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英雄のタクティクス その六 戦友の苦難(×FFT) 投稿者:かい 投稿日:04/09-04:44 No.177

「……ですから、この外面をこの素材で……」



「いや、そしたらこちらへの平均強度が……」



機工都市ゴーグのある家の地下室で、何人もの学者達が転送装置を囲んで、何やら話し込んでいる。

その様子を、この家の主の息子、ムスタディオはただ見ている事しかできない自分を悔やんでいた。



と、そこへ……。





ドタ ドタ ドタ ドタ……。



バーーン!



地下室の入り口に付いているドアを蹴破るような勢いで、何者かが乱入してきた。



部屋に居た者全員が、その轟音がした方を見た。

そこには、金色の髪を、やや短めに纏めた女騎士が立っていた。名を、アグリアス=オークスという。

彼女もまたムスタディオと同じ、ラムザの戦友であり友人である。



「アグリアス、人の家なんだからもうちょっと静かに「ラムザが消えたというのは本当か!?」



ムスタディオの注意を聞くまでも無く、彼女は青年へ詰め寄る。それはもう光速で。

どうやら、ラムザが消えたという知らせを受け、急いで飛んできたようである。



「あ、あぁ……。本当だよ。転送装置が暴走してな……グァ!?」



「ラムザはどうなった! どこの世界へ!? 助けに行く事はできるのか!!?」



ムスタディオの首を掴み、ブンブンと振りながら質問を繰り返すアグリアス。

確かに、彼女はラムザに感謝してもしきれない程の恩がある。



だがソレを考慮しても、この様子は少々おかしい気もする。何が彼女をこうさせているのか。





「お、落ち着けアグリアス……順番に説明するから」



首を掴まれながらも、なんとか声を振り絞ったムスタディオの声を聞き、アグリアスもようやくムスタディオの首を開放する。

ゲホゲホと咳き込んだ後、ムスタディオはいままでの事に関する説明を始める。





「ラムザが消えた後、俺は急いでこの機械をもう一回動かそうとしたんだ」



しかしラムザが消えた後、装置を動かすのに使った聖石はラムザと共に消えてしまっていた。聖石が一緒に消えたのは、おそらく暴走による不具合だと思われるが……。

とにかく、聖石が無い以上この装置を動かす事はできない。



「なんだと……! それではラムザを助けにいけないでは無いか!」



「だ、だから首を掴むなって……! ……で、仕方がないから俺はオーランに相談したんだ」



オーランとは、南天騎士団という騎士団の団長、シドルファス=オルランドゥの義息子、『オーラン=デュライ』の事である。

彼らの相談できそうな知り合いの中では、もっとも高い権力を持っているのだ。

ちなみに、当の団長であるオルランドゥは、すでに引退し隠居生活をしている。『元』団長とでも言うべきか。

もっとも記録上では、彼はすでに死んだ事になっているのだが。



しかし、義父が記録上死んだ事になっていても、オーランの地位に変動はなかった。

すぐさま信頼のおける学者を、数名こちらに渡してくれたのだ。



「で、その学者達に、この装置の仕組みを調べてもらってたんだ。そうしたら聖石に代わるエネルギーが見つかってな」



「何なんだ? そのエネルギーというのは?」



アグリアスが、興味深げに聞く。



「電気、さ」



「で、電気? 雷や魔法などで見るアレか?」



電気は実に様々なエネルギーとして使える。

そしてこの装置もまた、電気で動かせるというのだ。



この世界より、遥かに文明が進んでいる世界。すなわちラムザがいる世界では、至極あたりまえの事なのだが。

こちらの世界ではそれがまた凄い発見なのだろう。



「唯な、聖石を使う程の装置だ。並大抵の電気じゃあ動かない」



そこで、今現在オーランに頼んで城の魔道師を呼んでもらっているという。

どうやら魔道師達の電撃魔法の力を利用するようだ。



「で、アグリアスにもぜひ協力してもらおうと思ってな」



「なるほど、私の無双稲妻付きを使えというわけか」



無双稲妻付き。彼女のような騎士の中でも聖なる洗礼を受けた『聖騎士(ホーリーナイト)』のみが使える秘剣技である。

使用者の闘気を、電撃に変えて一気に打つ技である。並みの騎士には扱えない剣技なのだ。

そんな技を易々と使えるあたり、彼女の力量がよく解る。





「それで、今は聖石用の装置から電気用の装置になる様、改造しているんだ」



「成る程。で、いつその作業は終わるんだ?」



「数日は掛かるってよ」



……数日? アグリアスは目を見開いた。

長すぎだ。だったらなんのために自分はこんな急いで来たのだ。



「おいムスタディオ! 呼んでおいて待たせるとはどういう事だ!」



「いや、まさかこんな早く来るとは思わなかったしなぁ……」



事実、伝書鳩を飛ばしてからまだほとんど経っていない。

ある意味、立派な騎士根性と言った所か。



今はそんな騎士根性も、もの凄く意味の無いものと成っているが。










続く……。

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