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英雄のタクティクス その一 新たなる旅へ(×FFT) 投稿者:かい 投稿日:04/09-04:41 No.172
私は歴史学者アラズラム。
この世界の歴史には様々な英雄が登場している。
大国同士の戦争を終結させた者が英雄ならば、小村の危機を救う者もまた英雄である。
かつてこのイヴァリース大陸で行われた大戦争である゛獅子戦争゛もまた、ある若き英雄によって終結された。
しかし、当時もっとも高い権力を持っていた『聖アジョラ信教』によれば。
『その若者は、神を冒涜した異端者である』とか……。
はたしてどちらが真実なのか。
今回はその謎を解くため、片や英雄、片や異端者である若者の生涯の一片を覗いて見ようと思う。
機工都市ゴーグ ブナンザ宅
ガチャ……。 バチン! バチバチバチ!
何かをはめる音が、決して広くは無い部屋に響く。
そして何かが型らしき物にハマると、その物体から電磁音が鳴り響く。
「よし、大丈夫みたいだね。さぁクラウド」
最初に声を上げたのは、輝くような金色の髪を持つ中性的な顔をした青年であった。
名をラムザ=ベオルブという。
「……コレで本当に帰れるのか?」
その声に応えた男。ラムザと同じ金髪だが、髪が特徴的にハネている所はラムザとは似ても似つかない。
名は……先程クラウドと呼ばれていた。
「なんだよ。疑り深い奴だな」
さらにクラウドの言葉に応えた青年。名はムスタディオ=ブナンザ。この家の主人の息子である。
三人が囲んでいる物体。それは一見、天球儀のようにも見える機械である。
だがその正体は、次元を旅するために作られた次元転送機。
過去に作られた遺産が、遥かな時を越えて発見された物だ。
『次元を超える』などと言えば酷く馬鹿げた話である。
だが、現にこのクラウドという人物はこの転送機によって、この世界にやって来たのだ。
そして今回は、そのクラウドを元の世界に戻すため、再びこの転送機を作動させているのである。
「大丈夫、きっと帰れるよ。さぁ、クラウド」
「……まぁいい。あの時から俺の命はお前に預けてた。今更疑う理由もあるまい」
そう言うと、クラウドは、大きな電磁音を立てる転送装置とは対照的に、静かに転送装置へ歩み寄っていく。
元の世界へ帰ればもう二度と、彼らは再会する事は無いだろう。
しかし、元々クラウドはお互いがお互いの存在さえも知らない別々の世界に生きる者。
こうしていずれは元の世界に帰るのが一番良いのである。
それに、彼には『帰るべき場所』があるのだから。
「ラムザ」
と、歩みを止め、クラウドは振り返らずラムザを呼ぶ。
「なんだい?」
「お前には世話になったな。いちおう感謝しておく」
素直とは間違ってもいえない言い方である。
だが、それがクラウドの性格なのである。むしろ、感謝する、と直接言う方が珍しい。
彼には彼なりに感謝しているのである。
あまり長い付き合いとも言えない関係であるラムザだが、クラウドのその性格は、彼自身もよくわかっていた。
「どういたしまして。僕だって君には色々感謝してるよ」
ラムザがそう言うと、クラウドは――ラムザ達には見えないが――口の端をニヤッとさせ、再び転送装置へと歩み寄っていった。
「甘い男だ……」
それだけ言うと、クラウドは転送装置に、自らの手のひらを添えた。
すると、それを合図にするかのように、転送装置の電磁音が一層強くなり、機体の内側から光が漏れ出す。
「さようなら、クラウド……」
光が、クラウドの姿を捉えられないほど強くなり、それが収まった時にはすでに彼の姿は無かった。
還って行ったのである。彼の本来存在すべき世界へ。
「行ったな……。さぁ、無事終わった事だし、機械を片付けるか」
「うん」
二人が機械の分解を始めようとしたその時であった。
バチバチバチバチバチ!!
「え?」
「な、なんだ?」
クラウドを元の世界に戻し、役目を終えたはずだった転送装置は、その動きを止めようとしない。
むしろ、先程より強い電磁音を鳴らしている。更には先程の光も漏れ始めている。
暴走である。
「ま、まずい! ラムザ、その機械から離れるんだ!」
ムスタディオが友へと叫ぶが、時はすでに遅かった。
「う、うわあぁ!」
光がラムザを包み込んだ。先程クラウドを元の世界へ送り返した時のように。
「ラムザ!」
名前を叫ぶも、返事が帰ってくる様子は無い。
そして、光が収まった。
「ラ、ラムザ……?」
ムスタディオの呼んだ友は、すでにその場にいなかった。
彼は旅立ってしまったのである。
異世界へ。
続く……
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