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ネギまのクロニクル第一話(ネギま!×終わりのクロニクル)オリ有り 投稿者:狛江戸衛門 投稿日:04/07-23:51 No.2

 夜。

 暗闇は全てを覆い、人々を安らかな眠りに導き、また恐怖させる。

 人工的な照明は何もない。ただ一つ、天蓋に浮かぶ満月が地を顕わにしていた。

 そんな中、新たな光が現れた。

 光の玉だ。

「ちょっとネギー、ホントにここなの?」

 明確な恐怖こそ示していないものの、全てを飲み込まんばかりの闇に目を疑う少女が訊ねた。

 その対象は、先頭に立って光を従えていた。

「はい。確かにここですけど……アスナさん先帰っててもいいですよ?」

「う……、別にいいわよ」

「そんな明日菜強がらんとー」

「木乃香!」

 少女、近衛木乃香は、明日菜の後方、さほど離れていない場所にいた。後ろには、彼女を含めてあと四つの影がある。

「うぅ、刹那さん何か言ってやってよー」

「いえ……、修学旅行時の腹の括り方から、肝は座っていると思っていたのですが……」

「明日菜さんは意外と怖がりだったですか」

「ゆ、ゆえー、それ言っちゃだめだよぉ」

「それ明日菜が怖がりだって言うてるよ、のどか」

「はい皆であたしを叩かない!」

 彼女たちは、全員制服を身にまとっていた。時間帯的にも放課というには遅すぎる時間であったが、特に誰も気にしていないようだ。

「それじゃあアスナさん、行きましょうか」

 騒ぎ出した彼女たちを、先頭に立つ、十歳ぐらいの欧州人の少年、ネギ・スプリングフィールドが鎮める。彼の持つ杖の先端から、場を照らす光の玉は出ていた。

 神楽坂・明日菜はその言葉で再び顔を強張らせたが、すぐに引き締める。

 六人の少年少女たちは、月光に晒された廃校舎に入っていった。





 麻帆良学園。

 日本にその名を知らぬ者は居ない、巨大な学園。都市といっても過言ではないそこは、幾多の小・中・高校、大学が集まり、数々の研究機関がひしめき合う、世界的に見ても重要な場所――都市だった。

 ヨーロピアンテイストな町並みに、湖にある図書館島、高くそびえる大木。まるでファンタジーが具現化したような町は、しかしファンタジーの宝庫であった。

 魔法使いがいて――

 魔法の樹があり――

 魔法機関の本拠――

 ただ、これは白日の下には晒されてはいない。限られた人のみがそれを知る。

 この少年少女たちは、限られた者たちだ。

 魔法使いの少年先生と、友人であり生徒である従者の少女たち。

 彼らは、何も肝試しをしに、闇覆う廃墟にやってきたわけではない。

 学園を束ねる理事長にして、関東魔法協会の理事である近衛近右衛門からの依頼であった。

『のぅネギ君。ちとやってもらいたい事があるんじゃが……』

 曰く、学園には様々な処理の中、埋もれてしまうものがあるという。その中の一つ、昔の校舎に、最近妙な反応があるという。それを調査、可能なら矯正というのが概要なのだが――

「うーん、カモくん連れてくればよかったかも」

 件の〝反応〟を前にして、ネギは悩んでいた。

 研修中である彼の知恵袋であるオコジョ、アルベール=カモミールは、定位置である誰の肩にもいない。

「何処行ってんのよ、あのエロガモ」

「またチャチャゼロさんと飲むって言って、マスターの家に残ってるはずなんですけど」

「その分ではカモさんも使えないようですから、表面的な部分だけでも見ておいたらどうです?」

 おさげの少女、綾瀬夕映は親友の笑う膝を見やりつつ言う。

「ほら、夜も遅い事ですし……」

「私もそれがいいと思います。不用意に手を出すのは得策ではありません」

 その言葉は、手に大太刀を持つ桜咲刹那によって賛同を受けた。

「あたしのハリセンは?」

「確かに魔力が感じられますが、結果としてどうなるかが分かりません。どうも異世界へと繋がっている気配が濃厚ですし」

「異世界、ねえ」

 明日菜はハリセンで肩を叩き、考えるように顎に手を添えた。

 一向の眼前は、ぐにゃりと歪んでいた。とある境界を境に、向こう側が歪んで見えているのだ。その歪みは一点から広がっていて、渦と形容する事が出来た。

 目の前のそれは今は静かだ。しかし、中身も分からないのに箱は壊せない。そういった理由で、「敵意ある魔力を消滅させる」という能力を持った明日菜の意見は却下された。

「転移魔法はまだ出来ないんですけど、どうもそんな感じがします」

「わ、ワープですか?」

「それなら余計手を出すのはマズイのではないですか?」

「なんでなん?」

 木乃香が聞く。

「これがどういった原理なのかは分かりませんが、こことどこかを繋げているのは確かです。もしこれを壊してしまって、はたして繋がりまで塞げるのでしょうか、ということです」

「ええ、それであっています。明日菜さんの能力の限界と、これの詳細が分からない以上、問答無用で壊すというのは危険です」

 夕映を刹那が肯定する。

「ふーん、よう分からんけど、マズイんやね」

「あんたなんて大雑把な理解してんのよ……今に始まった事じゃないけど」

「っていうことは、ここから誰か、出てくるんでしょうか?」

 笑う膝を必死に押さえようとしている前髪の長い少女、宮崎のどかのその問いに、

「たぶん……そうだと。ですけど、何日も前からってことが不自然なんです。普通転移魔法はすぐ使ってすぐ閉じちゃうんですけど、それをしようともしていないで、放置してるみたいなんです」

 答えるネギは、歪みに近づいた。

「まあ、どれくらいの規模とか、魔力の性質が分かればいいでしょう」

 そして、歪みに手を近づけ、

 瞬間――、

「うわぁ!」

 バヂッと何かが弾けた。

 誰かが問いを起こすまでもない。それは、歪みから散る火花たちだった。

 バチバチと空気中に踊り、消えていく代わり、歪みはどんどん酷くなっていく。もはや向こうの風景は分からない。

「かかってきなさいよ!」

 理詰めでストレスが溜まっていた明日菜は、正面に歪みを見据え、ハリセンを構える。ネギも下がり、刹那は太刀を抜いた。このか、夕映、のどかは非戦闘員のため、さらに下がっている。

 やがて、火花が増していく。

 そして臨界点を超えたように、爆発にも似た大きな火花が弾けると、



「新庄君、無事かね!?」



 まずその声が聞こえ、

「あ、うん。一応大丈夫だよ。風見さんは……って大丈夫みたいだね、出雲さんにチョークスリーパーかけてるし」

「……あら、あたしったら何やってんのかしら。何かが体に触れた気がして、それから――」

「ちょ、ギブギブ……」

「い、出雲さん!口から泡が出てますのー!」

「見るな、ヒオ・サンダーソン。恐妻家の運命だ」

 一連の会話。

「おや?どうやらG(ギア)の痕に飛ばされたわけではないようだね。こうして生きてもいる」

「見た感じTop-Gっぽい人だけど、もうないし……」

 歪みから飛び出してきた六人の男女が、口々に感想と考察を述べている。

 一方、ネギたちはあっけにとられている。太刀先は下ろしていないものの、訓練された刹那でさえ、だ。

 一瞬早く我に返ったのは、

「あ、あなた方は一体何者なのですか?」

 綾瀬・夕映だった。

 その誰何の声は、どうやら同じ日本語を使う異世界人――らしき人々に届く。

「おい、ちゃんと話せるっぽいぞ、佐山。この状況をとりあえずどうにかしてくれ」

「それはチョークスリーパーから卍固めに移行している君の妻の攻撃かね?それともこの奇怪な現象の詳細かね?」

「門のことに決まってんだろうが!ちょ、千里マジでギブ!」

 出雲と呼ばれた男に卍固めをかけていた千里は、物足りなさげにそれを解いた。

 先頭に立つ青年――佐山は、ネギたちを見渡し、

「まずはお互い自己紹介といこうではないか。現状を知るにも、互いに名を知らねば話が進まん」

「は、はぁ……」

 ネギは拳法の構えを自然体に戻した。明日菜もそれに習う。

「私の名前は佐山・御言。Low-Gの人間であり、ここにいる有象無象どものリーダーだ。ちなみにこの丸くてエロい尻を持った新庄君は私のパートナーでありぐはぁっ!」

「佐山君は初対面の人にまで何を言ってるんだよ!ってあれ……?」

 女性、新庄は景気のいい音をたて、地に伏した佐山を見た。音源は自らの拳だった。

「新庄さん、最近風見さんに似てきてますの?」

「それは禁句だ、ヒオ・サンダーソン。俺たちが被害を受けかねない」

「あんたらそれどういう意味よ!」

「あ、あの……」

 ネギは困った。自分が自己紹介をする前に、相手が倒れてしまい、続けるか否かで迷っている。

 が、とりあえず一人の少女によって方向性は決まった。

「悪いひとじゃなさそうだし、せんせー、処置してあげたほうがいいと思います」

 のどかは言うなり、消えた歪みに倒れる青年に駆け寄った。

 ――とりあえず、運び込む事になった。





「……で、何でウチになんのよ」

「いえ……学園長いないはずですし、近かったので……」

 麻帆良学園中等部女子寮。その一室――明日菜と木乃香とネギの部屋に、十人が大集結していた。夕映とのどかは、夜も遅い事から、詳細を知らせるという条件でネギが帰した。

 さきほど倒れた青年は、既に意識を取り戻していた。

「我ながら不覚だ。新庄君のツッコミをここまでモロに食らったのは久しぶりではないかね?」

「佐山君が変な事言うからでしょ。しかも人前で」

「ふむ、やはり新庄君は屋外プレイは好みではないのか」

「当たり前だよ!」

 またも意識を刈り取らんとする新庄を風見が抑え、

「ま、改めて自己紹介といきましょうか。あたしは風見・千里。で、このバカが出雲・覚。そこの外人コンビがヒオ・サンダーソンとダン・原川よ」

「そして私が佐山・御言。新庄・運切(さだきり)君の……って何故新庄君はそこの人からハリセンを借りて構えているのかね?」

「そういうこと。そっちは?」

 ネギは、魔法を除いたプロフィールを話す。万が一という可能性があるからだ。

「――日本でよかったな、佐山・御言。ああ、お前は十三ヵ国語話せるんだったか」

「いや、意思疎通の容易なここでよかった。無論、私の交渉に一点の曇りはないがね」

「異Gな上に言語共有の概念が働いていなかったらどうしようかと思いましたですの。――あれ、そういえば飛場さんと御影さんは?」

 ヒオ・サンダーソンが声を上げる。

「彼らはおそらく荒帝で離脱したのだろう。そうでなければどこかの狭間で一生ラブラブな二人っきりの生活だ」

「あいつらのことだから、死にゃしねえだろ」

「行方不明の方がいらっしゃるのですか?」

 刹那が訊ねた。彼女は剣こそ収めているものの、いつでも抜けるように手を添えている。

「警戒しながら相手方の心配かね?刹那君」

「これが最大限の譲歩です、お許しを」

「まあいいだろう。こちらも警戒態勢を敷いているわけだしね」

『えっ』

 明日菜と木乃香、そしてネギはその意味が分からなかったが、佐山は隠し持っていた紙切れを晒した。

「万が一のために持ってきていた符だ。『・――真意は反れる』という概念が発動する」

「がい、ねん?それって何かのまほ、――っ!」

「あ、あああアスナさん!」

 大急ぎで口をふさぐネギ。

 が、異界人の視線は一斉に集中した。

「あ、いや、別に魔法っていうわけじゃなくて!」

「自分から堂々と言い放ってるぞ、ネギ・スプリングフィールド」

「――!」

「そんなのはとりあえず別問題よ。今は現状確認が最優先。――って言っても、確実に異世界でしょうけどね」

 風見の一声で、ネギは「オコジョ、オコジョ……」と呟きつつ下がった。

「まずはこちらの質問に答えていただきたい。――ここはLow-Gかね?」

「そのような別称は知りません」

「では、概念というものを知っているかね?」

「辞書の意味でなら」

「最後に、ここはどこかね?」

「どこ――と問われれば、麻帆良学園の女子寮の中と答えるしかないでしょう」

「ふむ……」

 佐山は答えを受けて、しばらく黙考。次に口を開くと、

「ではそちらから質問したまえ。交渉役は、刹那君がいいだろう。そしてそこの単細胞野郎は風見、ちょっと廊下から下に落としておいてくれ」

 言われたまま、風見は出雲を引っ張りだし、開けたドアから吹き抜けとなっているホール方向へ蹴り飛ばす――だけでは飽き足らなかったのか、ドアを閉めて下にダイブしていった。「ぐはっ」という声と、プロレスラー真っ青の打撃音がドア越しに響いてくるが、ネギはただ寮の皆がそれに巻き込まれないよう祈るだけ。

 刹那は凶音にひとまず冷静を装い、

「あなたの出身はLow-Gと聞きました。Low-Gとは一体どこですか?聞いたことがありません」

「一口に言ってしまえば、君たちからみた異世界だろう。確証はまだないが、おそらくこの世界と似ている」

「では、何故ここに?」

「門(ゲート)と呼ばれる、他G――ああ、私たちの世界には、計十二の平行世界があったのだよ。そしてGとは、世界のことだ――への入り口の跡を調査するために向かったのだが、どこかのバカが起動させてしまってだね、もはや崩壊した十一のGの代わりにこちらへ飛ばされたと推測する」

「つまり、異次元転送の誤作動?」

「そう捉えてもらって構わない」

「最後に、概念とは?その符に込められていると言いましたが」

 刹那は答えを待った。

 答えを待ち続けた。

 が、答えがない。

「どうしたのですか?答えられないのですか?」

「静かにしたまえ」

 催促は、一言で切り捨てられた。

 佐山他、Low-G側の全員の顔に緊張が走っている。

「佐山、先に行ってるぞ」

「頼んだ。だが無理はするな、サンダーフェロウは今までどおりではない」

「分かってますの」

 外人コンビは外に出て行った。ドアが開くと、さっきまで聞こえていた打撃音が止んでいるのに気付いた。

「ど、どうしたんですか?」

 ネギは杖をとった。佐山たちの顔は、遠方からの敵の襲来、それに気付いた者だけが作り得る緊張の表情であったからだ。

 張り詰める、緊。

 刹那に、佐山たちが並の死線を潜ってはいないことを理解させるのに、それは十分だった。

 佐山の代わりに、新庄がそれに答える。

「ボクたち全員、『・――力とは公然の秘密である』って概念つけてるから、半径十キロ以内に敵意ある能力者がいると、知らせてくれるの」

「公然の秘密?それが概念というものですか?」

「そうだ。しかしこの概念は、私たちの存在も知れてしまう。早く迎撃に出ないと、概念空間を作れない我々では対処がしづらい」

「手伝いましょう!」

 立ち上がり、叫んだのはネギ。

「刹那さんも、いいですよね?」

「え、ええ」

「刹那さん流されないの。ネギ、あんた首突っ込む気?」

 明日菜はネギを無理矢理座らせ、顔を近づけひそひそ話。

「あいつらに分かるってことは、あいつらの敵なんじゃないの?」

「でも、学園長は、あの歪みが何箇所かあるって漏らしてましたから、対処したほうがいいと思います。それに、悪意ある能力者っていう定義だけなら、魔法使いにも当てはまるじゃないですか」

「う、そりゃそうだけど……」

 封殺され、黙らざるを得ない。

「協力してくれるのは助かるけど、ボクたちの敵だったら保障はしないよ?」

「見たところ、刹那君はアテになるだろうが、ネギ君と明日菜君、そして木乃香君――は元から戦力外のようだね。ともかく、きちんと戦えるのかね?」

 ネギは刹那を見た。アイコンタクトをとり、確認で頷く。

「はい。ぼくたちは学園を守るだけの力はあります。それに、ぼくたちを狙ってきた人たちかもしれませんから」

「そうかね。では行こうか」

 席を立つと、ネギが右手を差し出した。

 それに佐山が気づくと、

「こうやるものだよ」

 拳を握った。ネギも意図に気づき、同じく握った拳をぶつけ合った。

「――!急ぎましょう。私にも気配が感じられました」

「え?概念ないのにすごい。敵数は?」

「四グループといったところでしょうか。数は多いですね」

「あってるよ、佐山君」

 走り出しながら、新庄は隣を見た。

「ふむ、どうやらこの世界はファンタジーな世界のようだね。Low-Gも既にファンタジーと化したがね」

「ふふ。そうだね」

 そうして、木乃香を除く五人は外に飛び出した。





「うち、お留守番やん。折角エヴァちゃんとこで練習したんに」

 呟きは、部屋から聞こえてくるのだった。

ネギまのクロニクル
ネギまのクロニクル第二話

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