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第7話 試験 投稿者:八尾 投稿日:07/02-20:28 No.2626
ネギ君へ最終課題が出された次の日、またもや俺は学園長に呼び出された。
「おはようございます、学園長」
「うむ、おはよう」
「今日はどのようなご用件で?」
これが終わればすぐに授業があるので、無駄なことは話さず単刀直入に聞く。
「実はの、ネギ君やこのか達が図書館島の奥深くに入ってしまっての。まだ帰ってきとらん」
え?
「どういう事です?図書館島に?何でまた?」
しかもネギ君が一緒らしい。最終課題はどうした?
「あの島の奥にとある魔法書があるんじゃが、彼女らはそれを取りにいったらしいのじょ」
「魔法書、ですか?」
「うむ」
俺はエヴァに見せられて何冊か魔法書を見たことがある。読めなかったが。
そんなことはどうでもいいな。
「今彼女らに必要なのはその魔法書ではなくて、参考書だと思いますが。何故そのような物を彼らは取りに?」
「その事何じゃが、実はその本は世界最高クラスの魔法書でな。読むだけで多少頭が良くなるという噂がある」
なんじゃそりゃ。
じゃあそれを書いた奴はどれだけ頭がいいのだろうか。
「それをどこから聞きつけたのか、図書館探検部の生徒達が二年A組の中でも成績の悪い五人に教えて一緒に取りに行ったというわけじゃ」
図書館探検部に所属しているのは確か綾瀬、近衛、早乙女、宮崎の四人だったな。
それで頭の悪い五人は綾瀬、神楽坂、古、佐々木、長瀬。
その魔法書の事が彼女たちの間で話される可能性は十分にある。
だが・・・・
「どうしてネギ君が?」
彼が行く理由が分からない。
「ふむ、その事何じゃが、実はネギ君が魔法使いということはアスナちゃんにばれてるようでな、それで助っ人として呼ばれたのじゃろう」
「は?」
ばれてるって・・・まてよ、確か魔法使いってばれたらオコジョにされるんだったよな。
「ではネギ君はオコジョに?」
「いやいや、そんなことはせんよ。確かに規則ではそうじゃがアスナちゃんは隠すことに協力してくれているようじゃし、まぁ大丈夫じゃろ」
いいのか、それで。
「念のため、この事は内緒で頼むぞい」
「・・解りました」
おそらく子供と言うことで大目に見ているのだろう。
「それで、まだ帰ってきていないそうですが」
本来なら真っ先に聞くことだが、学園長が慌てていないので大丈夫であろうと結論づけて後回しにしていた。
だが念のため聞いておく。
「彼女たちは無事で?」
「うむ、その事は心配ない。皆元気にやっとるよ」
そうか、それは良かった。
「ではいつ頃帰ってくるのですか?もうすぐテストなので早めに帰ってこないと」
彼女たちはただでさえ成績が危ないのだから、人一倍勉強をしなければいけないのに。
「いや、ネギ君達はもう少しあそこにいてもらおうと思っておる」
帰ってこなくていいということか?
「どうしてですか?」
勉強をしないとネギ君はクビだ。今の彼女たちにとって時間は宝だぞ。
「彼女たちは今勉強をしておるからじゃよ」
「勉強、ですか?」
どこでするんだ?。
「そうじゃ。彼女たちがおるところには丁度教科書や参考書があっての。まぁ図書館じゃからあっても不思議ではないが」
いやいや、不思議だろ。
「では食べる物は?」
試験は明後日。それまで絶食はきつい。
「それがの、不思議なことに食料とキッチンがそこにはあるんじゃよ」
フォフォフォと笑う学園長。
それで俺はピンときた。
なるほど。これはネギ君を合格させるために何か仕組んだな?
まったく、たいした狸だ。
まぁいい。それでネギ君が試験を合格できるのなら、俺もあえてそれに付き合おう。
「大体の事は解りました」
そこで一度俺はため息を吐き、
「で、俺にどうしろと?」
「物わかりが早くて助かるわい」
学園長は満足そうに頷き、
「とりあえず二年A組に行ってくれるかの?おそらく担任と生徒の突然の不在で困っておるはずじゃ」
「わかりました」
今日の俺の授業を最初に受けるのは彼女たちだ。
他のクラスの迷惑にならないのはいいが、作為的なものを感じるのは気のせいか?
二年A組に行くと、皆どこか焦ったように勉強していた。
俺が入ったことに皆が気付き、何人かがこちらに駆け寄ってくる。
ネギ君の最終試験のことをどこからか聞きつけたらしく、
「ネギ先生がクビってどういう事ですか!?谷川先生!」
中でも雪広が俺が親の敵のように迫ってきた。
「落ち着け」
彼女が服を掴んできたのでそれを離し、
「とりあえず説明するから座れ」
手をパンパンと叩き、彼女たちを自分の席に座らせる。
俺は教壇に立ち、魔法の事は外してネギ君の最終課題の事を説明した。
これは情報漏れによりあまり追求されずに終わったが、その次が問題だった。
「ネギ先生とアスナさん達五人組が図書館島で行方不明ということですが」
雪広が席から立ち上がった。
「捜索隊とかは出されているのですか?」
さて、どう説明しよう。
「いや、そんなものは出たと聞いていないな」
「じゃあすぐに出してください!無いなら私の所から出します!!」
金持ちの言うことは違うな。
「それは頼もしいが必要ない。もう見つかった」
「え、そうなのですか?」
教室が少しざわつく。
「ああ。それでなどうせ揃ってるのだからということで、あいつ等で合宿をする事になった」
「が、合宿ですか?」
「そうだ。ネギ先生は今彼女たちに付きっきりで勉強を教えている」
「では木乃香さんはどうして帰ってこないのですか?彼女は別に良いと思うのですが・・・」
「それもついでだ。自分で勉強するよりも先生に教えてもらった方が解るだろ」
「まぁ、確かにそうですわね」
まぁこんな感じで良いだろう。嘘はついてないし。
すると雪広が鞄を机の上に出し、
「だったら私もその勉強に参加させて頂きますわ」
教科書などをせっせと入れだした。
それにつられて教室のあちらこちらから私もー、と声が上がる。
「それで先生、その合宿はどこで?」
「アホか」
雪広にデコピンを喰らわす。
「イタッ!どうしてダメなのですか!!」
「別に行く必要はないだろう」
「でもネギ先生が教えてくださるのでしょう。そうなればこの雪広あやか、今回のテストは全教科百点間違いなしですわっ!」
どういう理屈だよ。
「バカなこと言ってないでさっさと勉強しろ」
「どうしてですかっ。アスナさん達だけずるいですわ!」
「あいつ等の成績はお前も知っているだろう。自分でしたってなんというか無理そうだしな。そうでもしないとあの五人は良い点とれないぞ」
「うぐっ、しかし・・・」
はぁ、と俺はため息をつく。
それだけネギ君が慕われているのはいいことだが、今は彼に会うことよりも勉強の方がさきだろう。
「落ち着け雪広。今はそれよりもテスト勉強が先だろ。ネギ君が学校を辞めてもいいのか?」
「はっ!?そうでしたわ、私ったらつい目の前の事に目が眩んで・・・皆さん、さっさと勉強を始めますわよ!!」
・・・・・もしかして忘れてたのか?
皆ジト眼でお前を見てるぞ、雪広。
「とりあえずこの時間は自習にしてやる。解らないことがあったら聞きに来い。教えてやるから」
俺はロビーのスクリーンでその結果を見ていた。
「―――第二十二位、2―P!!70.8点!」
あと二つ、まだA組のは出ていない。
「次は下から二番目・・・ブービー賞です」
近くにはネギ君や神楽坂達がおり、その結果を見守っている。
「えーと・・・これは・・・2―Kですね。平均点69.5点。次回はがんばってくださいねー」
A組ではなかった。つまりこれは・・・・。
ふと扉が開く音が聞こえてそちらを向くと、ネギ君が外に出る所だった。
どうやら雰囲気から察するにそのまま帰るようだ。とりあえず別れの挨拶でもしておこうと思い、追いかけるとその途中で学園長と遭遇した。
『もしもし?』
「撫子、俺だ」
学園長と別れて学校を出てから寮にいる撫子に電話をかける。
『どうした?まだ学校だろう?』
「まぁそうなんだが。そっちにネギ君は来なかったか?」
『ネギの坊主か?そういえばさっき一瞬帰ってきたぞ。なんかいっぱい荷物背負ってたけど、何処か行くのか?あいつ』
「何分前だ?」
『十分くらい前だ』
「そうか、分かった」
『何かあったのか?』
「悪いが時間がない。詳しいことは後で話す」
電話を切って考える。
確か寮から一番近かった駅は中央駅だ。
「ネギ君」
「あ、十六夜さん・・・」
何とか間に合った。
ネギ君は改札口からホームに入った所にいた。
「何処に行くんだい?」
「僕はウェールズに帰ります」
「どうして?」
「どうしてって、学園長からの課題がこなせなかったから・・・・」
少し俯いくネギ君。
「だから僕は先生を辞ないといけません。そして先生を辞めたら僕はここにいる意味はありませんから」
「ふむ・・・・だったらせめてみんなと挨拶をしてから行ってはどうかな?」
(接近者の存在を感知、後方)
「そんな、僕、皆さんと合わせる顔がありません」
「そうか。しかし彼女はそう思ってはいないようだよ?」
「え?」
俺が横に一歩動く。
「ネギ!」
「アスナさん・・・」
そこには神楽坂がいた。
「ゴ、ゴメン!!本当にゴメンっ!!私達のせいで最終課題で落ちゃって‥魔法の本捨てたのも私だし…」
「いえ・・そんなことないです。誰のせいでもないですよ」
「ネギ・・・」
「魔法の本なんかで受かってもダメですし・・・結局僕が教師として未熟だったんです。クラスのみなさん、特に五人組(のみんなには感謝してます。短い間だったけどすごく楽しかったし」
「ちょ、ちょっと・・・そんな簡単にあきらめちゃうの!?マギ‥なんとかになってサウザンなんとかを探すんじゃなかったの!?」
「・・・・・さよならっ!」
「あっ、コラ!!」
ネギ君がホームの中へと走っていく。
まぁ待て、ネギ君。
俺は彼の足元に氷の鎖を出して引っかけた。
「あぶっ!?」
盛大に転けるネギ君。
立ち上がろうとした彼を神楽坂が改札口を飛び越えて捕まえる。
「バカ!行っちゃダメって言ってるでしょ―――!!」
(接近者の存在を感知、多数)
「ん?」
後ろを向くと五人組(と図書館組。
そして、
「あなたのせいでネギ君、かわいそうな思いをしていますよ」
「う、うむ・・」
学園長がいた。
「解っておるわい。今回は儂も反省しとる」
二人でネギ君を止めるため説得をする彼女たちを見ながら、
「そう思うなら早く知らせてあげてください」
「そうじゃな」
皆の元へ歩いていく学園長。
真相はこうだ。
学園長は遅刻組の採点を自分でやったらしい。
しかしその結果を2―A全体と合計するのを忘れていたらしく、発表されたのは八人分の点数が入っていない平均点。
そして本当のA組の平均点は81.0点らしく、それはつまり―――――
「なんと!2―Aがトップじゃ!!」
「や・・・・やった――――ッ!!!!」
こうしてネギ君は、新年度から正式に麻帆良学園の教員になることが決まった。
おめでとう、ネギ君。
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