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リポート1 再開!! 投稿者:麒山悠青 投稿日:07/01-16:31 No.840
私は常に彼のことを見ていた。彼が馬鹿をやっているとき、仕事をしているとき、修行をしているとき、寝ているとき。あの時から私の意識が彼の中で途切れることは無かった
けれど始めて意識が途切れた。
目が覚めたとき最初に見えたのは空を橙色に染め上げる夕陽。そしてすぐそばで気を失っている私の最愛の人、ヨコシマ タダオだった。
(…コ……、……シマ、…起…て………マ。)
(誰かが呼んでる?懐かしいなぁ、でもこりゃ夢だな。彼女は俺のために死んじまったんだ。彼女の声が聞こえるはずがないだからこれは夢だ。)
(…マ、…を覚………、ヨコシマ。」
横島は目を覚まし、驚き次いで目端に涙を浮かべて目の前にいた少女を抱きしめた。
「ルシオラ、本当にルシオラなのか?夢じゃないんだな!」
いきなりの横島の行動は逆に少女―――ルシオラを驚かせたが震える横島の声に優しく微笑み抱きしめ返す。
「えぇ、私よ。これは夢じゃないわ。私はちゃんとここに、お前のそばにいるわ。」
横島の胸の中、ルシオラには彼の顔は見ることは出来なったがその震える肩から必死に泣くまいと堪えているのが予想できた。
少女をその胸に抱いた青年はその存在がたしかにそこにあると確かめるかのように、青年の胸の中に抱かれた少女はその温もりから離れぬと言わんばかりに互いを抱きしめあった。
空を、辺りを、二人を橙色に染め上げていた陽が彼方の山の向こうへ沈むまで二人は一つの影へと化した。
陽が完全に沈み、二人はやっと互いを解放した。そして辺りを見回し…………。
「ここ、どこ?」と首をかしげた
そこは地上10数メートルといったところにある一際太い木の枝の根元だった。
「さあ、私が目を覚ましたときはもうここにいたわよ。」
同じく眼下を見回していたルシオラが何かを調べるように巨大な樹に片手をつける。
「たしか俺は、デタント反対派の連中に絡まれて………………、魂ごと消滅するはずだったんじゃ……………。」
ここまで思い出し、今度は自分がしっかりと存在しているか確かめるように自分の体をまさぐり始める。
「ヨコシマ、気づかなかったの?お前の文殊が両方とも発動してたわよ。」
そう言われて初めてあの時自分が双文殊を出していたことを思い出す。
急いで気絶していたことでおのれの内に戻っていた双文殊を取り出すが、勿論その中には何の文字も入っていない。
「あの時は、片方に『転/移』って入れてたから、それで飛ばされたのか………。でも両方って、片方には何も込めてなかったはずだけど。」
そして再び考え込む横島、けれど今度はすぐに思考の海から這い出してくる。
「考えてもしゃーないか。助かったんだしそれでいっか。」
とのたまった。
まぁ確かにそのとおりだけどさ。
「俺も生きてる、ルシオラも生き返った。万々歳だ。」
そう言って夜空を見上げた横島に、ルシオラはそうねと笑みを浮かべたまま返す。
「………ところでヨコシマ、この樹何か変じゃない?」
ルシオラに言われ改めてそのその巨大な樹を下から上へとと見上げるが恐ろしく巨大な樹だった。
「ん~、たしかにこんなにでっかい樹があるなんて聞いたことが無いな、少なくとも人間界にあったなら話ぐらいなら聞いたことがあってもいいはずだけど………、もしかして魔界か神界にでも飛んじまったのかな?」
「それは無いと思うわ。ここが人間界以外のどちらかなら魔力または神気が大気中に満ちてるはずだけど、ここはそうなっていないわ。
それと私が言ったのは樹の大きさのことじゃなくて(まぁ、ありえない大きさだなぁとは思うけど)この樹から放たれてる『力』のことよ。この樹から霊力や魔力、少なくとも既存の力とは全く別種の力が放たれているのよ。」
そう言われ、今度はただ見るのではなく、『霊/視』と込められた双文殊の力でもってその巨大な樹を見る。
「………言われるまで気づかなかった。
たしかにこれは神気でも竜気でも妖気でらも無い。もっと別の何かだな。
とりあえず小竜姫様に連絡しよう。あの人なら何か知っているかもしれないし。」
とにかく下に降りようと、ルシオラの手を取った横島は…………足を滑らした。
「え?」
ガクンと視界が落っこちる横島。勿論手をつないでいたルシオラもそれに引っ張られて………二人仲良く落下した。
『わ(きゃ)ーーーーーーーーーーーーーーっ』
「今夜も異常は無さそうかな?」
広域指導員『死の眼鏡(デスメガネ)』ことタカミチ・T・高畑は世界樹の根元で休息を取っていた。
「春休みも後5日。新学期からはネギ君も正式に教師になるし…………大丈夫かな?魔法のことがばれたりしないといいけど。」
ばれてます。それも即日に。
「まぁ、いくらなんでもそう簡単にばれたりはしないか。」
今はね。でもすぐ大勢にばれますよ。
「さてもう一回りしてこようかな。」
咥えていたタバコを携帯灰皿に捨てて新しいものに火をつける。そしてその場を離れようとしたところで、それは悲鳴と共に落下してきた
『わ(きゃ)ーーーーーーーーーーーーーー。
「なんだ?」
聞こえる悲鳴に顔声のする方、世界樹へと向ける。世界樹の枝を折りつ弾かれつしながら落下する一つの影を見つけた。
「な、誰だあれは、いやそんなことよりもあのままじゃまずい。」
落下地点へ向けて走り出すタカミチ。しかし肝心の影は枝ん弾かれあっちへこっちへとその落下地点を特定させず………。
ボキグシャドスン
どう考えても○○折れましたといった音を頭に大きな落下音と何かのつぶれる音と共に墜落した。
(間に合わなかった………。)
落下地点へたどり着いたタカミチが見たのは血の海に浸り、首をあらぬ方向へ曲げた20歳前後の青年と、その青年を下敷きにしたおかしな格好した少女だった。
その少女が痛みのためかうめき声を上げながら体を起こした。
「君大丈夫かい?」
青年のほうはいくらなんでも手の施しようがないが、少女のほうはその青年がかばったのか奇跡的に怪我一つ無いようだ。
「え?あ、お前は……?」
「僕はタカミチ・T・高畑そんなことより大丈夫かい?」
「え、あ、わ、私は………、はっヨコシマは!?」
少女は自分の下敷きなっている少年に気づき、急ぎその上から降りるがどう贔屓目に見ても手遅れな青年の惨状に泣きそうな顔になる。
「残念だけど彼は…………、」
「そんなヨコシマ…………、」
「あー死ぬかと思った。」
青年は復活した。
それも傷一つ、流したはずの血すら跡形も無く消え去って。
これにはタカミチも我が目を疑った、今自分は何を見たのかと。少女も喜べばいいのか驚けばいいのか分からないといったかおをしている。
タカミチはとりあえず今見たことを忘れることにした。
「君、大丈夫かい(汗)?」
「え、あぁ大丈夫だけど………どちら様?」
「僕は…、」
「ヨコシマ!」
タカミチの言葉をさえぎり少女がヨコシマと呼ばれた青年に抱きついた。
「ちょ、ルシオラ?」
「死んじゃったかと思ったじゃないの、心配したんだから。」
「ん、あーごめん。」
押し倒されそうになるのを何とか堪え謝る。
「あーちょっといいかな?」
二人の空間になりつつあるそこに入るのは少々無粋な気もしたがこのままだと話が進まないので勇気(必要あんのかな?)を出して話しかける。
「あ、はい…えぇと。」
「自己紹介の途中だったね、僕はここの学園で広域指導員をやってるタカミチ・T・高畑というものだ。」
「あ、俺は横島 忠夫です。でこっちがルシオラです。
えーと、学園?」
「あぁ、ここ麻帆良学園のね。見たところ君たちは学園の人間じゃなさそうだけど?」
少し、本当に少しだけタカミチの目が鋭くなり、横島もルシオラを離して真剣な表情でタカミチに向き直る。
「はい、俺は美神除霊事務所所属のGSで、不慮の事故でこの樹の上に転移しちまったんすよ。美神さんのところに連絡を取りたいんで携帯があれば貸してもらえると助かるですが。」
「美神除霊事務所?GS?」
「はい。
あ、これがGSの免許です」
そう言って横島は財布から免許を取り出しそれをタカミチに見せる。
「すまないが、GSってなんなんだい?僕には何のことだか。」
「え?」
タカミチに言葉に間の抜けた返事をする横島。まぁ仕方ないか、横島達の常識で言えばGSったら幼稚園児だって知ってることだ。
「GSを知らないって冗談でしょう?」
「いや、冗談じゃないし、検討もつかないんだが。」
「GSったらゴーストスイーパーのことですよ?何で知らないんすか?いまどき幼稚園児だって知ってますよ。」
「想像するにGSっていうのは退魔師のことでいいのかな」
「退魔師、ですか?まぁ、魔を退けるって意味ではたしかにその通りですけど、普通そんな言い方しませんよ。」
「いや、僕らはみんな退魔師って呼んでるけど…」
(なんだかいやな予感が………)
(なんだか話が変なほうへ進んでるぞ)
「ね、ねぇヨコシマ?さっきから調べてるんだけどもしかしたらここ冥界108チャンネルが繋がっていないみたいなんだけど。」
瞬時にルシオラが何を言ったのか理解できなかったが横島はすぐにそれが意味する可能性に気づく。
「つかぬ事お聞きしますが2年前に起こったはずの『魔神対戦』ご存知ですか?」
横島の言葉にタカミチは眉をひそめる。
「『魔神対戦』かい?聞いたことがないけど…。」
タカミチがみなまで言う前に横島の首が油の切れた鉄人形のような音を立ててルシオラのほうを向く。
「ルシオラ、今回のことに一つ仮定を立てたんだが………。」
「えぇ、私も仮定を立てたとこよヨコシマ。」
『平行世界』
二人の台詞が見事にはもる
「あ~なんとなくだが事情が分かったような気がする。一度ここの最高責任者のところに案内するけどいいかい?」
「ええ、なんだか個人レベルで何とかできる気がしなくなってきたんでお願いします。」
こうして三人は学園長の下へあしを向けることになった。
「「ぬらりひょん?」」
それが学園長、近衛 近衛門を(主にその頭)を見たときの横島とルシオラの第一声だった。
「人間じゃ」
間髪いれずに否定する学園長は『何じゃこの失礼な連中は』といったこと顔に書いてそれをタカミチにむける。
それに対してタカミチは世界樹の根元の出来事を説明した
「ほお、平行世界とな。異世界から鬼などを召喚する術があるんじゃ、ありえんというわけではないかもしれんがの。お前さんがたにそれを証明することが出来るのかな?
わしはここの学園長であると同時に関東魔法協会の理事を務めておっての、立場上そう簡単に信用するわけにはいかなくての。」
学園長の目が『嘘はつうじんよ』とばかりに鋭く光る。
「そういわれると思ってたんで用意はしてありますよ。」
そう言って横島は座ったソファの前にある卓の上に2つの双文殊を置いた。これは?と視線で説明を求める学園長に、横島は一つ頷き説明を始めた
「これは文殊といって凝縮した力をキーワードを込めることで指向性を持たせてそのキーワードの通りの現象を起こすことの出来るものです。今回は俺の記憶が見えるようになっています。これで俺の記憶を追体験してもらえば、俺たちが平行世界の存在である証明になると思うんですけど。」
「ふむ文殊とな。具体的にどんなことが出来るのか実際に見せてくれんか?」
横島は一つ頷き、単文殊を取り出しキーワードを入力する。『増』。
キーワードを込めた文殊を水の入ったコップの中に放り込むと、あら不意義残り少なかった水が見る見るうちに溢れだしたのである。
「ふむ、これはすごいの。
それで記憶を見るためにはそれを持てばいいのかの?」
「はい、文殊を持って見ようと念じてもらえれば。
ん?何ルシオラ。」
学園長にそう返し、横に座ったルシオラが物欲しそうな表情でこっちを見ているのに気づく。
「え、…ちょっと私も見たいなと思って。ほら、私ヨコシマの昔の話なんてしてもらったこと無いじゃない、だからいい機会だから私も見ちゃだめかしら?」
と期待の篭った目で見つめられ、それに抗えるわけも無くルシオラにも同じ双文殊を渡す。
「私と出会う前のヨコシマかぁ、楽しみね。」
そういって記憶の追体験に旅たつルシオラとそれに習って、学園長とタカミチも追体験の旅へと旅たった。
記憶の始まりは横島が一人暮らしを始めたところからだった。
美神玲子との出会い
自給の話
幽霊のおキヌちゃんとの出会い
学校の話
他のGSとの出会い
仕事の話
小竜姫たちとの出会い
GS試験の話
魔族たちとの戦闘に
ルシオラとの出会いと
その戦いの行く末とルシオラ別れ
修行の日々
そして現在。
「「お主は(お前って)ホントに人間かの(なの)?」」
追体験から戻り最初お言葉は、学園長とルシオラの見事に重なったそのお言葉だった。
タカミチはそんな二人に苦笑している
「ちょ、いきなりなんすかルシオラまで。」
「だって。」
と眉をひそめるルシオラに学園長が言葉を続ける
「いかな生き物でも持ち得ぬような回復力といい……、」
「メドーサクラスの魔族ですら不可能な生身での大気圏突入でさえ記憶の一時的な喪失ですんじゃってるし……」
「「本当に人間?」
人間としての自分の存在を疑う問いに、横島は部屋の隅でのの字をかいていじける横島。タカミチがそれを慰める横で、そんなことおかまいなしに話は進む。
「まぁそのことは脇に置いといてじゃの、お主達はこれからこれからどうするつもりかの?元の世界に戻るとしても方法も分からんのじゃろ。」
「はい。ですからその方法を探したいんだけど。」
「見つかるまでの間の衣食住のことじゃな?いくらなんでもそうぽんぽんとそういった術が見つかるわけではないしの。
そこで提案なんじゃが、ここで働かんか?」
「ここで、ですか?」
「うむ、詳しくは後で話すが先にも言ったとおりわしは関東魔法協会の理事をやっておる。教会というからにはそれなりに大きな組織なわけでな、個人から組織規模と敵対するものも少なくなくてな………」
「つまり手駒として私やヨコシマのことを買うってこと?」
「そういうことじゃ。かの六大魔王の一柱をも倒す力の持ち主、それだけの力買わぬほうがおかしいじゃろ?それに正直他の組織につかれると厄介じゃしそれなら自分の手元で監視したほうがいいじゃろ。というのが本音かの。」
「………それで仕事の内容は?流石にそれを聞かずにうなずくことは出来ないわ。」
「なに退魔師の仕事、君たちで言えばGSの仕事と警備員の仕事をな。先にも言ったとおりここは敵が多くての、鬼などを放ってくる者もおるしここには魔法使いも多々いるが一般人多くおる。そおの一般人に被害が出ないようにしてほしいんじゃ。給料は各人別々に、仕事別に出すがどうじゃな?」
「…………………分かったわ、その話引き受けます。ヨコシマもそれでいいわね?」
ここまでまったく無視で進められていた話を急に振られいまだにいじけていた横島はへ?と間の抜けた声を出す。
「私たち、ここで働かしてもらうことになったから。ヨコシマもそれでいいわね?」
「ちょっ………。」
横島が何かを言おうとするが、瞬時にルシオラのてが霞み横島の額にさっきの双文殊があたる。込められた文字は『傀/儡』。
『ああ、おれはべつにかまわないぞ』
棒読みで答える横島に学園長とタカミチは冷や汗を流し、当のルシオラは涼しい表情でこれで決まりねと学園長に笑みを浮かべる。
「ほ、本当にいいのかの?これで。」
「ええ、こっちの世界について私たちは何も知らないし右も左も分からない。なら早くに信頼できそうな人のところについたほうがよさそうですから、貴方たちなら多分信用できると思いますし。ここでヨコシマにごねられたら話がややっこしくなりますし。」
「そうじゃな、職につくにしても戸籍などが必要じゃがそれは明後日までにでも用意しておこう。わしの名義でホテルを取っておくのでしばらくそこを使ってくれ、住居もこちらで用意しておくからの、その他に必要なものがあればそちらで用意してくれんかの、明日にでも準備金を届けるのでな。」
その後、この世界の魔法についての説明を受け「一般人にはくれぐれもばれないように」と念を押されて二人はタカミチに案内されてホテルへむかった。これは予余談だが、学園長が借りた部屋は2部屋だったがその晩使われたのは1部屋だけだったとか………。
あとがき
1話書くのにかなり時間が掛かってしまった。どうも麒山悠青です。
まずはじめにソティ=ラスさん、こむいさん感想と指摘どうもありがとうございました。指摘されたことをどこまで作品に反映できるかは作者たる自分の吸収力がどれほどかによるので活かしきれないかもしれません。それでも出来る限り活かそうとがんばる所存なのでこれからもよろしくお願いします。
それとこむいさん、「どうにもご都合主義のにおいがします」とのことですが、作中でこのことを説明する気はありませんので、この場で裏設定を一部暴露します。
神族の使った術というのが対象の魂を引っ張り出し、肉体と魂を別個に破壊するもので、『転/移』の双文殊が発動したときちょうど魂の彼女の部分が霊的に露出した状態になったところで転移してしまったのです。横島が出していたもう一つの双文殊に込められた文字は『再/会』です。彼が最後の瞬間に彼女のことを思ったためにこめられたもので、横島とルシオラが再開できるように周りに働きかけ、転移による次元移動に、霊的露出した彼女の魂への魔力供給による活性化、ただし作者の勝手な設定上横島達の知る魔力とネギたちの扱う魔力は名前こそ同じでも別のもので、だからこそ彼らの世界の法則とは別の働きかけを見せ彼女は復活しました。
これだけでも十分にご都合主義ですが、それ以外に思いつかなかったので勘弁してやってください。
それともう一つ原作中、魂の結晶を破壊した直後に彼は自分は彼女を見殺しにしたと、嘆きその後は彼女のことを表には出していないのでこういう彼もありかなと思い書きました。良くある横島の魔人化はこの作品では行いません。ルシオラ外出ちゃったし。
さてあとがきも長くなってしまったのでこの辺で、またよろしくお願いします
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