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-第1章-出会いも別れも戦火の中で 投稿者:kaname 投稿日:08/12-13:27 No.1089
視界を埋め尽くす塵、炎、光。
その光景をあえて表現するならば、それは地獄。
其処には少年が佇んでいた。
「これで終わった・・・」
少年が呟く。
どう見ても20歳には届かないその幼げな容姿だけを見れば、彼はどう考えてもこの地獄の様な場所には似つかわしくは無かった。しかし、少年が持つ巨大な西洋風の大剣『吸血鬼(ブルートザオガー)』と凛とした表情がその幼げな容姿から来るマイナス面を完膚なきまでに吹き飛ばしていた。
そして、この大剣を片手で軽々と持ち上げている少年の名は坂井悠二と言う。
15歳の頃までは普通の人間だったが、この世を食い荒らす紅世の徒にその存在を喰われ1度死に、故人の代替物として、周囲との繋がりを当面維持し、やがて力の減衰とともに存在感や居場所を徐々に失い―遂には消えてしまう道具トーチとしてこの世に再び矮小な存在として生(と言って良いのか分からないが)を受けた。しかし、彼はトーチの中でも特別に特別を重ねた存在、摩訶不思議な力を持つ紅世の宝具を自身に内包する蔵、『ミステス』だったからだ。おまけに、彼が内包する宝具は時の事象に干渉する紅世秘宝中の秘宝『零時迷子』。
その為に数多の紅世の徒や王、そして時にはフレイムヘイズからすらも狙われた。
だがそれだけの出来事しかなかったら彼は決してここまで強くなる事はなかっただろう。彼の傍らにはいつも1人の『炎髪灼眼の討ち手』というフレイムヘイズが居た。
そのフレイムヘイズは代替物にしか過ぎない筈の悠二を愛し、守ってみせると誓ってくれた。悠二もまた彼女を愛し、彼女を守ると誓った。そして、悠二は彼女の為に強くなった。そしてそのフレイムヘイズの名は・・・
突如、悠二が『吸血鬼(ブルートザオガー)』を何処かへとしまい込み走り出す。愛する者の姿を求め走り出す。
そして、焼け野原となった平原を並みの人間ならば決して視認する事が出来ない程の速さで駆け抜ける。愛しき者の無事な姿を求めて。
(生きていてくれ!頼む!無事でいてくれ!)
辿り着いたのは、先程まで山が存在していた場所。
先程起こったとんでもない熱量の火球が山を消し飛ばした場所だ。
そしてその場所に悠二が求めていた者が、しかし、悠二の求めていた姿とはかけ離れた姿で転がっていた。
「シャナ!!」
悠二が愛しき者の名を叫び、殆ど1跳びでシャナと呼んだ少女の元へと近付き、口と胸に手を当て、生命活動が行われているかどうかを確かめた。
[生きていてほしい]そう思ったからこその行動だった。しかし、悠二の手に伝わって来る物は何も無い。悠二は信じたくないという思いと相反し、全てを悟ってしまった。
(シャナが、死んだ。)
途端にボロボロと涙が零れ出す。悲しさ、悔しさ、怒り、それらの感情を含んで悠二は泣いた。へたり込み、動かなくなってしまったシャ
ナを抱き締めて声を上げて泣いた。
SIDE:悠二
「畜生、畜生、畜生。何で、何でこんな事になってしまったんだ。」
僕は自分の腕の中で、もうピクリとも動かなくなってしまったシャナを見ながら呟いた。
途端に今までシャナと一緒に歩んできた道を思い出す。
シャナと初めて出会った日の事、2人で御崎市を後にした時の事、100年近く経って、「もう僕達も立派な『約束の2人(エンゲージ・リンク)』じゃないかな。」と言ったら途端に顔が真っ赤になったシャナに刀の峰でぶったたかれた事・・・どれも楽しかった。
(もっと一緒に居たかったのに・・・)
強く強く心の底で願う。しかし、奇跡と言うものはそう簡単に起るものではない。自分がなにより知っている。
後ろで何かが動く音がした。瞬間的に臨戦態勢を整える。
(しまった!こんな近くに近付かれるまで気付かないなんて!)
先程『吸血鬼(ブルートザオガー)』を仕舞い込んだ右手の指輪から再び 『吸血鬼(ブルートザオガー)』を引っ張り出す準備を終わらせ、自在法を身体と頭で組上げる。
(急げ、急げ、急げ――――――――!)
「お前、何やってんだこんなとこで?」
「へっ?」
突如かけられた言葉に思わず間抜けな声を上げる。振り返ってみると、そこにいたのは赤い髪が特徴的で悪戯好きそうな笑いを浮かべ、手に長い棒(恐らく杖だろう)を持った美少年だった。
(なんだか佐藤に似てるな)
思わずそう思ってしまう。
「えっと、君の名前は?」
咄嗟に尋ねる。すると、今度は少年の方が鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。こんな状況なのに名前を聞くなんて変わり者だとでも思われたんだろうか?
そんな事を考えながら、少年の反応を待つ。すると、「へへっ」と悪戯が成功した悪ガキの笑みの様なものを浮かべ、こう言い放った。
「いいぜ!耳の穴かっぽじってよーく聞きな!俺様は稀代の大魔法使い、ナギ・スプリングフィールド様だ!」
この瞬間僕の取るべき道は決定されていたのかもしれない・・・
この少年とのある種の運命の出会いと供に・・・
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