遂に、ヴァリムの脅威は葬り去られた。
第二地球は、明日の安息を手に入れたのである。
その後、麻帆良では、復興作業が続いていた。
奇跡的に、アレだけの大決戦だったにも関わらず、味方及び民間人には負傷者こそいれど、死者はいなかった。
破壊された街も、雪広財閥の支援と麻帆良大土木建築研の迅速な作業により、順調に進んでいた。
さらに、超とハカセが、PFを元に造った作業用人型ロボット(もろレ○バー)も、復旧を大きく手助けしていた。
結果、物の数日で、麻帆良は以前の姿を取り戻していた。
そして、そんなとある日の夜、麻帆良学園女子中等部では………
「それでは………3−Aの皆さんの中学校卒業と………」
「ヴァリム軍との戦勝を祝って………乾杯っ!!」
「「「「「「「「「かんぱーーーーーいっ!!」」」」」」」」」
この日、3−A組のメンバーは、中学を卒業した。
それを記念してと、ヴァリム軍との戦勝を祝って、3−Aの教室では、大々的なパーティーが行なわれていた。
勿論、惑星J出身者や、ナギ、アル、ヘルマンすらも参加していた。
「それーーーーーっ!! 飲めや、歌えや、騒げえぇぇぇーーーーーーーっ!!」
「「「「「「「「「イエーーーーイッ!!」」」」」」」」」
元々お祭り騒ぎ好きな3−Aのメンバーのパーティーだけあって、異様な盛り上がりを見せていた。
そちらこちらから、笑い声が響いてくる。
それは、長き戦いを征した者達の笑いだった………
「ガツガツ!! モグモグ!! パクパク!!」
もの凄い勢いで、出されている料理を食べているのは、狛牙 勇輝。
彼にとっては、一生に一度食べられるかどうかの豪華な料理ばかりだった。
「うん!! うんまい!! うんまい!!」
「ったく………意地汚い奴め」
その様子を隣で見ていたハクヤ・ロウは、呆れたように言う。
と………
「おっと、いっただきー!!」
「ぬっ!?」
今まさにハクヤが手をつけようとしていた料理を、勇輝が横から掻っ攫い食った。
「貴様!! それは俺の………」
「へへっ、早い者勝ち………ぐええっ!!」
勝ち誇ったように勇輝が言った瞬間、ハクヤの鎖がその首に巻きついた!!
「吐け! コノヤロー!!」
そのまま勇輝の首を締め上げるハクヤ。
勇輝の顔が、どんどん青くなっていく。
「あががががが………何しやがるーーーーっ!!」
「ぐおっ!!」
しかし、反撃のヤクザキックを受けて、吹き飛ばされる。
「貴様〜〜〜〜〜っ!!」
「殺んのか〜〜〜? 掛かって来いや、コラァッ!!」
途端に睨み合いに発展する2人。
「おっ!! 喧嘩だ、喧嘩だ!!」
「ハクヤさんに500円!!」
「勇輝さんに700円!!」
それを見て、トトカルチョを始める3−A。
「「うおおぉぉぉぉーーーーーっ!!」」
そして今、両雄が激突………しなかった。
「雪広あやか流合気柔術!! 雪中花!!」
〈えいっ!!〉
激突寸前に、勇輝はあやかに投げ飛ばされ、ハクヤは五月にフライパンで頭を叩かれた。
「「ぐはっ!!」」
頭から床に倒れる2人。
「ゆ、雪広!! テメェー、何しやが………」
「お黙りなさい!! 折角の祝いの席で喧嘩を始めるとは何事ですか!! だから貴方という人は!!」
「何だとコラァーーッ!!」
逸早く復活した勇輝は、ハクヤの事などすぐさま忘れて、あやかとの口喧嘩を展開し始める。
「おお! 今度はいいんちょと勇輝の喧嘩だー!!」
「いいんちょに1000円!!」
「勇輝さんに900円!!」
途端にトトカルチョの内容を変更する3−A。
動じないのが、このクラスの良いとこでもあり、悪いとこだ。(笑)
一方、ハクヤの方は………
「〜〜〜〜〜ッ!!」
フライパンで殴られた頭部を押さえながら、声にならない声を漏らしている。
〈喧嘩はダメです!!〉
「四葉………だが、アイツが俺の………」
〈ハイハイ、また作ってあげますから、怒らないで〉
「………チッ!! 分かったよ」
こちらも、あっさり引き下がるハクヤ。
………良い意味で尻に敷かれているようだ(笑)。
「刹那ちゃ〜〜〜ん!! 盛り上がってる〜〜〜っ!!」
赤い顔をして、矢鱈にハイテンションのシリウスが、酒瓶を片手に刹那にヘッドロックを掛けた。
「うわっ!? ちょ、ちょっと、シリウスさん!! 酔ってますね!!」
「ダ〜〜ハッハッハッハ!! 酒飲めば酔っ払うのは当たり前だ〜〜〜っ!!」
「貴方、未成年でしょ!!」
「固い事言うなって………おおっとと………」
「キャアッ!?」
と、足元がフラついたシリウスは、刹那にヘッドロックを掛けたまま倒れこんだ。
そして、刹那を押し倒す形となった。
「あ〜〜〜っ!! シリウスさんが刹那さんを押し倒してる〜〜〜〜っ!!」
「「「「「「「ヒュウヒュウ〜〜〜〜〜ッ!!」」」」」」」
「!!〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!! 斬る〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「うわあぁ〜〜〜〜〜〜っ!! ゴメンなさい〜〜〜〜〜〜っ!!」
何時ものように、刹那は夕凪を抜いて、シリウスを追い掛け回すのだった。
「は〜い、ゼオくん。ア〜〜〜ン………」
「ア〜〜〜ン………」
などという甘ったるい空気出しながら、互いに料理を食べさせ合っているこのかとゼオ。
「う〜〜ん、美味しい。じゃあ、今度は僕の番だね。ハイ、ア〜〜〜ン………」
「ア〜〜〜ン………」
普通の人にならかなりうっとおしがる光景だが、その他大勢のカップル達のいるこの会場では、特に目立っていると言えないのが凄い………
その後も2人は、終始甘ったるい空気を発していた。
「ハハハハ、楽しんでるかい? 夕映ちゃん」
「ハイ、一応………」
レイの問に、『ゲッ○ー線オイル』と書かれた、相変わらず意味の分からない飲み物を飲みながら、何時もと変わらぬ様子の夕映。
「そうか、そりゃ良かった」
しかし、レイには分かっていた。
その夕映の顔が、微妙に嬉しいそうにしているのが。
「………レイさん」
と、夕映は、レイに寄りかかった。
「ん? 夕映ちゃん?」
「………無事で良かったです」
「………ありがとう、夕映ちゃん」
レイをそう言って、夕映の頭を優しく撫でてやるのだった。
「やっと戦いが終わったか………」
「これでもう安心して過ごせますね」
長きに亘る戦いが終わったのを感じ、ほのぼのとしているレッディーとさよ。
あの戦いで、一番の重傷を負っていたレッディーだったが、魔法協会の優秀な治癒魔法使い達の治療を受け、今じゃすっかりピンピンしている。
「………さよちゃん、ありがとう」
「えっ? 何がですか、レッディーさん?」
突然感謝を告げてきたレッディーに、首を傾げるさよ。
「要塞島内での戦いで………俺は我を忘れ、死すら厭わずに戦おうとしていた………でも、その時、さよちゃんの声が聞こえたんだ」
その時の様子を思い出しながら、染み染みと語るレッディー。
「もしあの時、あのまま戦っていれば、恐らく俺は………」
「ダメです!!」
不意に、さよは自分の手の人差し指をレッディーの口に当てて言葉を防いだ。
「!? さよちゃん?」
「こういう席で、そういう話はダメです。もっと明るくいきましょう! ね?」
そう言って、レッディーに笑顔を向けるさよ。
「………そうだね」
それに釣られて、レッディーも笑顔を浮かべるのだった。
「どうぞ、アーノルドさん」
そう言って、アーノルドのグラスに飲み物を注ぐ千鶴。
「ああ、これはどうも………」
感謝しながらそれを受け取るアーノルド。
「「………………」」
その後、沈黙が入るが、それは気まずさによるものではなく、お互いに分かり合っていると言った沈黙だった。
騒がしいパーティーの中、2人の間には、静かで穏やかな空気が流れていた。
「続いての歌い手は、たった今デビューした新ユニット………でこぴんロケットーーーッ!!」
「「「「イエーーーーイッ!!」」」」
美砂、円、桜子のチア3人組に亜子を加えたメンバーが、ライブを始める。
「カッコイイーーーーッ!!」
「良いぞーーーーーーっ!!」
次々にメンバーに声援が飛ぶ。
(ゼラルドさん………見てくれてるかな?)
ふと、亜子はゼラルドの事が気になり、その姿を探す。
ゼラルドは、亜子の事を見ており、2人の視線が交差した。
「…………(ニコッ)」
それに気づいたゼラルドは、笑顔になって手を振った。
(あ………)
それを見た亜子は、若干頬を染めながら、ウインクして返すのであった。
「あの〜〜………のどかさん」
「ハイ、何ですか? ネギせんせー」
「えっと………その………あの………」
何やら顔を赤くして、口籠るネギ。
「??」
その様子に怪訝な表情を浮かべるのどか。
「その〜〜〜〜………落ち着いたら、僕の故郷のウェールズに来てくれませんか?」
「えっ?」
「お姉ちゃんに………のどかさんを紹介したいんです」
「え、ええっ!? そ、それって!!」
親類に紹介=結婚の挨拶、という方式が、のどかの頭ので組み上がっていた。
「あ、えっと………多分、のどかさんが考えている意味もあります。ど、どうですか? 来ていただけますか?」
「は………ハイ、是非行かせて貰います!」
「のどかさん………」
「ネギせんせー………」
そのまま見つめ合う2人。
と、そこへ………
「オイオイオイ!! ネギ〜〜!! そういうことは、まず父親である俺にするべきだろ〜が〜」
酒瓶を片手に、顔を赤くしたナギが割り込んできた。
「うにゃ〜〜〜………ナギ〜〜〜………大好き〜〜〜」
………背中に泥酔したエヴァを貼り付けて。
「キャアッ!!」
「うわっ!! 父さん!! 酔ってるでしょ!!」
「おうよ〜〜!! コイツとアルとヘルマンのオッサンで飲み比べしててな〜〜!! 結果は俺の勝利よ〜〜!! ガ〜〜ッハッハッハ!!」
豪快に笑うナギ。
その向こうでは、酔いつぶれたヘルマンとアルが横たわっている………
「まったく、もう………ハアァ〜〜」
そんな父の姿に、思わずタメ息を零すネギ。
「ガ〜〜ッハッハッハ!! なあ〜〜、ところでよ、ネギ」
「何? 父さん」
「オメェ、母ちゃん欲しいか?」
「「えっ!?」」
ナギの爆弾発言に、固まるネギとのどかだった。
騒ぐ一同から、やや離れて壁の花となっている2人がいた。
「………盛り上がってるな」
「そうだね………」
ジンとサクラだった。
「第二地球征服が失敗した以上、ヴァリムの国力はもう殆ど残ってないだろう」
「惑星Jでの長い戦争も終りそうだね」
「ああ………なあ、サクラ」
「何? ジン」
「もし、戦争が終わったら………俺は、退役して届け物屋をやろうと思うんだが………お前も一緒にやらないか?」
「えっ!?」
サクラの目が、驚きで見開かれる。
しかし、次の瞬間には笑顔を浮かべて、ジンに抱きついていた。
「ジン! 大好き!!」
「俺もだ、サクラ」
そのまま、2人は熱く抱擁し合うのだった。
「はい………分かりました………では、明日にでも………はい………では、失礼します」
別の方向で、何やらコソコソとしていた機龍は、そう言って通信機を切った。
………こんな時でも、礼装用の軍服を着ている機龍は、ある意味、模範的な軍人だ。
「機龍………」
と、そんな機龍に声を掛ける真名。
「ん? どうした? 真名」
「少し………抜け出さないか? 2人っきりで話したいんだ」
「………了解」
そう言い合って、2人はこっそりと会場を抜け出した。
*
麻帆良湖畔………
月と星の明かりで照らされた湖畔は、幻想的な雰囲気を出していた。
「綺麗だな………」
「ああ………これもお前が守ったんだ」
「………そうだな」
そんな湖畔の一角に、機龍と真名は佇んでいた。
「………真名。実は………」
「本国から帰還命令がきたんだろ………」
「!!………知っていたのか」
「ああ………」
真名の言う通り………先程、機龍が受けていた通信は、アルサレア本国より帰還命令を伝えるものだった。
「………明日中には、この地を立つ予定だ」
「そうか………」
顔を俯かせる真名。
分かっていた事だった………
機龍達はこの星の人間ではない………
ヴァリム討伐という任務を受けて、惑星Jから派遣された軍人だ………
その任務が終わった今、帰還命令が下されるのは当然の事だった………
「狛牙やゼオ、それにハクヤはどうするんだ?」
「下手に本国に連れて帰れば軍法会議で刑は免れない………皮肉なものだが、3人供天涯孤独らしいからな………ここへ残していこうと思う」
「そうか………」
「真名、思えば君には一番世話になったな。ありがとう」
「機龍………」
段々と、真名の目に涙が浮かんでくる。
激しい戦いの末に、愛を掴んだ2人だったが………その前に立ち塞がったのは、現実と言う名の別れだった。
「どうしても………帰るのか?」
「惑星Jでは、まだヴァリムの侵略が続いている。だが、今回の第二地球征服が失敗した以上、ヴァリムの国力は大きく衰える………惑星Jの長き渡る戦争が終わるかもしれないんだ」
惑星Jの長き渡る戦争が終わる………
それは、機龍が………いや、多くの惑星Jの住人が望んで止まない事だった。
「そうか………そうだったな………」
必死に泣きそうになるのを堪える真名。
本当は帰らないでほしい………
ずっとここに居てほしい………
そんな本当の気持ちを、自分勝手な願いだと押し殺し、真名は最愛の人との別れに耐えていた。
「でもな、真名………」
だが………ここで機龍から思いがけない言葉が出た。
「何時か俺は………この星へ………この地へ帰ってこようと思う」
「………えっ?」
思いがけない機龍の言葉に、驚く真名。
「俺にとってこの星、この地は、既に第2の故郷であり………最愛の人が住む星だ。だから俺は、必ず帰ってくる!」
「き、機龍………」
遂に抑えきれず、真名は涙を流し始める………
しかし、それは………その涙は、先ほどまで耐えていた悲しい涙ではなかった。
「そしてもし、帰ってこれたら………真名。また俺と一緒に居てくれるか?」
「!! ああ!」
そう言って、機龍の胸に飛び込む真名。
機龍はそれを優しく迎え入れる。
「真名………愛している」
「私も………愛している」
2人はそう言って互いに抱きしめ合い………
やがて、見詰め合った後に、唇を重ねた………
月と星の明かりが、2人を優しく包み込んでいた………
そして、次の日………
第二地球を………麻帆良を救った勇者達は、鋼の箱舟に乗り、静かに去って行った………
掛け替えのない仲間達の胸に………再開の約束を残して………
NEXT to FINAL |