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二人?の異邦人IN麻帆良(ネギま×GS美神) 「第17話 The longest night Act3」 投稿者:九重九十九 投稿日:08/07-18:33 No.1059

すさまじい爆発音を背に横島達は森を駆け抜けていく。

「横島さん、いまのはいったい・・・・それに気の物質化なんてどうやって・・」

「さっきのは文珠の能力の一つだよ、それ以外の説明は後でな」

「ちょとヨコシマ、アレは!!!」

その時、タマモが何かに気付いたのか空を指差した。
そこには山のように巨大な二面四手の巨大な鬼神が現界するところであった。

「な、なによアレ・・・」

「馬鹿な、スクナの封印が解けたと言うのか!!」

「まずいわ、ヨコシマ・・・あの鬼神の霊力はシャレにならない巨大さよ・・」

「ネギのヤツこのかちゃんの奪還に失敗したということか・・・・」

鬼神の姿を見た横島たちの顔は絶望に染まる。だが、そんな横島たちに刹那が声をかける。

「まだです!アレはまだ完全に現界してません!!今ならまだこのかお嬢様を取り戻せばなんとか出来ます」

刹那はそういうと再び走り出した。

鬼神召還の祭壇はすでに彼女達の目の前であった。





横島たちの夜はまだ終わらない。




第17話  「The longest night Act3」



「ふふふ、一足遅かったようですなあ、儀式はたった今終わりましたえ」

ネギの目の前で今まさに巨大な鬼が召還されようとしていた。

「そ、そんな・・・・こんな・・こんなの」

「でかい・・ちょっと待てよデケエ、でか過ぎるぜ!!」

ネギとカモは出現した鬼神のあまりの巨大さに度肝を抜かれていた。

「二面四手の巨躯の大鬼『リョウメンスクナノカミ』千六百年前に打ち倒された飛騨の大鬼神や」

千草は召喚に成功したことにほくそえんだ。



「・・・完全に出る前にやっつけるしかないよ!!」

ネギは心の奥に絶望を感じながらも、今の自分が放てる最大の魔法『雷の暴風』の呪文を唱えだした。
やがてネギは残ったすべての魔力を込めて魔法を発動させた。だが、その魔法は無残にもスクナに届くことなく霧散していった。

「アハハハそれが精一杯か?サウザンドマスターの息子が!まるで効かへんなー」

「そ、そんな・・・・」

「このかお嬢様の力でこいつを完全に制御可能な今、もう何も怖いもんはありまへんえ!明日到着するとか言う応援も蹴散らしたるわ!!」

「こ、このかさん・・・」

「兄貴、兄貴しっかりしろ!!!」

ネギは疲労と絶望で膝を突いた、もはやネギに残された手段は何もなかった。

パシィ!

何かが壊れると音と共に、背後で行動を封じていた白髪の少年が動きだした。

「善戦だったけれど・・・残念だったねネギ君、殺しはしないけれど・・・自ら向かってきたいうことは相応のリスクを負う覚悟はあるということだよね」

ネギの前にたった少年は魔法を放つため右手をゆっくりとネギへとかざした。




「ネギー!!!!」

その時、アスナを先頭に横島たちが戦場に到着した。

「アスナさん、刹那さん・・・タマモさんに横島さんも・・ごめんなさい僕・・このかさんを・・」

「細かいことは後だ、とにかくあのデカブツをなんとかするぞ!!近くに行けば俺がアイツをしとめる!!」

横島は栄光の手を具現化させ、スクナの元へとむかおうとした。

「何をするつもりか知らないけど、させないよ」

少年はそういうと西洋魔法の始動キーを唱えだした。

「な、こいつは始動キー!こいつは西洋魔術師か!!!やべえ詠唱をとめろ!!この呪文は!!」

カモが呪文の内容に気付き、詠唱を止めるように声をかけるが、すでに呪文は完成していた。

「石の息吹!!」

「ぬお!!文珠!!!」

横島はとっさに文珠を召還し”護”の文字を込めて発動させ、間一髪でアスナたちを石化の魔法から護りきった。
あたりは魔法による石化の煙が立ち込めていた。

「あぶねえ・・・・この煙があるうちに一旦距離をとるぞ、さがれ!!」

「すげえ、石化の魔法を完璧に遮断した・・横島の兄貴、今のはいったい・・」

「説明は後よ、カモ・・さっさときなさい」

アスナ達は横島の指示に従い、一旦後退して距離をとった。

「な、何とか逃げれた、ヤツはまだこっちに気付いていません!!」

「ネギ、あんた大丈夫?死にそうじゃない」

アスナは魔法の大量使用による疲労で立っているのがやっとであるネギを心配する。自分も傷だらけというのに・・

「大丈夫です、ま・・まだ戦えます・・」

「ちくしょう、あのガキ・・石化魔法か・・・正直やっかいだ」

「うかつに近寄ったらアウトね、どうする?ヨコシマ・・・」



対応策に苦慮する横島たちを見ながら、刹那は考えていた。
自分にはまだもう一つ力がある、それを使えば少年を抜けスクナの元へ向かうことも出来るのである。
だが、それを使えばせっかく仲良くなったアスナやタマモ、そしてなにより木乃香に自分の忌まわしい姿を晒す結果となることに恐怖を感じていた。
だが、すでに他に手はなかった。刹那は心の中で皆に別れをつげ、力を使う決心を固めた。


「みなさん・・・今すぐ逃げてください。お嬢様は私が救い出します!」

「どうやってよ、このかはあのデカブツの肩のところにいるのよ?」

「私ならあそこまで行けます・・・ネギ先生、アスナさん、タマモさん、そして横島さんも・・私は皆に秘密にしておいたコトがあります。そしてこの姿を見られたらもう・・お別れしなくてはいけません・・」

刹那はタマモの質問にそう答えた、そして体をかがめ何かを解放するかなしぐさをした。

バサァ

すると、羽音と共に刹那の背中に大きな白い翼が出現した。
あたりには羽が飛び交っている。

「これが私の正体です、彼らと同じバケモノなんです・・・でも、私のお嬢様を守りたいという気持ちは本物なんです。今まで秘密にしてたのは、この醜い姿をお嬢様に知られて嫌われるのが怖かっただけ・・・私は宮崎さんのような勇気ももてない情けない女です!!」

刹那は思いのたけをこめてアスナ達に言った。























「あ、それ知ってたわよ」

「「「へ?」」」

感動のシーンはタマモの一言で終わりを告げたようである。

「あああのタマモさん知ってたってどういうことですか!!ていうかいつから!!!」

「だからー刹那が烏族かなんかのハーフだってのは知ってたわよ・・初めて会った時から、ねヨコシマ」

「ん、ああ。なんか秘密にしてるっぽいんでその話はしなかったんだが・・・まずかったか?」

どうやら最初に会った時点で自分の最大の秘密を見抜かれていたいたようだ。

「どどどどどうやって・・・」

「どうやってって・・・なんか霊力が人間とチョット違うし、それにすこーし妖気もあったしね。まだまだ穏行が甘いわよ」

「だな、まあ自分の素性を隠す気持ちは分からんでもないが・・・少なくとも俺やタマモは今更そういわれてもって感じだしな」

「あの・・・私が怖くないんですか?人間じゃないんですよ!アイツらと同じバケモノなんですよ!!」

「「だからなんで?」」

横島とタマモは刹那の質問に完全にシンクロして答えた。

「俺はそんなこと意識したことないしな、だいいちそんなこと気にしてたらタマモと一緒に生活なんかできねっての。な、タマモ」

「あの・・それはどういう・・」

「うーん・・・ま、アスナ達ならいいか。そうね私も秘密があるのよ、それに刹那の気持ちはよくわかるわ」

「秘密ですか?それにわかるってどういうことです」

「うん・・だって私妖狐だもん」

「「「えええええええ!!!」

刹那に続いてタマモの衝撃の告白に、ネギ達はすでにパニック状態であった。

「ま、そういうことだからさ。これからもよろしくね!!」

タマモはそう言うと刹那にむかって手を出す。

「あ・・・・・・ありがとうございます。タマモさん」

刹那は涙を流しながらタマモの手をとった。

「タマモちゃんの言うとおりよ!このかがこれ位で誰かのことを嫌いになんかなったりすると思う?そして私やネギもね!そうでしょ」

「そうですよ刹那さん、その姿綺麗ですよ」

「アスナさん・・ネギ先生・・・」

「ま、気にするなってのは無理かもしれないけどさ、少なくとも俺にとっちゃ刹那ちゃんはかわいい女の子ってことだけだよ、羽があろうが無かろうがね。それにもしなんかあれば俺たちのところに来ればいいさ、刹那ちゃんを拒む門は俺たちにはないぜ」

横島はそういうと刹那の頭をゆっくりと撫でた。
後ろでは微妙にタマモがうらやましそうにしている。

「横島さん・・・・ありがとうございます・・・・」(もし、横島さんたちもっと早く会えてたら、このかお嬢様を悲しませずにすんだかもしれませんね)

刹那は最後の言葉を胸に秘め、笑顔で横島たちを見渡した。

「それでは、行って来ます皆さん」

「ああ、このかちゃんを頼むぞ」

刹那はそういうと羽を羽ばたかせてスクナの元へ飛んでいった。このかを救うために。




「ここにいたのか・・・」

刹那が飛び立つと白髪の少年が煙の奥から姿を現した。

「さーて、どうしましょうかね、このガキの相手は」

「どうしよう、カモ君」

「こっちはもう手は出し尽くしちまったしな・・・」

「ヨコシマ、さっき言ってたスクナを倒せるってやつは出来ないの?」

「連続使用は無理だからな、本当に最後の切り札なんだ」

「そっか」

その時ネギ達の頭の中に声が聞こえてきた。

<坊や、聞こえるか?>

「こ、この声は!!」

<わずかだが貴様の戦い、覗かせてもらったぞ>

<まだ限界ではないはずだ、意地を見せてみろ!あと1分半持ちこたえられたなら私が全てを終わらせてやる>

「こ、この声ってまさか・・・」

<それと横島忠夫・・・・貴様の実力、こんどこそ・・・こんどこそ見せてもらうぞ!!>

「あと1分半か・・・・じゃ、気楽に行きますか」

<ちょっとは真面目に戦わんか貴様ー!!!>

「へいへいっと・・ほんじゃネギ、・・がんばれ!」(ま、文珠渡してるし1分程度は持つかな・・万が一があればやるしかないか・・)

<貴様も戦えー!!!>

「ほんじゃタマモ・・俺はスクナを倒す準備をしとく、エヴァちゃんが何をするつもりかしらんけど保険はかけとかないとな。ネギを頼むぞ」

「任せて、ヨコシマも気をつけてね」

<話を聞かんかー!!>


エヴァと横島が漫才を繰り広げている間、アスナとネギは少年と戦いを開始していた。
だが、二人とも少年に良い様にあしらわれてしまう。

「小さき王 八つ足の蜥蜴 邪眼の主よ その光我が手に宿し災いなる眼差しで射よ」

「まずい、ネギ!!」

アスナはそう言うとネギに覆いかぶさった。
そこに完成した石化の魔法がレーザーのようにアスナに命中した。
だが、光がアスナに当たる直前、障壁のようなものが魔法を防いだ。

「やはり・・魔法完全無効化能力か・・」

実際はアスナに渡した”護”の文珠が発動したのだが、少年がそのことに気付くことはなかった。

「その能力は脅威だ、まずは君からだ、カグラザカアスナ!!」

少年はその声と共にアスナへ向かって魔力を這わした拳をアスナに叩き込もうとする。

「そうかんたんにさせないわよ!!」

タマモは砲台のごとく巨大な狐火を少年に向かって放ち続けた、アスナに近寄らせないために。
だが、少年はその狐火すらかわし続け、ついにアスナを捉えようとした。

ガシィ!

「なに・・・・」

少年の前にはネギが立っていた・・・間一髪でネギはアスナの前に立ちふさがりアスナを守ったのである。

「ネギ!大丈夫なの!」

「大丈夫です、横島さんの文珠が守ってくれました・・・」

「イタズラの過ぎるガキには・・お仕置きよ!!」

アスナは動きの止まった少年にハリセンをたたきつけた。これにより、少年の全ての魔法障壁が消滅した。

「今よ!」

「うわあああああ!」

ネギは最後の力を振り絞り、少年の顔に拳を叩き込んだ。





そのころ、刹那はスクナを指呼の距離に仰いでいた。

「天ヶ崎千草!お嬢様を返してもらうぞ!」

「な!いつの間に・・・・だがスクナの餌食や!!やれ!スクナ!!」

スクナは千草の命令に従い、刹那を捉えようとする。

「く・・これでは近づけない・・」

刹那はスクナに勝るスピードでかわし続けるが、木乃香に近づけないでいた。
しばらくすると、しびれを切らしたのかスクナガが口に魔力を集中しだした。

「これは・・まさか!!」

スクナは強力なエネルギー光線を刹那にむかって放った。
刹那はこれを間一髪でかわし、スクナの背後に回った。

「あんな大技、そう連続でつかえまい!お嬢様を返してもらうぞ!!」

だが、背後に回った刹那が見たものは攻撃準備を完了したスクナのもう一つの顔だった。

「な・・しまった!!!」

致命的な失敗を犯した刹那はそれを後悔する暇もなく、スクナの放った光に包まれた。





「これは・・・・」

刹那が目を開けるとそこには強力な障壁が展開され、スクナの攻撃を完全に防いでいた。

「まさか・・・」

刹那は何かに気付いたのかポケットに手をいれ、あるものを取り出した。
それは横島から受け取った文珠であった。
文珠は今、淡い光を放っている。文珠が発動している証拠である。

「すごい・・これほどの攻撃を完全に防ぐなんて・・・これならお嬢様のところへいける!!」

刹那はそういうと木乃香にむかって一直線に飛んだ。

「な、なんでや!なんでスクナの力がきかんのや!!」

刹那はすれ違いざまに千草の召喚した式神を切り倒し、木乃香を取り戻した。

「お嬢様、お嬢様!ご無事ですか!!」

「ああ・・せっちゃん、やっぱりまた助けに来てくれた」

「お嬢様・・・」

「せっちゃん・・その背中のは・・」

「え、あっ・・・これは・・・」

あわてる刹那に木乃香はクスリと笑った。

「キレーなハネ・・・なんや天使みたいやなー」

木乃香の言葉はなによりも刹那の胸に響いた。





「・・・身体に直接拳を入れられたのは初めてだよ・・・ネギ・スプリングフィールド!!」

少年はネギの最後の攻撃もむなしく、完全に無傷であった。
ネギはもはや少年の攻撃をかわす力は残なく、自分に向けられた攻撃をただ見るしかなかった。

だが、その時ネギの陰から小さな手が出現し、少年の手をわしづかみにした。

「うちのぼーやが世話になった・・・・なぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「させるかー!!!!」

と、まったく同時にタマモが放った極大の狐火が少年を包み込んだ。

















エヴァごと・・・・

「「「あ・・・・・・・」」」

アスナ、ネギ、カモの沈黙が痛い瞬間であった。

「てへ♪」

「てへ♪じゃありませーん!!!エヴァンジェリンさーん!!」

ネギが湖へむかって叫ぶと、パシャっという音と共になにかが水の中から這い出してきた。
それはまるでリ○グに登場する○子の様であったと後にネギは語った。

「よ・・・横島タマモー!!きっさまー!!!!」

「うん、今のは完全に不可抗力よ・・・まさかあの状態で影から出てくるなんてさ・・思いも寄らなかったから・・それにほら、アンタが全部終わらせるんでしょ?ほら、遠慮なくぱっぱとやっちゃってよ」

「お、おのれ・・・後でこのことはじっくりと追求させてもらうからな!!茶々丸やれ!!」

「了解」

いつの間に現れたのか、茶々丸がスクナの側で銃を持って待機していた。

エヴァの命令により撃った弾丸はスクナの動きを完全に封じていた。

「マスター、この質量では10秒程度しかもちません・・・お急ぎを」

「さて、ぼーやはよくやったよ、でもまだまだだ。このような大規模戦闘で魔法使いはただの砲台だ。つまり火力が全てだ!!」

「マスター・・あと7秒です」

「わかった、今行く!さあ、私が今から最強の魔法使いの最高の力を見せてやる!」

そういうとエヴァはネギの元から飛び立っていった・・・だが途中で止まり振り返る。

「いいなー!よーく見とけよ!!特に横島タマモと横島忠夫!!!って横島忠夫はどこだ!!」

「ん?あっちよ」

タマモが指し示すとそこには精神を集中するためか、目をつむり瞑想している横島の姿があった。
瞑想中なのに全身に脂汗を流しているのが少々気になったが・・・

「こらー!!横島忠夫!!ちゃんと見とけー!!」

「あの・・・マスター・・・」

「なんだ茶々丸!今大事な所なんだ!!」

「ですがマスター・・・すでに結界弾の効力がなくなっていますが・・・」

「なにー!!!」

茶々丸の言葉に振り返ると、そこには結界弾を打ち破ったスクナがたたずんでいた。心なしかこちらを睨んでいるようにも見える。



その時、横島が目を見開いた。
横島の周りにはいくつもの光が浮かんでいた。
その光一つ一つが文珠である。

「さて・・・やっぱ保険かけてて正解だったな。ほんじゃいくか」

横島はそう言うと、スクナに向かって文珠を一つ放り投げた。
すると今まさにエヴァ達に攻撃を仕掛けようとしていたスクナが急にうずくまり、のた打ち回りだした。

「な・・なにが起こったんだ・・・おい、横島タマモ!!説明しろ!」

「ま、見てればわかるわよ・・・ていうか私も良くわかんないわよ!!」

「あれは・・・文珠?」

皆が注目する中、横島はさらにもう一つの文珠を取り出した。

























「むう!足の小指をタンスの角にぶつけた痛み程度では存在を消しきれなかったか・・・」

「なんだそれは貴様ー!!ふざけるなー!!」

横島がつぶやいた言葉にエヴァが噛み付いた。

「ぬはははは!!さすがに鬼神でも効くようだな!いかな強大な存在であろうとこれからは逃れられん!!名づけて『無限の聖痕』!!くらえ!!美神さんにしばかれた時の痛みだ!!」

横島がほうった文珠にはただ”痛”と込められていた。
文珠とはそのただ漢字を込めればいいものではない、そこにイメージを正確に込めれば同じ字でも様々な効能があるのだ・・・今回のように・・・
そして今回の文珠は相手を傷をつけるのではなく、ただ痛みを与えるだけである、その対象は痛覚のないゾンビすらものたうちまわらせ、強大な防御をもつ魔族にすら通用するのである。


スクナは戸惑っていた・・・身体はどこにも傷を受けていない、ましてや脆弱な人間ごときにこの身を傷つけるのは不可能であるはずなのに。
しかし、現実には己の身体をさいなむ苦痛に全身をよじらせ、のた打ち回った。


「ぬう・・これでもまだ動けるか・・・ではこれならどうだ!!全ての男にとって禁断の痛み!!股間を美神さんの神通鞭で痛打された時の痛みだ!!!」

横島は再び文珠をほうると、スクナは一瞬動きを止め、内股になって大地に崩れ落ちた。身体がピクピクと痙攣している・・・



「なんというか・・・これがヨコシマが言ってた切り札だったのね・・・・」

「いったいどういうことなんでしょう・・タマモさん・・」

「たぶん、文珠に”痛”って込めてるんだと思うけど・・・本当に捨て身の切り札ね・・」

「おい、文珠とはなんだ!それにあれのどこが捨て身なんだ!!」

「文珠はイメージが全てよ・・・そしてヨコシマはかつて自分が味わった痛みを文珠に込めてるみたいだわ。ということは・・・あの光ってる文珠の数だけヨコシマはかつて自分をさいなんだ痛みを思い起こしたのよ・・・思い出すのもイヤなものも含めてね・・」

「なんかすごいんだかすごくないんだか・・・」

「いや、でもあの股間を痛打されたってのはなんとなく分かるぜ・・・あれは絶対に思い出したくねえ・・」

「そうだね・・カモ君・・・」


横島の放つすごいんだか良く分からない技にアスナ達は戸惑いを隠せなかった。
ネギとカモは股間の痛みについては経験があるのか、微妙に内股である。

「さすがに音に聞こえた大鬼神だ、ではこれはどうだ!!生身で大気圏突入したときのヤツだ!!」


股間を押さえ、ピクピクと痙攣していたスクナは全身を襲う新たな痛みに、再びのた打ち回りだした。





「生身で大気圏突入って・・・・冗談ですよね?」

「当時私はいなかったけど本当みたいよ・・・」

「なんで横島さん生きてるのよ・・・」

「だってヨコシマだし・・・それにさすがのヨコシマも記憶喪失になったらしいわよ」

「なあ、横島タマモ・・ひょっとして横島忠夫はヴァンパイアかなにかとか言わんよな・・・」

「さあ?案外そうかもね」





「ほほう、これでもまだ正気を保つか・・・ではこれならどうだ、俺ですら全治するのに2週間を要した痛み・・・美神さんにおキヌちゃんに、そしてシロとタマモに1週間にわたってお仕置きをくらった時の痛みだ!名づけて『火の七日間』くらえー!!」

横島が最後の文珠をほうり、発動させた。
すると、スクナはオオオーンという声を響かせ、徐々に消滅していった・・・苦痛に耐え切れず、その痛みから逃れるため自らの存在を絶ったのである。



「スクナが自殺するほどの痛みっていったい・・・・というかそれに耐えきってさらに2週間で完全復帰って・・・本当に人間?」

「タマモさん・・・あなたも参加してたみたいですけどいったい何やったんです?」

「あ・・あの時は・・・普通に燃やしただけよ・・私は・・・ちょっと美神が時給を下げてしばき倒して、おキヌちゃんが霊団を召喚して、シロが八房つかって切りつけただけよ・・1週間ずっと・・」

「時給を下げてって・・・そんなんでダメージくらうのか?横島忠夫は・・」

「だって時給300円だったのが日給30円に減らされたらそれは・・・」

「時給300円・・・それが日給30円・・・なんなのそれは・・・」

「ヨコシマ泣いてたわねそういえば・・・しかもその後ですぐにこっちに来るはめになったから結局ただ働きだし・・・」

横島のあまりの待遇に心底同情するネギ達であった。




「あーつかれたー。やっぱこの技は封印だな・・・正直二度と使いたくねー」

「皆さんご無事でしたか」

そこに横島と刹那が帰ってきた、横島は全身に脂汗を浮かべ、刹那は木乃香を横抱きにしている。

「このかも助けたしこれでもう大丈夫ね」

「はい、ところで・・・・スクナはいったいどうやって?」

「ん、ヨコシマが奥の手を使って倒したわよ」

「横島さんがですか!!凄い、あのスクナを倒すなんて・・・」

「ま、ちょっと反則技だけどね」

刹那の混じりけの無い賞賛に、照れたのか頬をかいて横島は答えた。ちなみに視線は木乃香を微妙に避けている。

「横島忠夫!!いまのは一体なんだ!!それに文珠とかいうアイテムは聞いたこと無いぞ!!そして何より・・・・私の見せ場を奪うとは何事だー!!!!」

「ま、それについてはおいおいな・・・ていうか失敗フォローしてやったのにえらい言い草だな」

「な!!私は失敗してない!!だいたい貴様が」

「はいはい、お子様吸血鬼はどいてなさい。いくらわがままが子供の特権だからってやりすぎよ」

「誰が子供だー!!」

横島に食って掛かるエヴァをタマモはひょいと持ち上げ、脇においた。まるで荷物のように。

「ヨコシマ・・・本当にお疲れ様。体は大丈夫?」

「ん?ああ大丈夫だ、ちょっと思い出すのがアレだっただけで体は大丈夫だ・・・うん」

「まったく・・無茶するなってあれほど言ったのに」

「この程度まだ無茶の範疇にはいらね・・・・・・・・・タマモ!!!」


突然横島はタマモを突き飛ばし、覆いかぶさった。

ザクッ!!!

「え・・・・・」

タマモが顔を上げると、何かを貫く音と共に横島の胸から石の槍が飛び出していた。

「ヨ・・・・コ・・・シ・・・マ・・・」


戦いはまだ終わらない。


第17話  end




(あとがき)
3話構成の予定がけっきょくもう一つ増えてしまいました。
次こそはクライマックスです!!

二人?の異邦人IN麻帆良 「第18話 The longest night Act4」

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