HOME
| 書架
|
当サイトは「魔法先生ネギま!」関連の二次創作投稿サイトです。ネギま!以外の作品の二次創作も随時受け付け中!
書架
二人?の異邦人IN麻帆良(ネギま×GS美神) 「第23話 地下迷宮の宝物」 投稿者:九重九十九 投稿日:09/05-19:14 No.1206
「よ・・よこ・・・」
エヴァは現在進行形で切羽詰っていた。
顔は羞恥で朱に染まり、緊張のあまり言葉もろくに出てこない。
ともすれば前方に立っている人物の顔すらよく見えなかった。
だが、いつまでもこの状態で醜態をさらすのはエヴァの矜持が許さなかった。
エヴァは顔を朱に染めながらも、前方の人影に向かって思いのたけをぶちまけた。
「よ、横島忠夫!どうかわた私の弟子になってください。お願いします!!」
頬を染め、視線を逸らしながらであったが、エヴァはなんとか予定していたセリフを一息に言う事が出来た。
後は答えを待つのみである。
だが、エヴァの前に立つ人物は小さくため息をつくとかぶりを振り、そして申し訳なさそうに答えた。
「カット・・・もう一度です、マスター」
エヴァの前に立つ人物、茶々丸はシナリオを丸め、メガフォンのようにしながら淡々と答えた。
「な!今のどこがいけないというんだ!!」
エヴァは茶々丸のダメ出しに不満なのか、茶々丸につかみかかる。
だが、茶々丸は気にした風も無くさきほどのエヴァの仕草について批評していった。
「マスター、頬を染めるのはポイントが高いのですが、もうすこし感情を込めてください。あと視線を逸らすのではなく、手を胸元で組んで上目づかいで見上げると完璧です。というわけでシーン25『伝説の木の下の告白』をもう一度」
「ぐぐぐぐ・・・だいたいなんで横島忠夫を弟子にするのに私がここまでしないといけんのだ!この私が弟子に迎えてやると言ってるんだぞ、感涙にむせび泣いて弟子になるのが当然じゃないのか!!」
「ですがマスター、横島さんを弟子に勧誘しようとしてすべて失敗していますが・・すでに29回も」
「む・・・」
どうやら現在茶々丸とエヴァは横島を弟子にするため、その勧誘の練習をしているようだ。
「だ、だが何故こんな練習をしなくてはいけないのだ!!それもシェチェーションを変えてまで!!」
「マスターもご存知とは思いますが、練習で100の力が出せてようやく本番で10の力が出せます。ですからこの練習をこなす事でより確実に横島さん弟子にすることが出来るというわけです」
エヴァは茶々丸の理論武装に答えに詰まった。
正直こんな練習などほうり出したいのだが、横島を弟子にするためには、ひいては自分の呪いを解くためにここは我慢するしかなかった。
「と、言うわけで先ほどのをもう一度です、まだまだこの後は『ドキッ!登校中の交差点で衝突して一目ぼれ』略して『学園エヴァ』や『おねがい先生』それに『破壊の女神様が見てる』などたくさんありますから急いで仕上ますよ」
「なんだそのやたらとピンポイントな題名はー!!!」
茶々丸はエヴァの叫びを無視し、再び練習へと移っていった。
「次はスク水の上にセーラー服を着て、さらにメガネと猫耳をつけてさっきのをもう一度・・・」
「いいかげんにしろぉぉぉおおおおお!!」
エヴァの従者茶々丸、彼女の暴走は止まらない・・・・
第23話 「地下迷宮の宝物」
「おっかしいなー・・」
時はネギがエヴァの弟子入りのため、地獄の修行をしていたころの放課後。
麻帆良女子中等部3-A、出席番号3番、朝倉和美は寮の廊下を首をかしげながら歩いていた。
「どうしたのよ、朝倉」
ちょうどその時、朝倉の背後からたまたま寮に遊びに来ていたタマモが声をかけた。
「あ、タマちゃんどうしたの?寮に来るなんて珍しいじゃない」
「アヤカからお茶に誘われてそれでね」
「そっか、最近いいんちょと仲いいもんねー」
「そういうこと、そっちは何かあったの?不思議そうに首をひねってたけど」
「いやーなんか洗濯してたらちょっとね、その・・下着が無くなったみたいで」
朝倉はタマモの質問に言いにくそうに答えた。
「下着が?」
「そう、確かに干してたはずなんだけどなー・・・それも乾燥室に。ま、誰かのにまぎれちゃったのかもしれないしもうちょっと探して見るわね」
朝倉はそう言うと再び廊下を歩き出した。
タマモはその後姿を見ながら、一瞬とある人物を思い浮かべたが、すぐに否定し委員長の部屋へと向かっていった。
「タマちゃん、ちょっといいかな?」
次の日の放課後、タマモは朝倉に呼び止められた。
「いいわよ、どうしたの?」
「昨日のことなんだけどさ、あれから調べてみたらなんか他にも被害者がいたみたいでね・・桜咲さんや龍宮さん、それにチアリーディング三人組も被害にあったみたいなのよ」
「ということは・・・やっぱり下着ドロ」
「たぶんね、しかもウチとこの寮だけじゃなくて他の高校や大学でも被害があったみたいでさ、もっともそっちは下着だけじゃなくて他のも盗まれてるみたいだけど」
「で、私にどうしろって?」
この時、タマモの中では容疑者が裁判無しで有罪を確定していた。
「タマちゃんとこって確か探偵やってたよね」
「犯人を捕まえろってわけね、まかして!犯人の目星ついてるし明日には解決してるわよ」
タマモはそう言うと、意気揚々と腕まくりをしながら帰っていった。
「いや・・・片手間に調べてもらうだけでよかったんだけどな・・・」
朝倉はそうつぶやくと、頭をかきながらタマモを見送った。
その日の夕方。
扉をくぐるとそこは魔界だった・・・・・
「イロイロと突っ込みどころはあるが貴様は俺をなんだと思うとるんやー!!!!」
時間をすこし戻そう。
その日、横島が刹那と共に森に仕掛けたトラップを点検し、刹那をお茶に誘って帰宅しようと歩いているとおかしなことに気がついた。
今朝まで花をつけていたり青々と葉っぱが茂っていた木が軒並み枯れているのだ。
しかもどんどんそれが拡大しているようである。
横島はそれを疑問に思いながらも歩を進めると、突然ドサリと目の前に何かが落ちてきた。
よく見るとそれはカラスであった。
そのカラスは生きてはいるようであるが、全身を痙攣させて気絶していた。
「なんだこれ?」
「どういうことでしょうか・・・なんか回りにも落ちてますね」
横島は刹那に言われて改めて周りを見ると、同じように小鳥が落下し、木々が枯れて行っている。
横島はいやな予感を感じつつも、刹那を引きつれ自宅へとむけて歩を進めた。
だが、暫く行くと横島達の行く手に、あるはずの無いものが見えてきた。
「なあ、刹那ちゃん・・・刹那ちゃんにはなにが見える?」
「私には断崖絶壁が見えますけど・・」
「俺もだ、いったいどういうことだこれは?」
横島達の行く手に断崖が姿を現したのである。
だが、伊達に横島は数々の修羅場をくぐってはいない、すぐに幻覚と気付き歩き出す。
しかし、それで終わる事は無かった。
断崖を抜けた後、次々と幻覚が横島達を襲った。
津波、炎の壁、怒り狂う美神令子、そして極めつけはとてもイイ笑顔でポージングしながら迫ってくるアシュタロスの大群・・・・
ラスト二つは幻覚とわかっていながら、本気でビビる横島であったが。
「ひいい!!ウチじゃありません!鶴子姉さまかんにんしてぇぇぇぇ!!!お仕置きはイヤあああ!!!」
「落ち着け刹那ちゃん、それは幻覚だー!!!うぐ、可愛い・・それに柔らかい・・・って落ち着け俺!!!」
幻覚に囚われ、涙を流しながら横島の胸にしがみつく刹那の柔らかい感触のおかげで、かろうじて踏みとどまる事ができた。
もっとも、別の意味では危うく踏み外しそうになっていたようだが。
「いやややー!ああ、素子姉さまそんなところで拝んどらんと助けてぇぇぇぇ!!」
「せ、刹那ちゃん目を覚まして。俺がいるからさ・・だからもったいないけど離してくれ・・これ以上は理性がもたーん!!」
「ぐす・・・横島さん」
しばらくしてようやく落ち着いたのか、刹那は涙目で横島を見上げた。
「ぐお」
横島は普段の刹那の凛とした表情とのあまりのギャップと、その純然たる破壊力に内心悶絶していた。
刹那はいまだ完全に回復していないか、横島のシャツから手を離すことは無かった。
「大丈夫だ、刹那ちゃん。何が見えるのか分からないけどそれは幻覚だからさ、怖いなら目をつぶると良い、手をつないでてあげるから一緒に行こう」
「ハイ・・」
刹那はその言葉を聞くと、横島の手をギュッと握り締め、目をつぶって横島と共に歩き出していった。
「ジーザース・・・」
横島はここに来てようやく今までの幻覚の意味を悟った。
そう、幻覚は横島達の直感による危機意識が見せていた危険信号なのだ「これ以上進むな」と・・・
そして二人が感じた危険信号の原因が目の前に姿を現していた。
それはあまりにも濃い瘴気で歪んで見える我が家であった。
「あの、横島さん。家からなんかものすごい瘴気がでてますけど・・・」
「ハッ!ボヤボヤしてる場合じゃない。家の中にはタマモが!!」
横島は家の中にいるはずのタマモのことを思い出し、家へと走り出した。
刹那と手をつないだまま・・・
刹那はそのことに気付いていたが、手を離すタイミングを完全に失い、そのまま引っ張られていった。
やがて横島は玄関に到着し、蹴破るようにドアを開け、家の中に飛び込んだ。
「タマモ!!大丈夫か!!」
横島は家の中に飛び込み、タマモに呼びかけたが反応は無かった。
「こ、これは・・・」
刹那は横島の手をつかんだまま家の中に入る。
だが、家の中はあまりにも禍々しい気配で充満していた。
「どういうことだコレは、家の中に魔界が出現したのか?」
ご~りご~りご~り
その時、廊下の奥から何か重いものを引きずる音が聞こえてきた。
横島と刹那はその音を確かめようと廊下の奥を見据える。
やがてキィィィというドアが開く音がすると、今まで以上の瘴気が辺りを包み込む。
そして瘴気で歪む廊下の向こうから、何かを引きずりながら歩く小柄な人影が見えた。
「タ、タマモ・・・」
「タマモさん、ご無事で・・ヒィ!!」
刹那は廊下から出てきたのがタマモと分かり一瞬安心するが、そのあまりの鬼気に悲鳴を上げて横島にしがみついた。
「タマモ、なんかわからんがとにかく落ち着け、いったい何があった」
「何があったですって?私に恥をかかせておきながらよくもその口で」
「恥?どういうことだ」
横島はタマモの言っている事の意味がわからず困惑する。
一方、タマモは横島の態度にしびれを切らし、懐からあるものを取り出した。
それは白い布であった。
「横島の部屋でコレを見つけたわ、これでもまだしらを切る気?」
タマモが横島に突きつけた青と白のスタライプの布、早い話が下着だが、それに反応したのは横島ではなく刹那であった。
「そそそそ、それは私の・・」
刹那は真っ赤な顔をしてタマモから即座にその布を奪い、ポケットにしまいこんだ。
「さてヨコシマ、なにか申し開きはあるかしら?」
「ちょっとマテ!全く話が見えんのだが・・・つーかなんで俺の部屋に刹那ちゃんの下着が」
「往生際が悪いわね、他にも龍宮や朝倉の達のも盗んだみたいだけど、そんなものはどうでもいいわ。私が怒っているのはそんな些細な事じゃないの」
「いや、タマモさん些細な事って・・」
刹那はタマモの発言に突っ込みを入れるが、タマモは気にした風も無く話を続ける。
タマモはいったん目を閉じ、そしてしばらくするとクワッと目を見開き横島に告げた。
「刹那の下着を盗んでおきながら、私の下着に手をつけないとはどういうことだぁあああああ!!!せっかく勝負用にイロイロ取り揃えてたのにぃいいいい!!」
「イロイロと突っ込みどころはあるが貴様は俺をなんだと思うとるんやー!!!!」
「タマモさん、それは一体どういう意味ですかぁあああ!!!」
その後、タマモの暴走は刹那の命がけの制止にもかかわらず、横島が動かなくなるまでつづいたそうである。
「あー死ぬかと思った・・・」
30分後、横島はいつものセリフで何事も無かったかのように復活していた。
「た、大概丈夫ですね、横島さん。なんかもう慣れましたけど」
「確認するけど、本当にヨコシマはやってないのね」
「当たり前だ、いくらなんでも中学生の下着ドロなんかするか!なんなら文珠で俺の心でも見るか?」
横島はさも心外であると言わんばかりにタマモに答えた。
「でしたら犯人はいったい誰なんでしょうか?ご丁寧に横島さんを犯人にしたてあげるだなて」
「ヨコシマのことを知っていて、こんなことをするヤツといったら・・・」
この時、タマモ、刹那、横島の頭の中にはまったく同時に白い小動物の姿が浮かんだ。
「アイツっきゃいねーわな・・・」
「あのナマモノ・・・どうしてくれようかしら」
「横島さんにタマモさん、ほどほどにお願いしますね」
横島とタマモは暗い笑みを浮かべながらカモへの制裁を検討していた。
「この再だ、飼い主の監督責任もまとめて明日の修行で上乗せしてやる」
この時、翌朝のネギの運命。すなわち生身での大気圏突入が決定したという。
その後、横島がネギ&カモ打上げ用ロケット『退太肉号』の作成に入ると、ふとタマモは刹那に話しかけた。
「ところで刹那・・」
「なんですかタマモさん?」
「さっきまでヨコシマといい雰囲気だったみたいじゃない、手なんか握ったり。極めつけはヨコシマに抱きついたり・・」
「ああああれはですね、その、あまりの事態で混乱したというか・・・横島さんは別になにも、だから怒らないであげてください」
刹那はタマモの言葉で横島にしがみついたことを思い出し、トマトのように顔を真っ赤に染め上げた。
「別に怒っちゃいないわよ。ただ、いい顔をするようになったなと思っただけよ」
「え、いい顔ですか?」
「そう、以前なんか張り詰めた糸みたいな感じがしてたけど。最近はいい意味で力が抜けたっていう感じね」
「そうなんですか・・・」
「ま、悩みが無くなったことが原因の一つなんだろうけどさ、それだけじゃないような気がするんだけどなー。特に最近ヨコシマといる時なんかいい顔してるし」
タマモはからかうような目で刹那をじわりじわりと追い詰めていった。
「そ、それはあの・・・横島さんといると楽しいといか、もちろんお嬢様やアスナさん、それにタマモさんといるのも楽しいのですが。なんというか安心するというか、あったかいというか・・・」
刹那はタマモの言葉で一気に赤くなり、両手をわたわたと振りながらごまかすようにタマモに答えた。
だが、タマモは刹那の弁明を聞くと、クスクスと小さく笑い出した。
「もう、タマモさん!何がそんなにおかしいんですか」
「ごめんごめん。刹那が言ったセリフがさ、前にいたとこのおキヌちゃんって娘が言ってた事と同じだったもんだからさ」
「前のというと異世界のですか?」
「そう、ちなみにそのおキヌちゃんって娘はヨコシマにぞっこんだったわよ」
刹那はタマモの言葉の意味を悟ると、ただでさえでも赤かった顔がさらに赤くなり、沈黙していった。
「まったく・・・強敵出現かなー」
タマモは庭でロケットを作り続ける横島と、もはや全身すべてが赤くなった刹那を交互に見比べ、微笑ましく笑った。
そして翌朝、ネギとカモは星になった。
「ぐふ・・・まだだ・・まだ終わらねえぜ。あの場所がる限り・・・」
焼け焦げて真っ黒になった白いナマモノ、その野望はいまだ費えていなかった。
翌週の月曜日
「タマモちゃん!ネギがあああ!!」
朝早く電話でたたき起こされたタマモが聞いた第一声はアスナの叫び声であった。
「ネギ先生とのどかに夕映が行方不明ですって?ついでにあのナマモノも!どういうことなのアスナ」
話によるとエヴァの弟子入りが正式に認められた後、図書館島に父親の手がかりがあると言うことを夕映たち図書館組が見つけ、ネギはアスナに黙ってソレを探しに行ったらしい。
しかも木乃香の通報により夕映とのどかもそれに参加しているようようであった。
「とにかく、探しに行かないとマズイわね、ネギとカモだけなら大丈夫でしょうけどのどか達がいるんじゃあ心配だわ」
「私、今から探しに行ってくる!」
「待ちなさい!今からヨコシマと行くから一緒に探しに行くほうがいいわ、図書館島で集合しましょ。だから絶対に一人で突っ走るんじゃないわよ」
「わ、わかたわ」
タマモは即座に電話を切ると、横島をひきつれ図書館島へ急行した。
「でか・・・」
図書館島を初めて見た横島の感想である。
現在、横島、タマモ、刹那、アスナ、木乃香の5人がここに集結していた。
「そんなのどうでもいいわよ、アスナ、ネギ先生が向かった場所はわかる?」
「わからない、地下のどこかだとは思うけど」
「く、霊気の臭いをたどるしかないか・・・けどここって妙に魔力が集中してるからかぎ分けるのが難しいわ」
「なあ、アスナちゃん。仮契約カードの念話は試した?」
「試したわよ!とっくの昔に!!けどなぜか通じないのよ!!」
すでにアスナは泣きそうである。
「アスナさん、落ち着いてください。とにかく中に入りましょう」
アスナは刹那の言葉でやや落ち着きを取り戻し、皆と顔をあわせると図書館島の中へと入っていった。
「なんつーかこう、ここは本当に図書館か?」
「ここに来る人はみんなそう言うんやで」
図書館島の中は横島とタマモの想像を絶していた。
本棚で作られた廊下、数々のトラップ。
図書館という定義に真っ向から喧嘩を売ってるとしか思えないような構造であった。
「タマモさん、ネギ先生の場所はつかめましたか?」
「うーん、この下にいるのは間違いなさそうだけど。完全には特定できないわ」
どうやらタマモをしても、ネギを補足することは難しいようである。
やがて、横島たちは石造りの通路にでた。
「なんだこれ?何か書いてあるぞ・・・」
「あれ?ウチらこんな通路知らんよー」
どうやら未発見の通路らしい。しかもふと天井を見上げた横島は天井になにか書いてあるのに気がついた。
「Here is Proving Grounds of the Mad Overlord ・・・・なんだこれ?」
「こっちにもなんか書いてあるわねしかも日本語で、えーっと『18歳以下の子供は大人および司祭と同行し・・・』なんなのかしらこれは・・」
タマモと横島は天井に書かれている文字を目で追いながら歩いていると、突然カチリと何か機械が作動した音が響き渡った。
「・・・・・タマモ、おまえ何を踏んだ?」
「私じゃないわよ、アスナじゃないの?」
「私でもないわよ!なんかものすごいイヤな予感がするんだけど」
横島は否定するアスナを他所に今度は刹那を見る。
「わ、私でもありませんよ。ところでなんかさっきからゴゴゴって音が聞こえませんか?」
「言われてみれば確かに聞こえて・・・ってこれはまさか・・」
「お約束どおりなら石の玉が転がってくるとか言うトラップなんでしょうけど・・・」
やがて、横島たちの期待を裏切ることなく、巨大な石玉が横島の背後にボトンと落ちてきた。
「総員走れぇえええええええ!!」
「あははは、ゴメン。ウチがスイッチ踏んだみたいや」
「「このかぁぁああああ!!!」」
なぜか笑みをうかべている木乃香の告白に、タマモとアスナはそろって突っ込むが。
「しゃべってる暇があれば走れぇえええ!!これは洒落にならんぞー!!」
横島の言葉で改めて走り出した。
「横島さーん!文珠でなんとか出来ないんですかぁぁああ!!」
「無茶言うな!こんな状態で文珠に念をこめとる暇があるかー!」
あれから5分、横島達はいまだに石から逃げるため全力疾走していた。
木乃香はすでに限界であるため、現在は横島が米俵のように木乃香を担いで先頭を切って逃げていた。
だが、横島達と物言わぬ石の追いかけっこは唐突に終わりを迎えた。
カチッ!
「「「「「へ?」」」」」
再びなにかが作動する音と共に横島たちの足元から地面が消えたからである。
「「「「「うそおおおおおお!!!」」」」」
横島達を飲み込んだ落とし穴は、暫くたつと元通りに閉まり、その上をゴロゴロと巨石が通過していった。
迷宮の通路は再び元の静けさを取り戻していた。
「あたたたた・・・みんな大丈夫か?」
自分の手のひらも見えない暗闇の中、横島はすぐに意識を取り戻しタマモ達の安否を確認しようとした。
「私は大丈夫よ、刹那達は?」
「私も大丈夫です、ですがアスナさんとお嬢様がショックで気絶してるみたいです」
横島はすぐそばでタマモと刹那の声が聞こえた事に安堵した。
「それにしてもえらく深いところまで落ちたな・・・よく怪我も無く無事だったよ」
「なんか足元が妙にやわらかいですね、クッションでもあるのでしょうか?」
「なんか妙に手触りもいいしな。ま、いま明かりをつけるから待ってな」
横島はそう言うと、文珠を取り出し"明"と込め発動させた。
すると、今までの暗闇の世界が一気に昼間の世界へと代わっていった。
「ここここここれは・・・」
「なんなのここは・・・」
「・・・・・・・・・・」
明るさに慣れ、視力が戻った横島達の目の前に広がる光景は部屋を埋め尽くす女性用の下着の山だった。
あまりの光景に呆然とするタマモと刹那であったが、本来ならここで真っ先に反応するであろう横島はいまだにうつむき肩を振るわせるだけであった。
「あの、横島さんどうしたんですか?」
横島の反応に不審に思った刹那は横島に話しかけた。
すると横島は顔を上げ、部屋中に響く声で叫んだ。
「宝の山やぁああああああ!!!!」
刹那はあまりにもアレな横島の絶叫に下着の海の中に頭からダイブしていた。
「横島さん真面目にやってくださーい!!!」
「おお、これは!!!なんとも色っぽい黒!しかもこれはD!」
刹那の絶叫も意に介した風も無く下着を物色する横島であった。
一方タマモはあまりにも予想通りの出来事に呆れて言葉も出ないでいた。
「タマモさん、アレいいんですか。ほっといて」
「良いも悪いもヨコシマの病気みたいなもんね、とりあえずほっときましょう。ちゃんと後で没収しとけば問題ないでしょう」
「そうですね・・・」
刹那は横島の行動に少々減滅気味に横島を睨みつけた。
だが、しばらくしてため息をつくとタマモにしたがってあたりの捜索を始めようとする。
だが、その時横島の声が再び刹那の耳に飛び込んできた。
「こ、これはG、いやHか!すげえ!タマモや刹那ちゃんとは比べ物にならんなーこの迫力は!!」
ピキ・・・
この時、刹那の額にくっきりと青筋がうかんだ。
「はいコレ刹那」
「どうも、フン!!!!」
刹那はタマモからとあるものを受取ると、全力を込めてそれを横島の頭部へ向かって投げつけた。
「うおおおおこっちのはIカップ、ここは天国やー!!!ぐじぇ・・・・・・・」
横島はその叫び声を最後に壁に突き刺さり、沈黙した。
「フン!さあ!タマモさん行きますよ!!」
刹那はパンパンと手の埃を払うと、タマモを引きつれ扉から出て行った。
後に残るのは横島の頭部と共に壁にめり込んだ『こんぺいとう1号』と、気絶しているアスナと木乃香だけであった。
結局横島が復活した後、刹那の機嫌は後日何か奢るという事で決着を見るまで直る事は無かったという。
もっとも当然のようにタマモにも奢らされる事も決定していたが。
「あ、アスナさん怖かったぁああああ!!!!」
横島が気絶から復活してから5分後、タマモ達は通路の奥の部屋でネギ達を発見していた。
ただ、発見したネギ達はなにかにひどく脅えていた。
「カモ、いったい何があったんだ?」
「いや、この通路の出口でドラゴンが居座りやがってな・・・おかげで脱出できなかったんすよ。俺っちだけなら体が小さいから秘密の抜け道通ってなんとか出来たけど、兄貴達は・・・」
「そうか・・ってドラゴンがなんでこんな街中の地下に?」
「そんなもん俺っちが知るわけ無いでしょうが!それよりも今は脱出方法を考えないと!」
横島の疑問も確かにあるが、カモの言う事ももっともである。
だが、カモの言葉に違和感を感じた人物がこの場にいた。
「ねえカモ、今秘密の抜け道って言わなかった?」
「確かに言ったっすよ。けどそれは俺っちしか通れないような穴ですぜ」
「それはさっき聞いたわ、私が疑問に思ったのは何でその道がある事を知ってるのかって言う事なんだけど」
「・・・・・・・」
カモはタマモの質問に沈黙し冷や汗を流す。これでは何かを隠してますと白状しているようなもんである。
「そういえば、カモさんがこの部屋に案内してくれました」
「妙にこのへんの部屋に詳しかったです」
「そ、それは・・・」
さらに追い討ちをかけるかのように、のどかと夕映がカモを追い詰めていった。
「そういえばこの部屋って食料も水も十分にあるわね・・・しかもごていねいに電気まで引いて」
「タマモさん、これって朝倉さんが言ってた大学部研究棟から盗まれた非常食じゃないですか?」
タマモと横島は刹那の持つレーションを見た。
するとそこにはしっかりとマジックで『麻帆良大学 工学部 非常用』と書かれていた。
「カモ・・・・・」
「なんでしょう姐さん」
「もう一つ聞くけど、三つ向こうの部屋の中にあるやつはアナタの仕業?」
「な、なんのことでしょうか、俺はもう下着ドロからすっぱりと足を洗いましたぜ」
「誰も部屋の中に下着があるなんて言っていませんが・・・」
「NOOOOOO!!!」
タマモと刹那の冷たい視線がカモを刺し貫く。
やがてカモはあまりの視線の痛さに耐えかね、唯一の味方であるはずの横島に一縷の望みを託した。
だが、横島はカモの視線を受け止めるとゆっくりとかぶりを振り、どこからか取り出したのか香典袋に先ほどガメておいた下着を詰め込みだした。
「ちょ!横島の兄貴それはどういう意味ですか!!」
「まあ、なんだ・・・ちょっと季節は早いかもしれんが川で泳ぐのは気持ち良いぞ」
「川ってなんですかぁああああ!!!」
「さて、カモ・・・覚悟はいいかしら?」
カモは背後から響き渡るタマモの声に一瞬動きを止め、その後脱兎のように逃げ出した。
だが、その前に刹那が夕凪を抜き放ちカモの前に立ちはだかる。
「せ、刹那の姐さん・・」
「カモさん、逃げてはダメですよ。この際ですからしっかりと罰を受けましょう・・・まったくGだとかIだとかそんなのばっかり・・私だって成長すればそれなりに・・」
「というわけで、乙女のフラストレーションを一身に受けなさい!ついでにこの騒ぎの元凶としての罰も一緒に!!」
「ちょ!騒ぎの罰がついでって・・・・ぶぎゃああああああああ!!!!!」
カモの悲鳴は、タマモと刹那による公開処刑が終了するまでやむ事は無かったという。
一方ネギ達はというと
「アスナさん、このかさん・・・ドラゴンよりもやっぱりタマモさんの方が怖いんですね・・」
「せっちゃんもやるなー、横島さんの言葉に反応するとこはかわええなー」
「ネギ、もう無茶しちゃダメよ・・・でないとドラゴンにどうこう以前の問題になるわよ」
「ゴメンなさい・・・でも・・」
「でもじゃない!アンタはまだ10歳のガキなんだから、ちょっとはパートナーの私やこのかを頼りなさい!」
ネギはアスナの言葉を聞くとしばし目をつぶり、何かを考える。
そしてやがて目を開け、アスナの目をじっと見返した。
「そうですね、僕達はパートナーですもんね・・・アスナさん、このかさん心配をかけてすみませんでした」
「わかればいいのよ、今度から何かあったらちゃんと言うのよ!」
「ハイ!!」
木乃香はアスナに頭をなでられながらも、元気よく返事をするネギを微笑ましく見つめていた。
「なんやタマモちゃんや横島さんが来てから、ウチら本当に賑やかで楽しくなったなー」
木乃香はこの時本当に嬉しそうに、ネギをあやすアスナとカモを煉獄に叩き込む刹那を見つめていた。
「ちょ・・このかちゃん。刹那ちゃんとタマモの状況を見て微笑ましく笑うのはいかがなもんかと思うが・・・」
「ん?なんか変やった?」
「いや、いいんだけどね・・・・」
横島はなぜかこの時薄ら寒さを感じたと後に語った。
一方、のどかと夕映はというと
「うふふふふふ、タマモさんて・・・・ああ、カモさんがだんだん赤く・・」
「のどか!しっかりするです、あれは見ちゃダメです!!」
夕映はのどかを現実に引き止めるのに精一杯であった。
その後、横島はゆえ映とのどかに見つからないように"転""移"の文珠を使用し、なんとか地上に戻る事が出来たそうな。
第23話 end
「マスター、これでシーン108すべて終了しました。これでもう完璧です」
ここは深夜のエヴァの家。
延べ三日間に及ぶ『横島忠夫弟子入り大作戦』のリハーサルはつつがなく終了した。
「そうか、完璧か!あははは、これでどんな状況になっても完璧だ!横島忠夫覚悟していろよ、明日になれば貴様は私の前にひれ伏すのだ」
「その意気です、マスター」
「うむ、今宵は前祝だ。うまい酒とつまみを頼むぞ茶々丸!!」
「お任せを、ただいまご用意いたします」
茶々丸はエヴァの命令に従い、ゆっくりと台所へ向かった。
「くくくく、横島忠夫!明日になれば貴様は私の弟子だ!喜ぶがいい。あーっはっはっは!!!」
静かな夜空にエヴァの笑い声が響き渡った。
「オイ妹ヨ・・・」
台所に向かう途中、チャチャゼロが茶々丸を呼び止めた。
「なんでしょうか?」
「コノ報告書、ゴ主人ニ渡サナクテヨカッタノカ?」
チャチャゼロは脇に置いた報告書のようなものを取り上げる。
そこには表紙にこう書かれていた。
『横島忠夫に関する嗜好その他の調査結果』
「コレヲ読ム限リ、ゴ主人ガ大人化シテセマッタラ一発ジャナイノカ?」
チャチャゼロは報告書の中のとあるページを突きつけた。
そこには横島の嗜好に関することがびっしりと書き連ねてあった。
「姉さん・・」
だが、茶々丸はチャチャゼロの言葉にも全く動揺した風も無く答えた。
「ナンダ妹ヨ」
「黙ってたほうが面白いと思いませんか?」
なんとも素敵な性格にAIが育ったようである。
「ソレハタシカニソウダガ・・・イイ性格シテイルナ」
どうやらチャチャゼロも同類らしい。
「姉さんほどでは・・・それに今回のことでマスターのレアな姿も最高画質で記録できました。いいことづくめです」
「後デオレニモ見セロヤ」
「ええ、A4サイズでプリントしておきます」
エヴァの従者の二人、この会話を聞く限り、彼女達がエヴァの従者と信じるものは誰もいないだろう・・・
(あとがき)
今回のタイトルは昔の某ロボット物のTVアニメのタイトルを参考にしました。
ほとんど同じですけどね。
さて、今回のことでアスナとネギの確執は回避となりました。
今後どうしよう、なんか自分で自分の首を絞めてる感じがします。
まあ、なんとかなるでしょう。きっと・・・
それでは次回の更新は金曜日か土曜日になります。
HOME
| 書架top
|
Copyright (C) 2006 投稿図書, All rights reserved.