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京洛奇譚(13) 閉鎖空間 投稿者:毒虫 投稿日:09/16-22:58 No.1278
数分遅れ、ネギは待ち合わせ場所に現れた。のだが。
何故か出発前から疲れ気味な顔をしているのが気になる。服も若干ボロボロだ。
横島が説明を要求する前に、カモは心底疲れた、といった風に話し始めた。
『わ、悪ぃな横っち……。いや、旅館出る時に生徒達に捕まっちまってよぉ。
ま、グループ間抗争とアスナの姐さんと剣士の姐さんの奮闘、そして俺っちのオコジョフラッシュで何とか煙に巻いたんだが…
しっかし、あの年頃の娘のエネルギーはスゲェな…。俺っち、出発する前からクタクタだぜ……』
「つ、疲れました~……」
「あー…。なんつーか、ごくろーさん」
ぽふぽふ、とネギの頭を軽く撫でてやる。
思春期の少女特有の食いつきの強さは、かつて横島も己の馬鹿弟子で経験済みだ。同情的にもなる。
しかしこの近辺で休憩などしようものなら、すぐにでも捕捉されるだろう。疲れた体に鞭打って、ネギ達は出発した。
そして、その一行を後ろからこっそり尾け回す少女、大河内アキラ。
(ネギ先生と合流した? というか、今、オコジョが喋って………? つ、疲れてるのかな、私)
しきりに首をかしげながら、彼女のスニーキング・ミッションは続く。
真直ぐ目的地、呪術協会本山に向かうのがベストなのだろうが、ネギとカモの憔悴があまりにも目に付くので、一向は一度小休止を取る事になった。
とは言っても精神的な疲弊が主だったので、お茶屋の軒先に座り、団子を頬張りながらはんなりしているだけで事は済む。
アキラがどこに身を隠そうか慌てているのも知らず、横島達はひたすらに和む。
「…お茶、うまいな~」
「そうですね~…」
『だな~…』
「団子もうまいな~」
「そうですね~…」
『だな~…』
「空、晴れてるな~」
「そうですね~…」
『だな~…』
「……和むよなぁ~~」
「和みますね~~……」
『和むな~~……』
なんかもうそろそろ任務とかどうでもよくなってきたあたりで、スッとネギに近付く人影があった。
「――となり、ええか?」
ニット帽を被った長髪の少年。
ネギは快く了承したが、横島は少し眉根を寄せた。
違和感。獣臭。既視感。横島の感覚は、少年が人外の者である事を示していた。
少年は刹那とは違い、立ち昇る妖の匂いを隠しきれていなかった。横島にとっては懐かしい、イヌ科っぽい匂いを。
ネギの隣に腰掛けた少年は、言葉を発する事をせず、横目でネギを観察するようにしている。
往来でややこしい事になるのはまずい。そう判断し、横島は席を立った。
「そろそろ行くぞ、ボウズ」
「あ、はい」
少年は、席を立った2人に特に反応を示さなかったが。しかしその人ならざる耳は、確かに捉えていたのだ。
支払いの際、財布を取り出した横島に、ネギが言った事を。
『ありがとうございます、横島さん』。それだけ確認すると、軽く口許を歪め、少年も席を立つ。
茶屋を出て、少し路地裏を入った所で……闇が、渦巻いていた。
その中心にいるのは、先日横島達が対峙した呪符使いと月詠、そして白髪の少年、この3人。
背後に式神らしき鬼が佇む異様の中に、長髪の少年は帰還した。
「かたっぽの方はわからんかったけど……大人の方は、苗字、横島やて」
「横島……? 横島ゆうたら、あの青山の……いや、まさかな」
少年の報告を聞くと、呪符使いは眉をしかめた。
関西呪術協会の中において、『横島』の名はそれなりに有名である。
まさか、あのいかにも馬鹿そうな男が、あの『鶴の懐剣』のわけがない……と鼻で笑うが、一抹の不安が残る。
気になって月詠の方を振り返るが、当の月詠はいつも通りぼんやりと笑っているのみ。感情が読めない。
「……ま、ええわ。仮にあの男が横島忠夫やったとしても、相手にとって不足はないわな。
どこまでホンマか分からんけど、あのガキはサウザンドマスターの息子やっちゅう話やし、手応えのある連中やで。
とにかく……別に相手がどんなんでも関係ない。一昨日の借り、耳揃えて返させてもらうえ」
一昨日の借り。それを思い出し、若干赤面しながらも、呪符使いは禍々しく嗤う。
延々と続く石段。次々と立ち並ぶ鳥居。
一行は、遂に……というほど険しい道のりではなかったが、関西呪術協会本山の入り口に立った。
相変わらず後方15メートルほどでこそこそしているアキラは、そろそろちょっと寂しくなって来た頃だ。
気付かれて撒かれても困るが、ずっとスルーされ続けて一言の台詞もないのも寂しい。そんな乙女心。
いっそ自分から出て行こうか行くまいか悩み始めたところで、アキラはようやく非日常に出くわした!
横島達の方を見ると、何と、UFOキャッチャーの景品のぬいぐるみのようなものが、ふわふわと宙に浮いているのである!
遠目に見る限り、その人形めいたモノは、浮遊するばかりではなく、何やらちょこまかと動き回っているようだ。
(何だろう、あれ……。手品じゃない……よね?)
イマイチ自信がもてない。しかし、こんな観客もいないような所で手品の披露もないだろう。
写メールに撮っとこうかなあとか思っている内に、今度はネギが、背負っていた棒状のものの梱包を解き始めた。
そして中から出て来たのは、いかにも漫画や映画の中の魔法使いが使っていそうな杖。これが不思議と、ネギが持っても違和感がない。
コスプレにしてはインパクトがないし……どういう事だろう、とアキラが悩んでいる内に、横島達は石段を上り始めてしまう。
慌てて後を追いかけつつも、アキラはある種の期待、そして予感を胸に抱いていた。
「何故だかわからないけど……何かが、起こりそうな気がする…」
場所が場所だけに、何が起こっても不思議ではない。幸い、妙な魔力は感じないが、油断は禁物だ。
一刻も早く任務を果たさんと、ネギと横島は駆け抜けるように走る。走る。ひたすらに走る。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。
鳥居をくぐる。鳥居をくぐる。鳥居を――……いい加減、30分は走っているだろうか、横島は足を止めた。
「長ぇーーーよッ! 通勤大変だなオイ!」
「ハァ、ハァ……さ、さすがに疲れました~…」
自身の体重を超える荷物を背負いながら鼻唄まじりで妙神山を踏破できる横島はともかく、ネギはそろそろ体力の限界のようだ。
ちびせつなは、へたりこむネギを尻目に、何やら眉根を寄せて考え込んでいる。
『こ、これはもしや……
ちょっと先を見てきます! 横島さん!』
「あいよー」
ちびせつなに先導されて、横島は走り出した。
しかし、そう大して走らぬ内に……何故か、ネギの背に出くわしてしまう。
「あ、あれ!? 横島さん!?」
おかしいぞ、と横島とちびせつなは顔を見合わせた。
どう見ても一本道なのだ。ハツカネズミでも迷わない。
「こ、この状況ッ……何者かのスタンド攻撃を受けている可能性があるッ!」
『馬鹿な事を言うのは後にしてください! 横の竹林から脱出を試みますよ!』
ゴゴゴゴゴ、と謎の効果音を背負う横島を軽やかに無視し、柵を乗り越え、走るが……今度は、反対側から戻って来てしまう。
事ここに至り、ちびせつなは自らが置かれた状況を完全に把握した。
『…これは無間方処の呪法です。
今、私達がいるのは、半径500メートルほどの堂々めぐり(ループ)型結界の内部。
つまり……閉じ込められました。この千本鳥居の中に』
「「「な、なんだってーーー!!」」」
ガビーン!と硬直する一同。AAは省略。
「ど、どういう事なんだキバ○シ!?」
『ああ、まずは無間方処という字をローマ字に直して (中略) …要するに全てはノストラダムスの陰謀だったんだよ!! って何やらせるんですかー!!』
紫電の如き剣閃。ちびせつなのミニ夕凪が横島の額に突き刺さる!
「うおぁッ!? ち、血が! まるで噴水のごとくううぅぅぅ!!?」
額を押さえてのた打ち回る横島を放置し、ネギが空を飛んで脱出を図るも、また失敗。
刹那の本体も、鶴子が付いているとはいえ、襲撃が予想される状況で木乃香の傍を離れるわけにも行かず、救援は期待できない。
焦るネギを尻目に、いつの間にか復活していた横島は、軽く笑ってネギの頭の上に手を置いた。
「ま、このままここにいたってしゃーないし、ゆっくりのんびり歩いて行こうや。なあに、何となるだろ、多分!」
「た、多分って……ほ、本当に大丈夫なんですか…?」
疑わしげなネギだが、横島には文珠がある。どこで誰が監視しているか分からないので、そう易々と使う事は躊躇われるが…
それでも、結局はいつでも脱出できる状況にあるのだ。今は様子見の段階だが、そう焦る必要もない。
それにこの結界、性質上、人除けの効果も兼ねている。もしかしたら、直接に襲撃があるかもしれない。
ネギ達も余裕を見せる横島に感じるものがあったのか、不安を残しながらものんびりと歩く。
しばらく歩いている内に、一行は無人の休憩所に辿りついた。
「おぉ、助かるねぇ」
「あ、自販機…。よかった、喉渇いてたんですよー」
『……急に現れたのはいささか不審ですが……まあ、少しここで腰を落ち着けましょうか』
『誰もいねぇのか…。ジュースに毒でも入ってんじゃあねぇだろな?』
刹那とカモは警戒心を残しながらも、結局、一行は少しの間休憩を取る事になった。
ジュースにも特に不審な点はなく、何かの罠という事もなさそうだ。
ならば、敵は徹底的にここで足止めするつもりか、と横島は見た目ぼんやりしながらも、そんな事を考えている。
場所も開けているし、敵が何か仕掛けてくるのなら、まずここになるだろう。何もなければ、休憩を終えてすぐにでも文珠で脱出してもいいか。
のほほんとジュースの缶を傾けているネギと横島を尻目に、使い魔組は議論を戦わせていた。
『とにかく、まずは現状を把握して、何とか打破する方法を考えませんと……』
『それより、今のこっちの戦力を分析した方がよくねぇか?
この状況じゃ、いつ敵が現れるかわからねぇし、一昨日とは違って戦力が減ってるしな。
…ま、正味なところ、横っちが本気モードになりゃあ、大抵の相手ならどうにかなりそうなんだがよ』
『横島さんの実力は、青山でもそれなりに話題になっていましたが……
一昨日の戦いを見る限り、正直、あまり過信するのは危険だと思うのですが』
『俺っちはその戦闘に参加してなかったから、どんなもんだったのか知らねぇがな。
少なくともエヴァンジェリンと戦った時ァ、デタラメな強さだったぜ、横っちは。
まあヤツも本気出してねえみてぇだったが、どうもそりゃあ横っちの方も同じだったみてぇだしな。
それに兄貴と仮契約したから、術を使えば身体能力も大幅UPだし、アーティファクトもある。鬼に金棒ってのァまさにこの事だぜ!』
『はぁ、そうなんですか…。しかし、私は実際にこの目で見た事しか信用できないタチですので、あまり参考にはなりませんね。
それに、今は横島さんの事を議論している場合ではないでしょう。この結界から脱出する術を考える方が先です。
奴らも、さすがに呪術協会の総本山で事を犯すつもりはないでしょうし、通常空間に復帰すれば手出しできない筈です』
『結界から脱出って、簡単に言ってくれるけどよぉ……ンなもん、実際どうすりゃいんだよ?』
『それを今考えてるんじゃないですか!!』
喧々諤々。
お互いマスコットのポジションが被っているせいか、あまり相性がよろしくないようだ。
カモとちびせつながギャーギャー騒いでいる中、ネギと横島は何か間違った方向に切迫していた。
「た、大変です横島さん! おしるこの最後の粒がなかなか出てきません!」
「な、なんてこった…! そいつはなかなか手強いぜ、ボウズ!
いざとなったら、ちびデコちゃんの刀で切ってもらうのもアリだが……やっぱ怒るよなぁ。
しかし、おしることいい、コーンスープといい、なぜ神は人間にこうも厳しい試練をお与えなさるのか!?」
「ああっ、そうこうしている間に熱がどんどん冷めていってますー!
こ、このままじゃ、最後の一粒を口にする頃には、ただの冷たくどろっとした小豆という何の魅力も感じられない食べ物にぃ!?」
「クソッタレ! 文珠か!? 文珠を使うしかないのかぁっ!?」
4人が4人ともコメディ調の空気をかもし出す中……突然、辺りの空気が変容した。
竹林がざわめく。横島達はすぐさま戦闘態勢へと思考を切り替えた。
…ネギだけは未だにおしるこの缶を底からポンポン叩いているが、どうせ天然なのだろう。
と、
「おしることか正直どーでもええやろがいッ!!」
「だ、誰です!? おしるこを馬鹿にすると許しませんよっ!!」
突然、何者か……まだ声変わりもしていない少年の声が響く。
そして、ネギの声に応えるように、上空から大質量が落下した!
ズズウン!!と一行を押し潰さんばかりに現れたのは、トラックほどあろうかという巨大な蜘蛛と、その頭の上に立った少年。
虫嫌いな人間が見ればすぐさま卒倒してもおかしくないその蜘蛛の上から、少年は厳しい目でネギを見下ろす。
「襲撃に備えるとか、なんかもっと他に色々やる事あるやろが! やる気マンマンやった俺がなんか恥ずかしいみたいな事になってるやん!!
それともアレか!? おしるこ以下か!? 俺らはおしるこ以下の存在なんかッ!?」
怒りで顔を真っ赤にして怒鳴り散らす少年を、横島達は若干引き気味かつ遠巻きに眺める。
「テンション高けぇーな。大きい声出してりゃいいってもんじゃないだろーに…」
『つーか、突然出て来て、いきなりそんな事言われてもなー』
『何と言うか、温度差を感じますね……』
「おしること比べられても困るんですけどねえ…。
あ、それより横島さん、何かお箸とか持ってませんか? 最後の粒、もう少しで取れそうなんですよ」
「箸ぃ? あー、悪いけど持ってないなあ。ま、缶を上向けて叩いてりゃ出るだろ」
『それより、発想の転換という事で、たまには横方向に揺さぶりをかけてみてはどうでしょうか?』
『いっその事、舌捻じ込んじまうってのはどうだ? 切れるかもってリスクはあるが……いや、人間の舌だと構造的に届きゃしねえか?』
「舌は無理だけど、小指なら入るかも……って、痛ッ! 指切っちゃった…」
『だ、大丈夫ですか、ネギ先生? 惜しいですね、本体の私なら、絆創膏があったんですが…』
「咥えてりゃその内治るさ」
『ここで横っちが指チュパすりゃあフラグ成立だぜ!』
「アホ! ボウズ相手にフラグ立ててどうすんだ!」
話の方向が逸れに逸れ、わいのわいの騒ぐ4人。
放置プレイ中の少年の拳がプルプル震える。よく見れば、その目尻には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「う……うがぁーーーーーー!! 無視すんなぁーーーーーーッッ!!」
未だにコメディ調の空気漂う中、蜘蛛を従え、少年は踊りかかった!
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