HOME  | 書架  | 

当サイトは「魔法先生ネギま!」関連の二次創作投稿サイトです。ネギま!以外の作品の二次創作も随時受け付け中!

書架

[]

ねぎFate 姫騎士の運命 第十四話中編 投稿者:ガーゴイル 投稿日:05/21-19:08 No.576

焔が、燃え盛る。
空に生まれた焔が地に堕ち、荒々しく燃えているのだ。
その赤き焔を、宙に浮かんだヘダタリは無感情な瞳で見つめていた。
「死んだか、其れとも生きているか………まあ、どっちでもいいでしょう。例え生きていたとしても、時間稼ぎにはなりますから」
焔を一瞥し、ヘダタリは踵を返す。
「――では、戦場でお会いしましょう。御機嫌よう、Ms.衛宮……」
空間を繋ぎ、ヘダタリは何処かへと姿を消した。
――焔は、その後も変わらずメラメラと燃え続けた。


ねぎFate 姫騎士の運命 第十四話 中編


「――死ぬかと思った」
案の定、ちゃっかり生きていた霧羽。
彼女は、直ぐ傍の茂みの中に隠れていた。
幸いにも身体に外傷は無く、煤だらけではあったが、行動に支障は無い。
ヘダタリの“界刃”が炸裂する直前、ダイダロスが全力で魔力障壁を展開し、被害を最小限に留める事が出来たのだ。
しかし……
「――ダイダロス、大丈夫?」

……グォォ…

完全には防ぎきれず、ダイダロスの後部ユニットが完全に断ち切られていた。
幸いにも、電脳や動力系統は無事であった
しかし、此れでは走行する事もままならない。
「……仕方ない。ダイダロスは先に戻ってて。此処から先は―――私一人で行く」
汚れを払い、霧羽は立ち上がった。

……グルゥ…

心配そうなダイダロスに、霧羽は大丈夫、と笑顔で答えた。
「私一人じゃないから――……ネギ君達も一緒だから、大丈夫だよ」
回路を起動。
脳内で、硝子球が弾けるイメージが展開される。
回路に魔力が循環し、腱や骨を強化していく。
――そして、

「――GO AHEAD!」

弓から放たれた鏑矢の如く、疾く速く駆ける霧羽。
――はたして、間に合うのだろうか?


「――くぅっ!?」
“氷爆”の名に相応しい一撃を喰らい、ネギは苦悶の声を上げた。
障壁+趣味のアンティーク収集で手に入れた魔力剣で防ぐが、あっさりと凍らされ、微塵に砕かれてしまう。
激戦に次ぐ激戦の所為で、充分だった装備は最早半分以下に減らされていた。
後残っているのは、数種の魔法薬と……コレクションの杖類のみ。
――しかし、杖は杖でも只の杖ではない。
「……一か八か」
氷で張り付く髪の毛に構わず、ネギは速度を上げる。
そして、コートの裾に仕込んであった幾本もの杖を取り出した。
その数、七。
一見只の杖、しかし……
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル……」
ネギの呪文に応えるかのように、杖が光を帯びていく。
「――行け!」
声と共に、其れ等を投じる。
すると、如何だろう。
まるで意思を持っているかのように、七つの杖は縦横無尽に、夜空を舞う。
向かう先は――吸血鬼。その、背後の空間。
「――ほう…」
僅かに、感心したような声を漏らし、面白そうにエヴァは微笑んだ。
「杖から、高濃度の魔力を感知―――杖を媒体にした、魔法榴弾だと判断します」
冷静に、そう主に告げる茶々丸。
――魔法榴弾。
其れは簡単に言えば、魔力の塊其の物である爆弾。
物体に魔力を蓄積させ、起爆させる。
使い勝手が良い反面、威力が魔力の量と質に大きく左右される上に、魔力を溜めるのに長い時間が必要な為、滅多に使う者が居ない代物なのだ。
しかし、この杖等は、ネギが練習がてら魔力を蓄積してきた努力の結晶。
魔法学校時代の、修練の賜物。
ハイ・デイライトウオーカーの前では、其の威力は微々たるモノだが――
「――陽動くらいにならッ!」
其の威力は、馬鹿には出来ない。
――瞬間、杖は其の姿を失い、其の身を光へと転じる。
只の光ではない――魔力其のものを現した光である。
光は暴君の如き荒風を纏い、真祖の魔法使いと従者を呑み込まんとす。
――エヴァは其れを目の前にして尚、薄ら笑いを浮かべている。
「見習いの割には、中々如何して……だが―――」
右の手を斜に上げ、

「私には、効かん」

――揮う!
呪文詠唱と共に、エヴァの手刀から暴風を更に上回る極氷嵐が生まれ、光の嵐を覆い尽くしていく!
――数秒の後、嵐はお互いを貪り殺し、打ち消し合う。
後には、微風のみが残る。
「ふん。時間稼ぎのつもりか?」
そう言ったエヴァの視線の先には、風に紛れて加速するネギの姿、
遥か前方に在る、境界線である橋を目指して高速飛行を行っていた。
「――小賢しい。追い詰めるぞ、茶々丸」
「了解、マスター」
茶々丸を従え、更に追い討ちを掛けるエヴァ。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!“veniant spiritus glaciales, extendantur aeri tundram et glaciem loci noctis albae…『来たれ氷精、大気に満ちよ。白夜の国の凍土と氷河を……』”」
圧倒的な凍気が、エヴァの掌に収束する。
――視界に大きな橋が現れ、ネギが其れに飛び込んだ瞬間、

「――“CRYSTALLIZATIO TELLUSTRIS『こおる大地』”!!」

地を蝕む巨大な氷柱群が、ネギに襲い掛かる。
氷柱に大きく突き上げられたネギはバランスを崩し、地面に叩きつけられた。
幸い、大きな怪我は無い。
「――あぐっ!!」
――少し遅れて、エヴァと茶々丸がネギの前方に降り立った。
「ふ……成る程。この橋は、学園都市の端だ。私は呪いによって外に出られん―――ピンチになれば学園外へ逃げればいい、か………意外にせこい作戦じゃないか。え? 先生」
揶揄うように言い、不遜な態度で歩みを進めるエヴァ。
茶々丸は、その後ろに付き従う。
「う……ぐっ…」
その姿を、呻きを漏らしながらも強く見据えるネギ。
――未だ、その瞳の焔は消えていない。
「――これで、決着だ」
歩みを止めぬエヴァ。
ネギの意図には、気付いていない。

あと、一歩―――

ネギの瞳が、細まる。
そして、エヴァが最後の一歩を踏み出した瞬間――

――パシイィィィィィン!
「「!!」」

光と衝撃が、足元で弾ける。
同時に幾何学的な図形――魔法陣が展開し、其れから現れた魔力の拘束縄が、二人の動きを奪った。
――ネギが事前に仕掛けた、拘束結界である。
今までの行動は、此処に誘い込む為の布石だったのである。
――策が上手くいき、ネギは笑顔で立ち上がった。
「もう動けませんよ、エヴァンジェリンさん。此れで僕の勝ちです! ――さあ、大人しく観念して、悪い事ももう止めてくださいね!」
興奮し、勝利を確信したネギはそう言った。
――しかし…
「……やるなあ、ぼうや。感心したよ―――…ふ………アハ、アハハハッ!!」
心底感嘆し、エヴァは言い――その直後に、子供のような無邪気な笑い声を上げた。
その表情は、心底可笑しくてたまらない―――そういう表情だった。
「な、何が可笑しいんですか!? ご存知のように、この結界にハマれば簡単には抜け出れないんですよっ!」
突然笑い出したエヴァに、ネギは驚いた。
――彼は未だ、気付いていない。
その幼さ故か、自らのミスに。
全く、気付いていなかった。
「そうだな。本来ならば、此処で私の負けだろう―――茶々丸」
「ハイ、マスター」
主の命令に、従者は動き出す。
――其れが、自らの存在理由だというかのように。
「結界解除プログラム始動――すいません、ネギ先生……」
言葉と共に、茶々丸に変化が現れる。
耳部分に装備されているアンテナが、複雑に変形――そして、展開していく。
――同時に、

……ピシ…ペキ…パキ……

結界に、高速で亀裂が生じていく。
このままでは、粉々になるのは時間の問題だ。
「な……え!?」
ネギの頭に巨大な涙滴型の汗が浮き、目が驚愕で大きく丸くなった。
「……15年の苦汁をなめた私が、この類の罠になんの対処もしていなかったと思うか?」
そこはかとなく言葉にどす黒いナニカを混ぜ、吐き捨てるエヴァ。
――如何やら十五年前の事件の所為で、呪いやら罠やら結界やらには、敏感になっているらしい。
余程、腹に据えかねていたんだな……
そして――

「この、とおりだ」

結界が弾け、砕け散った。
――エヴァと茶々丸は、その身を解放されたのだった。
「――私も詳しくはわかんないんだけどな、科学の力って奴さ」
ふっ、ニヒルに笑い、言うエヴァ。
ネギは――

口と目を大きく開けて、固まっていました。

――形勢逆転。ネギ君大ぴーんち。


同じ頃、霧羽も大ピンチだった。
何故なら、

「――ああもう! しつこーい!!」

乱れ襲う空間の刃を、高速で回避し、走り続ける霧羽。
肉体強化を行使し、橋に向かったのは良いけれど―――案の定、ヘダタリと鉢合わせしちゃった霧羽ちゃん。
……不幸も此処までくれば、感嘆物である。
「――いい加減中ってくれませんか?」
「中ったら死ぬわ――ッ!」
空中に浮き、冷静に界刃を放ち続けるヘダタリに、霧羽は涙目で突っ込みを入れた。
漫才が出来る辺り、霧羽は未だ余裕かもしれない。
「――投影、開始(トレース、スタート)! ―――【聖母の加護を受けし不折の聖剣(デュランダル)】っ!!」
八節を踏み、虚空に十を超える聖剣が生み出される。
同時に、高速で射出された其れ等は、ヘダタリの胸板に向かい、突き刺さらんとするが――
「――無駄、です」
――弾かれる。
其れを見て、霧羽は、やっぱり駄目か、と舌打ちをする。
ヘダタリの作り出す見えない壁――解析した所【空間結界術】と判明――に、悉く攻撃を防がれているのだ。
其の為、霧羽の攻撃方法である、【近接格闘】と【遠距離魔術】が全く効かないのだ。
(やばい。……確かに、私の記憶の中にはあの結界を突破できる宝具は在るけど………実力不足でまだ投影できないんだよね(泣))
その通り。
弓兵の宝具の記憶を持つ霧羽は、其れこそ無限に武具を生み出す最高の工房と言っても良いだろう。
――しかし、世の中そう甘くは無い。
術者である霧羽自身がへっぽこ過ぎて、使えないのだ。
世の中って、上手く出来てるんだね♪
……何かへこたれてしまう、霧羽だった。
――しかし、直ぐに立ち直り、再び自らの中の武具を検索。
この場を切り抜ける、最適の武具を。
「…流石、KUGUTUを倒した者の娘ですね。動きがとても良い。――だが……」
ヘダタリが、指を構える。

「まだまだ、甘い」

鳴ると同時に、空間を切り割く次元の刃が出現。
しかも――
「二枚刃仕様です。一切の剃り残しも無く、削りとって差し上げます!」
横向きに撃ち出される、平行に並んだ二つの刃。
コースは、霧羽を確実に仕留める、最適なもの。
避ける事は、出来ない。
――霧羽は足を止め、刃を見据えた。
未だ諦めの色を見せない、強き眼光。
決して折れない、剣の魂。
硝子球が弾け、体内に魔力が満ちる。
――そして彼女の口から、この凶刃を打ち負かす、“盾”の名が紡がれた。

「――【熾天覆う七つの円冠(ロー・アイアス)】!!」

眼前に、盾が現れる。
本来なら、七つ花弁が存在する筈の、七重の盾。
しかし、現れた其れには、花弁は五つしか存在していなかった。
如何に霧羽と言えども、完全な複製は未だ無理という事か。
しかし――其れでも十分だった。
刃は盾とぶつかり合い、互いの身を削り合う。
一枚、花弁が砕ける毎に、刃も己が身に亀裂を生み出していく。
――五枚目の花弁が砕けると同時に、二枚の刃も砕け散るのだった。
「私の刃を防ぐとは……如何やら、かなり特異な魔法のようですね」
淡々と、ヘダタリは言った。
内心、僅かに驚いていたが、表面には出さない。
「――しかし、防ぐだけでは私には勝てません」
言い切る。
再び指を構え――
そして、
「言われなくても、解ってる」
言い放つ、霧羽。
手に投影した和弓を構え、捻じ曲がった剣を番える。
其れは、霧羽が現在行使できる、最大の貫通力を誇る幻想。
全身の筋肉を以って、其れを引き絞る。
――自らも、弓の一部になったかのように。
「――我が幻想は捻じれ歪む…」
父とは違う、日本語の呪文。
無意識の内に、詠唱が流れ出た。
――そして、歪んだ幻想が咆哮する。

「―――“偽・螺旋剣(カラドボルグ)”!!」

轟音を上げ、高速回転する固き雷。
当然の如く、其れはヘダタリに襲い掛かる!
「―――む!?」
眉根を寄せ、ヘダタリは両手を重ね、防御の体勢を取る。
今迄に、無い反応。
一拍を置いて、両の手から生まれた揺らぎのような壁と、螺旋剣とがぶつかり合う!

―――ギギギギギギギギイィィィィッィィッ!!!

火花が飛び散るが、両の存在は怯む事無く、進撃を続ける。
――数秒、拮抗が続く。
ヘダタリが、口を開いた。
「……成る程。確かに此れなら、私の界壁を貫く事も可能でしょう。――そう、“界壁”なら」
微笑するヘダタリ。
――その時、

音が、弱々しくなる。

今まで響いていた摩擦音が徐々に弱くなり、途切れがちになっていく。
――原因は、カラドボルグ。
其の回転数と勢いが徐々に弱くなっていたのだ。
――何故?
「――“界曲”。空間を歪曲圧縮し、数万kmを数cmの距離で再現する術です。全ての射出武器には、射程距離という限界が存在します。此れも、其の例外ではなかった、という事です」
自信有り気に言い、剣に向いていた視線を、弓を構える霧羽に戻―――せなかった。
何故なら、

とっくの昔に、霧羽は先へと向かったからだ。

剣は、単なる囮だという事だ。
「……謀られましたか。策士であるこの私をハメるとは……中々のようですね」
レベルの低い争いだ。
――その時、

「――【壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)】……」

遠くの方から、ぼそりと魔を含んだ霧羽の呟きが聞こえてきた。
え? とヘダタリが聞き返す前に――

辺りは、爆光に包まれたのだった。

ひでぇな、オイ。


半ば騙まし討ちのような形で、ヘダタリを振り切った霧羽。
今、彼女は橋の手前にある街道を全力爆走していた。
――しかし、このままでは追いつかれるのも時間の問題。
目前には、もう目的地である橋が見えている。
――如何すれば?
「……今の私が出来る最高の加速手段…」
――一つ、思い当たった。
しかし、其れは忌まわしい思い出と共に封印した禁断の業。
あのような失敗は、二度としたくない。
だが……
「仕方ない、か」
即、実行。
回路に、ありったけの魔力を叩き込む。
「――なるべく大きくて、幅の広い剣を投影しないと……」
一体、何をやらかす気だろうか?


――橋の上の闘いは、そろそろ最終局面に近付きつつあった。
杖を奪われ、一時は敗北寸前だったネギ。
しかし、絶妙なタイミングで、明日菜とカモという心強い?増援が現れたのだ。
――そして、ネギと明日菜は正式な仮契約(キスとも言う)を交わし、反撃に出た。
明日菜は茶々丸と、ネギはエヴァとの闘いに。
――二人の魔法使いは今、自らの全力を懸けた呪を放つ!

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!“veniant spiritus aeriales fulgurientes, cum fulgurationi flet tempestas austrina. 『来たれ雷精、風の精。雷を纏いて吹けよ南洋の嵐』”!!」

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!“veniant spiritus glaciales obscurantes, cum obscurationi flet tempestas nivalis. 『来たれ氷精、闇の精。闇を従え吹けよ常夜の吹雪』”!!」

奇しくも其れは、同種の魔法。
――そして、

「――“JOBIS TEMPESTAS FULGURIENS.『雷の暴風』”!!!」
「――“NIVIS TEMPESTAS OBSCURANS.『闇の吹雪』”!!!」

嵐が、激突する!
其の尋常ではない魔力の奔流に、苦悶の表情を浮かべる二人。
――僅かに、エヴァが押し勝っている。
凄まじい圧力に震えるネギ。
――だが、
其の脳裏に、二つの光景が映し出された。
一つは、先日、山中で霧羽と語り合った時のもの。
――父母の背中を超える、と宣言した少女の笑顔。
もう一つは、あの忘れられない雪の日の終わり。
――自分に杖を渡し、去っていく父親の背中。
其の二つの光景が、ネギの中で交差した。
――ネギの瞳に、再び決意の焔が燃える。
(――僕も、僕も父さんの背中に……だから、だから――)
「――もう、逃げない!」
後ろに退いていた杖を、前に翳す。
膨大な魔力に耐え切れないのか、星型のお子様杖に皹が入り、欠片が飛び散る。
――その結果…

「は…!? ハックシュン!!」

くしゃみによる、魔力の暴走。
其れにより、一瞬だけだが、ネギの呪文が爆発的に増大。
――エヴァの呪文を、打ち貫く!
「な…何!?」
驚愕の表情と声を上げると同時に、エヴァは呪文に巻き込まれ――

空に、大きな華が咲いた。

轟音を奏でる、大輪の華が咲いたのだった。


「ネギー!!」
「マスター……!?」
傍で見ていた明日菜と茶々丸が、其々の契約者の名を叫んだ。
――その時、

―――みいぃぃぃぃにゃあぁぁぁぁぁ………!!?

遥か遠方から、風音と共に奇妙な叫び声が聞こえてきた。
何事? と二人が振り返ったその瞬間――
高速飛行する幅広な大剣に、二人は吹き飛ばされた。
茶々丸は傍の鉄柱に身体を強く打ち付けられ、明日菜はパンツ丸だしですっころがっていた。
突如現れた謎の物体。其の正体は――!?
「……やっぱり、この業は封印しよう。もう二度と使いたくない…」
案の定、霧羽さんでした。
種明かしは至って簡単。
投影で生み出した大剣を空中で固定し、刃の部分に足を掛け、乗る。
そのまま撃ち出し、サーフィンの要領でバランスを取り、此処まで来たのだ。
――名付けて、【波乗の剣製(サーフィング・ブレイド・ワークス)】。
ちなみに前回使用した時も大失敗し、海で遭難&鮫の大群に襲われたそうだ。
……不幸過ぎるな、オイ。
「いててて……二人共、大丈夫? ――てか、何でエヴァちゃん裸なの!? 新たな趣味の開拓!!?」
起き上がり、早速ボケをかます我等が姫騎士。
ちなみに大剣は折れ砕け、既に霧散している。
其の台詞に、エヴァが顔を真っ赤にして猛講義した。
「好きでこんな格好をしている訳じゃない! 後、新たな趣味でもない!!」
「霧羽! あんた少しは登場方法選びなさいよ! 無茶苦茶すぎるわ!!」
「霧羽さん! 頼みますから少しは考えて行動してください!!」
更に明日菜とネギからも追い討ちをかけられる霧羽。
思わず、頭を下げてしまった。
「ご、御免なさい………って、そんな事言ってる場合じゃないの! ネギ君、エヴァちゃん、迎撃体勢!! 多分、もう其処まで……」
「来ていますよ」
霧羽の焦り交じりの言葉に、律儀にも答える声が。
声の主は、直ぐ目の前。
橋の上方に、浮かんでいた。
「――こんばんわ。今夜は良い月ですね、皆さん」
場違いに穏やかなヘダタリの声が、場に響いた。


ネギと明日菜は緊張で。
霧羽は臨戦態勢に入った所為で。
エヴァはこの見た事も無い男の登場に戸惑って。
茶々丸は――何故か大きく躊躇って。
動きを、止めていた。
一人、動きが止まっていないヘダタリは、移動を始めた。
向かうは――エヴァの所。
月明かりに照らされ宙に浮く、闇に映える男と少女。
幻想的な光景である。
「――先ずは此れを。流石に、何時までもレディの肌を外に晒すのは、紳士として見過ごせませんので」
言ってヘダタリは、自分の上着をエヴァに掛けた。
――内心、鼻血が吹き出そうなのを、理性が必死で押さえているのだが、少しも表に出さない。
流石に、始めから恥を晒しまくる気ではないらしい。
「――始めまして、Ms.エヴァンジェリン。私はヘダタリ――とある魔導書の精霊です。取り合えず、今回は所見という事で、此れを貴女に」
恭しく礼をし、エヴァに微笑みかけるヘダタリ。
其の笑みを見た瞬間、僅かにエヴァの頬が赤らんだ。
魅惑。
其の一言を具現化したような、笑顔だったからだ。
(……何で私がときめかなければならんのだ!?)
エヴァの前に、ヘダタリの手に握られた大きな包みが差し出された。
其れは――花束。
百以上もの色とりどりの薔薇を纏めた、百色の花束。
――美しい花束を、可愛らしい少女に差し出す美丈夫。
とても絵になる光景だ。
――しかし、次の発言が全てを台無しにした。

「――年の数だけ、包ませました」

エヴァの渾身アッパーが、ヘダタリの顎に極まった。


――さて、ようやく今回の事件の役者が全て同じ舞台に立ちました。
次はいよいよ、決着の時。
はてさて、幸いは誰の頭上に?

ねぎFate 姫騎士の運命
ねぎFate 姫騎士の運命 第十四話後編

  HOME  | 書架top  | 

Copyright (C) 2006 投稿図書, All rights reserved.