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ねぎFate 姫騎士の運命 第四話 投稿者:ガーゴイル 投稿日:04/09-04:57 No.191

『――まさか、君も此方側の人間だったとは…少々予想外だったよ』

身体から剣を生やして倒れるゴーレムを一瞥し、KUGUTUは愉快そうに言った。

『――けど、惜しかったね。まだ僕のゴーレムは健在だよ』

愉悦に歪む顔。

――しかし、



……フッ。



霧羽は、臆した様子も無く、悠然と微笑む。

『……気に入らないね。ムカつく笑い方だ』

吐き捨てるように言う、KUGUTU。

傷付いたゴーレムの方に手を向け、号令をかける。

『殺れ、ゴーレム』

―瞬間、



「―――ボン」



パチン、と指を鳴らす霧羽。

その動作を合図に、突き刺さった黒鍵から魔力が迸り――



――ズグアァァァァァァッンンッッ!!!



爆散する!

「……やっぱり、まだまだお父さんには敵わないな」

父の使う技の一つ――【壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)】。

其れを応用した、正規の手順を踏まない劣化版。

威力は本来の物とはほぼ遠いが、ゴーレムを打ち砕くのには十分だった。

――ゴーレムは瓦礫と化し、破片はバラバラに飛び散っていた。

『……貴様!』

「――油断は死を招くだけだよ、魔導書」

怒りの表情を浮かべるKUGUTUに、霧羽は冷淡にそう告げる。

「やらせない。ネギ君達は―――私が護る!」

若き魔術使いと、魔導書との戦いの火蓋が、切って落とされた。





ねぎFate 姫騎士の運命 第四話





――剣が舞い、火花が散る。

目の前で繰り広げられる、伝承歌の如き戦いに、ネギ達は目を奪われた。

「……凄い」

ネギが、そう呟いた。

何時もとは違い、鋭い目つきの霧羽は、まるで王族のような雰囲気を漂わせていた。

――実際そうだけど。

「……見惚れている場合ではござらんよ。早く、この場を離れなければ」

一瞬早く我に返った楓が、言う。

その言葉に、ネギと明日菜が反論した。

「――ちょっと! 霧羽は見捨てて逃げろって言うの!?」

「そうです! 霧羽さんを――友達を見捨てるなんて…」

「――しかし、拙者とくーなら兎も角、ネギ坊主とアスナ殿が行ったとしても、足手纏いにしか為らないのは目に見えているでござる」

何時に無く真剣に、言う楓。

「今の拙者達に出来る事は、気絶した三人を地上に送り届け、迅速に助けを呼ぶ事ぐらいでござる。――霧羽殿が此処に残ったのは、覚悟が有っての事。その覚悟を踏み躙る事は、拙者には出来んでござる」

ぎりっ、と唇を噛み締め、血を吐くように言う楓。

――彼女も、辛いのだ。

くーも、似たような表情で、俯いていた。

握られた拳からは、僅かに血が、滴っていた。

「……解った」

まだ納得はいかないが、明日菜は頷いた。

――何も出来ないと、自覚しているから。

自分の出来る事をやるしかないから。

「……ネギ…」

「……解っています。解っていますから……」

明日菜に、そう答えるネギ。

辛い。

ネギの唇の端から、血が滲んでいた。

――まだ十歳のネギには、途方も無く重い出来事だ。

「……では、いくでござる」

一言も言葉を発せず、全員その場を離れるのだった。

そして、全員がほぼ同じ事を想った。

――死なないで、と。





「―――疾ッ!」

再び黒鍵を投影し、霧羽はもう一体のゴーレムに投擲する。

しかし、



――キィンッ!



突き刺さり、敵を吹き飛ばす筈の剣群は、突如現れた土の壁に弾き飛ばされたのだった。

『――同じ手は、二度は通じないよ。僕の能力は【無生物操作】――命無き土塊は、僕の操り人形の材料なのさ』

こんな風にね、とKUGUTUは土の壁に魔力を流す。

土の壁は、一瞬でゴーレムに変化した。

『――さぁ、皆出て来て……』

KUGUTUの号令を合図に、周囲の地面が泡立つ。

――湧き上がる瘴気じみた魔力。

土が盛り上がり、見えない手で捏ね繰り回され、人型へと為っていく。

――次の瞬間には、大地にゴーレムの群れが存在していた。

その数、残っていた其れと合わせて十と一。

『――ねぇ、ゲームをしない?』

生み出したゴーレムを待機させ、KUGUTUは無邪気にそう言った。

『――ステージは二部構成。第一部は僕のゴーレム達との殺し合い――其れをクリアしたら、第二部。ボスである僕との一騎討ち。時間無制限、コンティニュー無しの一回勝負――どう、面白そうでしょう?』

けらけらと、笑う。

霧羽は、睨みつけるだけで答えない。

『じゃあ、ゲームスタート♪』

一斉に、ゴーレムが動き出し、襲い掛かってくるのだった。





霧羽は思考する。

この状況を打破する事が出来る、最良の策を。

自らの内を検索し、組み立てる。

目前には、醜悪なゴーレムの群れ。

時間は、無い。

「――――投影、開始(トレース、スタート)」

脳内で数え切れない数の硝子球が弾ける。

「――――憑依経験、共感終了」

引き抜くのではなく、呼び寄せる。

幻想を、共感する。

「――――工程完了(ロールアウト)。全投影、待機(バレット、クリア)」

空中に無数の刃が現れる。

数は数十。種類は剣、槍、矢、斧――様々な刃物。

その一つ一つに、強弱聖魔様々な幻想が、秘められていた。

「―――停止解凍(フリーズアウト)、全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)!!」

言葉と同時に、解放される数多の幻想。

投擲された黒鍵を上回る速度で、命無き異形共に襲い掛かる!



―――ズグアガガガガガガガガガガガッッガッ………ッッ!!



形容しがたい無骨な響き。

岩を穿ち、粉微塵に打ち砕く音が、地底に響く。

如何に丈夫なゴーレムと言えども、この攻撃には耐え切れない。

巻き上がった砂塵が引けると其処は―――刃の森。

地面に突き立った剣や槍、ゴーレムを脳天から打ち砕いた斧、精確に中枢を穿った矢群――夥しい数の武具達の、戦いの痕。

――しかし、それでもまだ、勝利にはほぼ遠い。

今ので五のゴーレムを葬ることは出来た。

辛うじて動けるのが三、無傷なのも三。

黒鍵のように爆破出来ればいいのだが、まだ未熟な霧羽では、其れは難しい。

――もう一度やれない事も無いが、未熟な魔術回路には負担が大きすぎる。

先程のだけで、肉体が悲鳴を上げていた。

(本格的に鍛えないと……駄目かな?)

ぼやける思考に活を入れつつ、霧羽はそんな事を考えた。

「先ずは生き残らないとね…」

そう呟き、霧羽は再び武具を呼び寄せる。

数は先程の半分―――今度は全て、同じ武器。

その刀身に魔力を蓄えた大量の黒鍵が、虚空に生み出された。

「――いっけえぇぇぇッ!!」

――【鉄甲作用】+ソードバレル。

爆弾の如き鏃の雨が、ゴーレムに降り注ぐ。

――突き刺さった瞬間、轟音と共に爆炎が辺りを蹂躙するのだった。





『……うっわぁ』

爆炎が晴れ、視界がクリアになった。

結界を張って静観に徹していたKUGUTUは、思わず呻きを漏らした。

――其処は、焦土と化していた。

未完成と言えども、あれだけの数なら、かなりの破壊力となったのだろう。

地面が大きく抉られ、残っているのは一番奥にいた無傷のゴーレムが一体のみ。

このゴーレムも只では済まず、真っ黒に焦げていた。

他の五体は、跡形も無く消し飛んでいた。

『残念だったね。まぁ、人間にしては善戦した方だけど、僕の敵じゃあ無かったな』

地に降り立ち、余裕綽々といった態度で、KUGUTUはそう言った。

『――さぁて、この分じゃ死体も残ってなさそうだし……とっととネギくん達を始末してくるか』

呟いた瞬間、

『――――っ!!?』

気配を察知し、KUGUTUはその場から飛び退いた。

同時に、地面が盛り上がり、黒い影が飛び出す!

――霧羽である。

爆発する直前、地面に穴を掘り、その中に潜む事で爆発をやり過ごしたのである。

その手に握られているのは――歪な短剣。

『しまっ―――』

咄嗟に、KUGUTUはゴーレムを盾にし、逃れる。

――吸い込まれるように、ゴーレムの身体に、短剣が突き刺さる。



「――【破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー)】」



かつて、裏切りの魔女が所有していた其れは、全ての魔術を破戒する究極の対魔術宝具。

故に、ゴーレムもその例外ではない。

――最後に残っていたゴーレムは、土塊へと還り、果てたのであった。





『………』

呆然と、KUGUTUは土塊の山を見つめる。

十と一のゴーレムは、残らず霧羽に倒された。

「――ゲーム、クリアかしら?」

ボロボロな姿の霧羽が、揶揄うように言った。

――実際、霧羽の身体はやばい。

魔力を流すだけで、回路が悲鳴を上げる。

投影は、後一回が限度といった所か。

『……は……はは………はははははははッ!!』

唐突に、KUGUTUは大きく笑った。

壊れたように、大きく、甲高い笑い声。

『良い――君とっても良いよ! 退屈な仕事かと思ったけど、君みたいな楽しい人と戦えるなら大歓迎さ! 久し振りだよ、こんなに楽しいのは!!』

笑う、笑い続ける。

狂ったように、笑い続ける。

――そんな笑い声が、霧羽の頭に響く。

頭痛を呼び起こすような、不快な笑い声だ。

『――良いよ。今から君を、僕の【敵】と認める。全力で相手をしてあげるよ』

――瞬間、空気が変わる。

膨大な魔力が、KUGUTUから発せられる。

土が、水が、空気が、KUGUTUの周りに集まり、纏わり付いていく。

ゴーレムの時とは比べ物に為らない位の、途方も無いプレッシャー。

――そして、大地に、巨大な異形が降臨した。

形状は翼竜に酷似し、肩に当たる部分には巨大な空洞が存在していた。

全身が、土と岩で構成された、禍々しき龍人形。

『――どう? これが僕のバトルスタイル――【操龍】さ。この姿になるのは、千年振りだよ』

――さも面白そうに、龍と為ったKUGUTUは、言う。

『――さあ、これ以上無いってくらいに、殺してあげるよ』

龍が、咆哮を上げる。





一方、ネギ達は――

無事に、地上直通エレベーターの前に、辿り着いていた。

先ずは未だに気絶している夕映、木乃香、まき絵を乗せ、次に明日菜が乗った。

――しかし、残りの三人は、乗ろうとしない。

「……何してんのよ。さっさと……」

「すいません。やっぱり僕、このまま行けません」

明日菜の言葉を遮り、ネギが言う。

「足手纏いにしか為らないかも知れませんけど、僕は霧羽さんの所へ行きます。――僕は先生だから、友達だから、霧羽さんの力に為りたいんです」

真剣に、言う。

その時、楓がネギの頭に手を乗せた。

ネギは驚いて、楓を見上げる。

「――危なくなったら、直ぐ逃げるでござるよ」

一瞬驚いた表情を見せるが、直ぐに表情を引き締め、ネギは頷く。

「楓とキリハだけには任せて置けないアルよ」

くーも、力強く、頷く。

「――ちょ、私は――」

「アスナさんは、このかさん達と地上に戻ってください。――この役目を任せられるのは、アスナさんしかいないんです」

語気を荒げるアスナに、ネギは言う。

こういう言い方をされては、断ることも出来ない。

不承不承だが、明日菜は了承した。

「――解った。けど、ちゃんと帰って来なさいよ」

口調は何時もの物だが、若干震えていた。

心配そうに言う明日菜に、ネギ達はぐっと親指を立てて、返事をするのだった。





『――あれ? もう終わり?』

あっさりとした口調で、KUGUTUは意外そうに言った。

其の目前には――ボロボロに傷付いて、地に倒れた霧羽の姿。

「………くっ!」

歯を食い縛り、立ち上がる。

再び、空に何本かの剣を投影し、解き放つ―――しかし、



その事如くが、空で弾かれる。



何も無いはずの其処に、壁が立ち塞がっているかのように。

『無駄だよ。僕の造った【龍息壁】は超高密度の空気の壁――君の攻撃は完全にインプットしたからね。絶対に、この壁は突破できないよ』

自信満々に言い放つ、KUGUTU。

『――さて、もう一発喰らってみる?』

そう言って、KUGUTUは岩の顎を開き、空気を吸い込む。

『――【空息弾】ッ!』

押し固められた、高圧の空気弾が放たれる。

真っ直ぐキリハに向かうが、霧羽は直前で回避!

地面を抉り、吹き飛ばすだけで留まった。

――しかし、爆風をまともに喰らい、再び地面に転がった。

『しぶといな~』

地面に伏した霧羽を見て、楽しそうなKUGUTU。

――自分より弱い存在を甚振って、楽しむ性格なのだ。

最悪である。

『――楽しいな♪』





霧羽はピンチだった。

攻撃は悉く防がれ、為す術が無い。

自分に出来る投影など、高が知れている。

宝具も、二つ三つしか投影できない。

(私は……もう駄目なの?)

――いや、まだいける。

両手両足はまだ動く。

両目両耳も、まだ機能している。

心臓は止まる事無く鼓動を続け、脳は思考する事が可能。

――まだ死に体ではない。

この命果てるまで、霧羽は戦い続ける。

――自らの内の、果て無き幻想を護る為に。

友という幻想を――護る為に。

「負けて……たまるかあぁぁぁぁッ!」

考えろ、奴に打ち勝つ為の方法を。

夢想しろ、勝利の方程式を。

幻想しろ、勝利を導く最良の武具を。

――その瞬間、霧羽と霧羽の中の【何か】が、繋がった。

膨大な知識が、流れ込む。

「―――え? これって……」

霧羽に覚えの無い知識。

霧羽の物では無い知識。

――一体コレは?

唐突に、思い出す。



お前の【世界】と私の【世界】が繋がった時、お前の情報が私に流れて来たに過ぎない――逆もまた然りだ。



夢の中で出会った、紅い弓兵の言葉。

「……もしかして、弓兵さんの知識…」

認識した瞬間、霧羽は行動に移していた。

両の足に喝を入れ、立ち上がる。

ふらついてはいけない。

――これが、最後の一撃だ。



「――――投影、重装(トレース、フラクタル)」



その手に、漆黒の和弓と、剣が現れる。

刀身が螺旋状に捻れた――奇妙な剣。

弓に剣を番え、引き絞る。

自然と、口から魔を含んだ呟きが漏れる。

「――我が幻想は捻じれ歪む…」

弓と剣から、途方も無い魔力が迸る。

――そして、霧羽は言葉と共に、トリガーを引いた。

「―――“偽・螺旋剣”(カラドボルグ)」

剣が、放たれる。





空を裂き、天を捻じ切らんが如く、迫り来る螺旋。

KUGUTUは其れを見て、鼻で笑った。

『解らないかな? この鉄壁の前では、君の攻撃なんか意味が無いって』

息を大きく吸い込み、体内で練る。

『―――【空息連弾】ッ!!』

口と両肩の風穴から、【空息弾】の数倍は有る気圧弾を放つ。

その数、三つ。

一直線に並んだ其れは、螺旋剣へとぶち当たる。

(――ジ・エンド♪)

KUGUTUの想像では、気圧弾が剣を打ち砕き、霧羽をミンチにするという未来が、決定していた。

しかし、



―――パァンッ!!



乾いた音と共に、三つの気圧弾は剣に貫かれ、弾け飛んだ。

――そのまま、剣は空気圧の壁に衝突する。

ギリギリという形容し難い音と共に、徐々にだが、剣は壁を穿ち進んでいく。

KUGUTUは、信じられない物を見たかの如く、硬直した。

(……そんな。僕の【龍息壁】が……そんな馬鹿な!?)

『……嘘だ。そんな訳、ある筈が無い!!』

KUGUTUが吼えた、その瞬間、



―――キィィィンッ!!



剣が、壁を穿ち砕いた。

速度は少しも衰えず、高速で回転する其れは、一直線にKUGUTUへと向かう!



『―――え?』



気付いた時には、螺旋剣は胸元を穿ち、肉体を内側から捻り削る。

岩の体が、軋み崩れる。

一拍遅れて、途轍もない痛みと魔力の迸りが、KUGUTUを襲う。

叫びを上げる直前、霧羽の静かな呟きが、空間を震わせた。



「【壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)】…!!」



幻想の歪みが頂点に達し、内包されていた魔力が解放され、荒れ狂う。

周囲一帯が、光と爆音に包まれるのだった……。





姫騎士の決死の一撃により、戦いに決着がつきました。

勝利したのは姫騎士か? それとも邪悪な魔導書か?

全ては、物語の続きをお楽しみに……

ねぎFate 姫騎士の運命
ねぎFate 姫騎士の運命 第五話

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