バトルフィールド、機龍VSフラットエイト………
「うぬっ!! ちょこまかと動き回りおって!!」
オーガル・ディラムの攻撃を素早い動きでかわしていくゴッドJフェニックス。
「そんなデカイ図体じゃ小回りが利かないだろ。今さら投入してきたのは戦略ミスだったな! 喰らえっ!!」
精霊銃で、オーガル・ディラムの両肩の砲塔を破壊する。
「ぬおっ!!」
両肩から煙を上げてよろけるオーガル・ディラム。
その身体には、他にも細かな損傷が目立っていた。
「もうお前に勝ち目はない。諦めて降伏しろ!」
オーガル・ディラムの前に回り、そう促がす機龍。
しかし………
「フ………フフフ………ハハハハ!! アーッハッハッハッハッハ!!」
「!? 何が可笑しい!?」
急に高笑いを上げたフラットエイトを怪しむ機龍。
「自惚れないでください。今まで、私が本気で戦っていたと思ってるんですか?」
「何だとっ!?」
身構えるゴッドJフェニックス。
ハッタリかと思ったが、フラットエイトの口調から、本当に何かが有ることは感じ取れた。
「さあ!! その真の姿を示せ!! オーガル・ディラム………いや、オーガル・オロチ!!」
フラットエイトがそう叫ぶと、オーガル・ディラムの周りから、紫色のオーラのような物が発ち上がる。
「!? これは!?」
そして、次の瞬間!!
オーガル・ディラムの背から、8本の蛇のような竜の首が生えてきた。
「何っ!?」
さらに、関節の隙間部分も生物を思わせる有機的な物に変わり、装甲の所々に血管のような黒い管が浮かび上がってきている。
そして、カメラアイに血走った瞳のような物が現れる。
シャアァァァーーーーーッ!!
咆哮を挙げる8つ竜の首。
「これは!? まさか………ヤマタノオロチ!?」
そう………その姿は、まるで日本神話に出てくる伝説の竜………ヤマタノオロチだった。
「如何ですかな? 我がヘルキラーズ小隊の最終兵器………オーガル・オロチの姿は?」
勝ち誇ったように言うフラットエイト。
「クッ!!」
オーガル・オロチが放つ異様な空気に、機龍は冷や汗を流した。
「覚悟してもらいましょう………今まで散々私の計画を邪魔してくれたを酬いを受けなさい!!」
フラットエイトがそう言うと、8つの首が、口から火炎弾を発射してきた。
「!! 精霊障壁!!」
咄嗟に精霊障壁を展開し、防ぐゴッドJフェニックス。
しかし、火炎弾は絶え間なく連続で発射され、ついに障壁を破壊する!!
「おわっ!!」
衝撃で弾き飛ばされるゴッドJフェニックスだったが、何とか空中で体勢を立て直す。
「凄いパワーだ………」
さらにそこへ、オーガル・オロチの右手が迫る!!
「!! ぬうっ!!」
上に飛んでかわすゴッドJフェニックス。
だが、それを呼んでいたかのように、今度はオーガル・オロチの左手が迫ってきて、捕まえられてしまう。
「何っ!?」
そして、床目掛けて投げつけられる!!
「おわあぁぁぁーーーーーーっ!!」
床に叩きつけられ、粉煙を舞い上げるゴッドJフェニックス。
やがて、粉煙が収まると、上に乗っかっていた瓦礫を退けながら立ち上がる。
「イテテテッ………おまけに素早いときたか」
人機一体操縦によって、自らの身体にも与えられるダメージに顔を顰めながら、オーガル・オロチを見据える機龍。
(しかし………さっきの攻撃は、まるで俺の動きを読んでいたようだったが………)
「ホラホラ、どうしました!? ボーっとしていると、あっと言う間にあの世行きですよ!!」
フラットエイトの声が響き、8つの首からの火炎弾とオーガル・オロチのボディの彼方此方に備え付けられた砲塔からの砲弾が降り注ぐ!!
「!! クッ!! ジェイス!! 神霊モード発動!!」
[Yes!!]
神霊モードを発動させ、超高速スピードで飛びまわるゴッドJフェニックス。
オーガル・オロチは、またもその動きを読んでいるかのように、ゴッドJフェニックスの移動先へと攻撃を加える。
しかし、その攻撃は、どれも今一歩で届かない。
「ええいっ!! 何をしている、オーガル・オロチ!!」
(やはり………どういうわけか知らないが、奴は俺の動きを読んでいる………しかし! 反応までは付いて来れないみたいだな!!)
機龍の考えたとおり、オーガル・オロチはゴッドJフェニックスの動きを読んでいたが、それに反応するまでに若干のタイムラグがあった。
そのタイムラグを突き、ゴッドJフェニックスは遂にオーガル・オロチの懐に飛び込んだ!!
「ぬうっ! しまった!!」
「もらった!! ボルテック………キャノ………!!」
と、ボルテックキャノンを放とうとした、その時!!
機龍は、覚えのある気配を感じ、思わずオーガル・オロチから距離を取った。
(い、今の気配は!? そんな………まさか!?)
嫌な考えが、機龍の頭の中を過ぎる。
「ん?………そうか、成程。気づいたようですな」
しかし、その考えを読んだかのようにフラットエイトが言う。
その言葉に反応するように、オーガル・オロチの胸部装甲が、まるで生物の口のように開いた。
「!!」
その中を見て驚愕する機龍。
何故なら、そこには………
生物のような壁に身体を半分埋め込まれ、虚ろな瞳をした真名の姿があった………
「ま、真名!!」
「フハハハハ!! どうですか? 最愛の女に再会した気分は!?」
「貴様っ!! 真名に何をした!?」
「見て分からないのですか? 彼女は、ヤマタノオロチの贄となっているのですよ。いや〜〜、これほど良いパーツはそうそうにありませんからね〜。ハッハハハハ!!」
「!! コノヤロオォォォォォーーーーーーッ!!」
機龍は、思わず怒りに任せ、フラットエイトのいる頭部へとゴッドJフェニックスを突撃させた。
しかし、オーガル・オロチの放った蹴りによって天井に貼り付けられる。
「ぐわぁぁぁーーーーーーっ!!」
凄まじいダメージが、機龍を襲う。
「やれやれ………無様な姿ですね」
「うう………真名! 真名!! しっかりしろ!! 目を覚ませ!! 真名!!」
外部スピーカーを通じて、真名へと呼びかける機龍。
「…………」
だが、真名は虚ろな瞳をしたまま、何も答えなかった。
「無駄です………今のこの女の心は、闇に捕らわれています。何を言っても届きませんよ」
それに代わるように答えるフラットエイト。
開いていた胸部装甲が閉じられる。
「さあ? どうしますか? アルサレアの名に於いて、私を倒しますか? 勿論、その時はこの女も一緒に死にますが………まあ、せめて自分の手で殺してやるというのも1つの愛かもしれませんがね」
「ぐぅ………」
機龍は閉口する。
「そちらから来ないのでしたら、こちらから行かせて貰いましょう………行け!! オーガル・オロチ!!」
オーガル・オロチは、グッと膝を曲げると飛び上がり、天井に張り付いたままのゴッドJフェニックスに頭突きをお見舞いした!!
「おわあぁぁぁーーーーーーっ!!」
押し潰されるような感覚が、機龍を襲う!!
オーガル・オロチはそのまま天井を突き破っていった!!
*
要塞島外………
要塞島外で戦うガイアセイバーズとガーディアンエルフも、要塞島の異変に気づいていた。
ビリーブ・ブリッジ………
「敵軍が次々と動きを止めています!!」
「要塞島内部により、多数の爆発を感知!!」
「機龍さん達の作戦が成功したの!?」
「まだ、分かりません!!」
「オイ、突入班!! 誰でも良いから応答しろ!!」
状況を報告し、突入班に連絡を取ろうとするオペレーター組。
「アキナさん!!」
「まだ作戦が成功したとは断定できません! 各員、警戒を怠らないでください!!」
ブラウニーに声を掛けられながら、アキナは冷静に指示を飛ばす。
実際に、敵空中PF軍団、空中GF軍団、艦隊は、糸の切れたマリオネットのように機能停止し、次々に墜落して行った。
地上に展開していた多脚戦車隊、地上PF部隊も同じように機能停止し、式神部隊は紙型に戻って行った。
さらに、要塞島も時折、外部壁から爆発を上げていた。
と、その時!!
バハムートが突き刺さり、穴が空いた外壁部分から、多数の機影が飛び出てきた!!
「!? アレは!?」
「データ照合!! 突入班のJヘル、Jクーロン・アーノルドカスタム、Jエアロ、Jスパイラルパワードです!!」
「その後に、JブレイダーとJランチャー・サクラスペシャルを確認!!」
「あ! 今、GウィザードとGウルフも確認しました!! ネギせんせー………良かった」
次々に要塞島内から出てくる突入組の姿を見て、安堵の息を吐く和美、さよ、夕映、のどか。
「!? ちょっと待て!! ゴッドJフェニックスはどうした!?」
「「「「えっ!?」」」」
千雨の一言に、ハッとして確認すると、帰ってきた突入組の中にゴッドJフェニックスの姿が無いことに気づく。
「いない!! ゴッドJフェニックスはいません!!」
「どうなってんの!?」
「ま、まさか!?」
「まだ要塞島内に!?」
顔面蒼白となる一同。
要塞島で起こっている爆発は段々と激しくなっており、何時大爆発を起こしても可笑しくない状況だった。
「こちらゼラルド! ビリーブ、応答せよ!!」
そこへ、Jスパイラルパワードのゼラルドから通信が入ってくる。
「あ、はい! こちらビリーブ!!」
「ゼラルドさん! 大丈夫!?」
通信に割り込むブラウニー。
「ああ、大丈夫だ。要塞島の動力部にダメージを与えることに成功した! あと十数分もすれば、要塞島は大爆発を起こす! 全員を安全圏まで退避するんだ!!」
「そ、それが、ゴッドJフェニックスが………機龍さんがまだ帰ってきてないんです!!」
「何っ!?」
ゼラルドがそう言った時………
要塞島上部から、一際大きな粉煙が上った!!
「!? 何だっ!?」
慌てて全員が、要塞島上部が見える位置へと移動する。
すると、そこには内側から空けられたと思われる、巨大な穴が空いていた。
そしてそこから、背中から8本の竜の首を生やし、所々有機的な外見をもった600メートルは有ろうかという超巨大人型兵器………オーガル・オロチと、ゴッドJフェニックスが姿を現した!!
そのまま、要塞島上部をバトルフィールドに、距離を取って対峙する2機。
「!! リーダーッ!!」
「な、何!? あのおっきいのは!?」
「アルサレア戦役で、グレンリーダーに倒されたオーガル・ディラムに似ているが………」
「それより、機龍さんを援護しないと!!」
「待てっ!! 俺達の機体の損傷では、援護に行っても足手まといになるだけだ!!」
援護に行こうとしたガイアセイバーズメンバーを制するレイ。
実際、昨日の戦いで損傷した後、突貫作業で修復した機体には、既にガタが着始めていた。
「なら、せめて弾幕で!!」
射撃武器を一斉にオーガル・オロチに向けるガイアセイバーズ。
「よせっ!! 皆!!」
しかし、今度は、機龍が全員を制した。
「機龍さん!?」
「どうしてっ!?」
戸惑うガイアセイバーズ。
「アレには………真名が取り込まれているんだ!!」
「「「「「ええ〜〜〜〜〜っ!!」」」」」
驚愕の声を挙げる一同。
その時、オーガル・オロチとゴッドJフェニックスの周りでも爆発が巻き起こり、2機は炎に取り囲まれる。
「!! イカン!! 全員、離脱しろ!! 要塞島が爆発しかけているぞ!!」
「でも!! 機龍さんが!!」
アーノルドが命令するが、ネギ達は機龍の事を気にかける。
「俺なら大丈夫だ!! 真名を助けて必ず帰る!! 早く行け!!」
しかし、機龍もネギ達に離脱を促がす。
「機龍さん!!………どうか、ご無事で!!」
それを受け、ネギ達は離脱を始めた。
「無駄な事を………アナタを始末したら、次は奴等も始末してやりますのに」
「俺は負けん!! 例え、この身が砕け散っても、心折れぬかぎり………俺は戦う!!」
そう言って、構えを取り直すゴッドJフェニックス。
「ふぅ………呆れた方ですね………まあ、良いでしょう。アナタにはどう足掻いても、このオーガル・オロチを倒す事は出来ないでしょうがね」
「くっ………」
呆れたように言うフラットエイトに、苦い顔を浮かべる機龍。
(確かに………奴の言う通りだ………俺には、あの機体を倒す事は出来ない………だが、俺の声は、もう真名には届かない………どうしようもないのか!?)
流石の機龍にも、諦め文字が過ぎる。
(諦めてはいけない………)
「!!」
突然、頭の中に聞こえてきた声に、思わず辺りを見回す機龍。
すると、機龍の目の前に、青白く光る光球が現れる。
(神薙 機龍………諦めてはいけない………僕との約束を忘れてしまったのかい?)
それは、精霊へと姿を変えた真名の元パートナーだった。
「しかし………俺にはもう、どうしていいか………」
(簡単さ………君の正直な気持ちをマナに打ち明ければ良い)
「えっ!?」
元パートナーからの思いがけない言葉に戸惑う機龍。
「し、しかし………」
(言ったはずだよ………真名を救えるのは君だけだって………大丈夫………君には、その資格がある)
そう言って、青白く光る光球は着えていった。
「あ! ちょっと!!」
「何をブツクサと言っているのですか? 行きますよ!!」
そこへ、オーガル・オロチの拳がゴッドJフェニックス目掛けて振り下ろされる。
「おわっ!!」
後ろに跳んでかわすゴッドJフェニックス。
「………そうだな。考えてみれば、今回の事はどれもこれも俺が引き起こした事だ。俺が責任を取るってのが筋ってもんだ」
「これで終りです!! 神薙 機龍!!」
オーガル・オロチの、8つの全ての竜の首が火炎弾が発射体勢に入る!!
「真名あぁぁぁーーーーーーーっ!!」
だが、機龍は構わず心の底から真名の名を叫んだ!!
すると………
「…………」
8つの竜の首の口にチャージされていた火炎弾は霧消し、オーガル・オロチ自身も動きを止めた。
「な、何っ!? どうした、オーガル・オロチ!?」
突然動きを止めたオーガル・オロチに慌てるフラットエイト。
「真名。聞こえているか? 返事はしなくてもいい。ただ、聞いていてくれればいい」
機龍はそのまま、真名へと語りかけ始める。
「まずは、お前に謝らなければいけないな………お前の事も考えず、俺は自分の勝手な理由や思い込みでお前の気持ちを踏み躙ってしまった………ゴメンよ」
「…………」
オーガル・オロチの胸部装甲が開き、真名の姿が露出する。
「許してくれとは言わん………お前の痛みや苦しみ………そして、悲しみは、計り知れないものだっただろうからな………だが!! だがもし!! 許してくれるというなら!! 戻って来てくれ!! 真名!!」
「………りゅ………う………」
真名の口から、微かに言葉が漏れる。
「俺は………俺は………お前が好きなんだ!! 真名あぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」
機龍は、魂の限り叫んだ!!
「………機龍!!」
その熱き魂は届き、真名は意識を取り戻した!!
「ええいっ、小賢しい!! 貴様は黙ってヤマタノオロチの贄となっていれば良いのだ!!」
しかし、フラットエイトはそうはさせまいと呪力のレベルを上げる!!
「う、うわあぁぁぁーーーーーーーっ!!」
紫色の電流のようなものが身体を走り、悲鳴を挙げる真名。
「!! 真名っ!!」
「………き………りゅう………たすけ………て………」
「任せろ!!」
ゴッドJフェニックスは、オーガル・オロチへと飛んだ!!
「ジェイス!! パワーを上げろ!!」
[既に出力は全開です!!]
機龍の命令に、全てを懸けて答えるジェイス。
青白い光のオーラに包まれるゴッドJフェニックス!!
「ぬおっ!? お、おのれ、こけおどしを!! 殺れ!! オーガル・オロチ!!」
フラットエイトの命令に従い、8つの竜の首がゴッドJフェニックスへと向かう!!
しかし、その動きは目に見えて鈍かった………
「ハアァァァァーーーーッ!!」
気合と共に、零式斬魔刀(巨剣モード)を構え、一閃する!!
8つの竜の首の一つが切断される!!
「1つ!!」
シャアァァァーーーーーッ!!
悲鳴を挙げて怯む残りの7つの竜の首。
だが、機龍は手を休めず、返す刀でまた1つ竜の首を斬り捨てた!!
「2つ!!」
シャアァァァーーーーーッ!!
1つの竜の首が、ゴッドJフェニックス目掛けて火炎弾を放った!!
「ぬんっ!!」
しかし何と!!
ゴッドJフェニックスは、左手でそれを受け止めた!!
「おぉぉぉーーーーりゃぁぁぁーーーーっ!!」
そしてそのまま、火炎弾を放った竜の首目掛けて投げ返した!!
火炎弾は見事、放った竜の首に命中し、爆散させた!!
「3つ!!」
またも別の1つの竜の首が、ゴッドJフェニックスに迫る!!
「ハッ!!」
ゴッドJフェニックスは、上に飛んでかわすと………
「エイヤァァァーーーーーーーッ!!」
そのまま急降下して、飛び蹴りで竜の首を分断した!!
「4つ!!」
だがここで!!
1つの竜の首が、ゴッドJフェニックスを捕らえた!!
「ぐあっ!!」
巨大な口に挟まれるゴッドJフェニックス。
「良いぞ、オーガル・オロチ!! そのまま噛み砕いてしまえ!!」
しかし………
「うおぉぉぉーーーーーーっ!!」
ゴッドJフェニックスは零式斬魔刀を納刀すると、上顎と下顎に手を掛け、上下に引き裂いた!!
「5つ!!」
「ぬあっ!! オノレェェェーーーーーッ!! これでどうだ!!」
残った3つの竜の首が、一斉にゴッドJフェニックスに襲い掛かった!!
「ボルテック………キャノォォォォォーーーーーンッ!!」
だがそれも………ゴッドJフェニックスの放ったボルテックキャノン(フルパワー放射)によって、あっという間に消滅させられた。
「これで全ての竜の首は消し去った………」
「ぐうぅぅぅーーーーーっ!! 何をっ!! まだ負けておらんわーーーーーっ!!」
オーガル・オロチの巨大な右の拳が、ゴッドJフェニックスに迫る!!
「おおぉぉぉぉーーーーーーっ!!」
それに対し、ゴッドJフェニックスも鉄拳を繰り出す!!
オーガル・オロチとゴッドJフェニックスの拳がぶつかり合う!!
砕けたのは………オーガル・オロチの拳だった!!
「ぬおぉぉぉっ!! 馬鹿な!?」
「行くぞぉぉぉぉーーーーっ!! アァァァーーーカシック・アルティマァァァーーーーーッ!!」
空中に描かれた魔法陣から出現させた神霊獣『フェニックス』と融合し、炎の不死鳥と化してオーガル・オロチへと突撃するゴッドJフェニックス。
「!! しょ、正気かっ!? そんな技を使ったら、この女まで………」
「うおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!」
フラットエイトの言葉を無視し、炎の不死鳥と化したゴッドJフェニックスは、一直線にオーガル・オロチの胸部へと突っ込んで行く。
そして遂に!!
炎の不死鳥と化したゴッドJフェニックスは、オーガル・オロチの胸部へと突っ込み、背部へと貫通した!!
「ぬああぁぁぁぁっ!!」
激しい衝撃に揺さぶられるフラットエイト。
オーガル・オロチの胸部には、巨大な風穴が開いていた。
その後ろで、融合を解除するゴッドJフェニックス。
と、何やら手を組み合わせている。
その組み合わせていた手を開く。
そこには………真名の姿があった。
「真名!! 真名!! 無事か!? 返事をしてくれ!!」
必死になって真名に呼びかける機龍。
「…………」
しかし、真名は目を閉じたまま、ゴッドJフェニックスの手の上に横たわっていた………
「ッ!!………そんな」
機龍の顔に、絶望の色が表れる………
………と、その時!!
「………もう少し………マシな助け方は無かったのか?」
そう呟きながら、真名は目を開け、ゆっくりと起き上がった。
「!!」
「でも、まあ、助かったよ。ありがとう、機龍」
「真名………良かった………ううう………」
真名の無事に、あの機龍が涙を流している。
「何だ? 泣いてるのか? 機龍」
「………心の汗が流れているだけだ」
照れ隠しか、一昔前の青春漫画に出来そうな台詞を言う機龍。
「何を盛り上がっているかあぁぁぁーーーーーーっ!!」
と、忘れられかけていたフラットエイトの怒声と共に、オーガル・オロチの残っていた左手がゴッドJフェニックスへと伸びる!!
「!! いけねっ、忘れてた!!」
慌ててコックピットハッチを開いて、真名を放り込むと、上に飛んでかわすゴッドJフェニックス。
「うわっ!!」
乱暴にコックピット内に放り込まれた真名だったが、機龍に優しく受け止められる。
「悪いな、ちょっと我慢してくれ」
「………別に構わないさ」
ほんのりと顔を赤くすると、邪魔にならないように後ろに移動する真名。
「認めん!! 認めんぞ!! 貴様のような小童に!! 私の計画が潰されたなどと!! 絶対に認めんぞぉぉぉぉーーーーーっ!!」
「………これで終わりだ!! フラットエイト!!」
零式斬魔刀を抜き、巨剣モードへと変えるゴッドJフェニックス。
そのまま振り上げようとする。
が、しかし………
「ぐうっ!!」
腕に走る痛みに顔を顰める機龍。
先ほどの無茶と激戦のツケが廻って来たのか、腕が中々上らない。
(クッ!! 上れ!! 上ってくれ、俺の腕!!)
必死に腕を振り上げようとする機龍。
と、真名が機龍の後ろから抱き付き、自分の腕で機龍の腕を補助した。
「!! 真名!!」
「頑張れ! あと一息だ!!」
「………ありがとう! どりゃあぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」
真名の力を借り、最後の気力を振り絞る機龍。
遂に腕が上り、零式斬魔刀が振り上げられる!!
「「行っけえぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」」
2人の叫びと共に、急上昇するゴッドJフェニックス!!
「「必殺!! 斬魔刀、一騎当千!! チェストォォォォォォッ!!」」
そして、斬魔刀を振り下ろしながら一気に急降下した!!
「ぬううっ!!」
残った左腕で防御しようとするオーガル・オロチ。
しかし………
「「我等に………断てぬものなしぃぃぃぃぃぃっ!!」」
斬魔刀の一撃は、その防御ごと、オーガル・オロチを真っ二つに斬り裂いた!!
「ギヤアァァァァーーーーーーッ!!」
自身も真っ二つにされたフラットエイトの断末魔が木霊すると、オーガル・オロチは大爆発を起こし、四散した………
それと同時に、要塞島の爆発も激しくなる!!
「うわっ!!」
「クッ!! イカン!!」
慌てて離脱しようとするゴッドJフェニックスだったが、相当なガタがきたのか、満足に動けない。
あわや絶体絶命かと思われたその時!!
ヒヒーーーンッ!!
「!! アレは!!」
*
麻帆良上空………
要塞島から離れた位置に展開しているガイアセイバーズとガーディアンエルフ。
その要塞島では、今まさに大爆発が起ころうとしていた………
「のどかさん!! 機龍さんの様子はどうなんですか!?」
「よ、要塞島の爆発のエネルギーのせいで、正確なトレース、スキャンが出来ません! 状況は一切不明です!!」
機龍の様子をのどかに尋ねるネギだったが、ビリーブの性能を持ってしても、爆発を起こしている直径20キロメートルもの要塞島から、1機のPFの様子を調べるのは不可能だった。
「もう大爆発を起こすのも、時間の問題だぞ!!」
アーノルドがそう言った正にその時!!
要塞島は、大爆発を起こし………木っ端微塵に吹き飛んだ!!
「ああっ!! 要塞島がっ!!」
要塞島のあった場所に、黒煙が広がる。
「「り、リーダーッ!!」」
「「「「「「「「龍宮さ〜〜〜んっ!!」」」」」」」」
「「「「「「「「機龍先生(さん)〜〜〜〜〜っ!!」」」」」」」」
ガイアセイバーズとガーディアンエルフの叫びが、木霊する………
と、その時!!
ヒヒーーーンッ!!
「!? この鳴き声は!?」
馬の鳴き声が響き、黒煙の中から、ユニサスに跨ったゴッドJフェニックスが飛び出してきた!!
「ありがとう、ユニサス。お前が着てくれなかったら、危なかったよ」
ブルルルルルッ!!
誇らしげに鼻を鳴らすユニサス。
「お前、何時の間に馬の知り合いなんて作ったんだ?」
「ま、ちょっと色々あってね………」
「機龍さん、大丈夫ですか!?」
ネギが、ゴッドJフェニックスに通信を入れてくる。
「ああ、大丈夫だ。真名も無事救出した」
「良かった〜〜、作戦成功ですね!!」
「………犠牲は小さくなかったがな」
「あ………」
ネギは、超の事を思い出した。
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
他のメンバーも、沈黙に包まれる………
「超………ありがとう。君の御蔭で真名も麻帆良も、そして第二地球も救われた………君の犠牲は、決して無駄では………」
「ん? オイ、機龍。アレは?」
真名が空の一角を指差した。
「えっ?」
思わず間の抜けた声を出すと、その方向を見やる機龍。
そこには………PFの脱出ポットに似た、鋼鉄製の球体が浮かんでいた。
「アレは?………」
機龍がそう言った時………
「ウム………皆、どうやら作戦は成功したみたいネ」
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
球体から聞こえてきた声に驚愕する一同。
何故なら、その声は………超 鈴音のものだった。
「ちゃ、超さん!! 無事だったんですね!!」
「ウム、いざって時の為に作って置いた脱出カプセルが役に立ったヨ」
「何よそれ〜〜〜〜っ!! 散々心配させといて〜〜〜〜っ!!」
「何を言うか。私は一言も死ぬだなんて言てないヨ」
「「「「「「「「超〜〜〜〜〜〜っ!!」」」」」」」」
口々に超に文句を言う3−Aメンバー。
勿論、それは、嬉しさの裏返しであった。
「ハハハ………全員に告げる」
機龍はその光景に笑い声を漏らすと、全部隊に呼びかけた。
「現時刻を持って、全作戦の完了を宣言する。我々は………勝ったんだ!!」
「「「「「「「やったぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」」」」」」」
途端に巻き起こるガイアセイバーズとガーディアンエルフのメンバー達の歓声。
地上でも、関東魔法協会と麻帆良軍事研が騒いでいた。
遂に………長きに繰り広げられた戦いが終わった。
彼等と彼女達は………明日を掴んだのである。
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