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ねぎFate 姫騎士の運命 第八話 投稿者:ガーゴイル 投稿日:04/09-05:00 No.195


「――まさか、プライドが高いお前が誰かに仕えてるとは……正直、意外だったぜ」



グルゥ。



龍朝の驚いたような言葉に、庭先に停めてあるダイダロスがどういう意味だ、と言うニュアンスを含んだ相槌を返した。

――衛宮家の縁側で、言葉を交わすバイクと白衣の少年。

何かシュールだ。





ねぎFate 姫騎士の運命 第八話





「――しかし、久し振りだね龍朝君。博士は元気かい?」

西瓜(近所でハウス栽培している園芸農家部の頂き物)の皮を皿に戻しつつ、士郎が言う。

龍朝は、大袈裟に肩を竦めて答えた。

「元気すぎて困ってますよ。――今度は、666種の武装を装備した美少女魔法メイドロボを創るって張り切ってましたよ……あと百年はくたばりそうにありませんね」

嫌な爺さんだ。

「けど、まさかダイダロスの主があの【ハナタレ霧ちゃん】とは…世も末だな……しかし、随分顔が変わったな。整形したのか?」

「その話は止めてよ、龍兄さん。……後、素直に美人になったね、とか言えないの!?」

「自分で言うなよ」

心底面白そうに言う龍朝とは対称的に、霧羽は苦虫を噛み潰したような顔で言った。

実はこの二人、所謂幼馴染である。――たった一ヶ月ほどの付き合いだったが。

五年前、ダイダロスを受け取りに行った際、暫しの間その地に留まり、仲良くなったのだ。

二人の関係を一言で表すなら、【兄妹】。

霧羽は龍朝を兄と呼び、龍朝は霧羽を妹として扱う。

――実際、龍朝の実家は大家族で、兄弟姉妹だけでも二十はいたりする。

その兄弟姉妹たちとも、仲良くなった霧羽。

引越しの日は、全員大泣きした。

今では良い思い出である。

「しかし、凄いな霧羽。ダイダロスを維持するにはかなりの魔力が必要なんだけど、全然問題無いみたいだな。お前なら、ダイダロスを任せられそうだ」

感心する龍朝。

どんなもんだい! と霧羽は小さく胸を張るが、ぺしっと即座にアルトリアの叩きが入る。

「調子に乗らない。全く、魔力と態度だけは一人前なんですから……」

呆れ混じりに言うアルトリア。

今度は種が付いてます、奥さん。

「やっぱ、まだまだだな。――まあ、其れはいいとして。助かったぜ、霧羽。兄ちゃん此れが無かったら、明日から塩と水だけの生活だったぜ…」

その手に強く握られるのは、茶色の財布。

前回、霧羽が拾ったヤツだ。

お察しの通り、龍朝の落としたヤツだった。

――ご都合主義万歳。

「相変わらずどっか抜けてるね、龍兄さん…」

「お前に言われたくない、この大間抜け娘」

憎まれ口をたたき合う二人。

――その時、



じりりりりりりーん!



電話が鳴った。

今時珍しい、ダイヤル式の黒電話。

衛宮家は、妙な所でアナクロなのだ

「あ、私出るね」

食べかけの西瓜を皿に置き、霧羽は家の中へと戻った。

残されたのは、三人と一体のみ。



――僅かに、空気の色が変わる。



「――で、用件は何だい? 龍朝君」

穏やかな口調だが、油断できない真剣な表情になる士郎。

「ダイダロスの様子を見に来たのが序で。――で、本題は…」

そう言って、龍朝は懐から掌ぐらいの小さな包みを取り出した。

精密な物なのか、慎重な手つきで士郎に渡す。

「ダイダロスの新装備――Dimension Distortion Gate……略して【DDG】システムです。此れを届けに来たのが、二つの本題の内、一つです」

日本語に訳すと、【次元歪曲門】システム。

この世界の魔法に、転移魔法というのがある。

自らの得意属性の物質――水や影――を媒介にし、空間を飛び越える魔法だ。

極めて高度な高い魔法であり、余程の実力者でなければ使うことの出来ない魔法である。

――【DDG】システムとは、その魔法を元にした魔法科学の最新技術。

強大な魔力で強制的に次元空間を歪ませ、目的地への移動を可能にした画期的な技術。

――しかし、その技術は未だに完成していない。

何故なら、この方法では搭乗者が次元の歪みに囚われ、死亡してしまうからだ。

――よって、この技術は誰も使う事の出来ない、未完成の技術なのだ。

「――確かに、人が乗ってる時には使えないでしょうけど、乗っていない場合は別。ダイダロスは自我を持った【知なる使い魔騎】……一切のリスクを負う事無く、使用できます」

確かに、プログラム生命体であるダイダロスなら、次元の歪みの影響を受ける事無く、門を潜る事が出来る。

「説明書を確り読むように、あの馬鹿に言っといて下さい」

更に、【DDGの正しい使い方】と丸字で書かれた分厚い冊子を、士郎に手渡す。

「…一応言ってみる。無駄だと思うけど」

苦笑する士郎。

「――それで、もう一つとは?」

今まで黙っていたアルトリアが、口を開いた。

訊かれた龍朝は、苦い顔で、重々しく言った。

「……新学期になれば、解りますよ」





「う~~ん……」

暫し経ち、霧羽が戻ってきた。

眉を額に寄せ、思案している顔だ。

珍しく、霧羽は悩んでいた。

「…如何した? 珍しくそんな顔をして――何かあったか?」

新たな西瓜を包丁で切りつつ、士郎が心配そうに言う。

「まぁ、大した事じゃないんだけどね…」

苦笑しつつ、霧羽はアルトリアの隣に座り、残しておいた西瓜に齧り付いた。

「電話、誰からでしたか?」

「ん~、楓ちゃんからだったよ」

西瓜に視線を向けたまま会話する、食欲母子。

それを見て、龍朝は顔を少し引き攣らせた。

「…何時もこうなんですか?」

「食事時は、ね。二人とも食べ物を目の前にすると、其れに全神経を集中させちゃうんだよ」

仕方が無いな、と笑って言う士郎。

何となく、龍朝はこの食欲魔神の被害に遭っている正義の味方に、少し同情した。

「――あ、そうだ。お父さん、お母さん、序に龍兄さん。私明日ね――」

何でもない風に霧羽は笑顔で――



「――決闘する事になったから」



――ぶっ放した。



ザク。

ぶー!

ぽと…



手元が狂い、西瓜ごと俎板を真っ二つに切り裂いて硬直する士郎。

驚きの余り、西瓜の種と実を噴き出す龍朝。

食べ終わった西瓜の皮を地面に落とし、口を開けて固まるアルトリア。

……ダイダロスはガレージに帰って寝ているので、この場には居ない。

――微妙な沈黙が、辺りを支配する。

「「「――決闘!?」」」

数拍置いて、固まっていた三人は同時に叫んだ。

当の張本人は涼しい顔で、

「うん。楓ちゃん、私と戦いたいんだって」

そう、のたまった。

また面倒な事が……

娘のそのあっけらかんな仕草に、頭を抱える三人だった。





「――ふう」

役目を終えた携帯をしまい、楓は一息を吐く。

現在彼女が居るのは、寮の自室。

同居人である鳴滝姉妹は、まだ戻っていない。

「明日午後三時――裏山で、でござるか…」

先程、霧羽とやり取りした内容を脳内で反芻し、楓は誰に言うでもなく、呟いた。

「……ニンともカンとも、厄介な性分でござる…」

強いやつと、闘いたい。

戦闘者の持つ、本能ともいえる欲求。

楓に限らず、闘いに生きる者なら、大なり小なり持っている性分。

「…しかし、楽しみでござるな」

糸のような目を更に細め、魅惑的に呟く楓。

――彼女も、根っからの戦闘者なのだ。

その時、



「ただいま~」

「ただいまです…」



同居人である、風香・史伽姉妹が、戻ってきた。

「お帰りでござる」

瞬時に表情を何時ものに戻し、楓が言った。

――しかし、直ぐに眉を顰め、言った。

「――如何したでござるか? 二人とも、顔が真っ赤でござるよ」

目敏く、言った。

瞬間、二人の顔は更に赤くなった。

「な、な、何言ってんだよ楓姉!? べ、別に何でもないよ!」

「そ、そ、そうです! 別に何でもないです!!」

あたふたと慌てて、否定する風香と史伽。

全く説得力が無かった。

暫し思案し――そして、楓は成る程といった表情で、言った。

「――好きな男の子でも、出来たでござるか?」

楓の言葉に二人は、あう~、と不明瞭な呟きを漏らした。

「そうでござるか。――成る程、それはめでたい。今日はお赤飯でござるな♪」

それは違うぞ。

「「楓姉ぇぇぇ―――っ!!」」

楽しそうに言う楓に、双子は半分涙目で突っ込みを入れるのだった。





蒼い砂漠に、黒い空。

宝石の如く輝く星々に、黄金の光を放つ満月。

地上にて輝く天の川。

蒼き砂に突き立てられた無数の武具。

――霧羽が何時も夢に見る、幻想的な風景。

その真ん中に、霧羽は立っていた。

――明日、私は楓ちゃんと闘う…

自分でも、解らなかった。

何故、彼女の挑戦を受けたのか。

――嫌だなぁ…

霧羽は優しい子である。

しかし、同時に――

――けど、楽しみでもあるんだよね…

闘いを、楽しむ子供だった。

勿論、先日のような闘いではない。

互いの強さをぶつけ合い、磨き合う闘い。

魂のぶつかり合いに、喜びを見出す。

――やっぱり私って、バトルジャンキーなのかな…

少し、自己嫌悪。

顎に手を当て、考え込む霧羽。

しかし、直ぐに止める。

何故なら、



――あれ?



首を傾げ、霧羽は辺りを見回した。

――何か、武器が増えてるような…

そう、その通りだった。

毎回のように同じ夢を見る霧羽は、砂漠に突き立った武器の姿を克明に記憶していた。

何時の間にか、見慣れた武器に混じって、見慣れない武器が幾多に連なって突き刺さっていた。。



捻れた剣、紅い槍、聖なる光を帯びた西洋剣、血に濡れた日本刀、岩の如き斧、巨大な鎚、金色の鎖……



見た事も無い筈なのに、何故だか懐かしい感じがした。

――…ああ、これって弓兵さんの知識だ……

霧羽は気付いた。

此れ等が、あの戦いの時自らが取り込んだ、紅い弓兵の残滓なのだと。

――誰、だったのかな?

今更ながら、疑問に思う霧羽。

――常世の砂漠で、少女は再び考えに耽る。

もう直ぐ、現実では夜が明ける。

日が昇れば、少女等は闘う。

自らの力を、試す為に。





「――はい、はい……解りました。では、新学期からという事で。……それで、俺の住む所なんですが―――えぇ!? 女子寮の空き部屋!!? 一寸不味いんじゃ……まぁ、職業柄見慣れてはいますが、それはあくまで仕事―――って、それと此れとは別ですよ!! つーか、倫理考えろ! 兎に角、俺は御免ですよ…………うっ、痛い所を…。確かに、万年金欠の俺に賃貸住居を借りる余裕なんて――女子寮に入れば家賃は只? ――このクソ爺、一回死んで来い!!」

最後にそう怒鳴ると、龍朝は乱暴に携帯の電源を切った。

如何やら、かなり機嫌が悪いらしい。

「あの爺も無茶苦茶な――男の俺に女子寮に住めだと? 確かに、医者が常駐してりゃ便利だけど、限度があるだろうに」

大きく、溜息。

「こりゃ、新学期から苦労するかも……」

仄かに冷たい夜風に当たり、龍朝は縁側に横たわり、しみじみと言うのであった。





『――先ずは、資金調達から始めませんと…』

【マイスゥィートハニー・ラブハートゲットアタック計画 ver5.83】と書かれたノートを閉じ、ヘダタリは独白する。

今彼が居る所は――



『流石に、惨め過ぎますからね…』



土管の中だった。

広場の近くにある、空き地の土管。

其処が、ヘダタリの潜伏地だった。

時々遊びに来る野良猫たちと、すっかり仲良くなっていた。

『――しかし、この程度で私の愛は挫けません! 待っていて下さいね、マイエンジェ―――ル!!』

ヘダタリの愛の炎は更に燃えていた。

そして、ヘダタリの危ない叫びが、夜の町に木霊した。

――同時刻、入浴中だった某真祖の少女の背に寒気が走った事は、言うまでも無い。





――色々在ったが、夜は明け―――時刻は午後三時五分前。

裏山の、ある広場に、二人の少女が立っていた。

片方は忍者装束。

片方は男物の着流し。



「…………」

「…………」



無言のまま、見つめ合う。

――そして、



――カチ、カチ、カチ……カチリ…



長針が、十二の文字を穿った。

「――時間だね」

着流しの少女、霧羽が言う。

「――そうでござるな」

忍者装束の少女、楓が言う。



「「――じゃあ、始めよう」」



二人が同時に言うやいなや、二人は同時に駆け出した。

――闘いが始まる。





決闘――それは神聖なモノ。

魂がぶつかり、高められる儀式。

――姫騎士とくノ一の決闘の幕は、ただ今を以って切って落とされました。

皆様、最後までご静聴を……

ねぎFate 姫騎士の運命
ねぎFate 姫騎士の運命 第九話

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