第72話


ヴァリム共和国軍強行侵略偵察部隊ヘルキラーズ小隊秘密基地海底部分作戦室………

「フフフ………来ましたね………ガイアセイバーズ」

メインモニターに映る突入してきたPF部隊を見ながら不気味に笑うフラットエイト。

「フラットエイト司令官。作戦の準備が完了しました」

そこへ、カイゼルが入室してきてフラットエイトに言った。

「そうですか………では、開始すると致しましょうか」

「…………」

不意に黙り込むカイゼル。

「どうしました? カイゼル」

「………司令官。やはり私は今回の作戦には納得がいきません。アレが完成した以上、もう勝負は着いたも同然です。それなのに態々トドメを刺すのですか?」

「当たり前でしょう。敵は徹底的に叩く。それこそがヴァリム軍の全てです」

「しかし………」

「そもそも、一兵士が作戦に納得がいかないなどと言ったところで、何らの変更があるわけではないでしょう」

さも当然のように言い放つフラットエイト。

「………了解しました。作戦を開始します」

カイゼルは、苦い顔をしながら作戦室を後にした。

「アルサレアの犬共に原住生物共め………いい気になって乗り込んできたのが貴様等の運の尽きだ………ハハハ………アーハッハハハハッ!!」

そしてフラットエイトは、モニターに視線を戻し、高笑いを挙げるのだった。

とそこへ、モニターの映像が半分に分断され、ナインの顔が映し出された。

[オッサン! ちょっとアイツ等と遊んできても良いか!?]

「ナイン、お遊びも程々に………いや、待て………良いだろう、許可しよう」

[流石オッサン!! 話が分かるぜ!!]

「ただし………ハクヤ・ロウ少尉を連れて行きなさい」

[ああ!? 陰湿オヤジを!? 何でだよ!!]

露骨に不満顔を表しながら言うナイン。

「アルサレア軍の隊長くんに拘りがあるみたいでしてね………それに、彼に軍事行動妨害の容疑が度々掛けられていますからね………」

フラットエイトは、意味ありげな笑みを浮かべて言った。

[! ハハ〜ン、成程………良い事考えるじゃねーか]

それに気づいたナインも、邪悪な笑みを浮かべる。

[じゃ、遊んでくるぜ!! またな!!]

ナインが、そう言い残して通信を切ると、モニターは再びガイアセイバーズを全画面で映し出した。

「さてさて………楽しみですね」











一方、ガイアセイバーズ突入組は………

搬入口から、PF発進通路を通り、基地の奥へと進んでいた。

そして、大きな扉に突き当たった。

「この扉は?」

「うむ………ジェイス」

[了解!]

機龍は、マニピュレーターから接続端子を出し、近くにあった端末に繋ぐと、ジェイスがアクセスを開始した。

[PF輸送用のエレベーターです。今システムを掌握しました。使用できます]

ジェイスがそう言うと、扉が開いた。

「よし! 乗り込め!!」

機龍の号令と共に、エレベーターに乗り込んで行く突入組。

全員が乗り込むと、エレベーターは降下を始めた。

「機龍。ちょっと良いか?」

その途中、アーノルドが機龍に個人回線で通信を送ってきた。

「何ですか? アルバトロス大佐」

「うむ………龍宮くんに告白されたそうだな」

「なっ!!」

驚く機龍。

ふとJヘルにメインカメラを向ける。

Jヘルは、Jフェニックスに背を向けて明後日の方向を見ていた。

「レイ〜〜〜っ!! お前〜〜〜〜っ!!」

「私の話を聞け! 神薙機龍!!」

「は、ハイ!!」

レイに文句を言おうとした機龍だったが、アーノルドによって遮られるのだった。

「事情はレイから聞いている………確かに、お前の言う事も尤もだ」

「……………」

黙ってアーノルドの話を聞く機龍。

「だが………お前は本当にそれで良いのか?」

「えっ?」

「確かに我々はこの星の人間じゃない………任務が解かれれば、惑星Jへ帰らなければならなくなるだろう………だが、それがどうした?」

「どうしたって………」

「決して二度と会えなくなるわけじゃない………お前は会えなくなるかもしれないという可能性だけで龍宮くんを嫌いになるのか?」

「い、いや、好きとか嫌いとか関係ないんじゃ………」

機龍は口篭る。

「機龍………お前は本当に不器用な奴だ………何時もアルサレアのため、正義のため、人のためと言って自分を犠牲にしている」

「………それが自分の使命です」

「まったく………そういうところは、士官学校の頃から変わらんな………お前はもう少し、自分の事を考えても良いはずだ」

「でも………」

「そして何より………女を泣かすなんてことは、漢のすることじゃない」

「…………」

黙り込んでしまう機龍。

とそこへ、ガクンッと衝撃が走り、エレベーターが止まった。

「まあ、この決戦が終わったら、よく考えてみるんだな」

「………了解」

機龍は、そう言うと全機に通信を送る。

「全機武器を構えろ! 着いた先で待ち伏せしているかもしれん!!」

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

エレベーターの扉が開くと同時に、全員が戦闘態勢を取った。

しかし、待ち伏せはなく扉の先には、無機質な空間が広がっているだけだった。

「む………待ち伏せは無し………でござるか?」

「妙ですね………簡単にいき過ぎています」

「罠………でしょうか?」

楓、刹那、ネギが疑問を挙げる。

「そうだとしても、今は先に進むしかない………行くぞ!」

機龍を先頭に、突入組は機械が並んだ空間を進んでいく。

途中にあった機械の中やコンベアのようなものの上に、造りかけと思われるヴァリム軍のPFがあったりした。

「どうやらここは、PF製造プラントのようなものらしい」

「でも、稼動していませんよ?」

「どういう事だ?」

「一応、破壊しておきますか?」

「いや。この先何があるか分からない。無駄な弾薬やエネルギーの消費は抑えるべきだ」

そうこう言っていると、突き当たりの壁に辿り着いた。

その壁にも、PFが通れるくらいの扉が設置されていた。

「また扉か………」

機龍が、コンパネにアクセスしようとJフェニックスを近づける。

すると、扉はひとりでに開き始めた。

「むっ!!」

全員が、バッと扉から離れて武器を構えた。

扉が開ききると、そこには広い球状の空間が広がっていた。

警戒しながら中へと入ると、上下の感覚が無くなった。

「わわっ!! 何コレ!?」

「無重力戦闘データ取得エリアか………」

奥の方に、また扉があり、その前にシロヤシャと見慣れないPFが控えていた。。

「や〜と来たか、待ちくたびれたぜ!!」

「………来たか、神薙」

「シロヤシャ………ハクヤか」

「そっちの奴は、初めて見る顔だな」

ジンが、全身の至る所に大小多数のスラスターを装備し、両手に日本刀に近い形をしたコンバットナイフ状の刃の全長20mはあろうかという超大型の剣を持ち、フェイスガードに縦スリットが入ったPF………ナインの愛機『ジャック・ザ・リッパー』に話し掛けた。

「へへへ………始めまして、ガイアセイバーズとやらの皆さん。俺はナイン………ナインボルト・サンダーヘッドさ!」

「!! 切り裂きナイン!!」

「何ですか、それ?」

驚いたように言うサクラに、思わず尋ねるネギ。

「奴の異名さ………決まった所属部隊を持たず、各地の戦場を転々としながら、多くのアルサレア機甲兵団を葬ったな………」

「時には、自分の味方を巻き込んでな………」

「それがどうした? 戦争は勝たなきゃ意味ねーだろ」

レイとアーノルドの言葉に、さも当然といった感じに言い返すナイン。

「!! 貴様!!」

「よせ、レッディー。ああいう奴には何を言っても無駄だ」

怒りを露にするレッディーを、制するゼラルド。

「おおっと、そういや、オッサンが挨拶したいって言ってたっけな………オッサン! ガイアセイバーズが来たぜ!!」

ナインが、通信を送ると、シロヤシャとジャック・ザ・リッパーが守っている扉の上に大型モニターが出現し、フラットエイトの姿が映し出された。

「貴様は!?」

「初めまして、アルサレアの糞共の諸君。私はフラットエイト。ヘルキラーズ小隊の司令官にして、今回の『第二地球』侵攻作戦の立案者でもあります」

不敵な笑みを浮かべて、機龍達に挨拶するフラットエイト。

「貴様がヘルキラーズの司令官か………」

「ええ、そう言いましたけど?」

「何故、第二地球侵略を考えた!!」

「ここが有用だからですよ。資源はかなり消費されているとはいえ、まだずいぶんな量が残っている。加えて、魔法という超技術も存在する。アルサレアを潰す為に使い切ってしまったところで、ヴァリム共和国には何の痛手も与えませんから」

「だが! この星の人々は、アルサレアとヴァリムの戦争に何の関係もない!! 無関係な人々まで、戦争に巻き込むつもりか!?」

「……『人々』? 何の事ですかそれは。ここが我々の母星で無い以上、たとえ人間に似ていたとしても、それは唯の『原住生物』でしょう。畜生の類に過ぎません」

「「「「「「「なっ!!」」」」」」」

あまりの物言いに絶句する一同。

「そんなもの、ヴァリムは、そしてもちろんアルサレアも、いくらでも殺してきた。母星を開拓していく過程でね。今更ですよ、そんな話は」

「貴様!! それでも人間か!!」

「……ああ、なるほど。もしかして貴方達は、歴史に名を残したいのですか? ヴァリム共和国から、見ず知らずの惑星の原住生物を守った英雄として。ふむ、では、ヴァリム共和国の国選教科書にでも載せてあげましょう。こんな感じでいかがです? 『アルサレア帝国は、わがヴァリム共和国の他惑星への植民行動に対し、原住生物へPFを渡し、武力によって反抗を行いました。しかし、わがヴァリム共和国軍の奮戦により、アルサレアの反乱は阻止されたのでした』と、こんな感じでいかがでしょう?」

「最早語る言葉はない!! 貴様を倒し、この星を救う!!」

「そうですか………では、精々無様に足掻いて下さい………ハッハハハハ!!」

フラットエイトの高笑いを残して、モニターは消えた。

「話は終わったな………ならば勝負だ!! 神薙!!」

それと同時に、シロヤシャが突進した。

左腕の炸裂式ボールディング・バンカーを、Jフェニックス目掛けて振り下ろす。

「ぬうっ!! ハクヤ!!」

それを左の刀で受け止め、右の刀でカウンターを繰り出す。

「甘いっ!!」

しかし、シロヤシャはJフェニックスの右腕を掴んでそれを止める。

「ついに決着をつける時が来たようだな!!」

「やめろ、ハクヤ!! 四葉くんが悲しませるつもりか!!」

「ッ!! あの女は関係無い!! 俺が今望むものは唯一つ!! 貴様との決着だ!!」

「ハクヤ!!」

2機は縺れ合うながら、無重力エリアの中心へと移動して行った。

「機龍さん!! うわっ!!」

「お前達の相手はコイツ等だ!! 行けーーーーっ!!」

援護に向かおうとしたネギ達を、奥の扉から出てきた式神PF軍団が妨害する。

「クッ、仕方ない!! 各機、各個に敵機を撃破だ!!」

機龍に代わって指示を出すアーノルド。

「「「「「「「了解!!」」」」」」」

ガイアセイバーズは散開して、各個に敵機を撃破に掛かる。











機龍(Jフェニックスカスタム)VSハクヤ(シロヤシャ)………

「せやっ!!」

「なんの!!」

シロヤシャの鞭のように撓りながら襲い掛かってくる錬金護符合金製チェーンを、二刀でいなすJフェニックス。

「チッ!! コレならどうだ!!」

シロヤシャは、少し前のめりの体勢になると、バックパックからベアリング弾を発射した!!

「クッ!! ハアァァァァーーーーッ!!」

それをJフェニックスは、左手首を刀を持ったまま回転させてベアリング弾を弾いた!!

しかし、全弾弾いたと思った瞬間、左手の刀の刃が砕け散ってしまった。

「!! しまった!!」

「迂闊だぞ、神薙!!」

その隙をついて、シロヤシャはJフェニックスを肉薄し、格闘戦用増加装甲ギルレッグを装着した脚部で回し蹴りを放った。

「ぐわっ!!」

Jフェニックスは、咄嗟に左腕でガードしたものの、側転するように吹き飛ばされ、左腕の装甲にもヒビが入った!!

「まだまだ!!」

だが、Jフェニックスは側転したまま右手の刀をリボルバー式マグナムに持ち替えて、シロヤシャに向かって3発発射した。

「何っ!?」

1発目は何とか避けたものの、2発目が右肩装甲を持っていき、3発目がヘッドパーツを撃ち抜いた。

「流石だな、神薙!! しかし、まだメインカメラがやられただけだ!!」

シロヤシャは、再び錬金護符合金製チェーンを伸ばし、鞭のようにしてJフェニックスを攻撃する。

紙一重で回避しているJフェニックスだが、段々と装甲のヒビが増えていく。

「くうっ!! メインカメラをやられて、こうも正確な攻撃ができるのか!? やるな、ハクヤ!! だが………見切った!!」

と、Jフェニックスは振り回されていたチェーンの先を掴んだ!!

「なっ!?」

「うおぉぉぉーーーーーっ!!」

そのまま勢い良くチェーンを引っ張り、シロヤシャを引き寄せる。

「ぬおっ!!」

「貰った!!」

再び右手に刀を構えるJフェニックス。

「舐めるなぁぁぁーーーーーっ!!」

それに対して、シロヤシャは左腕の炸裂式ボールディング・バンカーを構え、真っ向勝負を挑んだ。

ぐんぐんと2機の距離が縮まる!!

「でやあぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

そして、シロヤシャのボールディング・バンカーがJフェニックスの左肩に突き刺さった!!

しかし、その瞬間!!

「肉を切らせて、骨を断つ!!」

Jフェニックスは右手の刀を、シロヤシャの左横腹に突き刺し、右横腹に貫通させた!!

「何っ!? 馬鹿な!!」

バンカーが爆発し、Jフェニックスに左肩が吹き飛んだが、シロヤシャもガクリッと力が抜けたように動かなくなった。

[動力炉に損傷発生!! 非常停止装置作動!! 再起動不可能!!]

シロヤシャのコックピットには、けたたましくエマージェンシーコールが鳴り響き、シェンが機体損傷を報告する。

「そんな………」

「勝負あったな………ハクヤ」

力なく浮かんでいるシロヤシャに向かって言う機龍。

「くっ!! ………俺の負けだ………今度こそトドメを刺せ!!」

「………ハクヤ。ガイアセイバーズに来ないか?」

「何っ!?」

思いがけない機龍の言葉に驚くハクヤ。

「貴様!! これ以上、俺に恥を掻かせるつもりか!!」

「悪いが俺は今、教師でもあるんでな………生徒を悲しませるような真似はしたくない」

そう言って機龍は、Jフェニックスの残った右腕を伸ばしながらシロヤシャに近づかせる。

「一緒に来い。四葉くんがお前のことを待ってる」

「む………う………」

ハクヤは一瞬、思い悩むような顔をした。

とその時!!

「裏切りは極刑だぜ! 陰湿オヤジ!!」

突如、ジャック・ザ・リッパーが全速力で突進して来た!!

「「なっ!!」」

Jフェニックスは慌てて回避行動を取るが、間に合わず、ジャック・ザ・リッパーによってウイングパーツを2つとも持って行かれた。

「ぬあっ!!」

[機体損傷拡大!! 飛行能力75%低下!! 機能53%低下!! DANGER!! DANGER!!]

一気に機体が悲鳴を挙げる。

そして、ジャック・ザ・リッパーの攻撃は、Jフェニックスだけでなく、シロヤシャにまで及んでいた。

「ぐわあぁぁぁーーーっ!!」

下半身を分断されるシロヤシャ。

「ナイン………どういう積もりだ!!」

「簡単さ………お前はヴァリム軍に必要なくなった………だから処分するのさ!!」

「貴様!!」

「悪いけど、これはオッサンからの正式な命令だ。あの世で、後悔するんだな!!」

再びジャック・ザ・リッパーが突撃しようとした、その時!!

「やらせるかーーーっ!!」

「させませんっ!!」

式神PF軍団を排除し終わったネギ達が援護に入った。

「うおっとと!! クソーーー、ウゼェー連中だ!!」

ジャック・ザ・リッパーが目標をネギ達に変える。

しかし、その瞬間!!

突如、基地内に激しい振動が走り、警報と共に赤色灯が点滅を始めた。

「な、何っ!?」

「チッ!! もう時間かよ………」

ナインがそう言った時、アナウンスが流れ始めた。

[警告! 警告! 自爆装置ガ作動シマシタ! 後10分デ、コノ基地ハ自爆シマス! 直チニ退避シテ下サイ!]

「「「「「「なっ!?」」」」」」

驚愕に包まれるネギ達。

「へへへ………そういうわけだ。皆纏めて吹っ飛んじまいな。あばよ!」

ナインは、そう言い残して無重力エリアから離脱していった。

「あ、待ちなさいよっ!!」

「よせ、神楽坂くん! それより急いで脱出するんだ!!」

アスナが追おうとしたが、機龍がそれを制し、脱出命令を出す。

急ぎエレベーターへと向かうネギ達。

機龍も、上半身だけになってしまったシロヤシャを引っ張って脱出を急ぐ。

「お、おい、神薙! 放せ!!」

「ごちゃごちゃ言うな! 時間が無いんだ!!」

ハクヤの文句を一喝し、ボロボロに機体を必死に動かす機龍。

無重力エリアを抜けると、PF製造プラントを突っ切り、次々にエレベーターへと駆け込んでいく突入組。

とその時、エレベーターの扉が、勝手に閉まりだした!!

「!! エレベーターが!!」

「基地が自爆シークエンスに入ったから、システムが混乱し始めているんだ!!」

「急げ! 閉じ込められたら一巻の終わりだぞ!!」

「大丈夫だ。この早さならギリギリ間に合う」

だが、その時!!

「うわっ!!」

突如、真名が悲鳴を挙げた。

「!! 真名!!」

慌てて機龍が目をやると、何とプラント内に放置されていた造りかけのPFが、まるでゾンビのように動き出し、Gガンナーに襲い掛かっていた。

「なっ!? 造りかけのPFが!!」

そう言っている間にも、扉はドンドンと閉まっていく。

「くっ!! レイ! 大佐! お願いします!!」

機龍は、シロヤシャをJヘルとJクーロン・アーノルドカスタムに押し付け、Jフェニックスを反転させた。

「お、おい! 機龍!!」

「無茶だ、機龍!!」

レイとアーノルドの声を後ろにしながら、真名の援護に向かう機龍。

残った右腕にショットガンを持ち、高速リロードしながらゾンビPF軍団を排除する。

「真名! 大丈夫か!!」

「バーニアと足をやられた。動けない」

「掴まれ! 時間がないぞ!!」

Gガンナーに肩を貸し、立ち上がらせるとバーニアを吹かそうとする。

だが、その瞬間!!

バーニアから黒煙が上った。

「うおっ!! 何っ!?」

[バーニア機能停止!! 先ほどの損傷の影響です!!]

「こんな時に!!」

止むを得ず、Jフェニックスは扉へと全力疾走する。

だが、PFを1機支えたまま走っているので、その速度は遅かった。

「機龍さん! 急いで!!」

「もう持たないアル!!」

ネギ達が扉が閉まるのを遅らせようと、扉を押さえているが、さほど効果はない。

ドンドンと扉が閉まっていく。

「機龍! 私に構わず行ってくれ!! このままじゃ、2人供助からない!!」

「………それもそうだな」

「えっ………」

真名が驚きの声を挙げた瞬間!!

「でえぇぇぇぇいっ!!」

Jフェニックスは、残ったパワーを振り絞り、Gガンナーを扉へと放り投げた。

「うわっ!!」

閉まる扉の間をギリギリ擦り抜けるGガンナー。

「機龍さん!!」

「機龍先生!!」

「き、機龍っ!!」

GガンナーがメインカメラをJフェニックスに向ける。

「真名………ゴメンよ」

機龍がそう通信で言った瞬間、真名の目の前で………扉は………無情にも………閉じられた。

「!!」

その瞬間!! 真名の脳裏に、元パートナーの死の瞬間がフラッシュバックする。

(マナ………ゴメンよ)

機龍と同じ言葉を残して、息絶えたパートナー。

「い、嫌だ………帰ってきて!! 帰ってきてーーーーっ!!」

真名は取り乱し、扉を開けようとパンチを繰り出す。

マニュピレーターが破損するが、真名は構わず殴り続ける。

しかし………そんな真名の思いとは裏腹に、エレベーターは地上へと向かって行った。











地上・ヴァリム共和国軍強行侵略偵察部隊ヘルキラーズ小隊秘密基地入口………

待機組は、式神PF部隊を全て撃破し終えていた。

「敵PF、出現止まりました!!」

「機龍達がやったのかネ!?」

「分かりません。さっきから通信を送ってるんですが、通じません」

「なあ、俺等も中に突入した方がええんとちゃうか?」

小太郎が、先走り気味に言う。

「いえ、罠があるかもしれません」

「全員で行ったら、全滅しちゃうかもしれないよ」

しかし、それを聞いていたアキナとブラウニーが小太郎を制する。

「けど………」

その時!!

「あ!! 基地内部に高エネルギー反応!!」

「何っ!?」

さよの報告に、超が驚きの声を挙げた瞬間………基地入り口から、突入組が飛び出してきた。

「全員、この場から退避だ!!」

「基地が自爆するぞ!!」

レイとアーノルドが、全方位通信で早口に捲くし立てた。

「「「「「ええ〜〜〜〜〜っ!?」」」」」

「急いでPF隊を回収!! 総員、衝撃に備えるネ!!」

PF隊は次々にバハムートとビリーブに着艦していく。

そして、全機の収容が終わった瞬間!!

ヴァリム軍基地は、キノコ雲を上げて大爆発を起こした!!

凄まじい衝撃波が、バハムートとビリーブを襲う。

「「「「「キャアァァァーーーーーッ!!」」」」」

「スラスター、ブースター全開!! 態勢維持!!」

悲鳴を挙げるオペレーター達に、超は必死に指示を出す。

「アキナさん!!」

「慌てないで、ブラウニー!!」

やや慌てるブラウニーと、実戦慣れしているので冷静に対処するアキナ。

やがて爆発は収まり、辺りに静寂が戻った。

島があった場所には大穴が開き、海水が流れ込んでいた。

「………収まったヨ」

「超!!」

そこへ、真名が切羽詰ったように通信を入れてきた。

「うわっ!! 龍宮サン………どうしたネ? そんなに慌てて?」

「機龍は!? 機龍の位置は特定できないのか!?」

「えっ!? 一緒に帰ってきていないのかネ?」

「アイツは基地の中に取り残されていたんだ!!」

「「「「「「え、ええっ!?」」」」」

慌てて機龍の現在位置の割り出しを始めるオペレーター達。

「俺達も捜索に行くぞ!!」

「「「「「了解!!」」」」」

PF隊も次々に再出撃し、付近を捜索に掛かる。

「わ、私も!!」

「龍宮さん!! その機体の損傷じゃ無理ですよ!!」

機体損傷を押して出ようとした真名をネギが止める。

「でも、機龍が………!! そうだ!! 仮契約カード!!」

真名は慌てて仮契約カードを取り出すと、額に当てて念話を送る。

(機龍!! 機龍!! 聞こえているだろう………返事をしてくれ!!)

真名は祈る思いで念話を送り続けた。

だが………

「Jフェニックスカスタム………及び………機龍さんの信号………確認できません………」

「恐らく………どちらも………消滅したものと………思われます………」

「そ、そんな………」

オペレーターからの絶望の報告に、真名は仮契約カードを取り落とした。

「う、嘘だ………機龍………機龍ーーーーーッ!!」

真名の悲痛な叫びが、青い海に木霊した………










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