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ファントム・ブラッド(6) 必殺! 投稿者:毒虫 投稿日:06/18-23:10 No.765



ロボっ子の危機を助けてやった後、横島は一旦、自室まで戻っていた。 
買い込んでおいた袋ラーメンを手早く作り上げ、テレビを眺めながら、鍋から直接ずるずるとすする。 
そういや、高校時分は毎日こんな感じの飯だったなぁ……と、昔を懐かしみながら。 
収入は少なく、生活は散々だったが、しかし、今思い返してみれば、あの頃が一番楽しかったような気がする。 
泣きたくなるような辛い事もあったし、いっそ死んでしまいたくなる程痛い目にも遭った。胸が張り裂けそうになる哀しみも味わった。 
が……それ以上に、毎日が楽しかった。気の置けない仲間達とバカ騒ぎし、家族のような同僚と背中合わせになって戦う。 
彼女を喪った絶望も、輝くような日常の中に、やがて薄れていった。決して消える事はないが、その思い出に、既に痛みは伴わない。 
皆が気付かせてくれたのだ。彼女との想い出は、哀しい事ばかりがあったのではない、と。 
高校を卒業してからも、ずっとあの恵まれた環境の中で生きて来た。実に素晴らしい日々だった。 
あの日常に帰る事はもうないのかもしれないと思うと、胸の奥に、じくじくとした痛みが湧いて来る。 
独りでこんなメシ食ってるのがいけなかったな、と反省する。まだ全然、割り切れていないのだ。割り切れる筈もない。 
こんな時、隣に鶴子さんがいてくれたら……と思ったが、彼女に甘えすぎてはいけない、と自戒する。 

(ホームシックってわけじゃないが……なんか、急に鶴子さんの手料理を食いたくなったな…) 

あの薄めの味付けを思い返す。 
店並みの腕前と言うほどのものではなかったが、やはり彼女らしい暖かみがあり、横島はとても好きだった。 
インスタントラーメンのチープな味も決して嫌いではないのだが、やはり、それとこれとでは次元が違う。 
鍋から直接食べているのも、冷静になって見詰め直せば、何だか惨めささえ浮かぶ。 
食べ終わり、鍋を水に浸し、横島は溜息をついた。 

「なんか俺、単身赴任したてのオヤジみたいだな…」 

口に出せば、余計に情けなく思えて来る。 
ストレスとその他口に出せない諸々を発散する、例のアレも借りられなかったし……どうにも手持ち無沙汰だ。 
下らない内容のバラエティー番組を見終えると、横島は腰を上げた。そろそろ夜の巡回の時間だ。 



時間はゴールデンタイムから少し外れ、深夜よりはまだ遠い、といったところ。 
流石に制服を着た生徒は見当たらないが、高校生ぐらいの年頃の若者なら、まだちらほらと見かける。 
麻帆良の中に自宅があるのか、あるいは寮から抜け出して来た猛者なのかは知らないが、よくやるものだ。 
人通りの多い所には、私服の指導員が獲物を求めて彷徨っている。彼らに捕捉されれば、そりゃあもう大変な目に遭う事だろう。 
ま、清掃員の俺には関係ない事だ、と割り切る横島の服装は、こんな時間でもやはり清掃員ルック。 
この時間帯に、というのも不自然と言えば不自然だが、絶対ありえないとは言えない。実に微妙なラインの服装だ。 
これから学園に入る事もないだろうし、私服でもいいのだが、モップの他に主な武器もないので、仕方がない。 
こんな時間帯に木刀持って歩いてりゃ、不審者どころの騒ぎではないだろう。即刻、通報される事うけあいだ。 
そんな理由で、横島はカートを徐行で走らせる。もし女性が悪漢にでも絡まれていようものなら、ヒーロー登場のチャンスだ。見逃してたまるか。 

(ま……世の中、そんな都合よくいくわきゃないんだどねー) 

くはぁ、と欠伸を一つ。 
麻帆良は驚くほど治安のいい街だ。犯罪といっても、せいぜい万引きがいいとこで、殺人などの凶悪犯罪はまず起こらない。 
その芽を、横島のように、学園長から命が下った秘密職員達が摘み取っているからだろう。 
警察は暇だろなあ、と横島は他人事のように思う。ちゃんと働けているのだろうか? 

あてどなく車を走らせていると、ポケットの端末が鳴った。 
カートを停めて確認すると、その液晶には地図が表示されていた。初めて見る画面だ。 
注意深く観察すれば、現在位置から割と近い場所に赤丸で囲まれている部分があり、急行!と妙にポップな字体で注意書きがされている。 
何かあったな、と、横島は車を発進させる。気分としてはこのまま帰りたいが、無視して、後で何かあっても寝覚めが悪い。 

「ま、これも仕事ですからね……っと!」 

ガキン!ハンドル横にある固いレバーを思い切り引っ張ると、暴走したかのようにカートの速度が上がる。 
ブースター……と言うより、どうも、リミッターを解除した感じだ。普段のろのろ運転しかしていなかった分、爽快ではある。 
見た目に似合わない凄まじいスピードで、カートが夜の街を駆け抜ける! 

「うらうら! どけどけーいっ!!」 

無闇にクラクションを鳴り響かせつつ、あっと言う間に暴走カートは夜の街に紛れて消えた…。 
それが通り過ぎた後を、通行人達は何か信じられないものを見たかのようにして見送った。 
『怪奇! 夜の街に現る爆走カート伝説!!』という記事が麻帆良スポーツに掲載されたのは、翌朝の事である。 






油断から思わぬ攻撃を脚に受け、高音は片膝をついた。 
妹分が駆け寄って来るのを目の端に捉え、高音は歯噛みする。情けないところを見せてしまった…! 

「お姉様っ!!」 

「…大丈夫よ、愛衣。大した怪我じゃないわ」 

実際はズキズキと痛むのだが、それを押して立ち上がる。 
未だ心配そうな愛衣に微笑みかけると、また敵に向き直る。 
今夜の敵は、黒い、人型の影。目も口も鼻もなく、ただ、のっぺりと黒を貼り付けたような、不気味なモノ。 
妖怪でも悪霊の類でもないソレは、実際は何の実体も持たない筈の、人間の負の感情のカタマリだ。 
思春期の少年少女が集まるこの麻帆良の地は、ただでさえ、ポルターガイストや、この手の存在を産み出しやすい。 
それだというのに、ここ最近の吸血鬼の噂が後押しして、今日の敵を産み出したのだ。 
普段の『影』は、嫉妬や悪意、それこそ多種多様な悪感情が寄り集まってできただけの存在なのだが… 
今日のは『吸血鬼の噂に対する不安・恐怖』と存在が一貫していて、また、相当数の人々の感情を集めたせいか、一段と強力になっている。 
いつも通りの敵だろうと高を括り、また、人払いはしたものの、市街地の只中という事もあり、あまり派手に戦えなかった。 
その代償がこれか……と、高音は自らの慢心を悔やむ。 

一方愛衣は、敬愛するお姉様の怪我がそう軽いものではないと気付いていた。 
確かに、あの『影』に触られただけで、具体的に血が流れるとかそういった外傷は見当たらない。 
しかし、悪意のカタマリであるあれに触れてしまえば、然るべき処置を取らなければ、具合を悪くしてしまうのだ。 
本当は色々小難しい理屈があるのだが、まあ大まかに言うと、病は気から、という事だ。 
満足に戦えなくなってしまったお姉様を背中で庇うようにして、『影』と対峙する。 
大丈夫、やれる筈だ。今までは修行中という事で、お姉様の戦いを後ろで見守っているだけだったが……今回は、私が戦う。 

「私が、お姉様を……守りますっ!!」 

「愛衣っ!!」 

背後で高音の制止する声が上がるが、今回ばかりは無視させてもらう。なに、後で謝れば済む話だ。 
メイプル・ネイプル・アラモード……と始動キーを唱え、キッと『影』を睨み据える。 

(お姉様を傷つけた………許せないっ!!) 

その決意は、更に強く、更に固く。 
大丈夫だ、私にならできる、と何度も己を鼓舞する。 
こう見えても私は、ジョンソン魔法学校の実習の出来は良かった。実習も実戦も、そう変わらない筈…! 

「ものみな(オムネ) 焼き尽くす(フランマンス) 浄北の炎(フランマ プルガートゥス)……!」 

放つと決めたのは、必殺の炎。経験の浅い愛衣には、己の魔法が周囲に及ぼす被害など考えもつかなかった。 
思い出したかのように、『影』が指さえない手を伸ばす。それを軽やかにサイドステップでかわすと、詠唱を続ける。 

「破壊の王にして(ドミネー エクスティング ティオーニス) 再生の徴よ(エト シグヌム レグネラティオーニス)……」 

徐々に、魔力が凝縮されていく。 
機能する筈もない感覚器官でその身に迫る危険を察したのか、『影』は愛衣を捉えようと、もう一本の腕も伸ばす。 
危ないところで地に転がり、その反動を利用し起き上がり、愛衣はまた駆ける。これなら、いける…! 

「我が手に宿りて(イン メアー マヌー エンス)……ッ!?」 

呪文もそろそろ佳境に入ったところで、愛衣は驚愕に目を見開いた。 
すぐそこまで迫り、しかしギリギリ届かないと見ていた『影』の腕が、なんと中腹からパクリと割れ、細やかな触手が現れたのだ! 
予想外の事に、何が起こったのか把握しきれず、詠唱は途切れ、足が止まってしまう。 
迫る触手。愛衣ーッ!!と誰かが叫ぶ声。視界の端では、見覚えのある黒仮面が触手に捕まっている。あれでは間に合わない。 
そして遂に、『影』の触手が愛衣を呑み込む―――その寸前に、バラバラに斬り刻まれた! 

「「!!」」 

突然の事に、目を見開く二人。 
一瞬後、カツッ!と小気味良い音を立て、アスファルトに何かが突き刺さった。 
その正体を目にして、二人は一層驚く。 

「「ぞ、雑巾……!?」」 

まるで某猫目姉妹のカードのようにピシリと直立しているそれは、どこを取って見ても極々普通の雑巾だった。 
混乱のどん底に突き落とされる二人の耳に、朗々と何かを歌い上げるような口上が、どこからともなく聞こえて来る。 

「浮世に蔓延る黒き染み、人情の裏に潜む醜き穢れ、お天道様を侵してしまうその前に―――御掃除、致します」 

べべん、べん。どこからか響き渡る三味線の音色。 
何故だかいつの間にか消えていた街灯が、パッと光を灯したその下に立つ、一人の男。 
その身にまとうは清掃服。帽子を目深に被り、モップを肩に携えて……ピッと『影』に指を突きつける。 

「必殺掃除人、只今見参!!」 

必殺掃除人とやらが大見得を切ったその時に、カッ!と足下から照明。頭上からは、やけにピンポイントな桜吹雪。 
高音と愛衣がぽけーと大口を開けて呆けるのも気にせずに、二人の方を気遣わしげに見やる。 

「大丈夫かいお嬢さん方。待たせちまってすまなかったな…。 
 しかし、この俺が来たからにゃあ一安心! 覚悟しゃあがれ悪党めが! ド頭から真ッ二つにカチ割ってやらァッ!!」 

猛り叫ぶとモップを抜き放ち、愛衣を庇うようにして、『影』の眼前に立ち塞がる。 
律儀に今まで事態を見守って来た『影』が、あ、もういいの?と言いたげに動き出す。 
愛衣にとってはそれなりに素早かった動きだが、彼からしてみれば、ハエが止まるぜ的な遅さに見える。 
斜め前にステップしてかわすと、その勢いを利用して跳び上がり、有無を言わさず、頭から一刀両断に叩ッ斬る! 

「天空モップ両断剣――」 

声もなく、真中からぱっくりと2つにされた『影』。 
その最期を看取るでもなく背を向けると、掃除人は、付いてもいない血を振り払ってから、モップを背に納め、空いている方の手で合掌の形を作った。 

「――成敗ッ!!」 

その声と合図とし、何故か『影』が爆散する! 
高音と愛衣は、ただただ唖然とするより他なかった。 
一仕事終えた的な充足感を醸しながら掃除人が二人に歩み寄って来た時、無意識に後退りしてしまったのも無理はなかろう。 

「怪我はねえかい、お嬢さん方」 

「は、はあ……」 

未だ茫然自失の態で、かくんと頷く高音。 
しかし、その脚に『影』の残滓を感じ取った掃除人は、しゃがみ込み、患部にそっと手を当てた。 

「こいつァいけねぇ…。汚染されてやがらぁ」 

キャラに引っ張られ伝法な口調になっている掃除人を警戒したのか、思わず身を引こうとする高音の脚を掴む。 
高音の後ろで愛衣が敵対心を明らかにしているが、そう気にするほどのものでもない。 
まあ、これぐらいはいいだろ、と、掃除人は掌に霊力を込めると、若干黒ずんでいる患部に押し当てる。 
回復手段が文珠だけでは勿体なかろうと、軽いヒーリングを覚えていたのだ。元より霊力の使用の幅が広い掃除人の事、覚えるのはそう苦でなかった。 

「あ……」 

ほうっ……と、掌から暖かい光が漏れる。それと同時に、奥底から来るような痛みが引いていく。 
掃除人が手を離した時、高音の脚は、完治とは言えないが、立って歩けるほどには回復していた。 
警戒心も流石に薄れ、素直に頭を下げる。 

「あ、ありがとうございます。助かりましたわ」 

「なァに、いいって事よ。佳い女を助けるのァ、男の務めってもんだ」 

呵呵と笑う掃除人。助けられた手前、高音もぎこちない愛想笑いでそれに応える。 
一方、愛衣は掃除人に対する奇異と警戒の視線を隠そうともせずに、くいくいと高音の袖を軽く引っ張る。 
何?とお姉様が気付いてくれたのをいい事に、愛衣は掃除人に声が聞こえない所まで高音の手を引いて行く。 

「どうしたの、愛衣? そんなに慌てて」 

「あ、あの、早く帰りませんか? あの人、なんか怖いです…」 

掃除人に怯えたような視線を向ける愛衣。 
命を助けてもらったといえど、流石に口調が乱暴で、出鱈目な強さも相まって、あまり男性に免疫のない彼女には怖く映ったのだろう。 
高音から見ても、確かに掃除人は、一昔前の無頼漢のようにも見える。着ている服が服であるから、幾分その印象も緩和されているが。 
進んで付き合いたい相手には思えないが、しかし彼は自分達の危機を救ってくれた恩人でもあるのだ。その恩は返さなければなるまい。 
怖がっている愛衣を無理に引き合わせるのも可哀想なので、ちょっとここで待ってなさい、と言い含め、高音は掃除人の方へ取って返した。 
向こうの方でおろおろしている愛衣を不思議そうに見ている掃除人に、頭を下げる。 

「申し訳ありません。あの子、あんな事があったばかりで、まだ混乱しているみたいで…。 
 本当は、ちゃんとあの子の口からもお礼を言わせたかったのですけれど…」 

「いや、いいって事よ。あんな、まだ小っちぇお嬢ちゃんだ。無理もねぇ。さぞかし怖かったろうよ。 
 お前さん、あの子の姉ちゃんか知らんが……今度からは、もそっといいとこ見せてやるこったな」 

「はい……その通りですわ。今回ばかりは、己の未熟を恥じるばかりで」 

見も知らぬ相手から自分達の事に関して口出しされたようで、それに関してはあまりいい気分はしないが… 
しかし、言っている事は実に的を射ている。本来、愛衣を助けなければいけないのは、姉貴分を気取っているこの自分の筈だったのだ。 
あそこで助けが入っていなければ、愛衣は大怪我していただろうし、最悪、命を落としてしまっていたかもしれないのだ。 
そして、その次には自分がやられていた事だろう。周りを気にせず本気を出せば、あんな『影』如きに後れを取るつもりはないが、 

(目の前で愛衣がやられてしまったら、きっと、私は戦えなかった…) 

おそらく、『影』に対する激憤よりも、後悔や動揺、悲嘆の方が先に来てしまっていただろうと予想する。 
無論、愛衣とは血が繋がっていよう筈もないが、しかし実の妹のように可愛がって来たつもりだ。彼女を喪うなど……到底、耐えられる事ではない。 
そして高音は、改めて己の慢心に気付き、自分自身に憤りを感じ、また、己の未熟さに愕然とした。 
何があっても守れると思っていた。自分程度の腕で、大切な人を。お姉様の格好いい姿を見せ付けてやるという驕りさえあった。 
自分が死と隣り合わせの現場にいる事も、そして、自分自身の命だけでなく、愛衣の命をも背負っている事も、繰り返される日常の中に忘れていた。 
なんて愚か。なんて傲慢。こんな自分が、愛衣の命を、麻帆良の安全を、これから守っていけるのか…? 

茫然自失の態の高音の肩に、ぽん、と掃除人が優しく手を置く。 
はっと我に返ると、高音は初めて掃除人と目が合った。眼鏡のレンズ越しに見えるその瞳は、意外にも優しかった。 

「ま……至らねぇところがありゃあ、次までに改善すりゃあいいってだけだ。 
 お前さんはまだ若ぇ。未来がある。妹さんと一緒に、もっと成長して、お互い支え合って生きていけりゃあいいわな」 

「あ……」 

また、気付かされる。 
たかが一度の失敗で、全てを諦めてしまってどうする。 
確かに今回は大きい失敗だったが、その分、学べる事はとても多い筈だ。この失敗を次に活かす。同じようなヘマは二度とやるまい。 
それに……あの時、愛衣は自分を守ろうと、戦ってくれた。腕は未だ未熟だが、ひょっとしたらもう、子供扱いするべきではないのかもしれない。 
今までは、自分の戦いを見させ、勉強させて来たつもりでいたが……そろそろ、実戦を経験させておくべきか。 
いや、勿論、単独ではやらせない。自分がフォローに回る。……しかし、今日のように、愛衣が自分のミスをフォローしてくれる事もあるだろう。 
お互いの欠点を補完し合えば、きっと、これまで高音が独りで戦っていた時よりも、存分に力を発揮できる。そう直感があった。 
愛衣と背中合わせで戦う。そうすれば、きっと負けない。2人で1人。2人はプリキュア。ぶっちゃけありえなーい。 

大切な事を、いくつも気付かせてくれた。 
改めて礼を言おうと、高音が顔を上げたその時には、いつの間にか、掃除人の姿はそこになかった。 

(不思議な人……) 

後ろで愛衣が早く帰りましょうと急かしている。 
謎の掃除人を探すのを諦め、高音は、愛しき妹へと歩み寄る。 




横島は、木陰で頭を抱えていた。 

(くわあぁぁぁ…っ! や、やりすぎたぁーっ!!) 

吸血鬼対策を考えていたその副産物に、必殺掃除人という設定を思いつき、試しに実行に移してみたのだが… 
途中から盛り上がって自分を見失い、結局、何だかよくわからないキャラになってしまった事を猛省する。 
闇に紛れて仇討ちします、的な渋い男になりたかったのだが、明らかに方向性を間違えた。 
そもそも、1日に2回も美少女を助けるという、絶好のシチュエーションがあったのがいけなかった。そりゃあ気分だって盛り上がる。 
今日は何とか最後まで演れたが、明日またあのテンションで立ち回れといわれても、正直キツイものがある。 

(このキャラは、今日限りだな……) 

はあぁ、と重い溜息。 
ただの清掃員というのも味気ないので、どうにかしてキャラを立てたいなあと思う横島であった。 

裏方稼業 ファントム・ブラッド(7) 虎穴

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