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二人?の異邦人IN麻帆良(ネギま×GS美神) 「第15話 The longest night Act1」 投稿者:九重九十九 投稿日:08/03-16:31 No.1032

「横島忠夫め、この私がわざわざ家に出向いてやったというのに留守とは・・・本気でいい度胸だな」

夕方の麻帆良学園の中をエヴァンジェリンが茶々丸を引き連れて歩いていた。
どうやら、学園に来る前に横島の家に襲撃をかましたようだが、現在横島は京都である。
結果として再び肩透かしをくらったエヴァはご機嫌斜めのようだ。

「マスター、横島さんにも都合というものがありますし。そもそもマスターは横島さんの所へ行って何をするつもりだったのですか?」

「それは・・・・・・・・・・・」

茶々丸の質問に沈黙するエヴァ、どうやら何も考えていなかったらしい。

「何も考えてなかったんですか?マスター」

「う・・・・いやな、とりあえず力ずくで素性を聞き出そうと思ってな・・うん」

「今考えましたね・・・・」

「ち、違うぞ、ちゃんと横島を捕らえたらほら、硬軟とりまぜて秘密を聞き出そうと・・・・」

「具体的には?・・・・そもそもどうやって捕らえるんでしょうか。横島さんを捕らえるのは極めて困難と予測しますが」

「うぐ・・・・・茶々丸、最近なにか私に思う所がないか?」

「とんでもございません、マイマスター。あ、到着しましたよ」

茶々丸はとんでもないというふうに首を振りながらエヴァに答えた。同時に何かをごまかすようにエヴァに目的地に到着したことを伝えた。
エヴァ達の目的地、それは学園長室であった。

「む・・・・まあいいジジイ、暇だから来てやったぞ。碁の相手でも・・・・・・」

エヴァは扉を開け、そこに現れた光景に後絶句した。

そこには、体を怪しい縛り方で拘束された学園長が天井から逆さまで吊るされたいた。
さらに額に『妖怪ぬらりひょん、横島忠夫の名においてここに封じる』と書かれたお札も貼られていた。







「さて・・・・ジジイはいないようだ、帰るぞ茶々丸」

「はい、マスター」

二人は何事もなかったように扉を閉め、帰路に着く。


「ワシ・・・・いつまでこの状態なんじゃろう・・・・いいかげん助けてくれんかのー」


学園長のか細い声が室内にこだましていった。



第15話   「The longest night Act1」




「ねえネギ、桜咲さんたちは大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ、シネマ村は無事脱出できたみたいですし」

「そうなの?」

「ええ、さて僕も回復してきましたし。行きましょうアスナさん」

関西呪術協会本部へ向かったネギは、のどかのアーティファクトにより敵の襲撃を無事撃退し、現在つかのまの休息をとっていた。
しかし、いかんせんネギの負担が大きく、立ち上がろうとしたネギはふらついてしまう。

「あれ、おかしいな・・・」

「無理しちゃだめですネギ先生、もう少し休んでないと・・」

「のどかさん、ありがとうございます。でも・・・・あ、そうだ!」

「どうしたの?ネギ」

ネギは何かを思いつき、呪文を唱えだした。











「偉大なるファ○リスよ我の傷をギャン!!」

怪しい呪文を唱えかけたネギにアスナは拳骨を叩き込んだ。

「ネギ・・・その魔法禁止っていったでしょー!!!」

「でもこれならこんな傷一発で・・・それに最近成長して消費精神力が減ったんですよ。いまなら楽に・・・」

「そんなもん成長させるんじゃなーい!!イロイロとまずいと言ってるのがわからんのかー!!それでも使うつもりならタマモちゃんにイケニエとしてお供えするわよ!」

「モウニドトツカイマセン・・・・オネガイデスカラソレダケハカンベンシテクダサイ」

アスナの脅しは効果覿面だったのか、ネギはカタカタと小刻みに震えながらアスナに答えた。




「おーいアスナー!」

そんなネギ達に木乃香の声が聞こえてきた。
アスナはその声に反応して振り返ると、そこには呆然とした表情の刹那と今いち状況が分かってない木乃香、さらにこんがりとこげた何かをズルズルと引きずるタマモ。
そして朝倉、早乙女、綾瀬の合計6人+?が歩いてくる所であった。

どうやら朝倉が刹那の鞄にGPS携帯を仕込み、それにより追跡されてしまったようである。
ちなみにこげた物体Yはアスナと合流後しばらくの後、徐々に人間形態を取り戻し、横島の姿となっていた。

「朝倉、あんたこの危険さぜんぜん分かってないでしょ?ネギなんかさっき死ぬ所だったのよ!!」

「普通にタマモの姉さんと相対してる時の方が命の危機だったようなきもしやすがね・・・・ハッ!」

「カモ・・・・焼き加減はレア、ミディアム、ヴェルダンのどれがいいかしら?」

カモはタマモの眼光に恐怖し、あわてて朝倉の服の中に逃げ込んだ。
本来ならこういった失言はネギの役目なのだが、さすがにネギは疲労で失言をかます余裕もないようであった。


「あ、見て見て、あれ入り口じゃない?」

そうこうしているうちに入り口に到着し、入り口に気付いた木乃香達一般組みは入り口へと走り出した。
ネギ達はあわてて木乃香達を追いかけ、入り口をくぐった。




「お帰りなさいませ、このかお嬢様」

入り口をくぐるとそこにはズラリと並んだ巫女さんの集団が木乃香を出迎えていた。

「桜咲さんこれってどーゆーこと」

意表をつかれた状態のネギとアスナは事情をしっていそうな刹那に話しかけた。

「つまり・・・ここは関西呪術協会の総本山であると同時に、このかお嬢様の御実家でもあるのです」

刹那の説明を聞きアスナ達は驚愕の声を上げていた。

一方、横島は・・・・















「ぐおおおおおはなせー!!!!タマモ、後生だから離してくれー!!!」

「誰が離すか!!羊の群れに文字通りケダモノを解き放ってたまるもんですか!!」

例によって巫女さんたちに突貫しようとした所をタマモに押さえ込まれていた・・・文字通りに。
現在五輪代表選手もかくやというほどの高度な寝技の応酬を行っている。

横島がタマモの押さえ込みから脱出しようと暴れていると、タマモは後ろ袈裟固めから体勢を入れ替え、上四方固めへと移行していった。

「うおーーー・・・・ってマテ!!この体勢はヤバイって!!」

横島はしばらく暴れていたが、突然なにかに気付いたように叫びだした。
そう、上四方固めとは相手の上半身に自分の上半身をかぶせるように押さえ込む技である。
つまり・・・・タマモの年相応(外見年齢)のつつましい胸が横島の顔に・・・という状態である。

「そんなことでごまかされるかー!!」

タマモは自分がどういった状況になっているのか理解していないのか、必死に横島を押さえ込み続けていた。

「はなせー!!!このままだと理性があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあへ・・・・」

横島の幸せに包まれた断末魔の悲鳴があたりに響き渡った。
ちなみに、解放された横島の顔は鼻血をたらしながら微妙に喜色に染まっていたらしい。







「ふう・・・ひどい目にあった・・・」

「ひどい目とはどういう意味よ」

横島はあのあとしばらく気絶した状態で放置され、ようやく目を覚ましたころはネギは無事に親書を長に渡した後であった。
そして現在はネギ達の歓迎の宴の最中である。
木乃香たちは、まるで酒を飲んでいるかのようなはしゃぎっぷりである。

「あはははは、元気を出してください、横島さん」

「ありがとう刹那ちゃん。あやうく禁断の扉が開く所だったよ・・・最近自分でもその扉の錠前が腐りかけてる気がするし・・・」

「それ以外の扉にもすこしはカギをかけとけばいいのよ」

横島の言葉に不満そうに口を尖らすタマモであった。



「楽しんでいますか、皆さん」

とつぜん、横島達に話しかける人物がいた。西の長であり同時に木乃香の父でもある近衛詠春である。

「誰?このおっさん」

横島の言葉に場が凍りついた。

「バカ!この人がこのかのお父さんよ」

「それに西の長でもあります!!」

即座にタマモと刹那が横島の頭を二人がかりで取り押さえ、無理やり頭を下げさせた。

「気にしないでください、二人とも。彼はさきほどいませんでしたからしょうがありません」

詠春は横島の無礼極まる発言を気にした風もなく、話を続けた。

「あらためて自己紹介します。木乃香の父近衛詠春です。あなたが横島忠夫さんですね」

「そうっす、なぜ名前を?」

「義父からいろいろ聞き及んでおりますので・・・異世界のこととか、一度話を聞いてみたかったのです」

「そうだったんすか、ところで、一つ質問いいです?」

「かまいませんが・・・なんです?」

「なぜに巫女さんばかりなんです?いや俺としてはとてもうれしい状況なんですが、本来ならもうこのまま彼女達の中に飛び込んでしまいたくなるくらいに」

「そんなことやったらどうなるか分かっているわよね、ヨコシマ」

タマモの怒気をはらんだ言葉に恐怖する横島、同時にタマモの怒気を敏感に感じたのか、ネギは周りを見渡して退路の確認をしていた。

「いえ、今日は特別です。本来ならとうぜん男性もいるのですが」

「なぜに?」

「いえ、義父の話だと横島君は巫女好きで、さらに年下が好みと聞いてましたので・・・・・というわけでウチに来る気はありませんか?」

改めて場を見渡すと、この場にいる巫女さんはどうやら全員横島より年下ばかりである。どうやらこの男、横島を勧誘する気満々のようであった。


「誰が年下趣味じゃー!!あのジジイあること無い事言いやがって・・・帰ったら今度はロウソクの中につけ込んでやる!!」

「横島さん・・・万が一木乃香お嬢様に手を出したらこの夕凪が黙っていませんよ・・」

どうやら学園長の話を真に受けたのか、刹那が横島の首に夕凪をあてがいながら警告してきた。

「そういえば中学生ナンパしていたらしいし・・・いい加減認めたら、ロリコンだって」

さらにタマモは横島にトドメをさす。

「ちゃうわー!!あれは何かの間違いだー!!死神あれは間違いなんだよな、そうだと言ってくれー!!」

横島の魂の叫びに、死神は気の毒そうな顔をしながら黙って首を振った。
実際にナンパしたのは16歳の女性であり、かろうじてセーフであったのだが、横島をタマモから救うためやむを得ず中学生としてタマモに知らせた以上、もはやタマモの前で覆す事は出来なかった。
死神のしぐさで最後の希望を打ち砕かれ、さめざめと涙を流している横島を見ながら死神は、せめて後で真実を知らせてやろうと心に決めていた。

「ほう・・・死神と契約を結んでいるのですか、これは益々ほしい人材ですね」

目の前の喧騒を他所に、詠春はどうやって横島を引き抜こうか思案し続けていた。





「ふう、ようやく落ち着いたわね」

「ふふ、疲れもよーく洗い流してくださいね」

「広くて気持ちいいわねー、このお風呂」

上からアスナ、刹那、タマモの発言である。
彼女達は宴から抜け出し、入浴中であった。


「しっかし木乃香のお父さんが関西呪術協会の長だったとわねー」

「私もびっくりしたわ、ただでさえでもあの妖怪の孫って聞いてびっくりだったのに」

「大概の人が学園長のお孫さんと聞いて驚きますからね、タマモさんの感想も無理ないですけどね」

女三人で木乃香のことについて話していた。しかし誰も学園長=妖怪という図式を否定しないのはちょっとアレであるが。




「そういえば刹那さん、聞いたわよ、このかのことを身を挺してかばったんですって?まるでお姫様を守る騎士みたいだったそうじゃない。単なる護衛じゃあーわ出来ないわよねー。やっぱり百合?」

アスナはまるで刹那をからかうようにシネマ村での出来事について話題をふった。

「そそそそれはあの、護衛として当然というか・・ていうか誰が百合ですか!!人聞きの悪い事言わないでください!」

刹那は真っ赤な顔をしてアスナに反論しようとしたが、隣にいたタマモが冷静にアスナに突っ込みを加えた。

「それならアスナはどうなの?のどかに聞いたけどそれこそネギ先生を守って戦ってたじゃない」

「そ、それはネギはまだ子供だから心配なだけよ!!それにタマモちゃんだって十分に変じゃない、横島さんに助けられた時に顔を真っ赤にしてたってネギが言ってたわよ。まるで好きな人を前にしたような顔だったみたいじゃない」

アスナも刹那と同じように顔を真っ赤にして反論する。

「別におかしくなんか無いじゃない。私はヨコシマが好きよ」

「え、だって・・・兄妹じゃない。それはまずいんじゃないかなー」

「まずくないわよ、だってヨコシマと私は本当の兄妹じゃないわよ、だから結婚だってできるんだから」

「は・・・・・・・・どういうこと?」

アスナはタマモの発言に思考が停止してしまった。
刹那は事情を知っているため、苦笑しながら二人を見ていた。

「だから、私とヨコシマは戸籍上兄妹になってるだけなの」

「なんでそんなことに?」

「3年前にヨコシマに助けられて、それからいろいろとあってね。今じゃや何故か兄妹なんて関係になってるけどね」

「そ、そうなんだ」


タマモは刹那とアスナに横島との出会いをぼかしながら説明していった。

と、その時脱衣所のほうから声が聞こえてきた、それも男性の声が。


「ふうーなんか今日は疲れたーなー」

「ははは、横島さんあれだけ燃やされたのに疲れたで終わっちゃうんですね」

「まー慣れの問題だな。なーにネギもすぐに慣れるさ」

「そんなものに慣れたくありませーん!」

「ははははお二人とも仲がいいですねー」




「ななななネギにこのかのお父さん、さらに横島さんまで!なんでなの」

「温泉じゃないですから男女わかれてませんからねー」

「二人とも、そんなところでぼやっとしてないであそこに隠れるわよ!」

タマモ達はそそくさと岩陰で身を隠した。もっとも狭いためかなり肌を密着させている必要があるが。


タマモ達が岩陰に身を隠すと、それと同時に三人が入ってきた。

「おおー広いなー、中途半端な銭湯より広い」

「寮のお風呂みたいですねー」

「我が家自慢の風呂なんですよ、気に入っていただいてなによりです」

三人は風呂につかりながらなにやら話している、どうやら猿女についての話のようだ。

「この度はウチの者たちが迷惑をかけて申し訳ありません。昔から東を快く思わない人はいたのですが、今回動いたのが少人数でよかった。あとは私たちにお任せください」

「はい、でも・・・・あのお猿の女の人の目的はなんだったんでしょうか」

「サル、天ヶ崎千草のことでしょうか? 彼女には西洋魔術師に対する恨みのようなものがありましてね。その復讐を果たすためにこのかの強大な魔力を利用しようと企んだのでしょう」

「このかちゃんの魔力ってそんなに強いんすか?」

「ええ、サウザンドマスターおも凌駕する魔力を内に内包しています」

「あれ、長さん。父さ・・サウザンドマスターのことご存知なんですか?」

「君のお父さん、ナギ・スプリングフィールドと私は腐れ縁でしたからね」

詠春はビシリと親指を自分にむけ立てて見せた。



その時、再び脱衣場から話し声が聞こえてきた


「だからあのシネマ村での事件はどー考えても不可思議なのです」

「だからあれはCGやワイヤーアクションだって」

「私をこのかさんと一緒にしないでくださーい!!」


どうやら朝倉達が入りにきたようであった。しかし彼女達、そして横島達もだが脱いである服が目に入らないのだろうか・・・・



「おや、これはいけません。裏口から脱出しましょう」

「なんで風呂場に裏口まであるんですか」

「ヤバイ!このままだとまた俺はロリコンと・・・最近ただでさえでも危ないのに、これ以上はまずすぎる!!」

横島たちは裏口のほうへ向かって走り出した、ちなみに同じ方向にアスナ達が隠れている岩もあったりする。


「ま・・まずいわ。三人がこっちに来る」

「タ、タマモさんどうしましょう。なんか姿を隠すとかその・・・」

「幻術をやってみるわ」

タマモは即座に幻術をかけ、横島たちに自分達の姿を見えないようにした。
だが、これは失敗だった。どうせ幻術をかけるなら自分達を岩として認識させればよかったのだが、見えないようにしたため、横島を先頭にネギ達がタマモのほうへ向かって走りこんできたのだ。


「のわ!!」

「あう!」

「「「キャア!!」」」

まず横島がなにかにけつまずいて倒れこんだ、そして続いてネギも何かにつまずいて転んだ。

「あれ、今タマモの声がしたような・・・・なんだこれ、地面が妙にやわらかいような・・・・」

「横島さんもですか?僕も今アスナさんの声が近くでしたような感じが・・・」

横島とネギはなんだか妙に生暖かい地面の感触と、手に収まるマシュマロのような感触に戸惑っている。
特に横島などは両手をワキワキともむように動かしている。

するとだんだん目の前の光景が変わりだしてきた。
どうやらタマモの幻術が解けたようである。

気がつくとネギはアスナの胸に手を当てた状態で固まっていた。
アスナも顔を真っ赤にしてフリーズしている。

一方横島はというと・・・・











やはり片手をタマモの胸をもみしだいた状態でタマモを押し倒していた。
そしてもう片方の手は・・・・・刹那の胸をつかんでいた・・・それはもうしっかりと。

横島達が完全に固まっていると、そこに朝倉たちが入ってきた。

「きゃー!!」

「お父様のえっちー」

「なんで男女別じゃないんですかー!」

混乱は今まさに佳境へ突入していた。
ちなみに横島はこの後、鼻血の海に沈んだ事をここに記しておこう。





「俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない・・・・・・・・」

風呂場での大騒動の後、横島は本山からすこし離れた野原で膝を抱えてブツブツと何かをつぶやいていた。
そんな横島の背後にタマモが現れ、ストンと横島と背中合わせになるように座った。

「ん、タマモか・・・・」

「ごめんなさい。幻術かけたせいで状況悪化させちゃって」

「刹那ちゃん怒ってなかったか?」

「大丈夫よ、気にしないで下さいだってさ」

「そっか・・・・後でちゃんと謝らないとな」

「それがいいわね・・・・・ねえ、ヨコシマ」

「なんだ?」

「ありがとう・・・・」

「胸をもんだ事か?」

タマモは背中越しの横島のセリフに思わず顔を真っ赤に染めた。
背中ごしに感じる横島の体が少し震えてるのはたぶん笑いをこらえているからだろう。
横島のささやかな復讐である。

「そっちの責任は後でちゃんと取ってもらうわ」

「マテイ!」

もっとも簡単に切り返されてしまったようであるが・・・


「とにかくソッチじゃなくてシネマ村で助けてくれた事よ」

「ああ、別に当然のことをしただけだろ」

「それでもね、嬉しかったわ・・・・・でも」

「でも?」

「無理はしないでね、ヨコシマは何かを助けようとすると必ず無茶をするわ・・・私の時だって美神に逆らうなんて無謀なことをするし・・・それにルシオラって人の時も・・・」

タマモの言葉に横島の背中がピクリと反応した。

「知ってたのか?」

「ええ、以前美神に聞いたわ」

「そっか・・・」

それっきり沈黙する二人、ただ静かに時が流れる。
だが、その沈黙は横島の言葉で終わりを告げた。


「なあ、タマモ・・・俺はもともと何かを守れる力なんて無かったんだ」

「知ってるわ、ただの荷物持ちだったんでしょ」

「ああ、だけど妙なきっかけで霊能力なんてもんに目覚めて力を手に入れた。けど肝心な時に・・・一番守りたかったヤツを守れなかった。むしろ手に入れた力・・文珠でアイツの生き残る可能性をつぶしちまった」

「うん、知ってる・・・・けど逆にその力があったから横島は私を捕まえる作戦に参加できたんでしょ、荷物持ちのままだったら最後の捕獲は横島じゃなくて他の誰かだったかもね、そして私は確実にここにいなかったわ。ヨコシマの力は私を助けてくれたのよ」

「そう・・・なのかな・・・・」

「そうよ・・・それにこの世界に来てからもね・・ヨコシマが私の隣にいる、一人じゃない・・それだけで私がどんなに助けられたか」

「俺もタマモがいなかったらどうなってたかな・・・・もとの世界から飛ばされて、何も出来ずにのたれ死んでたかもな」

「じゃあお互いさまね・・・私達はたった二人のこの世界の異邦人・・・一人になるのは・・・イヤ・・・」

タマモは横島のいない状況を想像したのか、肩を震わせた。
横島はそんなタマモの手に背中越しに自らの手を重ねた。まるで自分はここにいるぞと知らせるように。

「それじゃあ無茶はもう出来ないな・・・一人で残されるのは悲しいもんな」

「そうね・・・じゃ約束できる?」

「いいぜ、そのかわりタマモも無茶するんじゃないぞ、俺だって一人はいやだからな」

「うん」

タマモは背中越しに感じる横島のぬくもりと、重ね合わせた手から伝わる横島の思いに言いようの無い嬉しさを感じていた。



その後、二人は星明りに照らされて修学旅行で離れていた間の話を続けた。
その間二人の手は離れることは無かった。






「それでアヤカったらネギ先生にキスするために・・・・・・何、この気配は」

「どうした、タマモ?」

突然タマモが話を中断し、何かを探るように視線をあたりにめぐらせる。

「これは・・・・大変!本山でなにか起こってる!次々と人の気配が消えてる・・」

「なんだって!しまった油断した!!」

「ヨコシマ、急ぎましょうこのか達が危ない」

「ああ・・ちくしょう間に合ってくれ!!」



本山での異変を感じ取ったタマモと横島は木乃香達を救出するため、全速力で走り出した。


二人の最も長い夜は今始まったばかりである。


第15話   end





(あとがき)
さて、いよいよ修学旅行偏の山場に突入です。
場合によっては変なところで話を切ってしまう事になるかもしれませんがご容赦願います。

今回からしばらくはギャグは薄めになりますが、そのぶん要所要所でギャグをちりばめつつ話を構成するつもりです。

さて、いったい何話で終了させる事が出来るやら・・・・とりあえず三話構成を考えていますが・・へたしたらもっと伸びるかも。

では次回のact2はまた近いうちに。

二人?の異邦人IN麻帆良 「第16話 The longest night Act2」

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