ねぎFate 姫騎士の運命 第十六話中編 投稿者:ガーゴイル 投稿日:05/22-16:26 No.582
――浴場を抜けると其処は、
「いやぁぁ~~ん!」
「ちょっ…ネギ!? なんかおサルが下着を――っ!?」
…おサルの巣窟でした。
もう何が何だか。
ねぎFate 姫騎士の運命 第十六話中編
急いで悲鳴の聞こえてきた方――脱衣所――に飛び込んだネギ達。
彼らが其処で見たものは、無数のサルに弄ばれる明日菜と木乃香の姿だった。
二人とも下着を脱がされ、裸同然の格好であった。
「うわ、大胆…」
思わず、正直な感想を漏らす霧羽。
しかし、今はそれどころではない。
戸惑う霧羽は、如何すればいいかとネギたちの方に目を遣り――
「げ」
「あたた…」
「うひゃあ!?」
ネギの上に馬乗りする刹那。
真っ赤な顔で慌てるネギ。
其れを見て如何コメントしていいか解らない明日菜。
当てにするのは止めよう。
カンマ二秒で霧羽はそう判断した。
――そうこうしている内に、サルは木乃香を担ぎ上げ、浴場へと走り去っていく。
「――待ちなさい!」
慌てて追い駆ける。
しかし、場に残っていたサルが、そうはさせるかと一斉に襲い掛かる!
「ウキ―――!」
数は十に満たない。
一瞬、霧羽は躊躇う。
式神とはいえ、其の愛くるしい容姿を斬り裂くのは、少し心苦しい。
しかし、倒さねば為らない。
愚図愚図している暇は無いのだ。
「……御免ね」
ポツリ、と呟き、霧羽は剣を抜いた。
柄と鞘尻の部分から、白刃が現れる。
二刀小太刀。
霧羽の得意とする、もう一つの戦闘スタイルである。
「我流体術、“鬼時雨”…!!」
目視する事すら敵わない、神速の斬が無数に放たれる。
“鬼時雨”……威力中心の突進型である“鬼蜂”とは違い、多方向攻撃と速さを念頭に置いた技。
――あらゆる方向に放たれた斬は、的確にサルのみを斬り刻む!
断末魔を上げる暇も無く、斬り裂かれたサルの骸は瞬時に紙へと戻った。
同時に、漸く復帰した刹那が木乃香を襲ったサルを屠ったのだった。
サル騒動も一段落し、ネギと明日菜と木乃香は、ロビーの一角――【湯上り休憩場】と銘打たれた場所――で、暫しの休息を取っていた。
居ないのは、刹那と霧羽。
事が終わった直後、刹那は逃げるように浴場を飛び出し、其れを霧羽が追って行ったからである。
――今、ネギと明日菜は、木乃香の話に耳を傾けていた。
其れは、過去の美しい幻想。
楽しかった、友達との様々な思い出話だった。
――懐かしすぎて、涙が出るくらい、美しい。
話の内容は、こうだ。
昔、木乃香は此処京都に住んでおり、刹那とはその時知り合った。
直ぐに二人は仲良くなり、毎日一緒に遊ぶようになった。
――しかし、そんな楽しい日々は長くは続かなかった。
木乃香が川で溺れた事を切欠に、二人の間に微かなずれが生じたのだ。
刹那は剣の修行に打ち込むようになり、木乃香は麻帆良に引越し、徐々に二人は疎遠に為っていった。
そして、其れから数年過ぎ―――中一の春。
二人は再会したのだが……
「何かウチ、悪いコトしたんかなあ……。せっちゃん、昔みたく、話してくれへんようによーになってて……」
言った木乃香の目尻には、薄らと涙が浮かんでいた。
――浮かべた笑顔も、悲痛なほど、寂しげなものだった。
「このか…」
「このかさん…」
ネギと明日菜は、そんな木乃香を見て、何と言ったら良いか解らなかった。
ふと、目尻を手で拭っていた木乃香は、胸元に手を入れ―――ある物を、取り出した。
其れは、首飾り。
銀色の飾り気の無い鎖の先に付いているのは、鈴。
色は、黒。
只の黒ではない。夜闇を凝縮したような、気品溢れる漆黒。
――少女の黒髪と、同じ色の鈴だった。
「……コレな、昔、友達から貰ったんや」
ネギと明日菜が問い掛ける前に、木乃香は呟くように言った。
「せっちゃんと友達になった後、友達になった子なんや。……男の子なんやけど、ウチとせっちゃんと一緒に三人で、よく遊んだんや……」
鈴を掌で転がし、静かな口調で言う木乃香。
「手先が器用で、よくカラクリ人形とか面白い玩具とか持ってきて、ウチらに見せてくれた……」
今でもよく覚えている。
小さな人形が、歯車が軋む音を立てつつも、軽やかに舞いを舞った時の、ドキドキするような感じを。
色んな仕掛けやカラクリで、自分達を楽しませてくれた、一人の少年を。
今でも、覚えている。
「……この鈴をくれた後、外国に行ってもーてな……それっきりや」
苦笑し、木乃香は黒鈴を再び自分の首に戻す。
珠が入っていないのだろうか。鈴は鳴らず、まるで死んでいるかのように、沈黙を保つ。
「……何処に居るんやろーな、かんちゃん?」
今は居ない友人に、小さく問い掛ける、木乃香だった。
「……私は、あの時誓った。強くなろうと――お嬢様を守りきれるぐらい、強くなろうと」
旅館の要所に護符――式神返しの結界用――を貼りつつ、刹那は重く、強い口調で言った。
其れを、霧羽は静かに聞いていた。
何故、刹那がこのような事を言っているかというと、原因は霧羽の問いかけだ。
霧羽は言った。
『――何で、このかちゃんの事を避けるの?』、と。
始め刹那はだんまりを決め込んでいたが、霧羽が無言で放つ重圧に耐え切れず、こうしてぽつりぽつりと吐露し始めたのだ。
「私は護衛だ。馴れ合っていては、お嬢様を危険に晒してしまう。だから、私は――」
「影から護れれば其れでいい、か」
刹那の言葉を先読みし、霧羽が言う。
刹那が次の言葉を言う前に、霧羽は、
「―――本気で言ってるの? 刹那ちゃん」
冷たい声で、言い放つ。
――刹那の動きが止まった。
霧羽は矢継ぎ早に、言う。
「刹那ちゃんは其れでいいかも知んないけど、木乃香ちゃんの気持ちは如何なるの? ――影ながら護れれば其れでいい? ―――ハッ! 其れこそ臆病者の自己満足……そんなの、言い訳にも為らないよ」
高圧的に告げられる、皮肉を織り交ぜた彼女の言葉に、刹那は震え――激昂した。
「……貴方に、貴方に何が解る!? 私の気持ちなど、私の苦しみなど少しも解らないくせにッ!!」
「当たり前じゃない。他人の事を完全に理解できる――其れこそ、幻想でしかないよ。私は刹那ちゃんの気持ちが理解できない、刹那ちゃんも私の気持ちが理解できない………木乃香ちゃんも同じだよ。言葉で言わなきゃ、伝わらないんだよ。どんなに相手を案じていても、想っていても……言わなきゃ、伝わらない」
冷静に、其れでいて強く、霧羽は言う。
――まるで諭すように。
「刹那ちゃん、覚えておいて。失くす事は簡単だけど、戻す事は不可能に近いって事を。……後悔してからじゃ、遅いんだよ。――私が言いたいのは、其れだけ」
最後に刹那を一瞥し、霧羽はソファから立ち上がった。
そのまま背を向け、自室へと向かう。
「……何故、貴方は私に其処まで言うのですか? 只クラスが同じだというだけの、赤の他人に……如何して此処まで…」
唇を噛み、俯く刹那。
「――刹那ちゃんは贅沢。折角、あなたの事を想ってくれる友達が居るのに、其れを突っぱねるなんて……。この学園に来るまで私には、そんな人あまり居なかったから―――…少し僻み混じりのお説教よ……」
苦笑し、霧羽は刹那へと目を向ける。
僅かな間、二人の視線が交差する。
「…其の思いを、大事にして。二人とも、お互いが唯一無二の存在なんだから」
其処で、霧羽は優しげに微笑み、
「――御免ね。何か、色々偉そうな事言っちゃって。だけどね、コレだけは、心に留めておいて」
思いは力、力は思いなり――だよ。
最後にそう言い残し、霧羽はその場を去った。
――後に残ったのは、神妙な表情でその場に佇む、刹那だけであった。
「――まったく。何で修学旅行先で、酔い覚ましと二日酔いの薬を調合しなきゃならねぇんだ」
ブツブツと文句を垂れつつ、龍朝は手元にある草やら骨やらを手際よく擂鉢に放り込み、丹念に擂り潰していく。
――微妙にグロイモノが材料に混じっているが、無視しよう。
此処は、龍朝に宛がわれた宿の一室。
旅行中の医務室を兼ねているらしく、何時持ち込んだのか、部屋中奇妙な瓶や箱や機材で埋め尽くされていた。
「――と、コレで良し。後はコイツを水に溶かして、と」
出来た粉薬を、水に溶かしていく。
水は一瞬で、蛍光オレンジ色に変わった。
……絶対飲みたくねぇ。
「コレは雪広達、この薬は椎名と釘宮、運動部四人組にはコイツを……一番症状のキツイアルトリアさんには濃縮還元二百倍溶液、と」
てきぱきと飲み薬を瓶に詰め、名札を貼っていく龍朝。
淀みの無い其の動きは、職人芸といっても過言ではない。
「――よし、薬はコレでOKだ。後は……こいつら、だな」
深く溜息を付き、龍朝は振り返る。
其処には、一組の布団が敷かれていた。
布団で眠っているのは、双子の少女。
風香と史伽である。
実はこの二人、酒を飲んだ被害者の中で、一番症状が重いのだ(アルトリアを除く)。
かなり酒に耐性が無い上に、ぱかぱか飲んだ所為か、一時はアルコール中毒の可能性もあったのだ(幸い其れは水で薄めていた所為もあって、杞憂に終わったが)。
其の為、医者である龍朝はこの二人を、医務室である此処で寝かせ、つきっきりで看病しているのだ。
――苦しげに寝込む、風香と史伽。
顔には薄らと汗が浮いていた。
「……ガキのクセに酒なんか飲むからだ。――ったく、余計な心配かけさせやがって…」
ぶつぶつ言いながら、二人の顔を手ぬぐいで拭う龍朝。
「さて、如何すんべ。薬飲ませなきゃ何ねぇのに…」
起きる気配は、全く無い。
今作ったのは飲み薬。
注射や湿布では、効果が無い。
龍朝は、舌打ちをし、
「仕方ねぇな…」
器に口を付け、中の薬水を口に含む。
そのまま、布団に近付き、先ずは風香を抱き起こし、
唇を、重ねた。
そして、口中の薬を、風香の体内へと送る。
――一見疚しい事に見えるが、コレは立派な治療行為である。
漢方と謂うのは、舌で味わい、喉奥の器官で感じ取らなければ、効き目が半減するらしい。
故に、口移しなのだ。
……ちなみに龍朝君、この行為を医療の為だと割り切っている。
必要ならば、男だろうが何だろうが、同じ事を躊躇い無くする。
……鳴滝姉妹、ある意味哀れである。
「……流石に了承無しじゃ、不味いだろうな。意識も無いみたいだし、このまま【無かった事】にしておくか」
唇を離し、さらっと問題発言する龍朝。
再び水を口に含むと、次は史伽を抱き起こし、口を合わせる。
――こうして、風香&史伽のファーストキスは、闇に葬られたのであった。
「……私って、嫌な子だな~」
中庭の大きな岩の上に座った霧羽は、自嘲気味に呟いた。
部屋に戻る気にもなれず、こうして無駄に時間を潰しているのだ。
「…刹那ちゃんの都合も考えず、言いたい事を好き放題に言って……。今更だけど、自分が嫌になる…」
空を、見上げる。
霧羽の心とは違い、夜空は明るく、煌々と月が輝いていた。
「――けど、我慢出来なかったんだよね。このかちゃん、本当に辛そうだったもん…」
時折見せる、寂しいような、悲しいような、置き去りにされた幼子のような表情。
霧羽には、その感情に覚えがあった。
何故なら、この学園に来るまで何時も霧羽は、其の感情と付き合っていたからだ。
引越し続きの子供時代。
異質で在る為、周囲に馴染めない自分。
――魔術の事がばれた時もあった。
自分の命を護る為に、誰かの命を護る為に、使った。
結果は――拒絶。
極少数の例外を除いて、知った人は化け物扱いするか、露骨に自分を避ける。
――心に、たくさんの傷が出来た。
いっぱいいっぱい傷付いて、いっぱいいっぱい泣いた。
今はもう――未だ少し引き摺っているが――平気だけど。
だって……
「……もう、一人じゃないから」
――友達が、居るから。
「このかちゃんは勿論、私は刹那ちゃんも友達だと思ってる。お節介かも知んないけど、放っておけない」
けど、過度に干渉するのも如何かと思う。
只の自己満足――偽善でしかない。
頭の中で、否定の思考がそう囁く。
――正に、ジレンマ。
「……何か、イライラする…」
自分が、つくづく嫌になる。
長く息を吐き、霧羽は悩む。
――その時、
月に、影が過ぎる。
「――――ッ!?」
弾かれたように、霧羽は顔を向けた。
目を凝らすと其処には――サルの着ぐるみ。
サルは、何かを抱えていた。
其れは――
「――このかちゃん!? つーかまたサルッ!!?」
驚く所そっちかい。
「って突っ込んでる場合じゃない!! 何か、またヤバ気な状況みたいだし」
一人で突っ込みを入れつつ、霧羽は瞬時に思考を非常時モードに切り替えた。
「……思ったより速い。ダイダロスは修理中だし、此処は……走るっきゃないよね」
呟き、全身の回路を起動させる。
「――――強化、開始(トレース、スタート)」
言葉と同時に、霧羽の身体が強化された。
「――御免ね、お母さん。けど、放っておけないし!」
――霧羽は駆ける。
友を、助ける為に。
護る為に。
黄金の若き風は、今、駆け抜ける。
「せ、刹那さん!? 一体どういうことですか!?」
「ただのいやがらせじゃなかったの!?
何であのおサル(?)、このか一人を誘拐しようとするのよ!?」
夜の駅構内を駆けつつ、ネギと明日菜は先頭を走る刹那に問う。
――現在、三人は木乃香を誘拐した謎の大ザルを追い駆けていた。
間抜けな姿とは裏腹に、サルは様々な術を使いこなし、中々手強い。
現に先程も、三人は水攻めの術の被害に遭い、ずぶ濡れになった。
刹那も焦った調子で、
「じ、実は……以前より関西呪術協会の中に、このかお嬢様を東の麻帆良学園へやってしまった事を心良く思わぬ輩がいて…」
其処で言葉を切り、刹那は眼差し鋭く、
「――…おそらく、奴らはこのかお嬢様の力を利用して、関西呪術協会を牛耳ろうとしているのでは……」
さらりと出てきた重大発言に、ネギと明日菜はぶったまげた。
「え……?」
「な…何ですかそれ~~~――――!?」
刹那は唇を噛み締め、
「私も学園長も、甘かったと言わざるを得ません。――まさか修学旅行中に、誘拐などという暴挙に及ぶとは……」
(――私がもう少し、しっかりしていれば…)
拳を握り締める、刹那。
焦燥、そして自己への怒り。
――頭の中で、霧羽との会話がリフレインする。
――自己満足。
――木乃香に辛い思いをさせている。
(しかし……お嬢様を【こちら】側の世界に引き込むわけには……!)
刹那は其処まで考え、思考を中断した。
今はそんな事を考えている場合ではない。
木乃香を、護らなければ為らないのだから。
(貴方に言われなくても、解っている。絶対に……護ってみせる!!)
今は此処に居ない霧羽の姿を思い浮かべ、刹那は決意を瞳に宿す。
――三人の速度が、更に上がった。
――そんな様子を、一人の男が物陰から眺めていた。
昼間、木の上から皆を監視していた青年だ。
「……始まった、か。月詠の性格からして、絶対せつに絡むやろうな」
バトルマニアやからな、と青年は付け加える。
「鈴の嬢ちゃんは、恐らく千草はんの式神あたりとぶつかるやろうな。ちゅー事は、わいの相手はあのガキんちょか……」
ネギを見つめ、青年はサングラスに隠れた双眸を、少し引き攣らせた。
「ガキ相手にむきになんのは大人気無いけど……西洋魔法使い、か。少しマジになりそうや」
小さく肩を竦め、
「――殺してまわんよう、加減せんとな」
――消えた。
後には、何も残らなかった。
「お札さん、お札さん。―――ウチを逃がしておくれやす」
木乃香を攫った関西呪術協会の刺客――サル女こと【天ヶ崎 千草】――が符を放つ。
符は瞬時に大炎と化し、刹那たちの行く手を阻む!
「喰らいなはれ! “三枚符術 京都大文字焼き”!!」
大の字に燃える、烈火。
凄まじい熱風に晒される、刹那と明日菜。
「ホホホ。並の術者では、其の炎は超えられまへんえ。――ほな、さいなら」
千草は愉快そうに笑い、床に横たえた木乃香を抱き上げようとした―――其の瞬間!
ズガガガガガガガガガガガッッッッッ!!!!!!
無数の剣弾が、大の字に燃え盛る炎の中心に、降り注ぐ。
そして――
―――業ッ!!!!
炸裂、そして爆風。
符術の炎よりも凄まじい爆発が生まれ、暴風が一切の炎を消し飛ばす!
「な、なんやあぁぁぁぁッ!?」
吹き飛ばされそうになりつつも、身を屈め其れを堪える千草。
刹那と明日菜とネギは、突如起こった現象に、目を丸くしていた。
「一体、何が……」
呆然とする、刹那。
「ネギ、今のって……」
「はい、間違い在りません!」
顔を見合わせ、明日菜とネギは確認を取る。
二人は知っている。
こんな無茶な事をする、人物を。
心の底から信頼する、友を。
――煙が、晴れる。
炎は全て消え、其処には巨大なクレーターが出来ていた。
其の中心に、誰かが立っている。
髪は燃えるように輝く金の長髪、服は刹那達と同じ浴衣。
――其の可愛らしい顔立ちは、闘志に彩られていた。
「…御免、ちょっと遅れちゃった」
口調こそ何時もの霧羽だが、気配が全く違う。
怒りの気配が、全身から噴出していた。
「……其処のお猿さん。悪いけど、今、私ね……とっても機嫌が悪いの。その上、友達が誘拐されちゃって、もうキレかけてるの。……手加減無しで、遣らせてもらうよ」
霧羽は怒っている。
木乃香を避ける刹那に、不甲斐ない自分に、木乃香を誘拐した千草に。
怒りが、彼女に現れていた。
「――な、何者や。あんさん!?」
突然現れた霧羽に、声を荒げる千草。
――この異様な気配に、少し震えつつ。
霧羽はふっと皮肉気に笑い、
「――私? 私は衛宮霧羽―――貴女が誘拐した、近衛木乃香の友人の一人よ」
言い放ち、霧羽は投影した巨大な得物を振り翳す。
岩から直接削りだしたかのような、武骨な斧剣。
嘗て、父と相対した【十二の偉業を超えし英雄】が、かの聖杯戦争時用いた一品。
付加効果は無いが、其の重量から繰り出される攻撃は、凄まじいの一言に尽きる。
「覚悟しなさい、サル女。サルの仕込みは十全かしら?」
修学旅行一日目、第二ラウンド開始。
――開始早々トラブル続き、波乱万丈の修学旅行。
今度は関西の姫君を巡り、戦いが始まりました。
戦士の苦悩は、姫君の思いは……さて、どうなるのでしょうか?
一先ず、後編をお楽しみにして下さいませ。
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