ねぎFate 姫騎士の運命 第二話 投稿者:ガーゴイル 投稿日:04/09-04:55 No.189
何時も彼女は夢に見る。
蒼い砂漠に、黒い空。
漆黒の天空には、宝石の如き七色の星が煌めき、砂漠も負けじと蒼き砂の一粒一粒を光らせる。
砂漠の真ん中には細い河が。
水面は星と砂の光を照り返し、大地に天の川を創り出す。
そんな幻想的な風景を締め括るのは、空に浮かんだ大輪の黄金色の満月に――
砂漠に突き立つ無数の武具の群れ
剣、槍、弓、盾……
その一つ一つが、淡き水露に濡れ、仄かな輝きを放つ。
まるで、涙を流しているかのように……
「……あれ?」
彼女――霧羽は目を覚ました。
「……私、又寝ちゃってたのか…」
寝惚けた目で辺りを見回す。
ライオンのぬいぐるみ、小ぶりな本棚――中身は刀剣事典と剣術指南書と少年漫画だけ――、寝心地の良さそうな布団。
つい最近越して来たばかりの、新しい我が家の自室。
如何やら勉強していて居眠りしていたらしい。
机には、大きな涎の後が……
「久し振りに見たな、あの夢。……一体何なのかな、あの光景って?」
目を瞑ると脳裏に浮かぶ、蒼き砂漠。
無数に突き立つ武具の群れ。
儚くも、美しい光景。
「――ま、いっか。何時もの事だし。――それより、勉強勉強~」
再び彼女は、シャーペンを取り、カリカリと勉強を始めるのだった。
「……何か色々有りすぎな学校生活だったな~」
霧羽の脳裏にこれまであった事件がダイジェストで浮かぶ。
惚れ薬事件――母譲りの【対魔力 C】のお陰で助かった。
居残り事件――赤点を取ると母が【約束された勝利の剣】を持ち出してくるので、死ぬ気で勉強した。
ドッジボール事件――始めは生身で闘ったが、最後の一撃(相手の反則時)のみ、魔力で強化した一撃をお見舞い。…服を破いてしまったので一寸反省……
くーちゃん対お父さん事件――唐突だが古菲と士郎が勝負することに(勿論投影無しで)。裏で賭けが行われていた為、近年まれに見ない大盛り上がりを見せたが、狂化したアルトリア(宝具無し)が乱入し、勝負はお流れに。狂化した原因は……夕食の時間が遅れに遅れた為、空腹が限界を超えたからだとか。――暫らくの間、古菲はアルトリアを見ただけで怯えるようになった。
……などなど。
ホントに色々大変だった(特に一番最後が)。
三学期も、残る一つのイベントをこなせば終わりだ。
「……けど、正直言ってテストは勘弁……(泣)」
バカレンジャー並みとまではいかないが、霧羽ははっきり言って馬鹿である。
しかし、赤点=死なので、泣きながら勉強しているのだ。
「うう…。頭の良くなる魔術か魔法があれば良いのに……流石に頭には強化使えないし」
【死にたくない】、と赤字で書かれた鉢巻を締めて、机に齧りつく霧羽。
――その時、
~~~♪ ~~~♪
脇に置いてあった携帯が、鳴った。
半泣きの顔のまま、電話に出る霧羽。
「はい、もしもし。私ですけど………ええッ! その話、ホントッ!? パルちゃんッ!?」
――こうして、姫騎士は自ら運命へと踏み込むのだった。
……理由が無茶苦茶情けないが。
ねぎFate 姫騎士の運命 第二話
――図書館島。
其処は、遥か昔より受け継がれた、連綿たる知識の宝庫。
その内部は本の迷宮と化し、邪悪な盗人を一切寄せ付けず、謎に包まれていた。
――このような人外魔境にあえて挑む七人の戦士が現れた!
バカレッド――神楽坂 明日菜!
バカブルー――長瀬 楓!
バカイエロー――古 菲!
バカピンク――佐々木 まき絵!
バカブラック――綾瀬 夕映!
そして中途参入のバカゴールド――衛宮 霧羽!
序に引率のネギ=スプリングフィールド先生。
――これぞ【真☆バカレンジャーズ+1】!
「――って、何でポーズ取ってんですか、私たち」
「ノリよ、ノリ♪」
夕映の無情な突っ込みに、メガネの陽気な少女――早乙女ハルナ――が軽く返す。
ちなみに、図書館探検部の木乃香と宮崎のどかが、シェルパ兼連絡要員としてこの場に集まっていた。
他のバカレンジャーは、図書館島の大きさに呆気に取られていた……一人を除いて。
「――此処に在るのね。お母さんの折檻から私を助けてくれる聖杯が…」
などど呟くのは――我等が霧羽ちゃん。
ちょっと逝っちゃった目をしています。
「あ、あの……霧羽さん?」
「何? ネギ君♪」
にっこり、笑う霧羽。
はっきり言って、某影を操る巨乳妹より怖い笑みですあんた。
「ひ、ヒイィィィィィッ!?」
目茶苦茶びびるネギ。
無理も無い。
「さぁ、皆。ぐずぐずしちゃ駄目、さっさと行かなきゃ。一分一秒も惜しいわ……」
くっくっくっくっ、と肩を揺らしながら、霧羽はさっさと行ってしまった。
「……ねぇ、衛宮さんってあんなキャラだっけ?」
「よっぽどアルトリア先生が怖いんでこざろうな……」
冷や汗を垂らしたまき絵の問いに、此方も冷や汗を流して答える楓。
その後ろには、アルトリアの名前を聞いて、恐怖に震えるくーの姿が……
「ごめんアルごめんアルごめんアルごめんアルごめんアル……」
一体何をやった、アルトリア?
「御免ね、ネギ君。私ったら興奮しすぎて、自分を見失ってたみたいなの。怖い思いさせて、ホントに御免」
ばつの悪そうに、ネギに謝る霧羽。
図書館島に入ったお陰で、若干興奮が薄れたみたいだ。
「い、いえ、別に良いんです。……けど、大丈夫ですか? 顔色が悪いみたいですけど」
「いや、ね。魔法の本手に入れるのは良いんだけど、家抜け出したのがばれたら、って考えてたら……生きた心地がしなくて」
霧羽ちゃん、ちょっぴり後悔。
「アルトリア先生の事がそんなに怖いんですか?」
「お母さんの折檻から逃れられるんなら、私は悪魔に魂を売ろうが麻婆神父と地獄麻婆を食そうが一向に構わない」
悟った瞳で言い切る霧羽。
ネギは何とも言えない表情だった。
「ここが地下三階……私たち中学生が入っていいのはここまでです」
そう冷静に言ったのは、夕映嬢。
「ほらほらアスナさん、見てください! これなんか珍しい本……」
ネギが不用意に本に触れた――その瞬間、
ビュンッ! ガシッ! ……パキン…
本の隙間から鉄製の矢が打ち出され、ネギに中る直前、視力と反射神経を強化した霧羽がそれを受け止め、片手で握り折った。
「――ワナがたくさん仕掛けてられていますから、気付けてくださいね」
ぶっそうな夕映の呟きに、一般人の明日菜とまき絵が突っ込み混じりの悲鳴を上げたのであった。
「――ふむ」
「――? 如何したアルか、楓?」
「――いや、霧羽殿の事でござるが……只者ではござらんな」
「そうアルな。少なくとも、ワタシ達――いや、それ以上アルかも……」
「テストが終わったら、一つ勝負を申し込んでみるでござるか…」
更に大変だな、霧羽。
その後の道のりは原作通り。
各々の技能を駆使し、罠を乗り越え、本棚の道を歩み、本棚の崖を上り、泉を渡り、狭き隙間を行く――そして、
「す、すすすごすぎる――っ!? こんなのアリ――!?」
「私こーゆーの見たことあるよ、弟のPSで!」
「ラスボスの間アル――!」
皆感動に打ち震えていたが、霧羽は違っていた。
――違う。
霧羽の視線は、祭壇に飾られた本に向かっていた。
――アレは違う。
不可思議な字が描かれた、紫色の本。
――アレは、只の魔法の本なんかじゃない!
「!?(――この禍々しいは、一体!?)」
ネギも祭壇の本を見つめた。
知らない。
邪悪な気配が高まる。
――ネギの膨大な魔法知識を以っても、あの本は知らない――解らない!
――瞬間、脇に立っていた二体の彫像の目に、禍々しい光が灯った。
「――っ!? まずい、皆逃げ―――」
危険を察知した霧羽が叫ぶが――遅かった。
彫像の内一体が放った渾身の一撃が、地面を砕いた。
――一瞬の浮遊感の後、その場に居る全員が奈落の底へと落ちた。
彫像と、あの本も一緒に……
姫騎士の前に立ちはだかる不気味な闇。
姫騎士は友を護る為、その力を人目に晒してしまう。
…さて、彼らの運命や如何に。
その頃の衛宮家。
ビシィ。
「……っ!? 霧羽のドンブリに皹が……?」
「――シロウ」
「ああ、アルトリアぁ――っ!? そ、そそそそその格好は!?」
「以前買ったねぐりじぇという寝巻きです……似合いますか?」
「に、にににに似合うってお前……」
「――そろそろ、霧羽にも妹か弟を、作ってあげないといけませんね…」
「あの、あるとりあさん?」
「ふふふ、今夜は寝かせませんよ、シロウ♪」
「ぬわあぁぁぁあぁぁぁっ!!?」
……おまいら、ええかげんにせいよ。
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