られた開発室のようなところに出る。
「何だ? 此処は?」
全員が部屋を見渡しながらエレベーターから出る。
エレベーターが上に戻ると、超とハカセが窓の傍に寄る。
「皆、アレを見て欲しいネ」
超がガラスの奥を示す。
「何だ何だ………うおっ!!」
「こ、これは!?」
「凄い………」
「か、カッコイイ〜〜〜っ!!」
全員がガラスの奥を見て驚愕する。
そこはドックになっており、全長600メートルはあろうかという戦艦が納まっていた!!
「これは、こんなこともあろうかと!!」
「真田○郎?」
「ウ○バタケ・セイヤの方が似合ってる気がするな………」
超の台詞にボソボソと話し合うネギと小太郎。
「私とハカセが、持てる技術の全てを結集させて創り上げた魔法戦艦!! その名も!! 魔法戦艦バハムート!!」
「ファ○ナルファンタジー?」
「もうええちゅうねん」
まき絵のボケにツッコム亜子。
「全長600メートル、全幅150メートル、全高220メートルの超ド級です!!」
「装甲材質はハイパーオリハルコニュウム!! 機関は魔相転移エンジン!! さらに補助機関として対消滅機関を2基搭載しているヨ!!」
「オイオイ、対消滅機関って、空想の産物じゃなかったのか?」
千雨が口を挿む。
「確かに………だが!! 私の技術はそれを現実の物としたネ!!」
「搭載量、火力、航行能力の全てにおいて、地球のあらゆる現代兵器を凌駕しています」
「勿論! 空中、水中、宇宙などあらゆる環境でも活動可能ヨ!!」
「ホントかよ………」
全員が驚愕の表情を超とハカセに向ける。
「どうネ、機龍。ガイアセイバーズ結成時から建造を始めて、やっと完成したヨ」
「ああ、確かに凄い………だが」
「だが?」
「俺が造って欲しいと言ったのは大型輸送機だぞ!! 誰が超ド級戦艦を造れと言った!! 誰が大艦巨砲主義の化身を造れと言った!!」
「大は小を兼ねるネ」
「一言で済ますな!! 大体、クルーはどうするんだ!? クルーは!? 今のオペレーターと整備員だけじゃ足りないぞ!!」
「この艦は殆どコンピューター制御で動きます。どうしても人の手が居るところの人員不足は………彼女達に担当して貰います」
「彼女達?」
嫌な予感を覚える機龍。
と、そこへ、上に戻っていたエレベーターが再び下りてきた。
そして、扉が開くと………
「ヤッホー! 皆!」
「「ハルナ!?」」
「へ〜、地球を守ってるって本当だったんだ」
「柿崎!?」
「うわっ! 何アレ!? 戦艦!?」
「「クギミー!?」」
「うわ〜〜〜っ!! 凄〜〜〜い!!」
「桜子さん!?」
「こりゃ大変だね」
「美空ちゃん!?」
何と!!
ガイアセイバーズに参戦していなかった残りの3−Aメンバーが現れた!!
「信頼できる人達だったから、スカウトしたネ。これで問題ない………って、機龍?」
超が振り向くと、機龍は胃の辺りを押さえて蹲っていた。
「ぐおおおおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜っ!!」
「き、機龍!! しっかりしろ!!」
「いけない!! 神経性胃炎よ!!」
しばらくお待ちください………
「ええいっ!! スカウトしてしまったものは仕方がない!! 兎も角! 準備ができ次第、ヴァリム軍基地に向けて出撃する!!」
何とか立ち直った機龍が声高に言う。
「開き直りっぽい言い方ネ………」
「ていっ!!」
「イタッ!!」
超に拳骨をお見舞いする機龍。
「一言多かったですね、超さん」
「何ネ、この忍○ま乱太朗のようなノリは………」
コブを擦りながら言う超。
「しかし、敵の本拠地に乗り込むのには、まだ些か戦力不足じゃ………」
「大丈夫だ」
「えっ?」
不安げに言ったレイに、レッディーが答えた。
「ガーディアンエルフ本隊に要請していた援軍が間もなく到着する」
「私が艦長を務めていたガーディアンエルフ1番艦にて総旗艦の『ビリーブ』がな………」
「「「「「ガーディアンエルフの総旗艦〜〜〜〜〜っ!?」」」」」
驚きを露にする惑星J出身者。
「アルサレアの協力で、ワープ航法がやっと搭載完了したそうだ」
「助かります、レッディーさん、ゼラルドさん。では、目的地進路上で合流すると伝えておいて貰えますか?」
「「了解!!」」
機龍に向けてビシッと敬礼するレッディーとゼラルド。
「よ〜〜し!! 全員、PFと資材、その他諸々の搬入だ。急げ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
全員が慌しく作業に入っていった。
*
1時間後………
全ての作業を迅速に終え、ガイアセイバーズは魔法戦艦バハムートに乗り込んでいた。
魔法戦艦バハムート・ブリッジ………
「PFと資材、その他諸々の搬入、終了しました!!」
「機関、活動開始!!」
「担当クルーは持ち場についてください!!」
「間もなく出航ネ………」
艦長席で呟く超(沖田○三のコスプレをしている)。
「何で超さんが艦長なんですか?」
「言うな………」
ネギの意見を流す機龍。
「注水開始!!」
それを他所に超が命令を飛ばす。
「了解!! 注水開始!!」
和美が宣言すると、ドックに水が満ちて行く。
そして数分で、ドックは水で一杯になる。
「メインゲート、オープン!!」
「メインゲートオープン!!」
さよが復唱すると、バハムートの正面にあったゲートが開く。
「固定アタッチメント排除!!」
「固定アタッチメント、排除する」
千雨の操作で、艦を固定していたアタッチメントが外れる。
「エンジン出力全開!!」
「機関室! エンジン全開です!!」
夕映が機関室にエンジン全開の指示を出す。
「了解!! 皆ーー、エンジン全開!!」
「「「「「アイアイサー!!」」」」」
通信機から、副長兼機関士長のハカセと、その他3−A機関士の声が返ってくる。
「微速前進!!」
「微速前進します!!」
そして、のどかがコンパネを操作すると共に、艦がゆっくりと動き出す。
「動いた!!」
「よし! 魔法戦艦バハムート………出航!!」
そのまま段々と速度を増していきながら、バハムートはゲートの中を前進していった。
*
地表、麻帆良湖付近………
1人の老人男性が、湖畔で釣りをしていた。
「釣れんのーー………」
中々釣れないことに愚痴を零す老人。
と、湖の中央に目を移すと無数の泡が湧き出ているのを発見する。
「? 何じゃ?」
老人がそう思った次の瞬間!!
湖面が大きく弾け、魔法戦艦バハムートがその姿を現した!!
「!! うわあぁぁぁっ!!」
思わず尻餅をつく老人。
バハムートは空へと浮かび上がると、後部ブースターから火を挙げて飛び去った。
「あ、ああ………」
老人は少しの間、尻餅をつきながらそれを見ていたが、やがて立ち上がると、バハムートが飛んで行った方向へ向けて敬礼をした。
………老人は元日本海軍の軍人だった。
*
再び、魔法戦艦バハムート・ブリッジ………
「「さらば〜〜地球よ〜〜♪ 旅立〜〜つ船は〜〜♪ 宇宙〜〜戦艦ヤ〜〜○〜〜ト〜〜♪」」
「何、アレ?」
「名曲だな………」
ネギと小太郎は、肩を組んで『宇宙戦艦ヤ○ト』を歌っていた。
戦艦は漢のロマンだ!!(爆)
「「いざ行かん!! 14万8000光年の彼方!! イ○カンダルへ!!」」
「ヴァリム軍の基地よ………」
「「地球滅亡まで! あと、365日!!」」
「「「「縁起でもないこと言うなっ!!」」」」
総員からツッコマれるネギと小太郎だった。
*
一方、その頃………
日本近海の海底………ヴァリム共和国軍強行侵略偵察部隊ヘルキラーズ小隊秘密基地海底部分の作戦室では………
「お待ちしておりました、大将殿」
フォルセアが敬礼を送る。
「やっと完成したんですか。待ちくたびれましたよ」
痩せ型、中背、黒髪黒目にて、黒縁の眼鏡をかけ、鼻の下にひげを生やしている40代後半ぐらいの男が、作戦室で整列したヘルキラーズ小隊を前にそう言った。
「お待たせして申し訳ありません、フラットエイト大将殿」
ヴェルが頭を下げる。
そう! この男の名はフラットエイト………偵察部隊『ヘルキラーズ』司令官にして、今回の『第二地球』侵攻作戦の立案者なのだ!!
「まったくだぜ! 待たせすぎだっつーの!!」
と、フラットエイトの右後ろに控えていた金髪を逆立てた、目付きの鋭い(と言うか悪い)痩せ型、小柄な少年が口を挿んだ。
「ナイン!! テメェー、今頃来て何て言い草だ、オイ!!」
それを聞いたビックボムが怒ったように叫んだが………
「うっせーぞ肉ダルマぁ!! こちとらオッサンからの直々の頼みだってんで、任地の戦闘チャッチャと終わらせて出向いてきたんだよ!! こんな古っ臭えレベルの文明に手こずってる癖しやがって、でかい口叩いてんじゃ無え!! コマ肉にしてやろうか、ぁあ!?」
「うぐっ!!」
ナインと呼ばれた少年は、更なる大声でビックボムに罵声を浴びせた。
この少年の名は、ナインボルト・サンダーヘッド。
通称、ナイン。
二つ名を『切り裂きナイン』と呼ばれ、敵味方を問わず、恐れられている。
「相変わらずの口の悪さだな、ナイン」
壁に寄りかかっているハクヤも不愉快に言った。
「よー、陰湿オヤジ。まだ生きてやがったのか」
「何だと………」
そのまま2人の視線が火花を散らす。
「やめろ、ナイン」
「ハクヤ、黙ってなさい」
しかし、フラットエイトとヴェルが2人を制する。
「チッ!!」
「フン………」
2人は面白くなさそうに互いに視線を反らしあう。
「兎も角、アレが完成した以上、この星は我々ヴァリムの物となるのは確実でしょう」
「うむ………しかし、その前に邪魔者達を片付ける必要があるな」
「………ガイアセイバーズ、ですね」
「そうだ。我々に歯向かうアルサレアの犬共と、それに協力する畜生共は徹底的に叩く必要がある!!」
高らかに言うフラットエイト。
「了解しました。して、どのようにして奴等めを葬るのでしょうか」
「簡単なことだ。アレが完成したのなら、この基地は用済みだろう」
「なるほど………素晴らしい作戦ですわ」
「そういうわけだ、グローエル少将」
「ハッ!!」
フラットエイトは、左後ろに控えていた将官服を着た艶やかな漆黒の長髪(後ろ髪は腰ぐらいまで、前髪は胸に掛かるぐらいまで)を頭の後ろで束ね、前髪はジャマにならない様、後ろに流している髪型の30代後半〜40代前半辺りの男に目をやった。
作戦立案および艦隊指揮担当の副官カイゼル・G・グローエルだ。
嘗てアルサレア戦役では、専用艦に乗り前線に出撃、的確な指示で数多くの戦闘において勝利を収めてきたアルサレア、ヴァリム共に認める名将だ。
その歳を感じさせない屈強な体躯………やや彫りの深い顔立ち………『上に立つ者』としての覚悟を秘めた、鷹のように鋭い眼光を放つ目が歴戦の勇士たることを証明していた。
「早速この基地を使ってガイアセイバーズの連中を葬る策を練れ」
「ハッ! 了解しました!! へラー大尉、基地のコンピューターを使わせて貰うが、構わないか?」
「どうぞ」
カイゼルは、基地のコンピューターを使って作戦を練り始めた。
「フフフ………楽しい事が始まりそうだな」
一連の様子を遠巻きに眺めていたエンは、これから起こるであろう大戦に心底楽しそうな笑みを浮かべるのだった。
(いよいよでっか………魔法使い共への復讐………ガイアセイバーズの連中への復讐………ついに積年の恨みが晴らせるってもんや!!)
(見ておれよ! ガイアセイバーズ!!)
(今度こそアンタ達の最後よ!!)
(ウケケケケケッ!!)
千草とタルカス3人衆も、恨みを晴らせると思い、邪悪な笑みを浮かべるのだった。
ヘルキラーズ小隊基地の作戦室は、不気味な空気に支配されるのであった。
ついに判明したヴァリム軍の秘密基地!!
機甲兵団ガイアセイバーズは決戦を仕掛ける事を決意する!!
しかし!!
そこには、不気味な罠が待ち受けていた!!
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