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ねぎFate 姫騎士の運命 第十話 投稿者:ガーゴイル 投稿日:05/20-23:40 No.566

――新学期。
其れは、学生達にとって新たな時を告げる、節目。
出会い在り、涙在りと、悲喜交々な季節の始まり。
――そんな新学期最初の朝、主人公【衛宮 霧羽】は、

「ミニャ―――ッ!! 遅刻うぅぅぅぅ!?」

……モノの見事に遅刻していました。


ねぎFate 姫騎士の運命 第十話


「ひぇ~~~ん! 初っ端から大失敗だよぉ…」
トーストを口に咥え、半泣きの霧羽。
何故彼女が本日寝坊したかというと……

「――シロウ、あーんして下さい♪」
「あーん♪」

後ろから聞こえてくる、朝っぱらから惚気全開のこの夫婦が原因である。
先日、帰宅した士郎の背広からキャバレーのマッチが出てきたのが、事の始まりだった。
士郎は、「せ、瀬流彦先生から貰ったんだ!」、と容疑を否認。
――しかし、ブチ切れたアルトリアは耳を貸さず、「この浮気者!!」、と問答無用で斬りかかって来た(ちなみに得物は出刃包丁です)。
――第二百四十三回(霧羽が覚えている限りの数。下手したらもっと)、衛宮家夫婦戦争の始まりだった。
――闘いは、熾烈を極めた。
銃弾の如く撃ち出される剣群、空を割く怒涛の斬撃、空中を飛び交う夫婦剣と辺りに爆炎を撒き散らす螺旋剣、止めに全てのモノを吹き飛ばす最強の極光(弱ver)……
咄嗟に結界張んなきゃ、街が半分消えていたかもしれない。
霧羽は文字通り命がけで、その夫婦喧嘩の仲裁を行っていたのだ。
正に彼女は、英雄と言ってもいい。
――結局、戦争は明け方まで続き、士郎の「――俺が愛しているのは、お前だけだぁ―――ッ!!」という魂の叫びが、アルトリアの心を揺さぶり、終戦となった。
そのまま、人外夫婦はイチャイチャモードに入り、娘はやってらんねぇとばかりに眠りについた。
――結果、霧羽は寝坊。
夫婦はそのままずっと朝までイチャイチャしていたらしく、朝食が用意されていたのが唯一の救いだった。
「お父さんとお母さんの馬鹿―――ッ!!」
のっけから不幸ですな、霧羽さん。


「お願いダイダロス! 今日だけ乗せてってぇ~~」
目からだばだば涙を流し、懇願する霧羽。

……ガウゥ…

ダイダロスは困ったように唸った。
この街に来た際、アルトリアに決められた制約の一つに【ダイダロスに乗って登校するのは禁止】と在るのだ。
「私が寝坊したのはお母さんが原因なんだから、良いでしょう? お願い、今日だけ乗せてって!」
パンと手を合わせて、霧羽はダイダロスを拝み倒す。
余りにも哀れなので、ダイダロスは、

ガウウ……

仕方ないな、というニュアンスを含んだ唸りを返し、エンジンに火を燈した。
「やりぃ♪ 有難う、ダイダロス!」
パンを口の中に押し込み、脇に抱えていたヘルメットを被る。
シートに身を収め、目の前のハンドルを握った。
「全速力かつ安全運転でお願いね。人身事故は勘弁よ、ダイダロス!」

……グルルルル…

当然だ、と霧羽に自信満々で答えるダイダロス。
――数秒後、再び街に【銀色の麻帆良の風】が、吹き荒れた。


「――3年! A組!!」

『――ネギ先生ーッ!!』

クラスほぼ全員の唱和が、クラスに響いた。
今日は、しつこいようだが新学期。
同時に、ネギが正式教員として働く最初の日でも在るのだ。
「――あれ? 霧羽、如何したの? えらくボロボロだけど……」
「うん、ちょっとね……(またダイダロスがエキサイトして、今度は土木石切り同好会の石切り場に突っ込んじゃったんだよね…)」
微妙な笑顔で明日菜に答える霧羽。
その微妙な態度で察したのか、あんたも大変ね、と労いの言葉をかける明日菜。
苦労人・馬鹿という共通項が有る所為か、妙な連帯感を感じる二人だった。
――前方の教壇では、見事に墓穴を掘ったネギが、何人かの生徒にからかわれる姿が……


「あれ――? 今日、まきちゃんは?」
「……さあ?」
何時も元気な天然娘の姿が見当たらず、ハルナは首を傾げた。
隣にいるのどかも、同様だ。
「まき絵は今日身体測定アルから、ズル休みしたと違うか?」
直ぐ傍にいたくーが、茶化すように言った。
「まき絵、胸ぺったんこだからねー」
「…お姉ちゃん、言ってて悲しくないですか?」
ナハハ、と朗らかに自爆する姉に、肩を落として突っ込む妹。
未だにブラ要らずの、鳴滝姉妹である。
「別にそう気にする事でもないよ。――【女性は体型で見るものではない】って龍兄さん言ってたし、それに龍兄さんの好みって【明るく元気な性格】だから……十分チャンスあるよ、二人とも♪」
何時の間にか背後に立っていた霧羽が、二人の耳元で楽しそうにのたまった。
「「……………(///)」」
一瞬で、二人は茹蛸になった。
最近、この手の話題で二人を煽るのが、霧羽の密かな楽しみだった。
「……む!? 何処からか、仄かにラブの香りが……」
最早人外級の感覚で、ラブの気配を察知する早乙女ハルナ。
――鍛えればプロ並みの気配察知者になれるかも……?
――閑話休題。
何時の間にか話題は、最近桜通りに出るという吸血生物――もとい、吸血鬼の噂に変わっていた。
言い出しっぺの【柿崎 美砂】が言うには…

曰く、満月の夜に現れる。
曰く、黒いボロ布を身に纏っている。
曰く、血塗れである。

…そこはかとなく胡散臭さ大爆発だ。
――何時の間にか、まき絵がその吸血鬼に襲われたのではないか? とまで話が飛躍していた。
……呑気な奴等である。
一人明日菜が、その突っ込みを入れ続けた。
「――ねぇ、霧羽は如何思う?」
不意に、霧羽に話を振る明日菜。
「ほえ? 吸血鬼の話? うーん、そうだねぇ……」
体重計に乗ったまま、霧羽は何でもないように答えた。
「居るんじゃない? 世界は広いんだし」
あっさりとした物言いに、一瞬皆は唖然とした。
「――まぁ、吸血鬼って言っても、ピンからキリまであるんだし。今の所は表立った騒ぎにはなっていないけど、あんまり茶化すのも良くないよ」
計測結果を書き込み、指を立てて【いけませんよ】のポーズを取る霧羽。
ちなみにこのポーズは、母仕込である。
「……お前の口振りからすると、お前が吸血鬼に詳しいように聞こえるのだが…」
その時、今まで黙っていた少女が口を開いた。
金髪の一際幼く見える少女。
――【Evangeline.A.K.McDowell】、その人である。
「別にそういう訳じゃないよ。吸血鬼って世界的に有名で、各地に似たような伝承が残ってるから――少し本を読めば、簡単に解る事だよ?」
エヴァンジェリンに、そう笑顔でいう霧羽。
「ニンニク関連の起源は古代エジプトから、十字架関連はキリスト教から、吸血に至っては世界中の古代部族に多く共通する思想――つまり【血液とは生命なり】という思想から生まれた……。他にも東欧や中東、南米、はたまた豪州の文化の影響を受けた事例もあるわ。これ程ポピュラーで、世界各地に多く残されている伝説は、そう無いと思うよ」
うんうんと感心気に頷く霧羽。
――周りの皆は……呆然としていた。
「まぁ、聞きかじりだから、信憑性は……何で皆、私を見て呆けてるの?」
訝しげに、霧羽は問う。
「……ええっと、まぁ…」
「霧羽ちゃんって、頭悪いかと思ってたけど……」
「そうでもないんでござるな」
「驚きアル」
上から、明日菜・ハルナ・楓・くー……
他の皆も、似たような表情で頷いていた。
「……酷いよ、皆してまるで私がお馬鹿さんみたいな言い方してッ!!」
『いや、実際そうだし』
曇り一つ無い巨大なハモりに、霧羽は半泣きで絶叫するのだった。
「……ふん」
話題を振ったエヴァンジェリンは、くだらなそうに、鼻で笑った。
――その時、保健委員の【和泉 亜子】が慌てて教室に駆け込んできたのだが、教室内で泣き叫ぶ霧羽を見てネギ共々暫し硬直したそうである。


「……外傷は特に無い。少々貧血気味な所を除けば、全くの健康体だ」
カルテを閉じ、新学期から女子中等部専任保険医として学園に就職した龍朝が、静かに言った。
目の前のベットには、当事者であるまき絵が眠っている。
別段異常は無く、安らかな寝顔だ。
駆けつけて来たクラスの生徒達は、安堵し胸を撫で下ろした。
――いや、若干二名が険しい顔つきのままだ。
ネギと霧羽である。
「……ネギ君、此れって…」
「ええ。ほんの少しですけど…確かに【魔法の力】を感じます…」
――生徒達が教室に戻っていく中、二人はその場に留まり続けた。
「…お前等も気付いたか」
――人気が無くなったのを見計らって、険の表情で龍朝は言った。
「――見ろ。首筋に犬歯による刺し跡が残っている。……十中八九間違い無い」
首筋のある箇所を指差す龍朝。
其処には、薄らと赤い刺し跡が残っていた。
「――って事は……」
「――ええ」
ぼそぼそと会話する三人。
――其れを、その場に残っていた明日菜が訝しげに見咎めた。
「ちょっと、三人とも何こそこそしてるのよ」
「――あ、御免御免。アスナちゃん」
気付いた霧羽が、愛想笑いを浮かべつつ謝罪。
「佐々木の事なら心配要らんぞ。只の貧血だ」
此方も愛想笑いを浮かべる、龍朝。
「――あ、其れとアスナさん。僕、今日帰りが遅くなりますので、晩御飯いりませんから」
最後に当然のように愛想笑いを浮かべ、締め括るネギ。
――何処か奇妙に思いつつも、明日菜は其れを承諾するのだった。


――そして、夕刻。
友達と別れたのどかは、一人家路についていた。
――奇しくも、桜通り。
こわくない、こわくないと歌うように呟きつつ、早足で進むのどか。
――しかし、運命とは意地悪なものだ。

彼女の目前に――黒い影が出現した。

街灯の上に佇む其れは、二ィ、っと口の端を歪め、
「27番【宮崎 のどか】か……。悪いけど、少しだけその血を分けてもらうよ」
――黒い外套を翻し、猛禽の如く襲い掛かる!
のどかが悲鳴を上げたその瞬間――

「―――待てーっ!!」

「――!!」
一つの影が、その場に飛び込んできた。
――ネギである。
既に杖を携え、呪文も準備段階に入っており、戦闘状態である。
――件の吸血鬼を押さえる為、見回っていたのだ。
「ぼ、僕の生徒に何をするんですか――っ!!」
その言葉を合図に、その場に魔力の嵐が吹き荒れた。
――ちなみに、のどか嬢は恐怖が限界を超えたらしく、気絶した。
ご都合主義万歳(再び)。


「――魔力!? しかもこの感じ……ネギ君!」
少し離れた場所を見回っていた霧羽は、遠くから感じる魔力の奔流に驚愕した。
恐らく、ネギが例の吸血鬼と接触し、戦闘を始めたのだろう。
「――急がなくちゃ」
しかし如何する?
強化した足を以っても、現場に着くには時間がかかる。
――如何すれば…
「――そうだ! ダイダロスの新機能!!」
先日装備されたダイダロスの新機能を思い出し、霧羽はぽんと手を打った。
――思い立ったら即行動。
胸を反らし、大きく息を吸い込む。
――そして、叫ぶ。
自らの、使い魔の名を。

「……“ダイダロス”―――ッ!!」

声は、夜空の彼方に響いていった。


――衛宮家、ガレージ。
その中で眠っていた鋼鉄の獣が、目を覚ました。
――魔力を帯びた、主の勅命を聞き。
忠実なる鋼鉄の狼は、すぐさま行動を始める。
魔力炉に供給された膨大な魔力を注ぎ、全回路を最大限に活性化。
電子脳により、主の現在地を特定。
座標を即座に記憶し、再び演算を開始。
空間軸、座標軸、次元門作成プロセス……
様々な計算を開始し、終了させる。
――全てのプロセスを消化。後は……

……グルルルァァァァァァッ!!

――実力行使あるのみ!
ダイダロスの力ある遠吠えに呼応し、空間が魔力に侵食され、捻じ曲がる。
――数秒も経たずに、目の前に【穴】が出現した。
虹色に輝く、不安定な穴。
【次元歪曲門】――その物である。
出来上がった其れの中に、ダイダロスは躊躇せず飛び込んだ。
――主人の命を、果たす為に。
ダイダロスは、主の待つ所に往くのであった。


「――来た!」
ダイダロスが穴に飛び込んで二秒後――霧羽の目の前に、穴が出現した。
【次元歪曲門】である。
――中から、銀の装甲を持つ獣が、現れた。
知なる使い魔騎、【ダイダロス】。
――主の命に、馳せ参上仕ったのだ。
「――ありがと、ダイダロス! ……時間が無いから、さっさと往くわよ」

……ガオッ!

気合の入った主の激を受けて、ダイダロスは己が鋼鉄の車輪に、溢れんばかりの魔力を送る。
――最大速度を、出す為に。
霧羽はそんなダイダロスに笑みを送り、
「――GO AHEAD! ダイダロス!!」
鋼鉄の騎馬に騎乗した、戦女神の出撃。
――其れを祝福するように、月も一際輝いていた。


「――僕の呪文を全部跳ね返した!?」
目の前の光景に、ネギは驚愕した。
――犯人が魔法使いである事に。
そして――

「…驚いたぞ。凄まじい魔力だな……」

――その魔法使いが、自分の教え子である事に。
大きく、驚愕した。
「えっ……! き、君はウチのクラスの……エ…エヴァンジェリンさん!?」
のどかを抱えたネギは、信じられないというように、叫ぶのだった。
しかし、目の前の犯人……エヴァンジェリンは楽しそうに目を細め、
「フフ…。新学期に入った事だし、改めて歓迎の挨拶と行こうか、先生………いや、ネギ・スプリングフィールド」
先ほどの攻撃で、指を切ったのか、指から血が垂れている。
――その血液を赤い舌で舐めとり、
「十歳にしてこの力……。流石に、奴の息子だけある」
――不敵に、笑みを浮かべるのだった。


――同時刻、桜通りの桜の木の上。
其処で、一人の男が、闘いを静観していた。
「――成る程、あの少年が我が愛しき人の狙い…」
ヘダタリである。
何時になくシリアスだが、脇に置いてあるデジカメと望遠カメラが、全てを台無しにしていた。
「――しかし、何処かで見た事のある少年ですね……?」
――十絶書一の策士【ヘダタリ】。
余り知られていないが、彼には一つ致命的な弱点がある。
其れは…

「――ま、別にいいです。其れよりもマイラヴァーの事が……」

一つの事に集中すると、他の全部を忘れてしまう。
――例え其れが、重要任務でも。
……マジモンのあほである。


――さて、今回は真祖の魔法使いの登場と相成りました。
彼女等の織り成す、運命の協奏曲にご期待を。

ねぎFate 姫騎士の運命
ねぎFate 姫騎士の運命 第十一話

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