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Re^5: 偉大なる狩人魂 第五話 投稿者:ドラグナー 投稿日:03/30-03:08 No.2186
【第五話 ハンター達の戦い】
激しい雨の中を、彼らは現在ゲリョスを追う様に走っている。
ハンター達が戦っている紫色のゲリョスと
ネギ達を襲っている薄黒いゲリョス
合わせて二匹のゲリョスだ。
「さっき、お前等を襲ったヤツは毒怪鳥ゲリョスだ」
「毒・・怪鳥・・・」
「ゲリョス・・・」
ベッキー達はジェラードの後に付いていきながら
自分たちが襲った怪鳥の事を訊いてみた。
毒怪鳥ゲリョス・・・・
鳥竜種と呼ばれており、その名の通り、毒を吐く恐ろしい怪鳥。
全身の皮膚が硬いゴムで出来ており、打撃攻撃や雷属性攻撃に強い
しかし、大きな体をしているクセに非常に臆病で逃げ足が早い。
さらに、ハンターに向かって啄んだと同時に
持っている光り物のアイテムを盗むという泥棒な業を持っている。
まさしく序盤のハンターにとっては苦戦する相手だ。
「そうゲリョス!彼女ほど素晴らしく可愛らしいモノなどこの世にはいないのですよ!」
突如としてセオドアは何かを語るかのように興奮している。
まるで自分の愛する恋人の様に・・・
また始まったか、とランスは呆れて声が出せないでいる
「あの人、どうしたんですか?」
「ああ、気にするなこういう依頼だとすぐああなるんだ。」
ネギは目を丸くしながら首を傾げると、
セオドアは先頭に走り、体ごとメンバーに向けた。
全員立ち止まり、セオドアに目を向ける
「分からないのですか!?彼女のあの素晴らしさを!
数いる飛竜の中でゲリョスほど愛らしく、
美しい飛竜はいないのです。
全てのハンターは、あの姿!強い弾力の皮の感触!
艶やかに濡れる黒い肌!鶏冠の発する気を失うほどの輝き!
息が詰まる毒息!芸術的な死んだふり!
それらを味わうべきなのです。
そうでなくて、
いったい何のためにハンターになったというのですか!
彼女が私を見つめ、私も彼女を見つめる。
そのつぶらな瞳に、私の持つゲリョスを象ったハンマーで一気に・・・・」
ハンマーの柄を持つように、セオドアは拳を握った。
やがて、ふう、と息をついて落ち着いている。
こういう人に関わらない方がいい、とアリサは心から思った。
そういえばと、セオドアが身につけている鎧をじっと見つめる。
全てがあのゲリョスの皮で出来ている、
青緑と紫が合わせたような色だ。
兜の方はてっぺんが尖っており、
体はまるで太っているかのように大きい。
「(あの人って、ひょっとして太ってるの?)」
「(いや、そう見えているだけださ)」
セオドアが纏っているゲリョスメイルは腹部から胸部にかけては
内側は全て空洞となっている、
つまり鎧の下は着痩せした体格であろう。
持っているハンマーも、不気味な形をしていた。
頭の部分がゲリョスの頭部の形になっており、
目の方は◎が描かれている。
ゲリョスの頭という素材で作り上げた毒属性ハンマー
『ヴェノムモンスター』
ランスの纏っている鎧は紫色の鱗が大半、並んでいる
他には兜や肩や靴に紫色のヒレが付いている。
彼が身につけている鎧はガレオスシリーズという
砂漠に潜む砂竜ガレオスから剥ぎ取り、出来上がった装備である
背中に背負っている槍は普通の槍とは違う、
機械系で銃のような槍だ。
ランスはアリサがじっと見た槍を見ているのを気付いたのか、顔を向けた。
「こいつは最近、出来上がった新型のガンランス「近衛隊正式銃槍」
砲撃も可能、更にはこいつにはある強力な秘密があるのさ」
「強力な秘密?」
まあ、今に分かるさと顔を戻し改めて正面を向く。
しかしアリサはどうしても気になる・・・。
隣で聞いていたネギやすずかも同じくランスが使う特殊な槍に
ただ興味津々だった。
「そろそろペイントの匂いが強くなってきたぞ・・・・」
草むらに近づくと同時に、ジェラードが呟く。
先ほどの沼地とは違ってここは湿気もなければ泥濘もない普通の草むらだった。
しかしあまりにも深い草むらで子供が顔を覗かせるのがやっとの高さだ。
「これじゃあ全然見えないよ~!」
「お前がチビだから仕方ねーよ」
「チビって言うなー!」
ランスの嫌みな言い方に腹を立てるベッキー
腕を振り上げた瞬間何かを切ったかのように腕を見る
草に切られ血が出ていた。
あまりの痛さに涙を流しそうになるベッキーだが
ふと誰かが優しく腕に薬を塗っていた。
「痛くありませんか?沁みませんか?」
優しい表情で微笑んでいるのはカエデだ。
カエデは優しく回復薬を塗っている。
ベッキーはその優しい微笑みに泣くのをやめ少し落ち着いた。
今まで優しくされた人は数少ないが、この女性は違っている。
暖かい感じがする位、安心できるそういう存在だ
「あ、ありがとう」
よそよそしくベッキーは感謝したが、
カエデを見ていると、京都にいる『大和撫子』
という言葉を思い出す。
古来美徳とされた、清楚で凛々しく、慎ましやかで、
一歩引いて男性を立て、男性に尽くす甲斐甲斐しい女性像を指す。
まさにカエデはそれに相応しい女性に見える。
彼女が装備しているのも古来の日本女性が身につけている和風装備「凛」。
歩く災厄ともよべる巨大な古龍種
「老山龍(ラオシャンロン)」の背甲や鱗、
さまざまな飛竜の稀素材から作られる、とても珍しい防具。
「カエデさんって優しいんですね」
「いえ、私はみなさんのお役に立てればそれで嬉しいのです」
その言葉にネギは驚いた。
今までそう言った人物は誰も特定がしないからだ。
それに彼女からは濡れると不憫ですのでと
どこから取り出したのか人数分の傘をネギ達に差し出した事もあった。
「いたぞ、あそこだ!」
ジェラードは手を横に突き出し、歩くのを制止した。
指を指した前方に、ゲリョスが立ち止まり気づいていない状態で
あくびをしている。
今ならチャンスだとランスはジェラードの前に出たが
待てとランスの肩を掴み、
代わりにジェラードが前に出てゆきゲリョスの方へ近づいてゆく
やれやれとランスは首を振り前の位置に戻っていく
ネギはあたふたと慌ててジェラードを止めに行こうとするが
カエデに腕を掴まれて、その場で止められた、大丈夫ですよとカエデは小さく声をかける。
それでもネギ達はハラハラしながら
ゲリョスの方へ向かってゆくジェラードを心配する。
いったい何をする気なのだと彼を見つめている。
ジェラードはゲリョスの方まで歩いていく
その気配に気付いたのかゲリョスは跳び上がった。
敵を発見した場合、
驚いているのか仲間を呼んでいるのかとにかく跳び上がる
しかし、ジェラードは大剣を背負ったまま抜こうともしない。
ただ立ち止まりゲリョスの方をじっと見つめた。
何故攻撃しない?
そう思ったゲリョスは同じくジェラードを見つめた。
「・・・コイツナニヲ見ツメテルンダ!?」
気味が悪いヤツだとゲリョスは喋っているが
他の人間から見るとゲリョスの声は「ギョギョギョ」と聞こえる。
もし聞こえたとしたら気味が悪いのはお前の方だと言いたくもなる。
しかし実際は動物や鳥、はてもやモンスターの声など誰も聞こえない
ところが
「別に、お前に聞きたい事があってな」
「!?」
ゲリョスは驚いたかのように顔を引いた。
自分の耳を疑っているのかと、ゲリョスは改めてジェラードを睨んだ。
「オレノ言葉ガワカルノカ!?」
「ああ、ただし学んだんじゃなくて、自然に分かるんだ。」
ジェラードの言葉に嘘はない
彼は今、目の前にいるゲリョスの声が分かるのだ
鎧の効果でも、魔法でもない、自然に聞こえる。
彼の纏っている鎧は赤い魔物と思わせるような恐ろしい鎧
肩からは翼と思わせるような部分に兜は完全に怪物そのものだ。
攻撃力強化のレウスSシリーズ。
飛竜の代表とも呼べる紅き雄火竜、リオレウスから剥ぎ取った。
貴重な素材で作られる、最強装備の一つ。
「自然ニワカルダト?ギョギョギョ!
オモシロイヤツダナ!ニンゲンノブンザイデ!」
「その人間様が、お前に聞きたい事があってこうして喋ってんだ。」
笑うゲリョスにジェラードは構わず、質問をした。
ネギ達はジェラードがゲリョスと何かやり合っている様子に
疑問を浮かべた。
ジェラードの方はゲリョスから何か喋っているようだが
ゲリョスからは「ギョギョギョ」としか聞こえない。
「あの人・・何をしてるんですか?」
ネギはそっとランスに顔を向き訊こうとしたが
「この狩猟クエストが終わったら教えてやるよ」
今はじっとするんだと、ネギの頭を押して屈ませた。
幸いゲリョスは、ランスたちの事は見えていないようだ。
更に、もしゲリョスがジェラードを攻撃し始めたらと
攻撃の準備をし始めた。
それでもただ気配を消し、ジェラードを待つ。
「オレニキキタイコトダト!?」
ゲリョスは今まで自分たちに話しかける人間など
見た事もないと言うが
ジェラードがゲリョスに訊きたい事があるという。
とりあえず攻撃を止め、目の前にいる人間の言葉を聞く事にした
「この辺りで商人達が通るルートを襲撃したモンスターってのは
お前等の事だな」
「コノアタリノ・・・ギョギョギョ!
アア、コノマエニンゲンドモガ通ッテイタナ」
ゲリョスは瞬時に思い出したかのように顔を上げた。
ジェラード達がこの沼地に来た理由は、
三日前、商業隊のグループがゲリョスに襲われたと聞き
集会所の依頼によってここまで来たのだった。
しかし、ゲリョスが二匹現れたというのはジェラード達も予想外。
ギルドの情報が謝っているようだ。
「腹ガ減ッタカラナ、クッテヤッタンダ!」
「それが襲った理由か・・・・」
ゲリョスは嘲笑うかのように、ジェラードを見下した。
「アアソウダ!マズハオレサマノトサカフラッシュデ、
ニンゲンドモヤ、ニグルマヲヒクアプノトスヲ目眩マシテ
毒ヲ吐イテ、弱ラセタトコロヲ
チョウドオレノ仲間ガヤッテキテ、
一緒ニジックリアジワッタンダゼ
アプノトス以外ハ、アンマシウマクナカッタケドナ、
ゲギョギョギョギョギョ!」
一気に笑うゲリョス。
その様子にジェラードの拳が強く握り、怒りが込み上がってゆく
「ギョギョギョ!オマエラニンゲンドモハ、
オレタチニ喰ワレル運命ナンダゼ!」
ゲリョスは鼻の先端と鶏冠を打ち合わせ始め、
体を広げたと同時に鶏冠から凄まじく眩しい光を放った。
その閃光を見た者は目潰し状態にされると思ったが・・・
ジェラードは見事に大剣を盾代わりにし、閃光を塞いだのだ。
「何度もお前等とは戦った事がある、
それにオレはお前等の動きも予測している」
表情も変えず、ただゲリョスを睨んでいる。
その顔が気に食わないのか、ゲリョスは腹が立ってきた。
「ニンゲンノブンザイデ・・・」
すると、突然高く鳴き上げたと同時に、
遠くの木々からもう一匹の紫色のゲリョスが現れた!
「イクラ貴様デモ一人ニ二匹ハ無理ダロウ!」
「大人シクオレタチノエサニナリナ!」
その様子を見ているネギはただ拳を握るだけ・・・。
今のネギでは弾力性のある皮膚を持つ毒怪鳥に敵う事が出来ない。
ふと、周りを見渡すと誰かがいない事に気が付いた。
ジェラードの目の前には二匹のゲリョス、
2対1では勝ち目がない
こういう場合は、別のエリアに逃げて
2匹がバラバラに行動をするまで待ち、
その内の一匹が別のエリアに向かったら
こちらもそのエリアの方まで向かい戦う。
しかし、ジェラードはそうはせず、
大剣の柄を握り戦闘態勢に入った。
「本気デオレタチ二匹ト、ヤリアウツモリカ?」
「他ノ三人トハグレテ、
一人ニナッテシマッタオ前ニナニガデキル?」
2匹のゲリョスは揃って嘲笑いジェラードを見下した。
「俺がいつ一人でやるって決めたんだ?」
「エ?」
ジェラードの言葉に意味が分からない2匹
しかし今、目の前にいるのはジェラードただ一人。
それ以外の気配など何処にもいない。
とはいえ、ゲリョスは目の前にいる者にしか眼中にない。
そう、目の前の事だけを見て、後ろの事を忘れているからだ
ドォォォン!!
「ギャギャーーーーーーーーーーー!!」
紫色のゲリョスは大げさに横に倒れた。
そこにいるのは近衛隊正式銃槍を構えたランスだった!
彼がゲリョスに何をしたかというと
まず、ジェラードがゲリョスと話しかけているその間、
気配を殺しながらエリア8から離れ、
エリア6→5→4→8と時計回りに移動し、
また気配を殺しながらゲリョスの足下に移動し
槍を構え、足を攻撃し転ばせるというパターンだった。
ガンスから放った砲撃はただの砲撃などではない
竜撃砲というガンスの最大の攻撃
その威力は大タル爆弾一つ分に匹敵する。
しかし連続で発射する事は出来ず、
一回使う事に自動で放熱が開き、放熱が終わると蓋はすぐに閉まる。
ランスは竜撃砲の攻撃を終わらせると、
バックステップでゲリョスから離れた。
「それでは、続いて私の出番ですね!」
ゲリョスの後ろにいるのはランスだけではない。
共に付いていったセオドアも一緒だった。
セオドアは転んだゲリョスの頭に向かい
その場で鶏冠に向かってハンマーで叩き続ける
最後の一撃、回転振り上げで、鶏冠を見事に砕かせた。
遠くで見ていたネギ達は、おおーっと驚き、小さい拍手をした。
続いてカエデも草むらから顔を出し、ゲリョスに向かい走り出し
背中に背負っている長い太刀の柄の部分を掴んだまま、
ジェラードの隣に立つ
鞘から取り出したのは、ゲリョスの弱点、「火」属性の武器。
『飛竜刀【楓】』
リオレウスから剥ぎ取った貴重な素材で作り上げた、炎の太刀
同じくジェラードも背中に背負った大剣を抜いた。
リオソウルという雄火竜の亜種から剥ぎ取り
作りあげた炎属性の武器。
『煌剣リオレウス』
「お前等の皮膚は炎に弱いんだろ?それぐらいお見通しさ!」
「ゲ・・ゲゲーーーーー!!」
動揺するゲリョスに、ジェラードは構わず叫んだ。
「突撃だーーーーー!!」
ジェラードの声と共に、ランスとセオドアは動き出す
中でもセオドアは嬉しそうだ。
「待ってましたよ~~~~~!!」
「とっとと片づけるぞ!!」
燃え上がる二人の相手は紫色のゲリョス
そして残ったジェラードとカエデの相手は先ほど話しかけたゲリョス
ネギ達はその様子をじっくりと見た。
ランスは銃槍でゲリョスの尻尾めがけて斬り上げ
それと同時に砲撃という連鎖攻撃を繋げた。
弱点が尻尾なだけに、大げさに後ずさりをするゲリョス
近衛隊正式銃槍から放たれる砲撃は【放射型】と呼ばれ
射程が長く【通常型】よりも攻撃力は高い。
更にセオドアは体の姿勢を低くし、溜め動作に入る
その様子を見たランスは、更に槍の攻撃はせず砲撃を続けた。
ランス攻撃している部分はゲリョスの足。
ここが斬撃をしても弾かれるという部分。
しかし砲撃ならば弾かれず、ダメージが与えられる。
「グギャーーーーー!!」
ゲリョスの目から赤い隈が出てきた。
ゲリョスが怒っている状態だ!
ランスはすぐに横バックステップでゲリョスの攻撃を避ける。
怒っている状態のゲリョスの攻撃は意外に速い。
ついばみ攻撃も、縦でガードしたとしても
すぐにスタミナが削られるのが難点
その為、出来るだけガードは禁物という。
やがてセオドアの方は溜め動作が終わり、
ゲリョスに向かって走り出した。
「さあ、ゲリョス!私のダンスをご覧下さい!」
ゲリョスに近づいたと同時に
セオドアはハンマーを持ちながら回転し始めた
ハンマーの頭部分がゲリョスの脚に多段ヒットし
最後は打ち上げ攻撃で決め、ゲリョスはまた転んだ
それを狙ったのかランスは銃槍を構え、
連続突きでゲリョスの尻尾を突き続けた。
セオドアの方は、ゲリョスの頭に向かいハンマーを叩き続ける。
ゴム皮膚の少ない頭部がセオドアにとって好都合の場所
重い一撃がゲリョスの頭を大地にめり込ませた。
二人の攻撃が倒れたゲリョスに襲いかかる。
やがて、ようやく立てたと思ったら
地響きを立て大きく倒れ込んだ。
「・・・・倒れたか?」
「ええ、死んだフリではありませんのでご安心を」
ゲリョスの場合、体力が少なくなると、
死んだフリという動作が多くなる
謝って倒したのかと思い、剥ぎ取りを始めようとすると
ゲリョスは暴れだし、瀕死の重傷を負わされたハンターが数多い
運が悪ければ即死してしまう恐れもある。
カエデは太刀を構えたままゲリョスの方まで走り、頭部を狙った。
ゲリョスの目眩まし閃光攻撃の原因はあの鶏冠だ。
つまり、あの鶏冠を壊してしまえば、眩しい閃光攻撃は出来ない。
ゲリョスはその場で口から毒液をはき出す
二人は横回転で回避し、ジェラードはいったん大剣を背中に背負った
カエデは毒液を吐いた後の動作を狙い、二回の縦斬りを放った。
斬撃と爆炎の同時攻撃に、ゲリョスの頭部は徐々に焼焦がれる。
そして更にカエデの後ろからはジェラードが走ってきた。
カエデはその場で横回避し、ジェラードは煌剣の柄を持ちながら走り
一気に抜刀斬りをはなった。
巨大な爆発音が響き、同時に何かが壊れた音が聞こえた。
ゲリョスは当然苦しそうに後ずさりする。
自慢の鶏冠が見事に砕かれていた。
「これで、お前はお得意の閃光攻撃は出来ないな」
そう言うと、ジェラードは大剣を背中に背負う。
「キ・・・キサマーーーーーーー!!」
体力が少なくなったせいか、それとも鶏冠が壊されたのか
高い声を上げながらゲリョスは飛び跳ね怒りだした。
しかし、ジェラードはそこから逃げようともせず
ゲリョスの股下に移動する
そこから煌剣を抜き股下から尻尾を狙い、抜刀斬りを放った。
斬りつけた尻尾からは血が噴き出し、
ギャーと叫び声を上げながらゲリョスは痛み出す。
更に斬り上げ動作を放ち、尻尾だけでなく胴体を斬りつけた。
「ギャーー!!痛ェ!痛ェヨォ!オレノ体ヲコンナニキリヤガッテ!」
「お前は俺を怒らせたんだ。その分の代償を払わすまでだ!」
そう言った後、ジェラードはゲリョスの方に振り向き、
また煌剣を背中に背負いゲリョスから離れてゆく
ゲリョスはなりふみ構わず、体を横旋回し尻尾攻撃を放った。
伸びる尻尾にジェラードは体を屈み、その攻撃を避ける
その隙にジェラードはゲリョスの方へ走り、また抜刀斬りを放つ
ゴム質の皮は打撃を弾くが、時として斬撃を弾く事もあるが
ジェラードの場合、
それを無視するかのように弾かれず斬りつけてゆく
斬り上げから今度は斬り落としに繋がる瞬間
ジェラードは大剣を振りかぶりながら立ち止まり、力を溜めている
これぞ、大剣にしかできない技「溜め斬り」
溜めが終わると大剣を一気に縦に振りかぶった。
絶大なダメージに、ゴム質の皮から肉まで大きな深い傷をつけた。
傷から出る血は大量にブワッっと大きな飛沫を上げ、
ゲリョスは大げさに痛がる
ジェラードはまたゲリョスから離れ、大剣を背中に納めた。
するとゲリョスは地響きを立てながらゲリョスは倒れた。
ネギ達は倒したのかと深い草原から顔を出そうしたが、
カエデがそれを制止する
ジェラードはセオドアに顔を向けた。
彼は一瞬頷く、ゲリョスは今、死んだフリをしている。
その行動を知ったジェラードはカエデに向かって何かの合図をした。
するとカエデはポーチから投げナイフを取り出し、
倒れているゲリョスの尻尾に向かって投げた。
チクッとした感触にゲリョスは剥ぎ取りを行っていると思い
その場で暴れ出した。
「ギョギョギョ!ヒッカカッタ!ヒッカカ・・・アレ?」
死んだフリ攻撃が終わった後の目線の先には、
大剣の刃の部分が見える
刃はゲリョスの鼻先を斬りつけた。
当然、ゲリョスは痛み出す。
「ギャーーーーーーー!!イテェ!オレノ顔ガ!」
ゲリョスは器用に翼で鼻先を押さえながら
ジェラードを睨んだかと思うと
一瞬ジェラードの目からは何やらおぞましい視線を放っていた。
ゲリョスは一瞬その恐ろしい目つきに後退りをする。
「出たか・・・我らがリーダーの特性」
ランスはジェラードを見つめた瞬間に
後退りするゲリョスの様子を見て、そう呟いた。
ゲリョスの方は一瞬何かを思い出したのか、恐怖の色を浮かべる
「オ・・オマエ・・マサカ・・・「死神」・・カ!?」
そう訪ねた瞬間、ジェラードの目線は変わらなかった
「もしそうだとすれば、どうするんだ?」
訊いた瞬間、目の前にいるジェラードに対し、
体を震えながら怯え始めた。
ゲリョスの後退りは徐々に速くなってゆく・・・
「ヒ・・ヒィィィィーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
パニクったゲリョスは体を旋回し、
転びながらも凄い速さで逃げ出した。
「おやおや、やっぱり逃げ出す姿は可愛いですね」
セオドアはゲリョスの姿を満足そうに微笑んでいる
ゲリョスUヘルムの下からは分からないが、
何やらクククク・・・と嘲笑いが聞こえる。
隣にいるランスはそれが不気味で仕方ない
ゲリョスの逃げ出し走る姿に、ネギ達は一瞬それを避けた。
ふと後ろからも何かが来ると思い振り返ると
そこには猛スピードで走るジェラードの姿が!
「な・・何なんですか?」
「あの鳥を追いかけるつもりなの!?」
避けながらジェラードの姿を見るネギ達
それにしても凄いスピ-ドだ
まるでチーターがレイヨウを追いかけるかのように
ジェラードはだんだん速くなってゆく
ゲリョスとの距離が近くなってくると驚いた行動をする
ゲリョスの背中に飛び移ったのだ
ハンターの誰もが絶対に真似の出来ないこの行動に、ネギ達は驚く
それを知ったゲリョスは必死に振りほどこうと暴れ出した。
しかし、ジェラードは離そうともしない、
とにかく暴れ出しても、離そうとはしない。
するとジェラードは脚でゲリョスを馬乗りするかのように挟み込み
背中に背負った煌剣を抜いた。
両手に持った煌剣を逆手に持ちかえ、しっかり握った。
「うおぉぉーーーーーーーーーーーーー!!!」
体を大きく振りかぶり、
ゲリョスの背中をめがけて煌剣を強く突き刺した。
背中から腹まで突き抜け、ゲリョスの悲鳴が木霊する
ゲリョスの動きはだんだん鈍くなり、やがて・・・
ズズゥン・・・・
地響きを立てながら、ゲリョスは絶命した・・・。
すべてのマスターオーダーを成功させたのだ。
「お・・お見事です・・・」
ネギ達の感想はただ一言呆然とするしかなかった。
どのハンターでさえも真似の出来ないあの行動に誰もが愕然とする
あんなやり方は絶対にあり得ないからだ。
しかし、何度も見たのかカエデ達は構わずに
ゲリョスのゴム質の皮を剥ぎ取り始めた
「何してるの?あの人達?」
アリサはカエデ達のしている行動が理解していない
「ああ、皮を剥ぎ取ってるんだ」
「剥ぎ取ってる!?」
そんなの真似できないと思っていたが
ジェラードは構わず話を進めた。
「倒したモンスターの皮や爪、更には角などの素材は
ハンターの武器や防具を作り上げ、別の使い道としては換金とかな」
ハンター達が倒したモンスターの皮などを剥ぎ取る行為は
別におかしくはない
全て剥ぎ取った後、
残った残骸は匂いを嗅ぎつけてくるランポス達の餌となり
残った骨は土へと還るのである
「どうです?お一つ」
「ひゃあ!いらないわよ!」
セオドアの手には剥ぎ取りナイフで切り落とした毒怪鳥の頭が・・・
あまりにも不気味さに驚く
「とても貴重ですよ、換金すれば・・・・」
「だからいらないって言ってるじゃない!そんなキモイの!」
「き・・キモイ・・」
アリサからキモイと言われ、
その場で頭や両手や膝を地につけ落ち込んでゆく
「そんなにショックを受けるものなのかよ?」
ベッキーの一言に更に頭を深くめり込ませる
「その辺にしてやれよ、傷つきやすい性格だからな」
「あ・・そうか・・(もし一条がいたらとどめをさしそうだな)」
とにかく、と犬神はベッキーの前に出た。
「この場所がどういうところなのか詳しく知りたいですね」
「ああ、そういえばそうだったな」
もっとも大事なのはここからだ。
ネギ達でさえも知らないこの世界・・・
お互いの住んでいる場所を知ったとしても
それを知らない人達・・・。
「剥ぎ取りを完了しましたよ」
「OK!それじゃあ・・・」
カエデ達の剥ぎ取り作業が終わるのを確認したジェラードは
再びネギ達に顔を向け
「これから俺たちは、村へ帰るんだが、
ここがどういう場所かは村に着いた後から話し合おう」
「そうですね」
ネギとジェラードはお互い合理した。
それに、犬神の背中に背負っている雅や望を早く看病しなければと
ふとアリサは手を挙げた。
「村って・・何処の村?」
「北にある雪の村「ポッケ」って場所だ」
「ぽ・・ポッケ・・」
変な名前の村にただ呆然とするしかなかった。
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