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交わる異能者たち 第弐話 「復讐の蝿VS怒れた人間」 (魔法先生ネギま!×GS美神) 投稿者:海老 投稿日:04/08-03:56 No.44



交わる異能者たち

   第弐話 「復讐の蝿VS怒れた人間」





先ほどの爆音が戦闘の合図だったのか、その後も破壊音は続いている。
しかも敵は数体いるのか気配が分かれていく。
気配を探って分かったことを横島は走りながら整理している。それが出来なければ死ぬしかない現場を駆け巡ってきたのだ、戦闘時の横島の顔には普段のおちゃらけた顔は無かった。

そのすぐ後ろをタカミチが走っているが、こちらも気配を探って情報を得ようとしているが横島ほど上手くはないようだ。
そんな時にタカミチに一本の念話がはいった。
相手は護衛につかせていた2人のうちの1人『高音・D・グッドマン』
彼女は影を操り、接近戦ならそこら辺の魔法使いよりは上を行くだろう。

その影使いからの念話には、普段の彼女が見せない焦りの声が聞こえた。



『無数の敵に襲われ、敗走中。愛衣と保護対象の子が1人残って足止めをしています。こちらには敵からの追尾も無く、愛衣の足止めは成功したかと思われます。さらに気絶したもう一人の保護対象を連れているので、こちらに人をよこしてくれると助かります』



彼女だけでも強さはそれなりにあり、しかもその傍にはアメリカのジョンソン魔法学校に留学したこともある秀才の佐倉愛衣。
彼女は一般的な魔法使いで在るが故に、無詠唱呪文などの魔法の類も使えるほどの強さまでも一心不乱に修行してきたのだろう。
これがもし若さに任せて色々なことに手を出していれば、ここまで強くはならなかっただろう。
そんな才能と努力を続けてきた彼女が一緒にいても、対処しきれなかった相手となるとそれなりの者だろう。

しかも愛衣のほうに念話をしても応答が無いのこと。
ことは一刻を争うことになっている。

タカミチは彼女たちの報告を聞き、これからの行動パターンを思索している。
その横で横島もまた何かを考えているのか、眉を寄せ難しい顔をしている。



(横島君のこと自体まだ詳しく掴めてない状況なのに……とりあえず高音君のほうには横島君を向かわせて、エヴァと一緒に愛衣君の救出に行くって感じかな?)


(正直タマモの方も事態を急ぐけど、現状での危険差で言うとシロのほうに行ったほうがいいかな。っち、人目の前だと文珠も使えないしな。きついかもしれない……。)



「横島君、警護員の一人とあの大きい樹の下で合流してくれ。だからここからは別行動になるけど良いかい?」


「…………わかりました。それじゃ」



横島は何の反論もせずにタカミチに背を向けて、窓から見える世界樹を目指して離れていった。
彼自身、タカミチと別行動したかったので、どう切り出すか迷っているところを相手から言ってきてくれたので、問題は何も無いのだ。
ただ一つだけ不安があるとすれば、タカミチの向かう先はタマモがいる所だろう。
そこに行ったときに『あの』相手にどれほど耐え凌ぐことが出来るのかが不安なのだ。



「……まずはシロの方をどうにかしねぇとな!」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「っはっはっはっはっはっ……」



木々の中の道無き所を駆け抜けている黒い影。
比喩表現などではなく、それは本当に黒い影だった。



「っく、先ほどまで周囲には気配さえ感じなかったのに、一体どこからこんなに沸いてきたんですか!?」



その黒い影を纏いし ―高音・D・グッドマン― 。
彼女はその腕に白い髪、先端だけが赤くなっている少女を抱いて、迫るくる敵から逃げている。
その後ろには余裕の笑みを浮かべながら、迫ってくる異形のもの。



「っけ、さっさと捕まりやがれ! パッパッと死んだほうが楽なのによ」



―蝿― ……否、人語を話す蝿など何処にいようか?
かつてサタンと同格まで上りつめ、蝿の王などと語る前はバールゼブブ『館の主』とまで言われていた存在。
そんな蝿 ―ベルゼブル― は聞いただけで悪寒が走るような声で、先ほどから罵倒を繰り返している。



「手早く殺してやるから止まりやがれ!」



言葉の内容とは裏腹に、その目は『簡単になんか殺させねぇよ。ジワジワと嬲り殺してやるからよ!!!』と狂気に染まっている。
その身からの殺気が増えた瞬間、高音の周りからクローン蝿の大群が猛スピードで飛んできた。
それを何とか操影術で防いだものの、予想以上の強い衝撃に耐えれなくなり意識を飛ばしてしまった。



「っち、楽しめると思ったのによ!しょうがねぇ、約束通りパパッと殺…………わーったよ。やればいいんだろ!」



なにやら独り言をし始めた蝿の王。
端から視ると痛い人……もとい痛い蝿である。
周りのクローン蝿どもが引いているのは気のせいだろうか?





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





建物の一室、破壊されたドアを注意深く見つめながら、一歩……また一歩、入り口に近づいていくタカミチ。
その身には何が起きても対応できるよう魔力が張り巡らされており、一分の隙も無い。
残り約3メートルの所で、周りから殺気があふれ出した。
四方八方からの敵の攻撃。
それを避けながらも慎重に観察しているタカミチ。

ざっと見たところ数20以上。しかもまだまだ増えている様子。
さすがにタカミチも捌ききれなくなってきたのか、所々にかすり傷を作り始めている。



(数は多いけど、一個一個の攻撃はたいした事無い。……でも一回後退したほうが良さそうだな)



幸いなことに、タカミチのいる廊下は一直線に長く続いている。
さらに必殺技ともいえる『居合い拳』ならびに『豪殺居合い拳』は、敵まで一直線という技なのでカーブが多い場所では使いにくいのである。
だから一直線に伸びている廊下は絶好の戦闘ポイントなのだ。

敵の攻撃をバックステップで交わしていきながら、一旦離れた。
そして敵全体が見れる場所まで来るとその足を止め『魔力』と『気』を一瞬にして融合させると、ポケットに手をいれて目の前の標的に狙いを定める。
しかしそこで気づいてしまった。



(もしかして、高音君と保護している少女がいたら無闇に撃てない!?)



彼の居合い拳は威力が強すぎるので、室内で使うと建物が崩壊する恐れがあるのだ。
もしここで使ったら建物が崩壊して、負傷しているかもしれない二人が生き埋めになる恐れがある。
仕方が無いので構えを解き、一匹づつ対処するために今しがた脱出してきた敵陣へと今一度足を踏み入れた。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





【 世界樹 】





広大な学園内の中でもひときわ目立つ大きな世界樹。
年月が何百年と経とうと、ここまで成長することは無いだろう。
春休みとはいえ、近くのカフェにまで人の気配がしない。
いつもなら賑わう広場にも人の影はなく、風に吹かれた砂埃だけが俟っている。

その樹の近くにタカミチと闘っているはずの蝿の姿があった。
その周りにも幾分小さくなっているが、羽音をたてながら飛んでいる蝿がいる。



「ふぅ、準備を終わったか。後は終わるのを待つだけだな」



何やら樹に向かって作業をしていたらしく、額を腕で拭うしぐさをしながら振り向いた。
その手には難しい文字が書き綴ってある紙が握られており、もう片方の手にはロープが握られている。
ベルゼブルはここに近づいてくる気配を感じ取ると、嬉しいそうに口元を歪めた。
広場の入り口のほうから走ってくる者。
そいつはベルゼブルの姿を見つけると走るのを止め、慎重に周りを伺いながら歩み寄ってきた。
ベルゼブルが憎む対象のうちの1人 横島忠夫はその手にサイキック・ソーサーを出しながら、こちらを睨んでいる。
二人の間には、霊力と魔力のぶつかり合いによる風が吹き荒れている。
重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは横島だった。



「……シロはどうした?」



ベルゼブルは答える代わりに体を脇にどかして、先ほどまで作業をしていた場所を見せた。
そこにはシロともう話にあった警備の人が、ロープで縛られている姿で宙吊りにされていた。



「どうだ?この樹の名前にちなんでオーディンの逸話を真似てみたんだが……気にいったか?」


「て、てめぇ! 一体何が目的なんだよっ!」


「目的? まぁ、命令でここに来てんだが一番の目的っつうと復讐だよ! お前らに対してのな! くくくく、お前の気配が現れたときは思わず神に感謝しちまったよ」



その目はカッと見開かれ、憎しみを目の前の相手にぶつけるかのごとく咆哮をあげる。
彼にとって横島忠夫・美神令子の二人は憎むべき相手なのだ。
美神には拳で、横島にはスプレーという馬鹿にされた殺し方をされたのだ。廃れたとはいえ魔族の王にいた者としては最大の屈辱だろう。

ベルゼブルはどうも横島より先にこの場所に来ていたらしい。
話の内容からするとベルゼブルには、アシュタロスのときと同じく誰かに雇われているみたいだ。
しかしこれらの事は横島にとってどうでもいいことだった。
すでに相手との距離を縮めるために走り出していた。
それに気づいたベルゼブルはクローン達で迎撃をしたが、それを手に出した霊波刀で切り捨てていく。
しかし多勢に無勢、物量で押し返されてしまい元の所に押し戻されてしまう。



「はぁはぁはぁ…………くそっ!」



またも突撃を繰り返す横島。
それを物量で押し返すベルゼブル。
一向に差は縮まらないまま、それは何回も繰り返された。


永遠に続くかと思われた攻防戦だが、横島が膝を地に付けることで収まった。
横島は肩で息をし、水でもぶっ掛けたんじゃないかと思うぐらいの汗を流しており、目は虚ろに、展開していた霊波刀も四散してしまっている。
それもそのはずだ。
落下時のときに霊気は殆ど底をついていて、さらに煩悩全開による霊力の無理使用。
これだけのことをしている中、魔族との文珠無しでの戦闘は横島といえど限界に近いのである。



「どうしたぁ? それで終わりとは言わないよなぁ?」



いたぶってることを楽しんでる口調で喋りかけてくる蝿。
横島は意識が朦朧とする中、樹に縛り付けられているシロを見て



(また……またオレのせいで誰かがいなくなるなんて嫌だから修行して、みんなを守れる強さを手に入れるために修行をしたけど……やっぱオレには無理だったのかな……。いつも笑いかけてくれた者まで守れないなんて!)



ルシオラが消えてから横島は落ち込んでいた。
それをシロが振り回し、タマモが茶化し、何も知らない二人は自分に自然に接してくれた。
妙神山に修行をしに行ったときでも励ましてくれた二人。



(それすらも守れないっていうのかよ!!!)



だが皮肉なことに、いくら力を入れても限界に近づいた体はノロノロと起き上がるだけ。しかもベルゼブルのからの攻撃は続いており、徐々に横島の体力を削っていく。
薄れ行く意識の中、横島は自分の中に光り輝くものを見た気がした。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「っけ、もう気絶しやがった。つまんねぇけど殺すか」



体にいくつもの傷を負いながら倒れた、目の前の敵を見てつまらなそうに呟くと、羽音をさせながら近づいてくるベルゼブル。
すでに意識は無いのか、敵が接近しているというのに体を起こさない横島。
両者の距離は縮まり、あと数メートルで横島を殺せる距離に入る。
ベルゼブルは歓喜に震えていた。
自らを屈辱の底にへと陥れたやつをこの手で殺せるという歓喜に。
しかしベルゼブルは油断していた。
近づいてくる気配に気づかずに意気揚々と横島に手を振り上げる。



「そこまでだよ蝿君」



刹那、先ほどまでベルゼブルがいた場所を閃光と衝撃が走った。
その光は振り上げていたベルゼブルの手を消し去りながらも、その周りにいたクローンを巻き込んでいく。



「誰だ!?」



手を失った苦しみと、屈辱を晴らせなかった怒りで顔を歪ませながら、光が飛んできたほうに体を向けた。
その視線の先には多少の傷を負いながらも『豪殺居合い拳』を放ったタカミチの姿があった。
彼はあれだけの数の敵に対し、体一つで勝ってきたのだ。
クローンだったこともありスピードが落ちていたのと、呪文詠唱が出来ないため体を鍛えておいたのが幸いだったのかもしれない。
そして高音からの急な念話による知らせを聞いて、駆けつけてきたのだ。
しかし蝿の大群の中にいるのは精神的にキツカッタみたいで、顔をげっそりとしている。



「ふっ……ここなら心置きなく豪殺居合い拳が使えるようだ」



相当根に持ってるらしく、周りのクローン達に向かって豪殺居合い拳を放ちまくっている。
しかしちゃんと倒れている横島や、樹に縛り付けられているシロ達には当てないように配慮しているのは流石としか言いようが無い。

豪殺居合い拳と少なくし、生き残って迫ってくるクローンどもを避け、そして居合い拳で撃破する姿は「動く砲台」と言える。
その動く砲台は敵が残り一体になると攻撃をやめ、敵を見据えた。



「最後に何か言い残すことはあるかい?」


「くそぉ、くそお! 人間なんて下種に邪魔されなきゃいけねぇんだ? お前ら下種は地べたに這いづくばっていればいいんだよ!」



怒りに我を忘れたのか、一直線に突進してくるベルゼブル。
それを豪殺居合い拳で瞬殺したタカミチは急いで世界樹へと駆け寄り、高音とシロの縄を解き、倒れている横島の状態を見ると携帯を取り出して応援をまわしてもらうよう頼んだ。



こうしてベルゼブルの少女拉致事件は終わり、そして遠いどこかで誰かが思惑通りにいかなかった事について地団駄を踏んでいた。





                        つづく





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





タカミチの要請を受けたエヴァはどうしたかというと…………。





「ハックション!!!」



「マスター、ティッシュです」





春先の花粉でダウンしていましたとさ。 





交わる異能者たち 交わる異能者たち 第参話「何ヶ月ぶりだよコンチクショー!の巻」

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