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-第2章-あれから15年後の話 投稿者:kaname 投稿日:08/13-17:02 No.1096




暗い空間の中、円卓を囲むようにして5人の人影がまるで会議を行うかのように座っている。



「15年前からぴたりと消息を絶った『零時迷子』のミステスはまだ見つからないのか?」


その中の1人、黒髪を頭の中心で2つに分け真っ赤な瞳を持った男が、地獄の底から聞こえてくる様なドスのきいた、それでいて少し苛立った様な声で言う。

この男の名は『神名の剛腕(かみなのごうわん)』バグレン。

無敗を誇り、未だに彼の自在法たる“強力神腕”を防いだフレイムヘイズはいないという紅世の王である。

だが、フレイムヘイズに防げる者いなくとも、たかが燃え滓、たかがミステスに防がれた。しかし、だからと言って彼は怒っている訳では無い。

むしろ焦っているのだ。

自分と互角に闘える唯一の存在が自分と再び闘わずにいなくなってしまう事、バグレンはそれだけが怖いのだ。


「『万眼の率い手』を斥候に出しましたが、発見したとの報告は未だにありませんが。」


発言した男の丁度真向いに座る美しく長い白髪を肩下まで伸ばし、蒼い瞳を持った美女が高く良く通るだが少し焦燥感の入り雑じった声で言った。

この女の名は『砕氷の暴風(さいひょうのぼうふう)』アニュエラ。

向かう所敵無しと誉れ高い紅世の王の1人で、これまでも数多のフレイムヘイズを屠って来た強者である。

彼女はバグレンのパートナーであり、彼に惹かれているのだ。

故に、『零時迷子』のミステスに執着するバグレンを見る度に、『零時迷子』のミステスを破壊したい。という、ある種の嫉妬を『零時迷子』のミステスに抱いている。


「ケケケケケケケケケケケ。
アプサラスノヤツガニジュウネンイナイニミツケテミセルトカイッテアトゴネンモノコッテルッテノニアニュエラニチガウヤツヲセッコウニダサレルナンテカエーソーニ。シンヨウシテネーノカ?」


アニュエラの右隣に座るまるで獅子舞に使われる獅子を頭からすっぽりかぶった様な者(物?)がカタカタと顎を動かしてアニュエラをからかう。

この者(物?)の名は『凶狂人形(きょうきょうじんぎょう)』ゼブルファー。

この5人の中では最も古く生まれた紅世の王で、人形使いとしての力はこちらの世界と紅世を通して肩を並べる者は誰もおらず、自分自身の身体も自分で作った燐子で出来ている。

それ程の力を持ちながらも、この5人の中では最弱の王である。

アニュエラはその言葉に対してあくまで冷静に答える。


「口を慎みなさい、『凶狂人形』。『暁の剣』を 信頼していない訳ではありません。貴方が言った様に5年も残っているのでは無く、5年しか残っていないのです。事態の重さをよくよく考えない態度、私は如何かと思いますがね。」


アニュエラは1息にそう言い、言葉を切る。

その言葉に反応する者がいた。


「別に良いじゃ~ん。
ミステスなんかにそこまで気を揉んでたら存在の力無駄に使っちゃうよ?
王たる者、何事にもどっしりと腰を据えて物事に取り掛からなくちゃ~~―――ねっ!」


少年の様な声を上げながら椅子から立ち上がるこれまた少年の容姿をしている。

この少年の名は『絶刻の王環(ぜっこくのおうかん)』エクリプス。

この中では1番若い紅世の王でありながら、最強の力を持つ。

エクリプスは更に言葉を紡ぐ。


「君もそう思うでしょ?

ねえ、我が最愛の友『蒼黒の烈炎』クルーエル。」


「最もだ。

我が最高にして、最強の友『絶刻の王環』エクリプス。」


そう言ったエクリプスの後ろから遥か遠くから響いてくる様な声が響く。

一同がそちらを向くと、まるで悪魔とドラゴンが入り雑じった様な姿をした巨体の怪物が目に入る。しかし、誰1人として驚いた様子は無い。

当然である。

彼は会議が始まった時から其処にいて、今の今までずっと声を出さなかっただけなのだから。

彼の名は『蒼黒の烈炎(そうこくのれつえん)』クルーエル。

現代の紅世の王達の中でも最高の破壊力を誇る自在法“大壊炎”の使い手であり、エクリプスと供に戦いに赴く事が多い。

故に、彼等は友なのだ。


「もしその『零時迷子』のミステスが見つかったら君達ど~するつもりなの?

ねえ、教えてよ。」


「闘い、倒す。只それだけだ。」


エクリプスの問いに真っ先に答えたのはバグレン。しかし、その答えに答えで返したのはエクリプスではなかった。


「壊・・す。奴が・・この・・世に・・存在・・した・・欠片・・も・・残さ・・ず・破壊・・・・・する・・・・・。」


恐ろしくゆっくりとした口調で椅子に座っていた最後の1人が言葉を放つ。


「あっそっ、勝手にすれば?」


エクリプスが放ったその言葉を最後に、この奇妙な会議は終了した。



―――――――――――――――――――――――――――――――



  SIDE:悠二



「あれからもう15年も経つのか・・・。」


僕はそうゆっくりと言葉を紡ぐ。

シャナが死に、
ナギと出会って何故かナギのパーティーの1員になって一緒に行動する事になって、
その5年後日本に行くことになって、
そこで出会った『闇の福音』エヴァンジェリン・A・K・マクダヴェルとか言う吸血鬼の人形使いに気に入られてナギ共々下僕にされそうになったのを返り討ちにして、
(ナギ、幾らなんでも登校地獄の呪いは酷過ぎじゃないか?)
5年前、ナギが僕に、


「俺の家族を守ってくれ。」


と、言い残して消えた時の事、全てが昨日の事の様にありありと思い出せる。


「色々あったなあ・・・。」


つい、ポツリと言葉を漏らす。

僕はシャナが死んだという事を事実として認めた。しかし、諦めた訳ではない。

今、シャナの肉体は僕が自分自身で組み上げた珍妙極まりない自在法で保管してある。

そこに、シャナの肉体と命を完璧に修復する事が出来るほどの存在の力を流し込めば、シャナは再び“天壌の劫火”アラストールのフレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』として復活を果たす。

しかし、その修復にかかる存在の力の量が問題なのだ。

それだけの存在の力を短期間で集めようとしたら、世界を都喰らいで存在の力に変換しても足りないと、あの優秀なる自在師“屍拾い”ラミーに諭されてしまった。

そういう理由で、何百年掛かろうとも地道に存在の力を少しずつ集めよる事にしたわけだ。


「ふうっ。」


思わず溜息をつく。


「悠二さーーーーーーーーん!」


その瞬間背をもたれて休んでいた木の反対側から声がする。

その声に僕は立ち上がり、声の主の方を見る。

そこには4,5歳位の男の子がいた。

赤毛が特徴的な男の子、右手には棒の先端に星の付いた愛用の練習用杖を持っている。

名前はネギ・スプリングフィールド。

ご察しの通り、あのナギの息子である。

彼とはもう4年の付き合いになる。

去年、暮らしていた村を悪魔達に襲われ、姉であるネカネちゃんと一緒にこの魔法使い達の村に避難してきたのだ。

(僕が村から離れたりしなければ・・・)

そんな思いを何度も抱いた。

その思いを話したら、ネギ君もネカネちゃんもいつも、


「悠二さんの所為じゃないんですから気にする事ないですよ。」


と、笑いながら言ってくれる。

その言葉にどれ程この心が救われただろう。

感謝しても仕切れない。

そんな事を考えていると、ネギ君が言った。


「あの~、魔法の練習をしたいのでいつものやってくれませんか?」


期待と憧れで目をキラキラと輝かせながら頼むネギ君に一寸怯むも、


「う、うん。」


そう答えると、準備に入る。

今まで何百回と繰り返してきた行為だ、間違える、失敗するなんて有得ない・・・

目を閉じる。

まず、身体から溢れるほどに漲る存在の力の欠片をほんの少し、火の粉1つほどの量だけ拾い上げて、燃やす。

拾い上げた力を燃え上がらせ、煌かせ、水のイメージを持って流れを作る。

自分の心の奥に眠る数え切れないほど沢山のイメージの中から意思を紐代わりに、その自在法の型を引っ張りあげる。

その自在法の型の溝に力を通し、自分の中で脈動を始めた自在法を己の外側へと押し広げるイメージを停滞させ、傍らにいる期待と憧れに満ちた目で自分を見るネギ君に一言声をかける。


「行くよ?」


ネギ君はその言葉に反応して、慌ててコクコクと頭を上下に振る。

それを見て、口を開き、停滞させていたイメージを開放する為のキーワードを口に出す。


「封絶。」


短い言葉。それをきっかけとして、周囲の景色が紅の中に少し銀の炎が混じった半球型のドームで覆われた。





  SIDE:ネギ

  
「封絶。」


悠二さんがそう呟くと、悠二さんを中心として半径150m程度のドームが形成される。


「何時見ても凄いなあ・・・」


正直に感嘆の言葉を口にする。


「大したこと無いよ。

僕達紅世側の住人にとってはこの自在法『封絶』は基本中の基本だからさ。」


(これが基本って、上級とかはどんな物があるんだろう・・・)

悠二さんの言葉に軽く驚きながらも、ついそんな事を考えてしまう。

それと悠二さんが説明してくれたんだけど、この『封絶』って自在法は普通、時間の因果から世界を脱線させる為、普通の人は封絶の中では動けない筈なんだけど、何で魔法使いは封絶の中で動けるのかって悠二さんに聞いてみた事があるんだけど、答えはなんか考えてみればすぐ分かるような答えだった。

その答えってゆうのが、


「紅世の徒達は紀元前にはもうこっちの世界に侵攻して来てたみたいだし、当時の魔法使い達が徒達の自在法に抵抗する手段を開発して魔法使いの血筋にその能力を残すようにしたんじゃないかな?

ほら、立派な魔法使い(マギステル・マギ)の仕事には子孫達の滅亡危機の回避とかもあるだろうし。」


成程、言われてみれば最もな話だと思う。

僕は魔法学校でも魔法を覚えるのが速くて先生に「ネギ君は天才だね」と褒められた事があるけど、そんなことは無い。(じ、自慢じゃないよ?)

僕は只学校以外でも自分で勉強してるだけだ。

本当の天才っていうのは、きっと悠二さんみたいに頭の回転が速くて、誰にも考え付かない様な事をあっと言う間に考えられる人の事を言うんだと思う。

そのことを悠二さんに言ったら「有難う。」って言って頭を撫でてくれた。

お父さんみたいでとっても嬉しかったな。また、撫でてもらいたいな・・・

そんな事を考えながら魔法を唱えていたら結構上手くいった。

幸せな事を考えながら魔法を使うと成功しやすいのかもしれない。


「そろそろ晩ご飯の時間だね。

ネギ君!封絶解くから魔法ストップして!」


悠二さんがそう言ったが、僕は最後の大技を試していなかったので、悠二さんに後一回だけ魔法を使う事を許してもらった。

1息ついて詠唱を始める。


「・・・ラス・テル・マ・スキル・マギステル!

来たれ雷精 風の精!

雷を纏いて吹きすさべ 南洋の嵐・・・

〔雷の暴風〕!!」


そう唱え、右腕をすぐ目と鼻の先にある木に向けて突き出す。

すると、右腕から雷と台風の如き強風を伴った矢が発射された。

その矢は木にぶち当たり、凄まじい轟音を伴ってその木を薙倒した。


「やった!出来た!」


余りの嬉しさに大声を出して喜ぶ。


「悠二さん!

見ましたか!?

ずっと憶えたかった魔法なんですよ、今の!」


これでお父さんや悠二さんに少しは近付けたかもしれない!

そう思うと嬉しくて嬉しくてしょうがない。

と思ったら、さっきからずっと無言だった悠二さんが僕の方へズンズンと歩いてくる。

(ど、どうしよう。はしゃぎすぎちゃったのかな?

木を倒しちゃった事怒られちゃうのかな?

この木って悠二さんのお気に入りの場所だから)

途端に不安になる。

僕は悠二さんをお父さんみたいに思ってるから、怒られるのは嫌だな等と思ってしまう。


「凄いよ!ネギ君!こんなにちっちゃいのに〔雷の暴風〕を使うなんて!」


予想に反して、悠二さんは僕を褒めてくれた。

嬉しい反面、悠二さんお気に入りの場所である木を倒した事は怒られないのだろうかとも思う。


「あ、あの。木を倒しちゃった事怒らないんですか?」


勇気を出して聞いてみる。

そう言うと、悠二さんは一瞬キョトンとしてから、ニッコリと笑って、


「封絶張った後で封絶張る前と変わった場所があったら封絶張る前と同じ状態に戻せるって言ってなかったっけ?」


そう言った。

「あっ」と、間抜けな声を上げてしまった。

そうだった!悠二さんが初めて封絶張った時に言ってたじゃないか!

(馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、僕の馬鹿ーーーーーーー!)

自分で自分自身を激しく罵倒する。

そんな僕の頭の上に暖かい物が置かれる。

何だろう、と思って上を見上げてみると、其処には何時もの優しい笑顔をして僕の頭に手を乗せている悠二さんがいた。


「そんな事まで考えていてくれたんだ。

ネギ君は偉いね。」


僕の頭をクシャクシャと撫でながら褒め言葉をかけてくれる。

思わず嬉しさで涙が出そうになる。


「さ、終わらせて帰ろう?

きっとネカネちゃんが心配してるよ。」


「うん!」


僕がそう答えると、悠二さんはまたニッコリと笑って僕を撫でてている手と反対側の手を一振りした。

途端に封絶内で張る前とは違っている部分が直っていく。

僕が〔魔法の矢〕を放って剥げてしまった草原は元の色を取り戻し、〔雷の暴風〕で薙ぎ倒してしまった木は元通りになった。


「さ、帰ろう。」


「うん・・あの、悠二さん。」


「ん、何だい?」


「手・・繋いでも良いですか?」


そう僕が尋ねると、悠二さんはまたニッコリと笑って手を出してくれた。

悠二さんも、ネカネお姉ちゃんも、アーニャも皆皆大好きだから、





ずっと一緒にいたいな・・・・・・・・・・・

王超えし残り滓と魔法先生の物語 -第3章-更にあれから5年後の話

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