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英雄のタクティクス その七 波乱万丈空間(×FFT) 投稿者:かい 投稿日:04/09-04:45 No.178
「へぇ~。ラムザ君て新任の先生なんか」
「ええ、まだ教育実習生ですけどね」
不良達を見事倒したラムザは、助けた四人組と一緒に学校へと向かっていた。
元より向かう道が一緒なのだ。せっかくという事もある。
「じゃあ、朝倉が言ってた例の新任教師ってラムザさんの事なの?」
「いや、多分違いますよ。学園長の話だと僕はその人の補佐をする事になるみたいですから」
ラムザは、朝倉という人物の事を知っていたりはしないが、新任教師と言う所には覚えがあった。
何せ昨日聞いたばかりだ。覚えていないはずが無い。
そして校舎が見えてきた所で、ラムザは妙な物を見つけた。
「キャー! 何よコレー!?」
冬の朝にも関わらず、下着しか付けていないツインテールの少女。
そしてその傍らに、どうだと言わんばかりに鼻息をフン、と出す杖を抱えた十歳前後の少年。
さらには、何か感心したようにその様子を見ている人物が二人。
様子を見ている内の一人には見覚えがあった。
昨日自分を保健室まで運んでくれた(らしい)近衛このかだ。
知り合いが居たにも関わらず、声を掛けるかどうか、ラムザは悩んだ。
それほどその場は妙だった。外見的にも雰囲気的にも。
どうした物かとラムザが迷っていると、黒髪の少女がこちらに気付き、歩み寄ってきた。
「あ、ラムザ君や。おはよぉ」
人懐っこい笑顔を向けながら、このかは歩いてくる。
丁度その時、その様子をどこからか見ていた某女剣士が、顔を歪ませながらラムザを睨んだがそれはまた別の話。
「おはようございます。このかさん」
「いややわ~、そんな畏まらんでもええのに。普通に話してぇな」
丁寧なのは、ラムザの元々の性格なのだが、やめろと言われればラムザもそれ以上やろうともしない。
それがラムザの性格なのである。
「あれ? このかってラムザさんと知り合いなの?」
周りに居た四人組が話しに割って入ってきた。
今の言葉を聞く限りでは、おそらくこの四人組とこのかは知り合いなのだろう。
「あぁ、昨日ちょっとお世話になりまして。それより……」
ラムザはそこで話題を、先程から気になっていた者へと向けた。
このかの後方に広がる、そのあまりにも異様な光景へ。
「その人達は……何をやってるんですか?」
半裸の少女が、人目も気にせず十歳程の少年の襟首を掴み持ち上げ、何かを怒鳴りながら聞いている。
一方持ち上げられている少年は、その地に付かない足と手を必死にバタつかせながらもがいている。
さらに、その様子を見守る男性は、煙草を吹きながらシミジミとした表情を浮かべている。現実逃避とも言うが。
そんな様子を見たこのかは……。
「はは……。ウチもわからん」
と苦笑いするしかなかったという。
「学園長先生! 一体どうゆう事なんですか!?」
「まぁまぁアスナちゃんや」
場所は変わって、学園長室。
あの後、アソコで騒いでいてもしょうがないので、とりあえず場所を移す事になったのである。
ちなみにこの場にいるのは、半裸になっていた子、今はジャージを着ているが。
持ち上げられていた少年と近衛このか。それとラムザである。
「修行のために日本で先生を、か……。そりゃまた大変な課題をもろうたのう」
「は、はい。よろしくお願いします」
そう言いながら、少年は頭をペコリと下げる。
ラムザやこのかは、修行や課題と言った、真意のわかり難い言葉に頭を捻っている。
この少年が教師をやると言う話は、この学園長室に来る途中に聞いた。
どう見ても、十歳程にしか見えない少年が、教師をやると聞いて、ラムザも最初は驚いた。
しかし、ココは異世界だから何が起こってもおかしくない。ラムザは自分にそう言い聞かせた。
別に異世界である事を考慮してもおかしい事なのだが。
「しかし、まずは教育実習生という事になるのう。そこにいるラムザ君と一緒に、今日から三月までじゃ」
「はぁ」
ネギが頷くと、学園長は表情をなごやかな物へと変えて、再び語りだした。
「ところでネギ君やラムザ君には彼女はおるのか? どうじゃな、うちの孫娘なんか「ややわぁ。じいちゃん」
学園長が孫娘の縁談を、さも自然に持ち出そうとしたが、その孫娘本人に止められてしまった。
静止の声と、脳天に直撃したトンカチによって。とても鈍い音がしたが、本人は至って平気そうである。もしかして慣れているのだろうか?
話を振られていたネギとラムザは、額に汗を垂らしながらその光景を見ていた。どうコメントしていいか解らなく、二人共無言である。
「さて、このかにアスナちゃん。ネギ君をしばらくお前らの部屋に泊めてやってくれんかのう」
「な、なに言ってるんですか学園長先生! そんな何から何まで……!」
否定するアスナだが、このかは呑気に『ええよ』とか言っている。
ネギはネギで、困った顔で固まってしまっている。
取り残されたラムザは、自分の済む所が心配になっていたりする。
三者三様の反応を取っている三人をよそに、学園長の話は容赦なく先へと進む。
「さてラムザ君、今度は君の住む所じゃが。今日の仕事が終わったらこの住所に行ってくれたまえ」
そう言って学園長がラムザに渡したのは、昨日渡された紙に似たメモだった。
しかし、中に書いている住所は、昨日の物とはあまったく異なっている。
まぁ当たり前なのだが。
「さて、もうすぐチャイムじゃ。そろそろ教室に向かってもらおうかの」
アスナは、まだネギが自分達の部屋に泊まることに関して何か言っていたが、結局軽く流されてしまった。
そして……。
ネギとラムザは教室の前にいた。
アスナは、まだ泊める事を認めていないようで、怒って先に行ってしまった。
このかもソレに着いて行ったので、結局ネギはラムザと一緒に教室に行く事になった。
今日から一緒に、同じクラスを受け持つのだ、親交を深めておいて損は無いだろう。
「着きましたねネギ君」
「は、はい……(うぅ、緊張するな)」
中をふと覗いて見ると、中には実に個性豊かな生徒たちで溢れかえっていた。
学園長から個性的なクラスだと聞いていたが、成る程確かに個性的だ。とゆうか個性的すぎだ。
やたらと身長が高い者もいるし、逆にあまりにも小さい者達もいる。
中には、魔導師のような魔力を出す者や、皆には見えない様に武器を磨いている生徒もいる。
果てには先日の吸血鬼もいた。これにはラムザも驚いた。
なんなんだこのクラスは。本当にココは女子中学のクラスなのか?
ココだけ別次元の世界なんじゃないだろうな。
ラムザはそんな事を考えながらもう一度教室の中を覗いた。別次元から来たラムザがそう思うのも、何か変な話だが。
「超、肉まん一個ちょーだい」
「一個ネ。オケよ」
「引っ掛かるかなぁ~」
「(いひひ)」
「(クスクス)」
「新任、美形だと良いけど」
「ネタにするんでしょ?」
挨拶を交わしている者達もいれば、何をやっているのかよくわからない者もいる。よく見たら先ほど助けた女の子達もいた。
これが僕が、いや僕達が教える生徒達かぁ……。ラムザは教室を覗きながらそんな事を考えていた。
一方ネギは、黒く薄い本のような物を見て『ゲッ』などと言っている。
ふとネギの方を向いたラムザはその本がなんなのか気になった。
確か先程自分も渡された気がした。その事を思い出したラムザは、先程着る物(スーツ)と一緒に渡された鞄をあさる。
「あった。えっと……、クラス名簿か」
中身を見ると、ネギが『ゲッ』と言ったのも納得できた。
生徒の数が中々多かったのだ。
ラムザの世界にも、学校という概念はあった。
だが、戦争などの影響で人口が少なめになっていたので一つのクラスにここまで数がいるのも珍しい事だった。
下手すればラムザが昔纏めていた小隊より数が多い。
「顔と名前……すぐ覚えれればいいですね。ネギ君」
「は、はい……」
"さて、そろそろ入ろうか" ネギにそう促し、二人は教室の中に入っていった。
トラブルだらけの教師挨拶になるとも知らずに……。
続く……
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