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ねぎFate 姫騎士の運命 第五話 投稿者:ガーゴイル 投稿日:04/09-04:57 No.192

森の向こう――霧羽とKUGUTUが戦いを繰り広げている場所――から、凄まじい光と爆音が迸った。

「――今のは!?」

「急ぐアル!」

「無事でいてくれでござる、霧羽殿!」

ネギと楓とくーは、全速力でその場に向かった。

――ちなみに、ネギは楓におぶさっていたりする。

関係無いか……。





ねぎFate 姫騎士の運命 第五話





――其処は、まるでこの世の災害が一度に訪れたかのような、荒れ果てた土地だった。

木々は根こそぎ吹き飛ばされ、その悉くが真まで炭化し、大地は隕石でも堕ちたかのように大きく陥没し、大小さまざまな岩礫が地表を覆っていた。

――動くものは炎以外、何一つ無い。



……ガラ…



比較的大きな瓦礫が、僅かに動く。

二回、三回と小さく揺れ動くと、その反動で一気に大きく揺れ動く。

ドスン、と地響きを立てて、瓦礫が地面に転がった。

その下から這い出て来たのは……



『………ハァ……ハァ………』



――精霊【KUGUTU】。

仕立ての良さそうな紫のスーツはボロ布と化し、緑髪は煤に塗れ、半分以上が熱にやられていた。

端正な顔は火傷に覆われ、右目が潰れ―――そして、左腕が根元から無くなっていた。

『……くっ!』

忌々しげに、KUGUTUは呻きを漏らし、左腕の付け根を押さえた。

ズルズルと足を引き摺り、KUGUTUは歩みを進める。

――その先には、



泥に塗れた霧羽の姿。



咄嗟に防御した所為か、目立った外傷は無い。

衝撃を受け、気絶しているだけである。

『………殺してやる』

ぼそりと、呟く。

『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる―――殺してやるッ!!』

幽鬼の如き形相で、狂ったように同じ言葉を繰り返し叫ぶ。

そして、気絶している霧羽の首に右手を掛け――持ち上げる。

そのまま、ゆっくりと力を籠めて行く。

――じわじわと、甚振るように。

気絶している霧羽の顔が、苦しさを感じ、歪んだ。

『人間が……たかが人間が、僕に何をしたッ!? 只じゃ殺さない。死なない程度に首を絞めて喉を潰してから、手足を切り落として目玉を抉り出して……残酷に犯してやる! ――そのまま子宮を抉り出して、目茶苦茶に引き裂いてやる!!』

完全に狂気に染まったKUGUTUは唾を飛ばしそう叫ぶと、渾身の力で喉を潰しにかかったのだった。





「――見えたアル!」

先頭を走っていたくーがそう叫んだ。

「――霧羽さん!?」

駆けつけて来たネギ達の目に入った光景は――首を絞められている霧羽の姿。

「―――霧羽殿!」

霧羽の危機に反応し、楓は懐からクナイを取り出し、投擲の構えを取る。

――しかし、そのクナイが放たれる事は、無かった。





『ヒャハ、ヒャハハハハハハハハ――は?』



―――ザク…!



突然、天を裂いて虚空から飛来した剣刃が、KUGUTUの右腕を斬り落とした。

地に突き刺さるは、刀身が黒く輝く大陸風の短い剣。

一瞬、KUGUTUは何が起こったか解らなかった。

地に転がり、瞬時に霧散する右腕だった物と、焼け付くような痛みが彼を現実に引き戻した。

絶叫を上げる前に、蒼い影が霧羽とKUGUTUの間に割り込み、KUGUTUを思い切り蹴飛ばす!



―――ズガン。



腹に響く重低音が、空間を振るわせる。

岩壁に叩きつけられるKUGUTUには見向きもせず、蒼い影は霧羽を優しく抱きかかえた。



「――危ない所でした」



心底ほっとした表情で蒼い影――アルトリア――は、そう呟いた。

その姿は、銀の鎧を身に纏い、完全武装状態である。

「……全く、この子は何時も心配ばかりかけさせて…。――無茶をしたら駄目と、何時も言っているでしょう…」

ボロボロの霧羽を抱き締め、アルトリアは震えた声で、優しくそう言った。

――騎士王である前に彼女は、一人の母親なのだ。

見掛けはボロボロだが、命に別状は無い。

本当に、良かった。

「――アルトリア、霧羽は大丈夫か?」

紅い聖骸布の外套を羽織った士郎が、木の上から降りてきた。

「ええ。命に別状は有りません。――しかし、やはりシロウの子供ですね。本当にこの子は、無茶をする」

「それは、アルトリアも同じだろう?」

結論、両方に似ています。

『……ぐはぁ…』

呻き声を漏らしつつ、岩壁に埋まっていたKUGUTUが立ち上がりかけた。

両腕を失って尚、その魔力は衰えを知らない。

――いや、憎しみが倍増した分、禍々しさが極度に上がっていた。

『……くそがぁ』

「――シロウ、キリハをお願いします。アレは、私が片付けます」

「任せた」

怒りに満ちた視線で、KUGUTUを睨みつけ、アルトリアは抱えていた霧羽を士郎に渡した。

――アルトリアも、士郎も怒っていた。

可愛い一人娘を痛めつけた罪は、万死に値する。

その手に不可視の剣を携え、アルトリアは言い放つ。

「如何やら、私達の娘がお世話になったようですね。――その罪、極刑に値します」

構え、その驚異的身体能力を以って、一気に間合いを詰める。

『………ガアァァァァッ!』

岩で創り上げた巨大な腕を振り回し、KUGUTUもアルトリアに襲い掛からんと、猛スピードで突進してくる。

愚の骨頂なり。



ドス。



KUGUTUの身体が硬直した。

――その背中から、目には見えないが風を纏った刃が、生えていた。

「――風王結界、解放」

アルトリアの静かな声が、KUGUTUの耳朶を打つ。

――風王の名に相応しき、暴虐なる嵐の刃が、体内で解放された。

一瞬で肉体の内から斬り刻まれ、その身は微塵に砕き斬られる。

声を出す暇も無く、KUGUTUは極砕に散った。

――悠久の時を生きた魔導書の一冊が、滅びた瞬間であった。





「「「……………」」」

その光景を始終目撃した三人は、呆気に取られていた。

不可視の剣を振るう騎士王。

その背後に佇む正義の味方。

――この子在ってこの親在り、といった所か。

「――そんな所にいないで、出てきなよ」

そんな三人を見越したかのように、霧羽を抱えた士郎が、言った。

三人は、少し驚き、静かに茂みの中から姿を現した。

「大丈夫か、三人とも? 他の子たちは?」

心配そうに言う、士郎。

「一足先に、地上に戻ったでござる。――霧羽殿の容態は大丈夫でござるか、先生?」

「ああ、大丈夫だ。気絶しているだけで、外傷は全く無い。――ホント、毎度毎度心配かけさせやがって……」

愚痴りつつも、その顔は何処かほっとしているようだった。

「――さて、全員揃った事ですし、地上へと戻りましょう」

宝具を戻したアルトリアが、皆にそう言った。

「じゃあ、エレベータまで案内……」

「その必要はありません」

ネギの言葉を遮り、アルトリアはつかつかと森の傍の大きな岩に近付き――蹴飛ばした。

岩の後ろには――



「教職員用のエレベーターです。通常の三倍のスピードで、地上へと戻れます」



赤い装飾が施された、無駄に豪華なエレベーターが有った。

「――さあ、戻りましょう」

さっさとエレベーターに乗るアルトリア。

他のメンバーは一瞬躊躇するが、背に腹は変えられんと、大人しく其れに乗った。

……加速する際のGで、一瞬意識が飛びかけたそうである。





余談。

「――あ、序でに私達も、勉強会に加わりますので、宜しくお願いします」

この台詞を聞き、漸く復活した霧羽は再び気を失った。

……悪夢と呼ぶに相応しい勉強会が、始まったのであった。  





――そして、あっという間にクラス成績発表日。

結論から言おう。

――駄目でした。

ブービーの発表と同時に、会場を出る二つの影。

ネギと――明日菜である。

ネギは故郷に帰るべく、麻帆良から出ようとするが、明日菜に引き止められた。

明日菜の必死な言葉、そして後から追いかけてくるバカレンジャーと図書館探検部の二人。

合わせる顔がないと、ネギは駆け出す。

それを止めたのは――



「……さようなら、私の人生…」



絶望塗れの顔で、樹に縄を掛け首吊りスタンバイ状態の霧羽の姿である。

「――き、霧羽さん!? 一体何やってるんですか!!?」

「離して、ネギ君! もう……もう駄目なの。あの苦しみを受けるぐらいなら死んだ方がマシよ! つーか死なせろッ!!」

テンパッてる所為か、若干性格が変わっている霧羽。

血の涙を流している。

……前回死闘を潜り抜けた猛者と、同一人物とは到底思えない。

――その場に居る全員で、霧羽を止めるのであった。

余談ではあるが、この後ぽかミスをやらかした学園長は、黒鍵片手の霧羽に迫られたそうである。

自業自得である。

この後発表は訂正され、原作どおり、見事2-Aは総合一位と為り、ネギは晴れて正式な先生となった。

めでたしめだし。





――序に、実際の彼女の平均点は72点だったと追記しよう。

しかし、



「――確かに、テストの点については褒めて上げましょう。しかし、それ以外については別です」

「――……は?」

「夜中に家を抜け出した上に、無断外泊。その上、どこぞの賊との大立回り……1歩間違えれば死んでいたかも知れないのですよ。親に心配ばかりかけさせて………よって、お仕置きです」

「み、ミギャニャアアァァァァァァァァ―――ッ!!」



……哀れすぎて言葉も出ない。

ちなみに士郎のお仕置きは、【お説教三時間+小遣い無し】だったそうである。

所帯染みてるぞ、士郎。





現れた闇を、見事打ち払った姫騎士。

しかし、これは始まりでしかなかった。

更なる闇が、学園を襲う。

運命は、彼女の味方となるのでしょうか?

さて、どうなる事やら。

ねぎFate 姫騎士の運命
ねぎFate 姫騎士の運命 第六話

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