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第1話 遭遇 投稿者:八尾 投稿日:06/22-23:59 No.2586
眼を開ければそこには満天の星空と光る満月。
所々に空を泳ぐ雲は、星や月を少し隠して光を薄める。
俺は空に横たわり、風を受けながら星に体を任せている。
――――――現在落下中。
いつからこうなっていたかは分からない。
気が付いたらこうだった。
俺の背は空気を押し、地上へと向かっていく。
この状態のまま落ちれば死ぬことは確実。
(I-ブレイン、起動)
思考の主体を大脳新皮質上の生体コンピュータ『I-ブレイン』に移行。
思考単位をナノセカンドに固定。
五感の神経パルスが数値データに変換され、無数の情報が脳内にばらまかれる。
特に以上はない。
次のステップへと進む。
(「分子運動制御」、起動)
対象空間内の気体の分子運動を制御し、体の周りに大気の壁を展開して自由落下の速度を和らげる。
幸い地上まではまだ距離があり、このまま進めば怪我一つ無く下りられる。
・・・・しかし俺、一体どのくらいの高度から落ち始めたんだ?
目が覚めてから結構経っているが…。
そこまで考えて今は関係ないとその思考を止める。
先に考えなければならないことがあるからだ。
まず一つ目は空のこと。
雲がない。いや雲は浮いているが俺の知っている鈍色の雲ではなく、子供の頃空に浮かんでいた空を飾るような小さな雲。それがこの空には浮かんでいた。
二つ目は俺自身のこと。
死ななかったっけ?俺。
確かに死んだはずだ。
最後に覚えているのは大気制御衛星の防衛システムによる攻撃。
俺はそれを受けて一瞬で死んだ。
三つ目はここが何処かと言うこと。
辺りを見回しても見覚えのあるものは一切なし。
全然分からない。
四つ目は下に広がる森。
俺の記憶では世界にはもうこのような大きな森はない。
燃料不足だった世界で木は最大の燃料源の一つとも言えたからだ。
それに外は零下四十度、まともに植物が育つ環境では・・・・
そこまで考えてふと気付く。
暖かい。
落下中だったから気づかなかったが空気が暖かった。
疑問が増え続ける中、まもなく地上に到着する。
大気の壁をさらに厚くして、最大まで速度を減速させ地面に足を着いた。
周りを見渡せば木、木、木。
地面には草花が生え、どう見ても人の手で育ったようには見えない。
近くにある木に触ってみる。
久しぶりに触った木の感触はザラザラして懐かしい。
すこしその感触に浸っていると、
左方向から足音が聞こえた。
すぐに振り返り眼を凝らす。
足音から推測して二足方向の何か。
人間かそれとも別の何かか。
現れたには一人の男だった。
眼鏡をかけ、無精髭を生やした四十歳くらいの男性。
白いスーツを着込みポケットに両手を入れている。
彼は最初から俺がここにいることを分かっていたように驚く様子を見せない。
何者か不明なため、すぐに攻撃をできるよう準備をしておく。
「やぁ、いい夜だね」
向こうから話しかけてきた。
空を見ずに問いかけてくる。
「ああ、いい夜だな」
とりあえず返事を返す。
「それでこんないい夜の日に、君はここで何をやっているのかな?」
微笑を浮かべ、優しく語りかけてくる男。
「何もやっていないさ。気が付いたらここにいた」
正直に返す。
「それを信じろと?」
まぁ普通は信じないよな。
「そうだな、信じて貰えたら助かる」
「そうか、じゃあここが何処だか分からないかな?」
先ほど疑問に思ったことだ。
「知らないな。もし良ければ教えてくれないか?」
「ここは麻帆良学園だよ」
麻帆良、学園?
「もっとも、ここは学園から外れた森の中だけどね」
今話しているのは日本語だ。
しかし俺の記憶の中の日本に麻帆良なんて土地はないし、当然麻帆良学園なんて学校聞いたこともない。
「本当にここは麻帆良という場所なのか?」
確認するために聞く。
「少なくとも僕はここを指す名前は麻帆良以外聞いたことはないよ。それがどうかしたのかい?」
「・・・・いや、俺は一度もその麻帆良って名前の付く土地を聞いたことがなくてな」
すると男は浮かべていた微笑を消して真顔になり、
「麻帆良を知らないということか?」
俺は無言で頷く。
すると男は片手をポケットから抜いて顎に置き、少し考えたような仕草を見せた後こちらを向いて、
「すまないが、僕に着いて――――――」
男が何かを言おうとして、
「見つけたぞ、侵入者」
上から声が聞こえてきた。
その声を辿るとそこには一人の少女が浮かんでいる。
金髪で十歳くらいの彼女は、黒いローブを靡かせ、こちらを睨んでいた。
重力制御?しかし情報操作は感知できない。
「エヴァ!」
男が少女に向かって叫んでいる。
どうやら知り合いらしい。
「タカミチ、お前はどいていろ。こいつは私の得物だ」
エヴァと呼ばれた少女は何か物騒なことを言ってくる。得物ってなんだよ。
「待て、エヴァ。彼は何かおかしい。学園長に合わせる」
学園長?確かここは学園だったよな。ここの責任者か?
それに本人の前でおかしいなんて言わない方がいいぞ。
「知るか、そんなこと。せっかく今宵は満月だというのに、誰も来なくて飽き飽きしていたんだ。こいつは私がここで殺す」
そう言って少女はローブから何かを指に挟んで取り出した。
よく見るとそれはメスフラスコと丸型フラスコ。中にはそれぞれ紫と緑の得体の知れない液体が入っている。
それをこちらに向かって放り投げた。
このまま進めば予測せずとも俺に当たるのが分かる。
中身が何なのかは分からないが、殺すと言っていたので危険な物だろう。
そう思い迎撃しようとすると、
パンッ
と、何かが弾ける音がした。
それと同時に二つのフラスコが割れて中の液体が飛び散り、
空中で液体が混ざり合って爆発した。
・・・・・・おい、何て物投げるんだ。
距離があったから良かったが、近ければ危なかった。
おそらく液体爆弾の一種だろう。
「タカミチ!貴様、邪魔をするな!!」
少女がタカミチと呼ばれた男に向かって叫んでいる。
どうやら先ほどのは彼がやったらしい。
どうやってやったのかは不明だ。彼女の飛ぶのと同様にこちらも情報操作を感知できなかった。
「やめろエヴァ。さっきも言ったように彼を学園長に会わす」
彼は俺を庇ってくれているようだ。
「フン、そういえばお前はこいつがおかしいと言っていたな。どこがおかしい?どこにでもいる普通の人間だろう。」
まぁ、見た目はそうだな。中身は少し違うが。
「彼は麻帆良を知らなかった。ここにいるのに知らないのは変だろう」
確かに普通に考えれば変だ。本来今自分のいる場所くらい誰でも知っている。
「そんなもの、演技に決まっているだろう。どうせここと敵対する組織の魔法使いか何かだろう。先ほどの爆発にも顔色一つ変えなかったしな」
あれには驚いたが、もっと凄いのを見てきたからな。
ところで魔法使いって?魔法士の間違いじゃないのか?
「それも含めて確かめる為に学園長の所に行く。あの人なら確かめられる」
少女はすこし黙り、男の横に下りてきた。
「もしこいつが敵なら私が殺すからな」
男はそれを無視してこちらを向き、
「仲間が失礼な事をした。彼女に変わって謝らせて頂く。すまない」
そう言って少し頭を下げた。
「いや、どうやらあなたが俺を助けてくれたみたいだな。感謝する、ありがとう」
そう言って俺も頭を下げる。
「僕の名前は高畑・T・タカミチ。こっちはエヴァンジェリン」
向こうが自己紹介をしてきたので、
「谷川十六夜だ」
こちらも自己紹介で返した。
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