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第6話 仕事 投稿者:八尾 投稿日:06/28-23:40 No.2606
「十六夜、電話~」
俺がテレビを見ていると、撫子が子機を放り投げてきた。
「ああ」
それをキャッチして電話に出る。
「もしもし」
『十六夜君、儂じゃ』
「ああ、学園長。どうしたんですか?こんな遅くに」
現在の時間は十時半。
『うむ、実はな今から、仕事を頼みたいのじゃよ』
仕事とは、麻帆良に潜入して何か良からぬ事をしようとする魔法使い達を、撃退、もしくは追い返すことである。
「別に構いませんが、どうせなら学校で言ってほしかったですね。こんな夜じゃなくて」
夜の仕事は普通午前零時をまわってから始まる。
つまり今から言われると、三十分前集合を心がけている俺としては後一時間しか準備をする時間がない。
まぁ俺の場合着替えるくらいしか用意がする事がないので別にいいが。
学園長もそのことを知っているから俺に頼んできたのだろう。
『すまんのう。今回の侵入者は思ったよりも数が多くてな、現状人手が足りんのじゃよ』
なるほど、そう言う理由か。
その後俺は学園長から今日担当する場所を聞き、準備をして寮から出た。
「こんにちは、谷川先生」
「やぁ、遅かったね」
待ち合わせの場所で俺を迎えたのは、桜咲と龍宮。
俺がよく組むメンバーの一つだ。
「すまんな」
実際はこいつ達が早く俺は遅くないのだが、何となく謝っておく。
「それで、今回はどういう内容なんだ?依頼されたのはつい先ほどでな、学園長から詳しくはお前達に聞けって言われたぞ」
「解りました。それでは私からご説明を」
桜咲が答える。
「術者が四名ほど。彼らは妖怪達をこちらに向かわせて別の場所から麻帆良に侵入するようです」
ふむふむ。
「私たちは妖怪を、術者は他の方が引き受けてくれるそうです」
「敵の数は?」
敵とは勿論妖怪のことである。
「およそ二百。これは侵入者以外の麻帆良の外で待機している術者が召還したようです」
「中に入れる奴の力は消費させないということか」
「おそらくそうでしょう」
「解った、ありがとう」
桜咲がコクリと頷く。
「それじゃあさっそくだが行こうか」
説明の間黙っていた龍宮が武器である銃を取り出す。
「今回のチームリーダーは谷川さんです。指示を」
桜咲が背負っていた彼女の愛刀「夕凪」を手に持つ。
「そうだな、とりあえず何時も通りに行こうか。桜咲は前衛、龍宮は後衛。俺は両方のサポートをする。あとは何かあればその時にまた指示を出す」
何度も組んでいるため、始めの方はどうするのか殆ど決まっている。
二人は俺の言葉に頷く。
と、そこで地面が僅かに揺れ、向こうから何かの叫び声が聞こえる。
どうやらお出ましらしい。
(I-ブレイン、戦闘起動)
俺は脳内で戦う準備を始めた。
「さて、では始めようか」
二人はその言葉を合図に、得物を構えた。
目の前にいるのは異形の妖怪(あやかし)達。
最初に向かったのは桜咲、その後に俺が続く。
だが敵に最初に攻撃するのは俺だ。
(「分子運動制御」、起動)
周りの空間の温度を絶対零度まで低下させ、空気分子は瞬時に固定化して親指大の淡青色の結晶が百個ほど出現する。そしてそれら全ての空気結晶に運動量を付加して氷の銃弾にして群れをなし、桜咲を頭上から抜かして奴等に襲いかかる。
それに当たった弱い奴はすぐに消え去り、それ以外の奴等は防ぐが隙を作ってしまう。
そこを突っ込んできた桜咲が両断した。
そのまま彼女は敵に突っ込み次々と切り裂いていく。
俺は彼女と一定距離を保ちながらそれに続き、敵の至近距離で氷の槍を精製、相手の急所に飛ばす。それと平行して氷の盾で相手の攻撃を防ぐ。
そして俺たちが戦うと同時に相手をひきつけている間に、少し離れた場所で龍宮が銃で狙撃する。
これが俺たちが組む際によく使う戦い方だった。
本来炎使いは余り接近戦を好まない。
だが俺がこの世界に来て戦った際に前とは違うある事に気付いた。
速さである。
前の世界で俺が戦った相手のほとんどは魔法士であり、その戦いはナノ単位の超高速思考により相手の位置や能力から次の行動を予測したり、不意打ちなどはI-ブレインからの警告に対処したりする。
そのほとんどの行いをなるべく一秒以下で決定し行動に移すことは、魔法士にとっては当たり前のことだ。むしろ騎士を相手にした場合それでは間に合わない。
そんな世界で戦い続けた俺にとって、この世界での戦闘の速さは遅すぎる。
確かに魔法や気などで肉体の強化がされ力や早さが上がっているが、凄くても五倍がいいほう。思考速度にいたっては普通の人間のままだ。よく戦う人外の中には動きも思考速度も遅い奴が多くいる。
魔法士である俺がそんな彼らと戦えばどうなるだろうか。
相手の攻撃は専用の能力がなくても考えるだけである程度予測ができる有余があり、不意打ちでもI-ブレインの警告により大抵のことには対処できる。
そのお陰で炎使いの俺でも接近戦で大いに活躍できるというわけだ。
鬼が太い棍棒を俺めがけて振り下ろしてきた。
すぐさま氷の盾を出現させる。それの運動を強制停止させて攻撃を防ぎ、相手が次の行動に移ろうとしている瞬間に、頭上に氷の槍を五本出して頭を串刺しにする。
(攻撃感知、上方)
上から烏族が三羽(でいいのか?)剣を構えて飛んできた。
位置と速度を計算し、彼らの顔前に氷の盾を出し顔をぶつけさせ、盾を鎖へと変化させて顔に巻き付ける。視界をふさがれて右往左往する奴等に氷の槍を合計九本、三本ずつ飛ばして貫いた。
それと同時に桜咲の方を横目で見る。後方に槍を持ち彼女を襲おうとしている物怪を確認。彼女はどうやら目の前の鬼に集中して気づいていないようだ。彼女の後ろに盾を三枚出して槍を防ぎ、槍を防いでいる一枚を残し、二枚を一本の槍に変えてそいつの顔面に穴を空ける。
「ありがとうございます」
それに気づいた彼女が声をかけてくる。
俺は一度頷き、
「敵が思ったより多い。こちらに来い、一掃する」
「了解」
そう言って桜咲は俺と背中合わせになり、戦闘時は常時回線を繋いでいる携帯電話を出し、
「龍宮、先生があれをやる」
『解った』
龍宮に連絡を入れる。彼女の返事と共に先ほどまで響いていた弾音が止む。
少し動きが止まっていた俺たちに、これ幸いと敵達がこちらへと来た。
(「氷槍雨」、起動)
と、その瞬間上空に氷の槍が出現。その数約三百。それら全てが敵のいる範囲いっぱいに矛先を向けている。俺たちしか見ていない奴は勿論、槍に気づいた奴は武器を盾にするため構えようとするが間に合わない。目標との距離がそれなりに近く、銃弾の初速度と同じ運動速度を持って発射される槍を防ぐ手段を持つ者はいない。槍は異形の怪物達を残さず貫き、最後まで残った敵の数は指で数えるほど。それも無事な奴は一体も居らず、そこにいるのがやっとという状態。
そいつらに向かって桜咲の斬撃と龍宮の銃撃が襲った。
「お疲れさま」
とりあえず最終確認として残っている者がいないか調べて、今日の仕事は終了。
二人に労いの言葉をかける。
「お疲れさまです」
「お疲れ」
二人がそれぞれの武器を仕舞った。
「しかし相変わらず先生の魔法はすごいね」
龍宮が先ほどまで戦場だった場所を見る。
そこには俺の攻撃の名残として、氷が幾つか落ちていた。
「同感です。最後の奴は特に」
桜咲が頷き、
「前から思っていたのですが、どうしてあの攻撃を一番最初にやらないのですか?」
と、聞いてきた。
とりあえず歩こうと言って、帰路につきながら俺はその理由を話す。
「戦い始めた頃はあれを最初に使っていたんだがな、その場合相手の位置とかを正確に掴んでいなくて外れる数が多いんだ。だから今は暫く戦って相手を引き寄せて範囲を絞ってから一網打尽に攻撃、という方法を取っている」
他にもI-ブレインの負担などの問題もあるのだが、これは言わない。
その後俺たちは寮に着き、それぞれの部屋へと帰った。
次の日俺は学園長に呼ばれた。
「昨日はすまんかったな、ご苦労じゃった」
「いえいえ。組んだ面子が良かったですし、何も問題もありませんでした」
「うむ、それは何よりじゃ」
学園長が満足そうに頷く。
「それで、今日はどのようなご用件で?」
この事だけのために呼び出したのではないはずだ。
「うむ、実はネギ君のこと何じゃが、彼はうまくやっとるかのう」
俺は先ほどここに来る前に覗いてきた彼の授業を思い出し、
「ええ。生徒とも打ち解けていますし、授業の方も頑張っているかと」
「そうかそうか、けっこうけっこう。では四月から正式な教員として採用できるかのう」
そう言って学園長は髭を撫でながら、フォフォフォと笑う。
「ご苦労じゃったの、十六夜君」
「いえ、俺は特に何も」
実際に俺は彼に対して特別な事は何もしていない。彼に質問されれば答え、困っている時は助けた。やったのはそれだけ。
と、そこで学園長が人差し指で天井を指し、
「―――ただしもう一つ・・・」
何か良からぬ事を企んでいるような眼になって、
「彼にはもう一つ課題をクリアしてもらおうかの。“才能ある立派な魔法使い ”の候補生として―――」
そう言って彼はフォフォフォフォと笑いながら、ネギ君に渡してくれと一枚の封筒を俺に差し出した。
「ネギ君、ちょっといいかな?」
明石、椎名と一緒に歩いていたネギ君に声をかける。
「あ、はい!?十六夜さん?」
何故か驚いたように振り返るネギ君。
「実は学園長から君への手紙を預かっていてな」
はいこれ、と学園著からの封筒を渡す。
それを受け取って、表に書いてある中身の内容を見て彼は、
「えっ!?僕への最終課題!?」
と叫び、それを見て何を思ったのかあわわわわと慌てる。
「とりあえず中身を見たらどうだ?」
彼を宥め封を開けるように言う俺。実は俺も中身を見ていない。学園長は教えてくれなかったからだ。
「あ、はい。そうですね」
そう言ってネギ君は中に入っていた紙を出した。
そこには、
【ねぎ君へ 次の期末試験で、二-Aが最下位脱出できたら正式な先生にしてあげる】
下には学園長のサインが押されている。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらく呆然とする俺たち。
あのじじい、何て事を考えてるんだ。
「な・・なーんだ、簡単そうじゃないですか―――」
びっくりしたーと笑うネギ君。
「そ、そうか?」
おいおい笑い事じゃないぞ、ネギ君。
だって二年A組には最強の天才を超える究極のバカがいるのだから――――
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