ねぎFate 姫騎士の運命 第十八話【無謀編】 投稿者:ガーゴイル 投稿日:05/24-17:10 No.601
――人生とは儘為らぬモノである。
どんなに気をつけていても、人は問題から逃れられない。
……取り合えず、選択は二つ。
答えを出すか、出さぬか。
――現在、一人の少年が、数多の問題に押し潰されかけていた。
少年の名は――ネギ・スプリングフィールド。
ネギよ。作者から最後の問題に関して、一言言って置こう。
羨ましいぞこんちきしょう。
ねぎFate 姫騎士の運命 第十八話【無謀編】
「――で、宮崎に告白されて……あのざまか」
明日菜と刹那から一通り事情を聞いた龍朝は、やれやれと嘆息した。
其の視線は、ネギへと向いている。
頭を抱えながら地面をごろごろ転がっているネギに。
こくのあるこっくりさんのスープ……等、テンパり過ぎて訳の解らない事を口走るネギに。
一杯一杯という感じのネギに。
居た堪れなくなり、ダッシュで逃げるネギに。
……かなり混乱してるな。
「まあ、仕方無ぇか。十歳じゃ、無理もねぇ」
頭は兎も角、心は成長途中。
――其の心は繊細で、酷く脆いのだから。
「大体の事情は解った。――所で、あの脳味噌蕩けるチーズ風味ヨーグルト空前絶後へっぽこ馬鹿娘は如何した?」
幾らなんでも其れは言い過ぎなのでは。
しかし、皆は特に反応せず、
「衛宮さんなら体がもう限界とかで、先に食事を摂って休みましたが」
当然のように答える刹那。
哀れだ、霧羽。
どうやら、霧羽がへっぽこというのは、皆の共通認識と為っているようだ。
「ま、当然だな。普通の人間なら二、三日寝込むぐらいだからな……無駄に丈夫なアイツも、限界だったという事か」
さらっと問題発言。
丈夫にも限度がある。
そう突っ込みたい明日菜と刹那だったが、話が進まないので、あえて黙殺した。
「う~~ん……龍先生、何か良い知恵ないかしら?」
首を捻って考え込む明日菜。が、いい考えが浮かばない。
問われた龍朝は、
「……と、言われてもなぁ。流石に色恋沙汰は専門外だぞ」
と、困った顔。
だよねぇ、と明日菜は納得顔で頷いた。
刹那も、明日菜と同様な表情を浮かべ、同意する。
「「龍先生……鈍感(だから)(ですから)」」
的を射たハモリ。
「……如何いう意味だ?」
思わず、半目になる龍朝。
流石に面と向かってこんな事言われたら、少々気分が悪くなる。
「……だって…」
「ですよね……」
顔を見合わせ、曖昧な表情を浮かべる明日菜と刹那。
言わずもがな、という事である。
しかし、当の本人は、
「一体、俺の何処が鈍いっていうんだよ!」
心外だ、と怒る。
自覚ゼロである。
明日菜と刹那は嘆息し、
「じゃあ訊くけど……双子ちゃん達があんたの事どう思ってるか、解る?」
半目の明日菜の問いに、龍朝は何を言ってるんだと言わんばかりに、
「んなの決まってるだろ。――気の合う年上の友達だろ」
真顔で言い切った。
朴念仁、此処に極まり。
「あんた、何時か後ろから刺されるわよ」
処置無し、と言った具合に、匙を投げた明日菜の一言。
一遍死んでこい龍朝。
「はぁ~~~~~ぁ……」
朝の三割り増しの溜息を吐く、ネギ。
此処は大浴場。
今は教員用の時間なのだが、早めに入った所為か、ネギとカモ以外誰も居ない。
かぽ――ん。というよく解らない擬音が、空間に響いていた。
「オラオラ兄貴。情けない声出してんじゃねーよ」
見かねたカモがネギに喝を入れようとするが、上手くはいかない。
ネギの表情は、沈みきったままだ。
「はぁ~~~~~ぁ………」
再び溜息。
其処に、
「随分煤けてるな、ねぎ坊主」
腰にタオルを巻いた龍朝が、入ってきた。
痩せ型だが、適度に締まった肉体。
其の胸板と背中には、白い三本の線――傷痕――が奔っていた。
「――ああ、この傷か? 昔、魔獣に襲われてよ。そん時に……な」
苦笑し、桶の湯を被った龍朝は、其のままネギの隣に座る。
じゃぶん、と微かに、湯面が揺れた。
……沈黙。
ネギも、龍朝も、カモも、黙ったままだ。
居心地の悪い空気が、流れる。
「龍朝先生……一つ、訊いていいですか?」
「何だ? 藪から棒に」
ポツリ、と消え入りそうな声で尋ねるネギ。
龍朝は、何時もと変わらぬ態度で返す。
暫し、間。
再び、ネギが口を開いた。
「やっぱり僕って……弱いんですか?」
――意を決した、一言。
言ったネギの表情は――苦渋。
龍朝は、暫し思案し――
「――そうだな。お前は弱い」
答えた。
簡潔に、あっさりと。
ネギの表情が、動きが、思考が、固まった。
解ってはいた。
解ってはいたが――
しかし――
「――今はな」
付け加えたような其の言葉に、え? とネギは聞き返した。
龍朝は、ニィッ、と笑い、
「始めから何でも出来る出来過ぎ君はいねぇって事さ。――いいか、ねぎ坊主。手前ぇはまだ十歳なんだ。言ってみればまだまだ半人前……成長途中なんだよ。先は長ぇんだ、修練を怠らなければ必ず、強くなるさ」
断言する。
しかし、ネギは暗い顔のままで、
「……龍朝先生。別に、気休めなんて……」
「ボケ。気休めなんかじゃねぇよ。もう一度言うぞ――お前は、強くなる。往き過ぎた奴らの集まり――“五一族”のお墨付きだ。少しは自信を持ちやがれ。……大体な、俺に人を慰めるなんて器用な真似、出来ると思うか? 俺は事実を言ってるまでだ、タコ」
乱暴で、素っ気無い言い方。
しかし、此れは此れで彼らしい。
ネギは、ポカンと口を開けたまま、彼を見つめた。
「【落ち零れ】の俺でも此処まで強くなれたんだ。小利口で努力家のお前なら、絶対俺より高みに往けるさ」
――落ち零れ。
彼の口から出た其の言葉に、ネギとカモは驚愕した。
「お、落ち零れぇ!? 成り立てとはいえ半吸血鬼・四体を、無傷で瞬殺したアンタが!!?」
飛沫を上げて、驚くカモ。
彼の戦闘其の物は見た事は無いが、其の実績――半吸血鬼化した生徒等の無力化及び治療――から考えられる彼の実力は、並の術者など足元ににも及ばない。
――其の彼が、落ち零れ?
ネギも言葉には出していないが、かなり驚いていた。
龍朝は苦笑し、
「ああ、そうだ。俺は落ち零れだった。――こう見えても、昔はガリガリの痩せっぽちでな。其の上……体質的に、呪文の行使が無理だったんだ。高畑のおっさんみたくな」
呪文使用不可――其れは、魔法使いに於いて、絶対的な致命傷。
故に、龍朝は魔法使いに為れず――道具を媒介にし、術・技を使役する【魔闘士】の道を選んだのだ。
「色々遭って……其れで強く為りたくて、がむしゃらに体を鍛えた。技も、その時習得した。……ねぎ坊主。大事なのは、己の弱い部分を認識する事だぜ」
「……弱い部分を、ですか?」
「ああ、そうだ。弱い自分を倒すんじゃなく、受け入れる事だ。弱い自分を容認し、明日の自分を弱かった昨日の自分より強くしたいと願う事だ。弱い自分を鍛え、強さへと昇華する事だ。――つまりだな、自分の【弱さ】も解らねぇくせに、態度だけ一人前のモノグサ馬鹿は、強くなれねぇって事だ。……今の手前ぇは、自分の弱さを再認識している段階だ。其の気持ちを忘れねぇようにしろや―――って何言ってんだ俺? 全然意味解んね」
言っている途中で恥ずかしくなったのか、そっぽを向いて無理矢理言葉を切る龍朝。
弱さを、強さに……
ネギは、頭の中で龍朝の言葉を反芻した。
自分は弱い。
しかし、強くなれる。
――いや、強くなりたい。
何時の間にか、ネギは強く拳を握っていた。
なれるか? ではない。
なりたい。強く、なりたい。
教え子を護りたい。
友達を護りたい。
――自分を護ってくれた、父のように。
(僕は……!)
もういやだ、誰かが傷付くのは。
もういやだ、身近な人が危険に晒されるのは。
もういやだ―――何も、出来ないのが!
想いが、形と為る。
ネギの中で、思考が一つに纏まった。
「兄貴……」
急に黙り込んだネギを心配し、カモが声を掛ける。
そして、
「―――龍朝先生!」
ネギの声が、弾ける。
「何だ?」
何時の間にか持ち込んでいた熱燗を楽しみつつ、簡潔に返す龍朝。
お前、未成年だろう。
しかし、ネギは一切突っ込みを入れず――
「僕に、戦い方を教えて下さい!!」
「無理だ。他当たれ」
即答だった。
拳を上げたまま、固まるネギ。
一世一代の決心が、砂へと化していく……
「俺の戦い方は我流だ。教えられるもんじゃねぇ――其れに、魔法関係は絶対無理だ」
正論である。
無情な其の言葉を聞き、思いだけではなく、身までもが真っ白な砂へと為っていくネギ。
……だが、
「身近に居るだろう。格闘のプロと、意地悪な……自称最強の魔法使いがよ」
龍朝の、揶揄うような一言に、ネギが復活した。
「えっ、其れってまさか……」
ネギの頭に、二人の人物が浮かぶ。
一人は、褐色肌の中国拳法の使い手。バカイエロー。
一人は、先日戦った、老獪なる吸血鬼。闇の福音。
「前者は兎も角、後者に師事を仰ぐのは難しいだろうが……まあ頑張れや」
無責任に、そして楽しそうに言い放つ龍朝。
――ネギは、拳を確りと握り、
「――はい! ありがとうございます、龍朝先生!」
年相応の笑顔を浮かべ、礼を言う。
僅かな影は、光明により払拭されたようだ
大した事じゃねぇ、と手を振る龍朝。
「強くなれるかは手前ぇ次第だ。其れに……強くなる前に、弟子入りすんのが大変だぜ」
「キチンとお願いすれば、きっと大丈夫です!!」
力強く答えるネギ。
しかし……次の瞬間には、再び表情に影が戻っていた。
「あ、其れと……もう一つ、相談に乗ってくれませんか?」
「宮崎の事か」
「ええそうです―――って?! 何でその事を!?」
さらりと自分の悩みを言い当てられ、慌てるネギ。
龍朝は、何の事は無いと、
「神楽坂と桜咲に聞いた。告白されたんだってな」
其の言葉に、顔を真っ赤に染めて、湯に沈みかけるネギ。
しかし、気を取り直し、
「……知ってるんなら、説明は要りませんね。其れで僕、如何したらいいか……」
「専門外だ。他当たれ」
またもや即答。
今度はマジで湯に沈むネギだった。
――その時、
「――ん? 誰か来たぜ」
話に入って行けず、一人湯を満喫していたカモが、人の気配を察知した。
入ってきたのは――
「――あら? ネギ先生と……龍朝先生」
眼鏡を掛けた、長髪の女性。
指導員【源しずな】先生である。
ちなみに其の格好は――タオルを巻いただけという、あられもない姿だ。
……ん? 何かビミョーに違和感が……
「し、しずな先生―――!?」
驚きの余り、盛大な飛沫を立てつつ、後ろに下がるネギ。
十歳児には、少々刺激が強すぎたか。
龍朝は……別段騒ぎもせず、静かに酒を楽しんでいた。
大物だ。
ちなみにこの酒は、奈良での班別行動中に、皆の目を盗んでこっそり買いに行った代物だったりする。
部屋には後、一升瓶で二本ぐらい残っている。
「嗚呼……祖国の酒も美味ぇが、日本の酒も美味ぇな。金が無かった所為で有名所が買えなかったのは残念だが、そっちは次回に取っとくか……」
今飲んでいるのは熱燗ではなく、傍にある源泉で程好く熱した温燗。
アルコールが回るのが早いが、龍朝はこの温度が一番好きだ。
しかし……医者が風呂で酒を飲んでいいのか?
「阿呆。ちゃんと量を考えている。倒れるような間抜けはしねぇよ」
さいで。
ネギを放っておいて、酒を飲む龍朝。
ネギはというと、しずなに後ろから抱き付かれ、大慌て状態だ。
しかも、何でか知らんが魔法までばれているようだ。
「あ、あわわわわ!? ロ、龍朝先生! 助けて下さぁ~~~い!!」
始めは無視を決め込んでいたが、流石に【魔法】という言葉が出て来たので、無視する事も出来ない。
酒を片付けた龍朝は、面倒くさそうに、
「……何を企んでるか知らねぇが、いい加減にしろ【朝倉】」
――しずなの笑顔が凍りついた。
ピキィッ! と擬音が聞こえてくるぐらいに。
見事なまでに、固まっていた。
「な、な、な、ななななな何を言っているんですか、龍朝先生? 私は源しずなです――」
「其処等の一般人なら兎も角、医者である俺の眼は誤魔化せねぇぜ。源先生とボディラインが違いすぎだ。――ねぎ坊主なら騙せただろうが、女子中等部生徒のボディデータを全て記憶している俺からしてみりゃ、一目瞭然だぜ。俺を騙したきゃ、浦島一族の一人娘でも連れてくるんだな。――保健医舐めんなコラ」
どもりつつも、開き直るしずな――朝倉和美――の台詞を遮り、一刀両断。
しかし、言っている事がヤバ気なのは気のせいか?
絶句しているネギと和美を尻目に、龍朝はニヤリと笑い、
「信じてねぇな? なら、証拠を見せてやろう。例えば朝倉の体重は先月より三キロ増――」
「ア――ッ!? ゴメンゴメン! 白状するから其れだけは!!」
慌てて変装を解き、龍朝に泣きつく和美。
……確かに、女性相手には効果的な攻撃だ。
最低だが。
「――で、何企んでやがる? キリキリ吐けや♪」
悪魔のような笑顔。
酒が入っている所為で、微妙にテンションが高い龍朝。
その笑顔を見て、ネギとカモの腰が退けている。
和美に至っては、半泣きの表情で引き攣っていた。
――キリキリ吐かされました。
「……何か、どっかのトラブルメイカーオコジョを彷彿させる野望だな。――まあ其れは兎も角、ねぎ坊主……迂闊にも程があるぞ」
一通り話を聞きだした龍朝は、苦虫を噛み潰した表情で、気難しげに言った。
叱責されたネギは、あう~と呻きを漏らし、項垂れた。
ちなみにカモは、龍朝の【トラブルメイカーオコジョ】という発言に、
「誰の事でさぁ!?」
と自覚0な突っ込みを入れていた。
――ちなみに、和美の吐いた言葉を要約すると、
旅館前で子猫を助ける為に魔法を使用したネギを目撃。
これはスクープだ! と確信し、決定的な証拠を入手する為、しずなに変装し此処に。
最終的にはTVや映画等に進出。ギャラは山分けうっはうは。
……本当に誰かさんと根本が似ている。
現在、和美さんは正座体勢で待機。
お説教を受ける時の、基本ポーズである。
「さて……定例なら記憶を消さにゃならんのだが――ねぎ坊主。お前、記憶削除の魔法は?」
「い、一応使えるんですけど……この前使ってみたら失敗して、記憶じゃなくてパンツを……」
「どんな失敗だオイ」
思わず突っ込みを入れる。
確かに、有り得ん失敗だな。
仕方ないな、と龍朝は嘆息し、
「確か俺の部屋に、秘伝の忘却薬――【うーちゃん印の強力★超忘れ薬】――が在る筈だ。狙った記憶を八割の確率で消去できる、優れものだぞ」
「……あの、すいません。残りの二割は……?」
イイ笑顔で爽やかに不吉な事をのたまう龍朝に、一抹の不安を抱くネギ。
龍朝は、目線を僅かに反らし、
「安心しろ。脳味噌がトコロテン式に為るだけだ。……半年ほど」
「安心出来ません!!」
つまり、覚えた分だけ何かを忘れるという事か。
この会話を傍から聞いている和美は泣きそうな顔で、ガクガク震えていた。
「……龍朝先生、その――朝倉さんの事は僕に任せてくれませんか。元はといえば僕の蒔いた種ですし、朝倉さんは僕の生徒ですし……だから、薬を使うとかそういう事は…」
そう言い、何時もの真っ直ぐな瞳で、龍朝を見つめるネギ。
――龍朝は、ふう、と再び溜息を吐き、
「――お前がそう言うんなら、仕様が無ぇな。だが――今度は容赦しねぇぞ」
そう言って、龍朝はそっぽを向いた。
ネギはハイ、と返事をし、和美に向き直った。
「――ありがと、ネギ君! いや、ホントマジで!!」
目から怒涛の滝涙を流し、渾身で礼を言う和美。
……余程龍朝とトコロテン脳味噌が恐ろしかったようだ。
「いえ、そんな――あ、そうだ……朝倉さん。その、僕の事なんですが……」
ネギの怯えた声に、和美はクス、と笑い、
「解ってるって。ネギ君には恩返ししなきゃね。――取り合えず、ぽちっとな」
手元の携帯を操作し、証拠写真を消去。
「残りは後で渡すからさ。――此れでOK?」
何時もの笑みを浮かべ、和美は言う。
つまりこれは――黙っているという事だろう。
「――! あ、ありがとうございます!!」
表情に、光が差していく。
ネギの其の言葉に、和美は苦笑し、
「いいって。恩返しよ、恩返し♪」
そう言って、和美は浴場から立ち去っていった。
「あ~~……。結局、儲け話はふいになる、と。――ま、別にいっか」
体の雫を拭い、衣服を纏いつつ、そう零す和美。
此処は、女性側の脱衣場である。
教員用の時間なのだが、幸いにも誰も居ない。
其処に――
「――いや、諦めるのは早いぜ、姉さん。アンタには、キラリと光るもんが在るぜ!」
そう言って、和美の前に現れたのは!?
白く長い体に、つぶらな瞳。
見た目は可愛いが、中身は親父。
ネギの使い魔――アルベール・カモミール!
突然現れた其れに、一瞬絶句する和美。
「――いい話が在るんだけど……どうよ?」
ニヤリと笑うカモ。
其の笑みに、興味をそそられたのか……
「へぇ……面白そうじゃん」
此方も、ニヤリと笑う。
――暫らく後に、一人と一匹の不気味な高笑いが、脱衣所に響いたそうな。
時間は流れ――夜。
今正に、ある宴が開催されようとしていた。
其れは――
「――【くちびる争奪!! 修学旅行でネギ君&龍朝先生とラブラブキッス大作戦】~~~~~~~!!!!」
――ある意味、地獄の始まりだ。
無論、こんな計画を始めたのは、
「ふっふっふ、トトカルチョも売れに売れて……!」
「その上、カード一枚につき5万オコジョ$……。笑いが止まんね――ってばよ――!!」
主犯、朝倉和美及びアルベール・カモミール。
やっぱり、この二人だった。
さっき反省したばかりだろう。
「昔っから言うじゃない。【其れは其れ、これはこれ】――恩返しはちゃんとしたから、貸し借り無しよ!」
さいですか。
話を戻そう。
――続々と、ヒートアップしている3-Aの有志達がスタンバイ場所へと移動する。
……特に、某委員長の目がぎらついていた。
もう、誰にも止められない。
龍朝、ネギ危うし。
――所で、主人公の霧羽は如何した?
「……むにゃむにゃ。もうお腹いっぱい……」
寝ていました。
自室で、布団に包まって。
しかも涎を垂らした上に、鼻提灯まで出して。
幸せそうな顔で、ぐっすりと眠っていますよオイ。
……こりゃ、朝まで起きそうに無いな。
主人公なのに……
――そして、【あの人】も…
「――ではシロウ、見回りに行ってきます」
「ああ、気をつけてな。――やっぱり、俺も一緒に行こうか?」
「いえ、シロウは休んでいてください。昨日は、シロウに不要な負担を掛けてしまいましたので……。今日は、私がしっかりやりますから」
「――そうか。じゃあ、交代の時間になったら起こしてくれ」
「了解です。では……行ってきます、シロウ」
「行ってらっしゃい、アルトリア」
――おーまいごっど。
――如何やら今宵は、何時に増しても激しい夜となりそうです。
地獄か、其れとも天国か。
馬鹿騒ぎは、まだまだ続きそうです。
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