第73話


(どこだ?………ここは?)

真名は暗闇の中に立っていた。

上下左右の感覚は無く、ただ暗闇だけが目の前に広がっていた。

(これは一体?………)

真名がそう思った瞬間………周りの風景が急に変わった。

爆煙と土煙が上がり、銃声と爆音が響き、血の臭いが漂う場所………戦場へ。

(!! ここは!!)

驚く真名。

よく見てみると、自分の姿は、幼き日の姿へとなっていた。

(間違いない!! ここはあの時の!!)

「マナ!! 危ない!!」

真名の思考を遮るように声が響き、右眉の上に傷のある男が真名の前に立った。

その瞬間!!

男の身体を無数の銃弾が貫通した!!

至る所から血を噴出し、男は地面に横たわった。

「!! マスター!!」

そう言って慌てて男に駆け寄る真名。

「マスター!! マスター!!」

「マナ………ゴメンよ」

男はそう言い残し………息絶えた。

「マ、マスタァァァァーーーーーーーッ!!」

真名が叫びを挙げた瞬間、再び風景は急変した。

真名は現在の姿となり、パイロットスーツを着て、機械に埋め尽くされた空間に座っていた。

「!! Gガンナーのコックピット?」

そう思った時、軽い浮遊感を感じ、続いて衝撃がコックピットに走った。

「うわっ!!」

慌ててモニターに目をやると、閉まりゆく扉の先に佇むボロボロのJフェニックスカスタムの姿があった。

「き、機龍っ!!」

「真名………ゴメンよ」

機龍はマスターと同じことを言い残し………扉の向こう側に消えた。

その瞬間、三度風景は急変し、ヴァリム軍基地が爆発した様を鮮明に映し出していた。

そして………





「ぐああああああああああああああああああっっっ!!!!」





機龍の断末魔までもが響いた………











「う、うわあぁぁぁーーーーーーっ!!」

真名は悲鳴と共にベッドから飛び起きた!!

「ハア………ハア………ハア………ハア………」

肩が動くほど息を切らせ、身体中を汗が濡らしていた。

「ど、どうした!? 龍宮」

上のベッドから刹那が覗き込んできた。

真名は辺りを見回し、ここが寮の自分の部屋であること確認する。

「…………夢、か」

そう呟いた時、ベットの端に何かがあることに気づく。

「あ………」

それは、血の付着し、焼き焦げた後の残った仮契約カードの原版だった………

「そうか………これは夢じゃないんだよな………」

途端に視界が歪んだ。

そしてガクガクと身体が震えだす。

「・・・ぅ・・・ぅぇ・・・・・・ぅぇぇぇ・・・」

真名は、震える自分の身体を両手で抱きしめるようにして大粒の涙を流しながら、嗚咽を漏らした………

「龍宮…………」

刹那は何も言えず、ただ黙って見ているしかなかった。











ヴァリム軍基地自爆から数日が過ぎていた………

あの後………

ヴァリム軍基地跡地とその周辺を必死に捜索したガイアセイバーズとガーディアンエルフだったが………機龍は発見できなかった。

奇跡的にも、ボロボロになった仮契約カードの原版だけが海上を漂っていたのが発見された………

敵基地の爆発によって、機龍はJフェニックスごと消滅した………

アルサレア軍本部に報告した後、そういった結論が返ってきた。

しかし、誰もが反論できなかった。

機龍には二階級特進が送られ、大尉となった。

それが、ガイアセイバーズに機龍が死んだという事実を突き付けた。

惑星J出身者達は事実を何とか受け止めながらも、ヴァリム軍の行方を追っていたが、民間人だった3−Aメンバーの落ち込みは酷かった。

誰もが魂を失ったかのように呆然となり、あの賑やかだった3−Aの面影は微塵も感じられなかった。



特に、真名の落ち込み具合は激しかった………



彼女の元にボロボロになった仮契約カードの原版が届けられた時、彼女はその場に泣き崩れた。

そして、その日から彼女は悪夢に魘されるようになった。

悪夢の内容は、元パートナーと機龍の最後を永遠と見させるという物だった………

その為、真名は安眠することができず、窶れていった………

ネギ達は掛ける言葉が見つからず、ただそれを黙って見ているしかなかった………





しかし………

運命は………彼女達にさらに試練を与えるのだった………











中等部卒業式が間近に迫ったその日………

試練は始まった………

3−Aの教室では、ネギの英語の授業が行なわれていた。

ネギはただただ機械的に黒板に描写をし、生徒達は同じように機械的にそれをノートに写していくいくか、上の空となってボーッとしているだけだった………

と、その時!!

「!! な、何アレ!?」

「夏美さん? どうしました?」

突如、声を挙げた夏美に全員が注目するが、夏美はそれに気づいていないように青ざめた顔で、窓の外を凝視していた。

「一体、何が………!!」

「「「「「「!!!!」」」」」」

それに倣って全員が窓の外を眺め、驚愕に固まった。

そこには………直径20キロメートルはあろうかという巨大な円盤状の要塞島が麻帆良へと迫っていた!!

思わず手に持っていた教科書を床に落とすネギ。

その音で、一同は我に帰った。

「ま、まさか、アレって………」

「ヴァリム軍!?」

誰もがそう思った時!!

要塞島の至る所から、PFが発進し、街へと降り立っていった。

そして………無差別攻撃を開始した!!

「うわぁぁぁーーーーーっ!!」

「キャアァァァーーーーーーっ!!」

建物は崩れ、火の手が上り、人々はパニックに陥りながら逃げ惑う。

「あ、ああ………」

「麻帆良が………」

自分達の街が破壊されていく現状に混乱を起こし、呆然となる3−A。

「何やっとんのや!! お前等!!」

とそこへ、慌てて小太郎が駆け込んできた。

「!! 小太郎くん!!」

「敵が来とるんやで!! 急いで基地に集まらんかい!!」

怒鳴るように叫ぶ小太郎。

その言葉にハッと気を取り戻した3−A組は、慌ててガイアセイバーズ基地へと向かい始めた。











機甲兵団ガイアセイバーズ基地・作戦室………

「アーノルド大佐!! コレは!?」

「落ち着け、レイ!!」

「ヴァリムめ、逆に総攻撃を掛けてくるとは………」

「どうして気がつかなかったんだ!!」

「それが………要塞島は突然、麻帆良上空に現れたんです!!」

「どのセンサーもレーダーも全く反応しなかったんです!!」

「まさか! 奴等、空間転移を!?」

突然のヴァリムの襲撃に、惑星J組も慌しく叫び立てていた。

「兄ちゃん達!! 皆連れてきたで!!」

「皆さん!! コレは一体!?」

そこへ、小太郎とネギを先頭に3−Aが駆け込んできた。

「ヴァリムの連中の総攻撃だ!!」

「そんな!! 機龍さんもいないのに!!」

「どうすれば良いの………」

機龍不在の中における突然の奇襲。

しかも総攻撃に、3−Aは心が折れかけていた。

「バカモノッ!! お前達は機龍の意思まで無駄にする気か!!」

と、そんな3−Aをアーノルドが怒鳴りつけた!!

「機龍さんの………意思!?」

「そうだ! アイツは………機龍は、お前達を………この街を………そして、この星を守るために必死に戦った!! 俺達がそれを受け継がないで、誰が受け継ぐんだ!!」

「「「「「「!!」」」」」」

全員がハッとした。

「そうだよね………」

「僕達は危うく、機龍さんの意思まで死なせてしまうところでした………」

「機龍先生が守ろうとしたものを………今度は私達が守る番よ!!」

誰もが決意を新たにする。

そんな中、刹那は真名に視線を向ける。

「龍宮………大丈夫か?」

「ああ………アルバトスさんが言ったように、機龍の意思まで死なすわけのはいかないからな………」

そう言って笑みを浮かべる真名。

しかし………それはどう見ても、陰りのある笑顔だった。

「………無理はするな」

だが、刹那にはそう言うことしかできなかった………

と、現状を映していたメインモニターが半分に割れ、新しく出た半分にアキナの顔が映し出された。

「こちら戦艦ドック。発進準備、整いました」

「よし!! 機甲兵団ガイアセイバーズ、出撃せよ!!」

「「「「「「「了解!!」」」」」」」











ガイアセイバーズ基地内、独房にて………

「この振動………戦いが始まったのか?」

突然襲ってきた振動に、ハクヤは推察した。

機龍不在において、敵戦犯の処分を決めかねていたガイアセイバーズは、取り敢えずの措置としてハクヤを独房入りにしていた。

「まあ………今の俺にはどうでもいい事か」

そう言って、ハクヤは視線を床に落とす。

そこへ、足音が響いてきたかと思うと、独房の入り口が開け放たれた。

〈ハクヤさん!!〉

「四葉か………どうかしたか?」

〈早くここから逃げてください!!〉

「何っ!?」

驚くハクヤ。

「どういう事だ!!」

〈ヴァリムが総攻撃を仕掛けて来たんです!! このままじゃ、麻帆良は危険に晒されてしまいます!! だから、今の内に逃げてください!!〉

「お前はどうする気だ!?」

〈私はガイアセイバーズの一員として、出撃します!!〉

「なっ!? 馬鹿か、お前は!! ヴァリムの総攻撃に立ち向かえると思ってるのか!! 大体、お前は争い事が嫌いなんだろう!!」

〈確かに嫌いです………でも!! 人は大切なものを守るため、戦わなければならない事もあるんです!!〉

「!!………」

ハクヤは、四葉の言葉に思わず黙り込む。

〈私達が少しでも敵を食い止められれば、その間に1人でも多くの人が助かります。だから………私達は戦うんです〉

「四葉………」

〈私………貴方のこと………好きでした〉

「!!」

〈早く逃げてくださいね………それじゃ、お元気で!!〉

五月はそう言い残し、独房を開け放ったまま去って行った。

ハクヤは暫しの間、呆然としていたが、やがてポツリと呟いた。

「どうしてお前達はそこまで………クッ」

ハクヤは独房から抜け出していった。











ヴァリム軍サイド………

破壊の限りを尽くしているヴァリム軍PF部隊。

その光景を要塞島内部の作戦室のメインモニターで楽しそうに眺めているフラットエイト。

「フフフ………アハハ………ハーッハハハハ!! 楽しい! 楽しくて仕方が無い!! やはり戦争は良い!!」

クレイジーな台詞を吐きながら、高笑いを挙げる。

「大将殿。お楽しみのところ、恐れ入りますが御報告を申し上げます」

と、そこへ、フォルセアが声を掛けてきた。

「何だ?」

「ハッ! 先ほど、都市の湖から戦艦が2隻出現。ガイアセイバーズとガーディアンエルフの母艦です」

「そうか………ああ、今見えてきたよ」

メインモニターに2隻の戦艦と、そこから発進しているPF部隊が映った。

「艦隊を出撃させろ。それにGF部隊と多脚戦車部隊もな。ついでお前達も行け」

「随分と豪勢ですね」

余りの物量出撃に呟くヴェル。

「敵にはとことん絶望を味あわせて殺す………それが私の流儀です。さあ、出撃なさい!!」

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」

フラットエイトの命を受け、ヴェル達は作戦室を後にするのだった。

「さて………始めますか」

残ったフラットエイトは、モニターに映るガイアセイバーズとガーディアンエルフ部隊を見ながら不敵な笑みを浮かべるのだった。











ガイアセイバーズ&ガーディアンエルフ部隊サイド………

「クッ!! 近くで見ると、更に凄い数だな………」

ヴァリムPFの大部隊に、思わずそう漏らすレイ。

「うろたえるな、レイ!」

それにアーノルドが叱咤を飛ばす。

「………皆、ここに着てこんなこと聞きたくないだろうけど、報告するネ」

そこへ、全機に超から通信が入る。

「超さん? どうしたんですか?」

「たた今、要塞島から多数の戦艦とGF、多脚戦車部隊。そしてヘルキラーズ小隊の出撃を確認したヨ………」

「「「「「「なっ!!」」」」」」

その報告に全員が要塞島を見やる。

そこには、またも至る所から戦艦とGF、多脚戦車部隊を発進させている要塞島と、それに混ざっているヘルキラーズ小隊の姿があった。

「そんな、ここにきてこの増援!?」

「反則だぜ!!」

ガイアセイバーズの絶望を他所に地上に降り立つGF部隊。

そして、空中と地上に展開する艦隊とヘルキラーズ小隊。

「あっ!! 要塞内から全方位通信が!!」

「何っ!? 皆、回線を開くネ!!」

超に促がされて、通信を受信する一同。

すると、全機と全艦の通信モニターにフラットエイトの姿が映し出された。

「!! お前はっ!?」

「お久しぶりですね、アルサレアの糞共に原住生物の皆さん」

「フラットエイト!!」

全員が通信モニターを睨みつけた。

「しかし、貴方達もしぶといですね。折角、基地を1つ吹き飛ばして葬ってあげようと思ったのに………死んだのはあの甘ちゃんの隊長くんだけだとは」

「!! 甘ちゃんだと!!」

「ええ、馬鹿とも言えますね」

「貴様!!」

「それ以上、機龍の事を愚弄するな!!」

フラットエイトの言葉に激昂するガイアセイバーズ。

「フッ………これ以上話す事はありませんね。では」

そう言って通信は遮断された。

「「「「「「「…………」」」」」」」

誰もが怒りの形相を浮かべていた。











ヴァリム軍サイド………

「さて………全軍通達。回線開け」

フラットエイトが眼鏡を光らせ、そう言うとヴァリム軍有人機各機への通信が開かれた。

そして、手をパンッ、と打つと………

「さあ諸君、殺戮の時間だ。原住生物を守っているつもりでいい気になってるアルサレアの糞共と、武器を与えられて強くなった気でいる馬鹿な原住生物共に、血と爆煙と敗北の味を教えてやれ。七度生まれ変わっても忘れぬよう、魂の髄に刻み付けろ」

声高に演説を始めた。

「情けを掛けるな、容赦をするな。徹底的に焼き尽くせ!! 馬鹿は死なねば治らない。ならば、我らヴァリム共和国軍に楯突けばどうなるか、殺して理解させてやれ!! 全軍、突撃!! 馬鹿と糞と屑共を、一人残らず殺し尽くせ!!!」

演説が終わると同時に、ヴァリム軍パイロット達から歓声が挙がった。

「おら、聞いたかてめーら! 突撃だぜ!! ちとカッコよく言ってやると、『おのおの存分に首級を上げろ』ってやつだ!!」

特にナインは戦意高揚している。

「何言ってんのよ。ガキが小難しい事言ってもカッコ悪いだけよ。もっとストレートに言いなさい」

と、そんなナインに向かってヴェルがニヤニヤと笑いながら言った。

「ハッ、冷血ババアも偶にはマトモな事言うじゃ無えか。そんじゃま、分かりやすくド真ん中で言ってやるとだな……ミ・ナ・ゴ・ロ・シ・だアァァァァ!!」

そう言って、ナインはいの一番に突撃して行った。











ガイアセイバーズ&ガーディアンエルフ部隊サイド………

「来るぞ!!」

「全機、孤立するな!! 最低でも2人1組を組んで迎え撃て!!」

「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」

迎撃を開始するガイアセイバーズ&ガーディアンエルフ部隊。

ガイアセイバーズが敵陣へ斬り込み、戦艦とガーディアンエルフ部隊が後方より援護する態勢を取った。











戦闘開始から1時間半後………

ガイアセイバーズ&ガーディアンエルフ部隊は苦戦を強いられていた。

敵部隊は倒しても倒しても次々に要塞島内から出現し、一向に減る気配はなかった。

「チキショウッ!! 倒しても倒してもキリがねーっ!!」

「あの要塞島は兵器製造プラントネ!! あれを何とかしないと勝ち目は無いヨ!!」

「でも、この状況じゃ、とても要塞島には近づけ………ウワァッ!!」

「兄貴!! 被弾したぜ!!」

対するガイアセイバーズは、ネギ達がまだ完全に機龍の事で立ち直っておらず、動きが鈍りがちになっていた。

「このままじゃ勝ち目がありません!!」

「一旦退いて、態勢を立て直した方が………」

「駄目だ!! まだ住民の非難が完了していない!!」

その上、撤退することも出来なかった。

「無人PF隊、40%壊滅!!」

「こちら第3リック・ドムV隊!! 弾薬が切れました!! 一旦補給に帰艦します!!」

「第1バンドゲルググ隊、損傷甚大!! 脱出します!! 申し訳ありません!!」

そして援護の要である無人PF隊とガーディアンエルフ隊は、敵の圧倒的物量の前に次々に撃墜、撤退させられていった。

「こうなれば………艦首波動魔砲、発射用意!! 目標、要塞島!!」

「なっ!? このタイミングで波動魔砲を撃つのか!?」

「危険すぎます!!」

オペレーター達が抗議を口々にする。

「何の道、このままでは全滅は時間の問題ネ!! ならば、一か八か、要塞島に攻撃を加え、敵の虚を衝くヨ!!」

しかし、超は自分の判断を信じた。

[こちらアーノルド! 話は聞いていたぞ………分の悪い賭けだが、やるしかないな!! 全機、バハムートを護衛せよ!! ただし、なるべく敵に悟られるな!!]

[[[[[[[了解っ!!]]]]]]]

ガイアセイバーズとガーディアンエルフは、それとなくバハムートを守るように展開する。

「よし、機関室!! エンジンが壊れても構わないネ!! 出力を最大に上げるヨ!!」

[わ、分かりました!!]

[こうなりゃ自棄だよっ!!]

機関士組が、意を決して準備に取り掛かる。

「エンジンのエネルギー弁を閉じます!!」

「回路、艦首波動魔砲へ!!」

「全エネルギー!! 波動魔砲内シリンダーへ送ります!!」

「波動魔砲全安全装置解除!!」

[こちら機関室!! 異常なし!!]

[エネルギー流入!! 順調なり!!]

テキパキと発射準備を整えるクルー達。

「自動修正、照準プラスマイナスゼロ!!」

「エネルギー充電、120%!!」

「全員! 耐ショック、耐セン光防禦、用意!!」

超がそう言いながら遮光ゴーグルを装着し、シートベルトをきつくする。

オペレーターもそれに倣い、機関室員や格納庫員も専用シートに身体を固定する。

「艦首波動魔砲!! はっ………」

「ああっ!! 左舷より敵旗艦接近!!」

「何っ!!」

慌てて超が、左舷を見ると、そこには艦首についたドリルを回転させながら一直線に突っ込んで来るヴァリム軍旗艦『デプスチャージ』の姿があった。

「旗艦自ら突込んで来たかネ!?」

「よもや前線指揮官自ら突撃してこようとは思っていなかったようだな・・それがお前達の油断だ!!」

カイゼルは、ガイアセイバーズとガーディアンエルフの攻撃にも怯まず、無防備なバハムートの横腹にデプスチャージを迫らせる。

「発射中止っ!! 緊急回避!!」

「間に合いませんっ!!」

超は、とっさに艦首波動魔砲発射を取り止めて、回避しようとしたが、時既に遅し!!

デプスチャージの艦首のドリル………超高硬度螺旋衝角『ユニコーン』がバハムートの左舷部を抉った。

凄まじい衝撃が、バハムートを襲う!!

「「「「キャアァァァァーーーーーッ!!」」」」

艦のあちこちで3−Aクルーの悲鳴が挙がる。

「ぐっ!! 被害は!?」

「左舷B16から32ブロック損壊!!」

[こちら格納庫!! ヤバイよ!! 火が出てる!!]

[消火装置が動かないよーーーっ!!]

[機関室です!! 第2対消滅エンジンに以上発生!!]

[緊急停止装置を作動させますっ!!]

抉られた箇所からもうもうと黒煙を吐き出すバハムート。

しかし、それだけでは終わらなかった!!

「ヒャハハハハッ!! 落ちろーーーーっ!!」

デプスチャージの奇襲に皆が気を取られていた瞬間、今度はナインのジャック・ザ・リッパーが一気に接近してきて、メインブースターを切り裂いた!!

「「「「キャアァァァァーーーーーッ!!」」」」

再び衝撃がバハムートを襲う!!

「メインブースター破損!! 推力急激に低下!!」

[魔相転移エンジン出力低下!! 駄目です、停止します!!]

「飛行維持できません!! 落ちます!!」

立て続けにエンジンに損傷を受け、バハムートは至る所から黒煙を上げながら、街に墜落した。

地響きが響き、数々の建物が下敷きとなって崩壊した。

「ぐうう………」

コンパネに突っ伏して呻く超。

オペレーター達も、同じようにコンパネに突っ伏して気絶していた。

[こちら機関室!! 超さん、応答してください!!]

[皆!! 大丈夫!!]

整備員組や機関士組は、必死にブリッジに通信を送っている。

「ああっ!! バハムートが!!」

ネギ達もバハムートが墜落したのを見て、愕然とする。

「旗艦の片方が落ちたか………全敵機に対して、通信を送れ!!」

カイゼルが、ガイアセイバーズとガーディアンエルフ隊に通信を送る。

「こちらは、ヘルキラーズ小隊艦隊司令、カイゼル・G・グローエルだ」

「!? 敵機からの通信!?」

「諸君達は良く頑張った。出来れば素直に投降してくれるとありがたいのだが………そうは行くまいな」

「当たり前でしょっ!!」

「ならば、致し方ない………デプスティンガー5〜10艦隊、バトルモードに変形せよ!!」

カイゼルの命令と共に、要塞島を取り巻くように展開していた戦艦………『デプスティンガー』艦隊の半分がGF形態へと変形し、大地に降り立った。

「何とっ!? 戦艦がロボットに変わったでござる!!」

「GF部隊と共に前進!! あの戦艦にトドメを刺せ!!」

ズシンッ、ズシンッと足音を立て、街を破壊しながら、GF部隊とデプスティンガー隊がバハムートを目指す。

「!! バハムートにトドメを刺す積もりか!?」

「このぉぉぉぉぉーーーっ!!」

「やらせませんわ!!」

[障害は………取り除きます!!]

それを見たGヴァルキューレ、Gレディ、GジェットがGF部隊とデプスティンガー隊に向かって突撃する。

「待つんだ!!」

「迂闊に突っ込むんじゃない!!」

レッディーとゼラルドが、慌てて援護に向かおうとしたが………

「オメー等は俺の相手してくれよぉぉぉーーーーっ!!」

ジャック・ザ・リッパーが猛スピードで突撃してきた。

「うおっ!!」

「ぬうっ!!」

それを何とか、紙一重で回避するJエアロとJスパイラルパワード。

「へ〜〜、やるじゃんか。ミサイルよりも速い俺の突撃をかわすなんてな!」

「貴様ごときにやられるか!!」

「ここで負けたら、ガーディアンエルフの名が廃る!!」

Jエアロはエアロスピアを、Jスパイラルパワードはハイパービームソードを両手に構えて奮い立つ。

「がーでぃ………? ああ、アレか。『燃え尽きサムライ』とか『鉄砲玉』とか名乗ってる奴等がいる、馬鹿共の集まりだろ?」

ナインは馬鹿にしたかのような笑顔を浮かべていった。

「何っ!?」

「貴様………」

その態度に奥歯を噛み締めるレッディーとゼラルド。

「……そういや、『ビリーヴ』だっけか、あのフネ。いやあ、いいフネだよな。キレーな形しててよぉ………あーゆーのをいっぺん、ブッた斬ってみたかったんだよなぁ!!」

そう言って、ジャック・ザ・リッパーはビリーブに突撃して行った。

「このぉっ!!」

「やらせんぞっ!!」

その後を追撃するJエアロとJスパイラルパワード。

だが!!

「へっ!! 引っかかったな!!」

ジャック・ザ・リッパーは180度反転!!

JエアロとJスパイラルパワードに斬り掛かった!!

「!! しまった!!」

「不覚!!」

虚を衝かれ、Jエアロは左腕を、Jスパイラルパワードは右腕を切断された。

「ぐあっ!!」

「ぬあっ!!」

「へへへ、お前等はコイツ等の相手でもしてな!!」

ヴァリムPF部隊が、JエアロとJスパイラルパワードを取り囲むように展開する。

「くうぅ………あんな挑発に乗ってしまうとは………」

「俺達も焼きが回ったな、レッディー………」

己の迂闊さを苦々しく思う2人。





一方、GF部隊とデプスティンガー隊に突撃していったGヴァルキューレ、Gレディ、Gジェットは………

大量の大型の敵を相手に奮戦していた。

「このぉぉぉーーーーーっ!!」

Gヴァルキューレが振り下ろしたハマノツルギ(完全体)がゼクルヴを袈裟懸けに斬り捨てる。

「ありがたく受け取りなさい………ローゼスボムッ!!」

Gレディが投げつけた薔薇の花が闘神の至る所に突き刺さり、爆発した。

[ターゲット、ロック!!]

ミサイルポットからミサイルを発射し、デプスティンガーを1体撃破するGジェット。

しかし………それも長くは続かなかった。

ゼクルヴのカスタム機『ゼクルヴ・ゼノン』が左肩から放ったレーザーネットがGヴァルキューレを捕らえた。

「!! しまっ………キャアァァァーーーーーーッ!!」

レーザーネットに流れる高圧電流が襲い掛かり、Gヴァルキューレは地面に墜落し横たわった。

「[アスナさん!!]」

Gレディが慌てて傍に駆け寄り、Gジェットがその援護に入った。

「アスナさん!! 大丈夫ですか!?」

マルチパラソル(ブレードモード)でレーザーネットを切り裂くGレディ。

「う………ううん………アタシは大丈夫………でも、Gヴァルキューレが………」

高圧電流の影響で、Gヴァルキューレのコックピット内ではコンパネは所々吹き飛び、間接からも黒煙を上げていた。

[御2人供、急いで離脱してください!! 私1人では支えきれま………]

と、茶々丸が言いかけた時………

同じくゼクルヴのカスタム機『ゼクルヴ・ガルバ』が右肩から放ったバスターランチャーがGジェットの腹部を貫いた!!

「「!! 茶々丸さん!!」」

「茶々丸!!」

[!! 脱出!!]

危機一髪、茶々丸は脱出に成功したが、Gジェットは爆発、四散した。

だが、休む間もなく、その爆煙の中から無数のミサイルが、GヴァルキューレとGレディに命中した。

「「キャアァァァーーーーーーッ!!」」

「アスナさん!! いいんちょさん!!」

ネギが叫んだ時、爆煙の中から脱出ポットが2つ飛び出してきた。

「良かった!! 無事脱出したようだ!!」

「誰かっ!! すぐに回収してくれ!!」

「私が!!」

地上部隊を相手にしていたGマーメイドが、3機の脱出ポットを回収する。

だが、それを良しとせんするヴァリムPF隊がGマーメイドに襲い掛かる。

「!!」

「やらせるかっ!!」

しかし、Gガンナーがそれを防ぐ!!

「龍宮さん!!」

「今の内だ、大河内!! 後退しろ!!」

「は、はいっ!!」

Gマーメイドが、脱出ポットを持って後退する。

それに追いすがろうとするヴァリムPF隊をGガンナーが迎撃する。

仮契約カードの原版が損傷したせいで、アーティファクトが使えなくなってしまったにも関わらず、ケルベロスと支給品の射撃武器を装備している。

しかし、それでも必死になって奮闘していた。

(負けられない!! アイツの………機龍の為にも!!)

その時!!

Gガンナーの首に、大鎌の刃が掛けられた!!

「!!」

咄嗟に身を屈めて避けるも、頭部を完全に持っていかれた!!

「くうっ!!」

「あら、今のに反応するなんて………思ったより出来るのね」

サブカメラに切り替えたモニターには、悪魔のような翼を生やした銀色のオードリー………ヴェル専用機『デビルオードリー』が佇んでいた。

「………ヴェル………へラー」

「覚えていてくれて光栄だわ、お嬢ちゃん」

小馬鹿にしたようにいうヴェル。

「貴様!!」

デビルオードリーに向けて、右手のケルベロス(ハンドガンモード)を3連射するGガンナー。

しかし、それは全弾あっさりと回避された。

「フフフ………無駄無駄」

「クッ!!」

左手にレーザーマシンガンを持ち、2丁ともデビルオードリーに向ける。

「安心しなさい………すぐにあの馬鹿な男と同じ所に送ってあげるわ」

「!! 馬鹿な男だと!!………機龍のことか………機龍のことかあぁぁぁーーーーーっ!!」

その一言に激昂し、バーニアを全開にすると、デビルオードリーに向かってケルベロスとレーザーマシンガンを乱射しながら突撃した。

「イカン!! 落ち着くんだ、龍宮くん!!」

「うわあぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

アーノルドが制したが、激昂した真名には届かなかった。

「フッ………馬鹿な子………」

ヴェルがそう言った瞬間!!

銀色の閃光が走り、Gガンナーが胴から真っ二つになった!!

「!! うわあっ!!」

ガシャンと地面に叩きつけられるGガンナーの上半身と下半身。

「龍宮!!」

「真名殿!!」

「ぐ………うう………」

ヘルメットのフェイスカバーが割れ、額から血を流しながら、力なくシートに背を預ける真名。

「あらあら………惨めな姿ね」

Gガンナーの傍に立つデビルオードリー。

と、その時!!

「…………クッ!!」

真名は最後の力を振り絞り、操縦レバーに手を伸ばすと、トリガーを押した!!

ケルベロスから弾丸が放たれた!!

「なっ!?」

咄嗟のことで完全に回避できず、頭部装甲の一部を吹き飛ばされるデビルオードリー。

しかし………

「………よくも………よくも私の機体に………傷を付けたわねぇぇぇぇぇーーーーー!!」

ヴェルは激昂し、デビルオードリーの装備した電磁鞭………エレクトロ・ピュートをGガンナーに巻きつけ、高圧電流を流した。

「う、うわあぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

コックピットにまで流れてきた高圧電流に気絶する真名。

「アナタ………ただじゃ殺さないわ! 最悪の悪夢を見せて、それからじわじわと殺してあげるわ!! 連れて行きなさい!!」

ヴェルが指示すると、2機のヌエがGガンナーの上半身を要塞島へと運んで行く。

「真名ちゃん!! キャアッ!!」

「サクラッ!!」

追撃しようとしたJランチャー・サクラスペシャルだったが、ヴァリム軍団の激しいに阻まれる。

「駄目だ!! このままじゃやられるぞ!!」

レイが叫ぶ。

「………皆………聞こえる………かネ………」

そこへ、雑音の混じった超から通信が入ってくる。

「超さん!! 無事だったですね!!」

「………それよりも………更に………悪い報告………ネ………戦闘の影響で………学園のメイン防衛コンピューターが………ダウンした………ヨ………」

「「「「「「なっ!!」」」」」」

全員が戦慄した。

学園のメイン防衛コンピューターは、邪悪なる存在が学園に入ってくる、発生するのを防ぐ防衛結界の発生を管理している。

この結界の御蔭で、学園内に侵入してくる悪魔、発生する妖怪は低級レベルに押さえられていた。

しかし、そのコンピューターがダウンしたということは………

「現在………大量の上級悪魔と………妖怪軍団が………麻帆良を目指して………進軍中………ネ」

「そ、そんな………」

絶望的な報告に打ちのめされるガイアセイバーズとガーディアンエルフ。

「………機龍………さん」

ネギは、虚空に機龍の名を呟くのだった………









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