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英雄のタクティクス その四 夜間襲撃(×FFT) 投稿者:かい 投稿日:04/09-04:43 No.175

「(実は明日から新任の教師が来る事になっていての。

君にはその補佐兼副担任をしてもらいたいんじゃ。

君の年は……ふむ、二十歳か。ならば教育実習生という事にしとけば問題ないの。

泊まる所じゃが、この住所の所まで行けば大丈夫じゃ。いちおうこの紹介状を渡しておこう)」



先程、学園長に言われた事を思い返しながらラムザは歩く。

手には地図と住所が書かれた紙が握られている。



あたりはもうすっかり暗くなっていた。

建物の中にいたから解らなかったが、相当な時間眠っていたようだ。





ラムザが今歩いている所は、整備された道路の脇に桜の木が沢山植えられた道であった。

先程通ってきた道にあった看板に『桜通り』とか書かれていた。

成る程、確かに桜ばかりだ。



この桜の木が咲いたら綺麗なんだろうなぁ。ラムザはそう思いながら歩みを進めていた。





と、その時であった。



「……モンスター?」



妙な気配を感じた。ラムザの長年の経験が禍々しい気配を感じ取った。

この世界にもモンスターがいるのか……? ラムザはそう思いながら手近な棒切れを手にとった。武器の代わりである。

ラムザの顔は、桜の咲き乱れる姿を想像するのほほんとした顔から、いくつもの戦場を経験してきた戦士の顔に変わっていた。



「(どこにいる……?)」



ラムザは目を凝らして辺りを見回した。街灯のおかげである程度の明るさはある。

電柱の上に器用に立っている人物を見つけるには、十分の明るさであった。



「誰だ!」



ラムザは咄嗟に足元の石三つほど拾い、一つを電柱の上目掛けて投げつける。

しかし、電柱の上の人物にその石が当たる事は無かった。



人間では考えられない程の跳躍をし、石を避けた謎の人物は、その跳躍を利用し

ラムザから数メートル離れた場所に着地する。



石は当たらなかったがソレで良い。あくまで石は牽制である。





「その石を投げる際の無駄の無さ……。唯の人間では無さそうだな」



跳躍した際に、謎の人物が付けていた様である帽子は脱げていた。

そのおかげで謎の人物の顔を確認するのは容易にできた。



その人物は、なんと子供であった。しかも女性である。

年は十歳そこそこで、体全体を覆う真っ黒なマントを着込んでいる。

もし、帽子を付けたままだったら、ラムザの世界にいた『黒魔道師』を思わせる格好だった。



「何者なんだ。こんな街中で何をしている」



棒切れを剣のように構え、ラムザが問い掛けた。



「なに、唯道行く人々の血を分けて貰ってたのさ」



血を分けて貰う。その言葉に、ラムザはかつて自分の世界で見た事のある『吸血鬼』を思い出した。

ラムザの記憶が正しければ、ソレはとんでもない強さを持っていた。

かつての力を失ったラムザが敵うかどうか、想像は簡単についた。



敵わないのなら……。





「という事は僕の血も頂こうというわけか……」



「まぁそういう事だ……。覚悟してもらおうか」







勝利条件  謎の吸血鬼を倒せ!



READY!





謎の吸血鬼が、凄い勢いで向かってきた。

ラムザは、持っていた石を力いっぱい投げつける。



「そんな物が効くと思うか!」



投げた石は、吸血鬼の異様に長い爪で切られてしまい、なおも吸血鬼は向かってくる。

だが石を切ると同時に、ほんの一瞬だけ隙が生まれた。



吸血鬼が石に注意を向けている間に、ラムザは素早い動きで吸血鬼に突進した。

いきなりの行動に、吸血鬼は避ける事は叶わず、その体当たりをまともに受けてしまう。



「うわっ!」



思わぬ攻撃を受けた吸血鬼は、体制をくずし、二・三歩ほど後ろによろめいた。

だが、その程度で倒せるほど、吸血鬼は甘くない。ラムザはそんな事十分に解っていた。



吸血鬼がよろめいてる間に、ラムザは顔だけを吸血鬼に向け、石を投げながら道の脇の茂みに飛び込んだ。

よろめいている所に石が飛んできた吸血鬼は、いくつかの石を直撃してしまう事になった。



敵わないのなら、逃げるまで。そのためには隙を作れば良い。

ラムザはそのために石を投げ、体当たりをしかけた。



「おのれぇ! 逃がさんぞ!」



思わぬ攻撃で出し抜かれた吸血鬼は、頭に血をのぼらせ、追いかけてきた。

ラムザは、走りながらできるだけ人がいそうな所を探した。



だが、夜遅いせいか。住宅街に出ても人がいそうな気配が無い。



ひとまず、ラムザは塀と塀の隙間に隠れる事にした。



「どこへ行った……! どこへ……!」



吸血鬼の声が聞こえてきた。

このままでは見つかってしまうのも時間の問題である。



ラムザがどうした物かと考えていると、足元に何か転がっている事に気付いた。



空き缶である。



ラムザは空き缶という物を見た事がなかった。

しかし、材質を見て、すぐにある事を考え付いた。





ラムザは、その空き缶を拾い上げると、吸血鬼がいる方とは反対の方へと、できるだけ遠くに飛ぶように投げた。





カーン カーン カーン……





空き缶が地面に落ちる音があたりに鳴り響いた。

音がしたのを確認したラムザは急いで奥へと身を潜めた。



静かな住宅街故、空き缶の音はすぐに吸血鬼の耳にも届いた。



「そっちか!」



案の定、吸血鬼は空き缶の落ちたほうへと向かっていった。

吸血鬼が見えなくなるのを確認したラムザは、急いで隙間から出てきて、吸血鬼が行った方とは反対方向へ逃げていくのであった。






CONGRATULATIONS!

THIS OPERATION IS COMPLETED!








「すっかり遅くなっちゃったなぁ……」



ラムザが学園長に教えてもらった住所に着く頃には、すっかり真夜中になっていた。

ラムザが辿り着いた住所、ソレはなんと森の中だった。

こんな所に人など住んでいるのかな? そう思ったラムザだが、木で出来たログハウスが見えてきたので、疑うのをやめる事にした。



まだ明かりはついているようである。



少しだけ安心したラムザは、扉の前に付いていたベルを鳴らした。





「どちら様ですか?」



中から出て来たのは、緑色の髪をし、メイド服を着た女の子であった。

耳には何か変な飾りがついているが、ラムザは気にしなかった。いや、気にしたら負けなような気がした。





「あ、こんな遅くにすいません。実は学園長にココに泊めてもらえと紹介されまして……。あ、コレ学園長からです」



先程、学園長から渡してもらった紹介状を渡す。

それを呼んだ女の子は、納得したがどこか困った顔で言った。



「すいません……。泊めるかどうかはマスターに聞かないといけないので、少々待っていていただけますか?」



「あ、はい。もちろん」



ラムザがそう言うと、その女の子は一礼し、中へと戻っていった。

しばらくすると、怒鳴り声の後、なにやら怒ったような声が聞こえてきた。





「まったくあの爺! 人の家をなんだと思っているんだ! 誰だその男というのは……」



扉が開いいてから数秒後、同時に二つの叫び声が森に響いた。

緑髪の女の子は、訳が解らなく、唯絶叫する二人を傍観する事しかできなかったという。












続く……。

英雄のタクティクス 英雄のタクティクス その五 初武具取得

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