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二人?の異邦人IN麻帆良(ネギま×GS美神) 「第21話 幽霊と嫉妬とロリコンと」 投稿者:九重九十九 投稿日:08/30-17:12 No.1180

草木も眠る丑三つ時、アスナは横島邸の客間で眠れぬ夜をすごしていた。
幸いにも朝の配達は新聞休刊日のため、まだ朝まで十分眠れる時間があるのだが、いっこうに眠れる気がしなかった。
そんな中、ふと廊下からなにかの気配を感じた。

「ん・・・なんだろう?」

アスナは眠るのを諦め、ベッドから体を起こし廊下へ顔を出した。
だが、廊下には誰もいなく、ただ暗闇が続くだけであった。

「あれ?おかしいなー、誰かいたと思ったんだけど」

アスナは誰もいない廊下を見渡しながらつぶやく。
そして諦めて部屋に戻ろうと振り返ったアスナはこの世ならざるものを見てしまった。







「キャァアアアアアアア!!!!!」

深夜の横島邸にアスナの悲鳴が響き渡った。
アスナが振り返ったそこには、水玉のナイトキャップをかぶり、やたらファンシーで白を基調とした赤い花柄のパジャマをまとった死神が目の前でフヨフヨと浮かんでいた。
死神は自分を見て悲鳴を上げるアスナに、キョトンと首をかしげる動作をする。
人によってはそのしぐさは、くぼんだ眼窩とあいまって可愛いと表現する人もいるかもしれない・・・・・と思う。

アスナはともすればパニックに陥りそうな自分をなんとかつなぎとめ、平静を装うとするが、それに追い討ちをかけるように廊下の向こうからゴ~リゴ~リと何か重いものを引きずる音が聞こえてきた。

「ひいい!何よいったい」

先ほどの悲鳴にもかかわらず、誰も起きる気配の無い家の中でアスナペタンと座り込み、恐怖に打ち震えた。
ちなみに死神はさっきからアスナの周囲をゆっくりと旋回している。まるで値踏みするかのように。

やがて、なにかを引きずる音が徐々に近づき、廊下の奥の暗闇から人影が姿を現した。
アスナはあまりの恐怖に頭を抱え、廊下の隅で小さく体を丸めて目をつぶった。これは夢であると願いながら。
だが、これはあくまでも現実である。

アスナの願いもむなしく、人影は何かを引きずる音と共に徐々にアスナに近づいてくる。
そして息遣いが聞こえるほどの至近距離に近づき、ゆっくりとその手をアスナに伸ばした。






「なにやってるのアスナ?」

「へ?」

アスナが目を開けると、そこには眠そうな表情をし、左手で巨大なハンマーを引きずっているタマモがいた。

「タ、タマモちゃんだったの?よかったー」

アスナは安堵のため息とともに、全身の力をぬいた。

「さっきの悲鳴はアスナなの?」

「うん、あの・・・・この死神みたいなのは何?」

アスナはいまだに自分の斜め上に浮かんでいる死神を改めて凝視する。

「何って、横島専属の死神だけどなんかあったの?」

「いや、振り返ったら目の前にいたから驚いて・・・・・って横島さん専属の死神って!!」

「まーたしかに夜中にこの子をアップで見たらビックリするわよね」

「いや、それよりも死神って!!横島さん死んじゃうんじゃないの?」

「ああ、それは大丈夫。この前まで横島の命狙ってたけど。今じゃ親友みたいだから、それに修学旅行の時に横島の魂を返してくれたのはこの子よ」

「あ・・・そういえば」

アスナは修学旅行で横島が瀕死どころか、文字通り死にかけた時のことを思い出した。

「ま、異常は無いみたいだし私はまた寝るわね」

タマモはそう言うと振り返り、再びハンマーをずりずりと引きずりながら死神を引き連れて部屋に帰ろうとした。
だが、その時アスナは寝る前から気にかかっていた事をタマモに聞こうとした。
おそらく、今日眠れなかった原因はこれであろうと確信しながら。

「ねえ、タマモちゃん」

「なに?」

「あのさ、修学旅行の時ホテルの大浴場でネギが天に召されかけた事があったよね」

「ああ、そういえばあったわね。今でも不思議なのよねー、確実に復活するように手加減してたのに」

タマモは修学旅行初日の夜の出来事を思い出す。

「あの時本当にタマモちゃんは手加減したの?」

「当たり前じゃない、ちゃんと5分以内に復活するように手加減したはずよ」

「ひょっとして横島さん用の手加減をしたって可能性は?」

「それも無いわね、ヨコシマ用だったらたとえ手加減しても原型なんかとどめるはずないし。で、なんなのいったい?」

「いや、あのね・・・ちょっと気になる事が」

「気になること?」

アスナは何かを言おうとするが、うまく言葉に出来ないのか口ごもる。
だが、しばしの沈黙の後、意を決したようにタマモにたずねた。

「あの・・さ。あの時ネギが魂抜ける前にこのかが駆け寄ったよね、その時このかがなんて言ったか覚えている?それに女神っぽいものも出てきたし・・あれってなんだったのかなと思ってさ」

「あの時このかが?うーん、たしか『今楽にしてあげる』とか言ってたような気がするけど。なんか変なの?それに女神って・・・・どんなだったっけ・・」

「いや、そういうわけじゃないんだけどね・・・・」(まさか楽にってトドメ・・・って、そんなわけ無いじゃない、このかがそんなわけ・・・あはははは)

アスナはこの時、心の中で生まれた疑惑を気のせいとして封印することを決めた。

「もういいわよね、じゃお休みー」

タマモはアスナの質問が一段落したのを確認し、眠い目をこすりながら寝室へと帰っていこうとした。
だが、ふと足を止めアスナへ向き直った。

「あ、そういえば思い出したけどさ。あの時ネギを迎えに来た女神っぽいものって、黒い衣装で、おまけになんか物騒な槍を持ってたわね。気配なんか神々しさの影になんか禍々しいものを感じたのよね」

タマモはそう言うと、今度こそ死神を引き連れて寝室へと帰っていった。

















「うそおおおおおおおお!!!!!なんで破壊の女神がー!!!!」

しばらくの後、アスナの絶叫が再び横島邸をゆるがすが誰も起きるものはいなかったそうな。
なぜアスナが異界の神のことを知っているのかはナゾである・・・おおかたネギに改宗を迫られたとき異界の神々についても言及したのだろう、きっと・・・
ちなみに木乃香が魅入られた原因は、ほぼ間違いなくトラウマのせいであろう。




第21話 「幽霊と嫉妬とロリコンと」





「ふわぁあああああ・・・・」

「すっごいあくびね、アスナ」

その日の放課後、アスナは百年の恋も冷めようかというすさまじいあくびを連発していた。

「アスナさん昨夜眠れなかったんですか?」

「うん、なんか昨日は寝付けなくてね」

アスナは心配そうな刹那の言葉に、あいまいに答える。

「アスナー大丈夫?いくら配達が休みゆーたかて、夜更かしはいけんえー」

「あ、大丈夫だって。授業中寝てたからだいぶ楽になったわ」








(原因はアナタよ・・・このか)

アスナは心の中の言葉を飲み込み、笑顔でこのかに答えた。

「そんならえーけどなー、きつかったら今日のボーリング中止する?」

「大丈夫だって。それに刹那さんやタマモちゃんってボーリングやったこと無いんでしょ、それならなおのこと中止なんかするわけ無いじゃない」

どうやらアスナ、タマモ、木乃香、刹那の4人でボーリングに行く予定らしい。

「あ、せや。どうせなら後でネギ君も誘っていこーな」

「別にいいけど、ネギって確か世界樹前でクーちゃんと待ち合わせしてるんじゃなかった?」

ネギを誘っていこうと提案する木乃香に、アスナはネギの予定を思い出しながら木乃香に答えた。
ちなみにネギは、授業中にクーを世界樹広場に呼び出すということをしでかしている。
さらに世界樹広場は告白の名所でもあるため、当然その後のクラスの喧騒はすさまじいものであった。

「ま、いいじゃない。とりあえず行って見ましょ」

タマモはそう言うと世界樹広場へと向けて歩いていった。

「あ、タマモちゃんまってーなー」







「さて、ある意味これが初仕事か。さー借金返済へむけてがんばるぞ・・・と。一億円かー遠いなー」

横島は麻帆良に来て初めて、学園長を通さない仕事を始めようとしていた。
お忘れになった人もいるだろうが、通常は学園長と横島個人で麻帆良学園の警備という形で契約を結んでいる。
だが、それ以外でも『横島よろず調査事務所』という探偵まがいの何でも屋も開業していた。
もっとも今まで学園長以外からの依頼は無く、事務所としての一般営業は実は今日が始めてだったりするのである。

今までは事務所としての仕事が無くても、普通に生活するぶんには十分すぎる収入があったのだが、さすがに一億もの借金を抱える身として、収入増額のためにも事務所経営に力を入れざるを得ない状況であった。
そのため、修学旅行の問題が片付いてより今日まで、さまざまな場所で営業活動にいそしむ横島の姿が見受けられることになった。
もっともそのせいで、ライフワークともいえるナンパが出来ないという弊害もあったのだが。

そして、本日その営業活動が実を結び、ようやく『横島よろず調査事務所』に仕事の依頼が来たというわけなのだ。

「はてさて、どんな依頼なのかねー。できれば美人のねーちゃんが依頼主だったら言う事無いんだけどなー」

横島はそうつぶやくと、あらためて依頼人のいるであろう建物を見た。
そこには巨大な看板でこう書かれていた。

『麻帆良総合レジャーセンター』と・・・・







「なんかえらく大事になっちゃったわね・・・」

「クラスの半数が集まってますね、これは」

アスナと刹那が呆然とつぶやく中、3-Aの過半数がここ、『麻帆良総合レジャーセンター』へと集合していた。
世界樹広場でクーごとネギを確保した後、なぜか委員長以下三名がボーリングに参加する事になり、さらにその話を聞いたクラスのメンバーが多数名乗りを上げる事になったのである。

「ま、賑やかでいいんじゃない?」

タマモは初めて見るボーリング場に好奇心を刺激されたのか、さっきからあたりをキョロキョロと見回し、落ち着かない感じだ。

そんなやり取りの中、各レーンでゲームが始まっていった。





「やっぱりあきらめきれませーん!!!!」

暫くするとなにやらレーンの向こうで委員長の叫び声と共に、なにやら女の勝負が始まったようであるが。タマモは我関せずとばかりに真剣にゲームに集中していた。
ちなみに、現在3フレーム終了でアスナ26、刹那11、木乃香18、タマモ2のスコアである。
そして今、4フレーム目のタマモの第1投である。

「タマモちゃーん力ぬいてー、腕に余計な力入りすぎ!!」

「無理にスピード出す必要ないでー」

「タマモさんがんばってください」

アスナ達の声援をうけ、タマモはピンを見据えたまま、ゆっくりと助走を始めていく。
しかし、ボールがタマモにとって重すぎたのだろうか、バックスイングをしたところでボールが手からすっぽ抜け、アスナ達のほうへと飛んできた。

「「キャア!!」」

あわてて木乃香とアスナはそのボールを避け、刹那は冷静にボールの軌道を見極め、木乃香達に当たらないことを確認する。

「あちゃー、ごめんねみんな」

「大丈夫よ、でもタマモちゃん。やっぱりそのボール重過ぎるんじゃないの?」

「そうかもね、ちょっと腕がしびれちゃったから交換してくるわ。タマモはそう言うと足元を転がるボールを片手で引っつかんできびすを返した」

その時、アスナは何か違和感を感じた。
最初は気付かなかったが、タマモがボールを持つ手、右手をじっと見つめる。ボールの色は黒っぽい青、これはこのボーリング場で16ポンドの重量をあらわしている。
そのことはいい、普通に転がすだけなら女性でも16ポンドのボールでも可能だ。だが、なにか違うのだ、そうのどの奥に小骨が引っかかったのように答えが出てこない。
しばらく見つめると、ようやくアスナはその違和感の正体に気がついた。

「タマモちゃん、ちょっと確認するけど今までどうやってボール投げてたの?」

「え?普通にこうやってボールをつかんで投げただけよ、アスナと同じように」

タマモはそう言うとボールを下にしたまま、アスナにボールの握りを見せた。

「「「・・・・・・・・・」」」

「ちょっとどうしたのよいったい」

タマモの握りを見て絶句するアスナ達一同、そして自分がなにか変なことをしたのかとあわてるタマモ。
ボーリング場の一部で始まっている勝負の喧騒を他所に、この空間は極めて静かに時が流れていった。







「あのさ、タマモちゃん。ボールは親指と中指と薬指を穴に入れて持つんだよ」

「はわわーどうやったらそんなことが出来るんやー」

「あの、いくら初めてだからってそれはあまりにもベタな・・・というかどうやってバックスイングしたんですかそれで・・・」


タマモはボールを片手でつかんでいた・・・握力だけで・・・穴に指をいれることなく。









「よくぞ来てくださいました。私がオーナーの水口です」

横島はオーナー室で依頼主のあいさつを受けていた。
残念ながら横島の願いもむなしく、依頼主は男性であったが、人のよさそうな笑顔が好感をもたせている。

「あ、どうも。『横島よろず調査事務所』所長の横島忠夫です。さっそくです依頼の件を」

「おお、そうですな。私どもは皆さんに完璧な娯楽を提供するため日夜がんばっております、ごらんのとおりそのためには金に糸目もそして手段も選びません」

オーナーはどこかで聞いたようなセリフを言いながら、依頼内容を説明していった。
それによると、二週間ほど前からボーリング場の13番レーンで不思議な怪現象が起こっているという。
その怪現象とは、たとえプロでもストライクやスペアーが取れなくなるという不思議な現象が頻発しているというのだ。

「そのプロが下手くそだったってオチじゃないんすか?」

「そんな事はない、そのプロは去年の全日本のチャンピオンだ。それにこのビデオを見てくれたまえ」

オーナーはそう言うと、ビデオを取り出し再生する。
するとそこにはプロらしき男が、なにやらやたら気合を込めてボールを投げる姿が映し出されていた。
ボールは緩やかなカーブを描き、確実にストライクを取れるであろうコースに乗っていた。
男はストライクを確信し、小さくガッツポーズを取る。
そしてボール確実に1番ピンと2番ピンとの間に吸い込まれ、そして・・・








ガン!!という音と共にピンにはじかれガータへと落ちていった。
頭上のディスプレイに表示されるスコアは当然Gである。


「・・・・・・・なんなんすか?これ・・・」

「だからその原因を調査してもらいたいのだよ、そして出来れば解決を。我々はあらゆる手を尽くした。設計レベルからもレーンを見直し、はては局地的な地震でもあったのかと調査したが結局原因は分からずじまい。もはや藁にもすがる思いで君に頼んでいるのだよ、君の事は麻帆良の学園長から有能だと聞いている、頼む!なんとかしてくれ!!!このままでは来週の大会がー!!!」

オーナーは最後には頭をかきむしりながら絶叫した。

「まあ、依頼については分かりました・・・ではさっそく現場へ行って見ます」

「おお、受けてくれますか。お願いします!!」

オーナーはまさしく最後の希望という感じで横島の手をガシィ!と握り締めた。






「勝っちー!!!!」

委員長達の勝負がついたのか、奥のほうで歓声が上がっている。

一方タマモ達はというと。

「んーけっこう楽しいわねー」

「あははは・・・タマモちゃんプロ目指せるんじゃないの」

「タマモちゃんすごいなー」

「あの、ピンが砕けてましたけど・・・・それになんかあそこで店員が泣いてますが・・・・」

正しい投げ方を身に着けたタマモは怒涛の快進撃を見せたようである。
しかし、いったい何キロ出せばピンが砕けるんだろう。


「あれ?タマモも来てたのか」

そんなタマモ達に声をかける存在があった。そう、オーナーを引き連れた横島忠夫である。

「ヨコシマ!?なんでここに?」

「仕事だ仕事」

「横島君、この子達は?」

「ああ、俺の妹とその友達です」

横島とタマモ達の関係をいぶかしがるオーナーに手短にタマモ達を紹介する。

「で、仕事ってここで?」

「ああ、ちょっとこの先で問題があってな。水口さん、タマモも一応うちのスタッフなんで状況を話しますけどいいっすか?」

「かまわんが、その代わり他言無用でお願いしますよ」

横島はオーナーの許可を得て、仕事の内容をタマモに説明する。

「ふうん、謎の13番レーンねー・・・・それってアイツが原因じゃないの」

タマモが指差した場所、問題の13番レーンには男がたたずんでいた。
その男の歳はまだ若く、20代前半のやたらとマッソーな体躯に反して、血色の悪そうな顔でじっと閉鎖されたレーンを見ていた。
そしてその男の最大の特徴はというと、背後に背負っている鬼火の群れであった。

そう、男は幽霊である。


「・・・・・・・・・間違いなくアレだな、犯人は」

「でしょ」

「私もさっきから気になってたんですけど、特に害意は無いようですね・・・」

どうやら刹那も幽霊の存在には気付いていたようである。

「いったい何を話しているのかね」

「あ、いえこっちの話です・・・ちょっとピンのところを見てきます。あ、タマモはフォロー頼むな」

横島はオーナーにそう言うと、幽霊に近づき話しかけた。
なお、はたから見れば何も無い空間に話しかけるという、なんとも電波な絵面だが、タマモの幻覚によりうまい具合に横島がレーンを調査しているように見せている。

「あーそこの超兄貴な幽霊、何が心残りなのか知らんが、こんな営業妨害はやめて素直に成仏してくれないか?」

横島が幽霊に話しかけると、その幽霊は横島に向き直り、血涙を流しながら横島にせまった。

「うおおおおお!!憎い!憎い!憎い!ボーリングがすべていけないんだー!!!!」

「落ち着け!ボーリングが憎いのは分かったから、とにかくその理由を話せ!!」

男は横島の言葉に多少なりとも落ち着きを見せると、自分の身の上を話していった。
それによると、男はかつてこのボーリング場で意中の女性とデートにこぎつけたが、その日は調子が悪くいっこうにストライクが取れなかったらしい。
さらに間の悪い事に、たまたま来ていたその女性の知り合いの男が、まるで見せ付けるかのようにストライクを取り、結局女性は幽霊男を見捨て、その男といっしょに帰っていったそうであった。
あわよくば告白するつもりであった男は、ショックで意識が朦朧としているところで事故にあい、治療の甲斐なく天に召され、以来女性にフられる原因となったこのレーンで邪魔しているというわけである。
特にカップルとイケメン男を中心に・・・・

それを聞いた横島はというと・・・

「うううう、わかる!お前の悔しさはよくわかるぞ!!!この世の全てのイケメンは敵じゃー!!!彼女がいるやつは滅びろー!!!」

共感していた、それはもう涙を流さんばかりに。



「そうか!わかるか!!お前なら俺の悔しさを理解してくれると信じていたぞ!!」

幽霊男と横島はお互いにシンパシーを感じたのか、涙を流しながら互いの肩を叩きあった。

「「太陽のバッキャーロー!!夏なんか大ッ嫌いだー!!!」」

やがて、夏でもないのに、まして室内なのに横島たちの目の前には、夏の太陽に照らされた海が広がっていた。



「あの、横島さん。さっきから一体何を・・・・」

「ヨコシマー、アンタいつまで遊んでるのよ、さっさとしないと幻術解けるわよ」

やがて幽霊と肩を組みながら世界を呪いだした横島にしびれを切らしたのか、刹那とタマモが話しかけてきた。

「な!!!!」

幽霊男はタマモ達を見ると、突然横島から飛びのき、殺意を込めた目で横島を睨みだした。

「貴様!!さっき『この世のすべての悪(カップル)』を呪うと俺に誓ったあの言葉は嘘だったのか!!!」

幽霊男は横島を睨みながら、血涙と共に魂の叫びを大音声で横島に浴びせかけた。

「まて、何を突然・・・タマモは俺の妹だし、刹那ちゃんはその友達だ!」

横島は幽霊男の誤解を解こうと必死に弁解する。

「ええい、そんな世迷言信じられるか!それにその金髪の女が妹だと!明らかに血がつながっていないであろうが!!血のつながらない妹をはべらし、さらにその友人まで毒牙にかけているとは・・許せぬ!!」

「マテや!!人聞きの悪い事を言うなー!!」

「聞く耳もたん!それにその状況でタダの妹だと?その友人だと?そんなこと信じられるかー!!!」

横島は幽霊男の言葉に、改めて自分の状況を見た。
すると、タマモが自分の右腕にしがみつき、震えていた・・・・うつむいた表情の奥はニヤリと笑っていたが・・・
さらに刹那は横島の背に隠れるように、顔を真っ赤に染めておずおずとしがみついている。

「あの・・・タマモさん、なぜこんなことを・・・」

「いいから、いいから。この後きっと面白くなるわよー」

どうやらタマモの入れ知恵のようである。



「貴様は俺を裏切った!せっかく同好の士と思い、俺の無念の思いを託せる男と思っていたのに!!」

「マテ・・・同好の士とはどういう意味だー!!」

「そんなこともわからないのか、俺は貴様と同じように中学生以下にしか興味ないのだ!!」

「人聞きの悪い事言うんじゃねー!!!!ってまて!お前中学生以下にしか興味が無いって言うと、さっき言ってた意中の女性って・・・」

幽霊男の言葉に、横島は天に届けとばかりに絶叫するが、途中でふとあることに気付いた。

「うむ、それはこの子だ」

幽霊男は懐から写真を取り出し、横島に見せる。
なぜ幽霊が写真を持っているのかは謎ではあるが。

「「「・・・・・・・・」」」

横島たちは差し出された写真を見て絶句する。


「彼女が俺の天使だ!」

幽霊男はどことなく誇らしげに胸をそらしている。

「・・・・・オイ、まさかと思うが。この写真の娘と一緒に帰っていった男ってのは・・・」

「彼女のクラスメイトだそうだ」

「そうか・・・・・・・」

横島は幽霊男の言葉に再び写真に目を落とす。
その写真に映し出されている女性は、はちきれんばかりの笑顔をし、友達とおしゃべりをしている情景であった。

















写っているのが小学生5~6年生の少女であることを除けば。
写真の状況を見るに、教室内の状況を外から超望遠で撮影したものらしい。

「さて・・・・・・・・・殺るか」

横島はそうつぶやくと、右手に霊波刀状態の『栄光の手』を具現化させ、ゆっくりと幽霊男に迫っていった。
なにやらバチバチと放電現象も起こっているようだ。

「貴様も俺と同じ同好の士ならばわかるであろう!世間から迫害され、後ろ指差されながらも夢を追い続けた俺の気持ちが!そして俺の目の前で俺の夢を実現させている者への嫉妬が!さらにたった今、友に裏切られたこの気持ちが!!!」

「勝手に貴様と同類にするんじゃねー!!!!んでとっとと成仏しやがれこの犯罪者ー!!!!!」

横島は目の前で血涙を流しながら絶叫する幽霊男に、全力を込めて『栄光の手』を叩き込んだ。










「事務所の初仕事がけっきょくアレか・・・・」

横島はあの後、無事報酬を受取り、トボトボと帰りの途へとついている所である。

「まあいいじゃない、無事終わったんだから」

その後ろをタマモと刹那、それにアスナとネギ、さらに木乃香がついて歩いている。

「そういえばさ、あの後クーちゃんがみんなに追い回されてたけど何があったんだ?」

横島は、報酬を受取るために再びオーナー室へ向かう時に見た光景を思い出した。

「なんかネギ先生がクーちゃんに弟子入りするらしいわよ、んでそれを勘違いしたアヤカがね・・・」

「ふーん・・・エヴァちゃんに弟子入りは諦めたのか?」

「いえ、クーフェさんにはエヴァンジェリンさんと別に体術、中国拳法を教えてもらおうかと思ってますから」

横島の質問にネギは笑顔で答える。

「そっか・・・・ま、大変かもしれんががんばれよ!」

横島はそう言うと、ネギの背中をドンと叩いた。
ちょっと力がこもっていたせいか、ネギは咳き込んでしまう。

「ゲホ・・ハイ、がんばります!!ところで横島さん・・・・今日はエヴァンジェリンさんに教えを受ける予定じゃなかったんですか?」

「あ、そういえばエヴァちゃん昨夜そんなこと言ってたな・・・・・でも、昨日ちゃんと断ったぞ」

「あれ?でもエヴァンジェリンさん今日の授業中ずっと横島さんの修行プランを練ってたみたいですよ」

「伝わってなかったのかな?まあいいや、後で電話しとくわ・・・さて、ここで俺達はお別れだ、みんなまたな」

やがて交差点にたどり着くと、横島はタマモを引きつれ、自宅へと足をむけた。

「あ、横島さんそれじゃあ」

「タマモちゃん、またボーリング行こうね」

「あ・・・・・」

ネギとアスナが元気よく横島たちに声をかける中、刹那はすこし寂しそうに、そして羨ましそうに横島と腕を組んでいるタマモを見つめていた。

「せっちゃん、ひょっとして横島さんのことが気になるん?」

「お、お嬢様!!これはその・・・」

刹那は木乃香の言葉に顔を赤くして口ごもる、だが、その態度でバレバレである。

「せっちゃん、タマモちゃんと戦うんやったらもっと積極的にならんといかんえ」

「いえ、あの・・・私はその戦うとか・・・そもそも横島さんと・・あううう」

木乃香は刹那の表情を微笑ましく思いながら、横島たちを見つめた。
そして大声で横島達にむかて声をかけた。

「横島さーん、タマモちゃーん!明日学校終わったら遊びにいってええー!?」

横島達はその声を聞き、同じく大声で返す。

「いいわよー!!明日一緒に帰りましょー!」

「おーう、暇だからいつでもいいぞー!!」

それを聞いた木乃香は、満足そうな笑みを浮かべながら刹那の方へ振り向いた。

「さ、せっちゃん。明日はかわえー服持ってきて横島さんを落とすんや。帰ったら明日の服決めるえー」

木乃香はそう言うと嬉しそうに刹那の手を引き、寮へと向かって駆け出していった。
すでに木乃香の頭の中は、刹那にどんな服をきせようかとシュミレートを開始しているようだ。

「ちょ・・お嬢様、私はその・・・・まってくださ・・・」

刹那は木乃香の言葉に戸惑いつつも、すこし嬉しそうな表情を浮かべながら走っていった。


















「うーん、やっぱ猫耳セーラー服は基本やなー。あ、巫女さんやメイドさんもええなー」

「お嬢様ー!!!!」

その夜、麻帆良女子中等部女子寮の一室で刹那の絶叫が響き渡ったという。




第21話     end




「ええい横島忠夫はまだか!!!」

エヴァンジェリンは自宅でさっきからずっとウロウロと部屋を行ったりきたりしていた。
どうやら横島がこない事にしびれを切らしているらしい。
その姿はかもし出される苛立ちと迫力もあいまって、動物園のオリの中でウロウロするライオンのようである。

「あの・・・マスター」

「なんだ茶々丸」

「横島さんからお電話ですが」

茶々丸の言葉にエヴァは即座に茶々丸が持つ電話のもとへと移動する。

「はやい!」

「横島忠夫!!貴様いったいいつまで人を待たせるつもりだー!!」

茶々丸の呟きを他所に、エヴァは電話の向こうの横島に向かって吠えた。

「だいたい貴様は師を敬うという基本的なことが・・・」

「あー悪い・・・・つーか昨夜俺はその件についてちゃんと断ったはずだぞ」

「やかましい!昨日言ったはずだぞ貴様に拒否権などないと!!」

「そんなもん知らんわー!!だいたい美人のお姉様が手取り足取り教えてくれるならともかく、何が悲しゅうてお子様相手に勉強なんぞせんといかんのや!つーわけで弟子入りの件は無しな、ほんじゃエヴァちゃんお休みー」

ガチャ・ツーツーツー

「な!私のどこが不満だと言うんだ!こら、勝手に切るな、もしもーし!!!」

ほぼ一方的に電話を切られたエヴァは、受話器を持ったまま呆然と佇んだ。

「マスター、横島さんはいかがでしたか?」

茶々丸はエヴァの様子を気づかい、声をかけるが、エヴァは顔をうつむかせたままである。

「ククククク・・・・」

やがてエヴァから小さな笑い声が聞こえてきた。しかもそれにあわせてエヴァの長い金髪がウネウネとまるで意思を持つかのように動き出す。

「あの、マスターお気を確かに」

茶々丸の言葉もどうやらエヴァに届いていないようである。

「ナギといい横島忠夫といいよくもこの私をコケに・・・・・横島忠夫!絶対に貴様を私の弟子にしてやるー!!!!」

エヴァは拳を天に突き上げ、絶叫した。さながら拳王様のように・・














「手段ト目的ガ入レ替ワッテナイカ?ゴ主人」

「すっかり熱くなられて・・・しかし現状では横島さんを弟子にするの無理と思われますが・・・」

「ゴ主人ハ外見ハガキデ歳ハバアダカラナ」

「マスターは見事に横島さんの守備範囲を外れていますし・・・」





「無理ダナ」

「無理ですね、きっと・・」

天に向かって吠えるエヴァを他所に、チャチャゼロと茶々丸の従者コンビは冷静に寸評を行っていた。


「貴様らー!!本気で喧嘩売ってるのかー!!!!」

刹那の絶叫が響き渡る二時間前、エヴァの絶叫が麻帆良の空に響き渡った。




(あとがき)

この章で以前から出していた『横島よろず調査事務所』がようやく稼動しました。
これにより、これからの展開でオリジナルの話をはさみ易くなったと思います。

ついでに今回出演のマッソーな幽霊さんですが、GS世界の妖怪コンプレックスのイメージでキャラを作ってみました。
世界観的に違和感がありそうでちょっと冒険でしたが、横島とからめたらなぜかはまってしまいました。

補足ですが、横島の調査事務所は、心霊現象を専門に扱うという感じで看板を出しているわけではありません。
どちらかというと普通の探偵モドキという感じなのですが。
これを契機に怪奇現象も扱う稀有な事務所として口コミで評判になっていく事でしょう。
まして麻帆良は魔法を抜きにしても怪奇現象てんこもりな場所でしょうし。

現実でも信じる信じないは別にして怪奇現象は起こってますから、こういう事務所があってもいいかな?

それでは次回は週末更新を目指してがんばります。

二人?の異邦人IN麻帆良 「第22話 ドラゴンロード」

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