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ネギまのクロニクル第五話(ネギま!×終わりのクロニクル)オリ有り 投稿者:狛江戸衛門 投稿日:04/22-23:01 No.368

 前衛であり囮である佐山、中距離補助の新庄、そして遠距離砲台のネギ。一般的に魔法使いには前衛となるべき者の存在が不可欠だが、佐山と新庄はそれを説明するまでもなく、また、特別指示を出すでもなく、この配置についていた。

「『雷の暴風!』」

 爆音。

 最後の武神が、ギチギチと悲鳴をたてて崩れ落ちた。腹部に文字通りの風穴が空いており、足元にいた佐山はその向こうに月を見た。

「月妃め……あんな概念を持たせたからには、是非土産を持ち帰らねばなるまい」

 そう呟き、一気に加速して新庄を抱き寄せた。

「え、ちょっと佐山く……」

 轟、という爆風。そのものが質量を持つかのように、暴れまわる。加えて、巻き上げられた土砂が凶器となって人を木を襲う。

 数が佐山の背中を打つ。

「大丈夫かね?」

「あ、うん……佐山君こそ大丈夫?」

「はっはっは、新庄君のまロい身体が傷つくことと比べれば――否、そもそも比べる事自体が間違っているのだよ」

「うん、訊ねた事自体が間違ってたよ」

「そして我々は神を超える!分かるかね、ネギ君」

 突然振られたネギは、風の治まりと共に防壁を閉じた。

「あの、ちょっと分からないっていうか、すごい人だなっていうか」

「無理に答えようとしなくてもいいよ。佐山君と言葉遊びなんかしたらそれこそ神様でも勝てないから」

「ええっ」

「そもそも我々は神以上だよ?神ごときに負ける理由が存在しない」

 ここでようやく二人が離れたので、実況見分に入る事にした。ネギは最初からそのつもりだったのだが、なにぶん佐山たちの敵なのだ、おそらく一人だけでは何も分からないだろう。そう踏んで、当惑しながらも待っていた。

 一応、気配はない。金属が生きている空間であるため、武神という鉄の塊でもはっきりと生を感じ取れていた。今はひっそりと沈んでいるが。

「これ、中に操縦手とか本当にいないんでしょうか」

 直径だけでネギどころか佐山をも越える脚部に歩み寄る。

「なんというか、自分っていう意思が確かにありました」

「それはなんとも言えんな。完全自立可動式の武神もいれば、合一といって人間が一体化する武神もいる。遠隔操縦ならばそうと分かるのだが、まあ間違いなくそれはない。これでも3rdの面々と武神将棋を嗜む身なのだよ」

「神田の研究所からの苦情ってそれだったんだ……戦いなくなったからって、警備に使うんだから」

 人間ならば心臓という動力炉のある胸部に、佐山は上っていく。

「これが明らかなる敵襲ならば、そもそもネギ君はこの武神たちを認識できないだろうが、それもない」

「そういう概念ですか?」

「Tes.、近頃のレジスタンスどもは、やたらと隠蔽概念を使いたがる。反逆を隠密で済ますとは何事か。全く、速さが足りない」

 コンコン、と中を確かめる。武神はそもそも意思を持つ金属の延長だ。意思が拒めば必然、簡単に侵入は叶わない。人間の存在だけでも確かめているのだろうか。

「新庄君、走査用の装備は生きているかね?」

「無理みたい。ワムナビたちすごくへばってる」

 どこからか取り出したビデオカメラのような機械をレンズから覗き込む新庄。

 葉加瀬さんに見せたらきっと泣いて喜ぶだろうな、とマッドサイエンティストな生徒を思い浮かべる。

「ふむ。どうしたものか。そろそろ片付け終わる頃だろうから、各地の詳細も欲しいのだが……我々だけ撃破のみというのも味気ない」

「僕にテレパシーが出来たらよかったんですけど」

 現在のネギには新しい呪文というものが全くやってこない。エヴァンジェリンという師匠の存在があるからこそなのだが、そもそもネギには仮契約カードで交信が出来るのだ、特に魔法戦を想定するような状況でもない今日では、その需要というのもないに等しい。

「たぶん刹那さんも無理でしょうし……あ、そうだ」

 内ポケットから、二枚の仮契約カードを取り出す。

「あ、可愛いー」

「それが巷で噂の魔女っ子アイテムかね?」

「いえ、噂にはなってませんけど……」

 それらを額に当て、

「通信します。状況の把握は大事ですから」

「ありがたい」

 ちなみにネギの言葉は、そっくり師匠の言葉である。散々生徒に対する危険性を口にするネギに対して、そう言ったのだ。

「『念話(テレパティア)』」

 二人の視線をよそに、ネギの脳裏に騒々しい念が流れ込んできた。



「せいやーっ!」

 長身のハリセンが、見かけ以上の威力を以って獣人を吹き飛ばす。その運動エネルギーを無駄にしない円運動で、背後から切りかからんとしていた人型三体に一閃、

「何してんのよっ!」

 体勢が崩れたのを見逃さず、地を蹴って飛び掛り様に横っ面を叩く。人型はボウリングのピンのごとく弾き飛ばされた。

 と、彼らに別方向からピンアクションが加わる。

「おらよっ!」

 飛び蹴り、否、空中回し蹴り。さらに下に向けられたベクトルが、人柱を三柱造る。

「いい感じの卒塔婆じゃねえか」

「この空間ってアニメを現実に出来るの……?」

 頭からつま先までが伸びきって、いわゆる気をつけの姿勢で埋まるなど現実にはありえない、とハリセンを持つ明日菜は逃避気味につっこんだ。

 あらかた敵は片付いていた。あちらこちらに竜人や獣人が横たわっている。一体どこのアドベンチャーゲームかと明日菜は問いたかった。もはや地球外生物とみなすほかない生命体をばったばったと張り倒し、死屍累々と積み上げていくのはゲームの中の主人公、もしくは戦士系の仲間――とにかく、画面の中の出来事ではなかったのか。

 しかし、すぐにそれも仕方ないと思い直す。修学旅行の時もそうだったし、ネギの父親を探すのであれば、宮崎のどかのアーティファクトで見た異形たちを相手にしなければならないのかもしれないのだ。というか、ヘルマン卿とかいう悪魔が既に出てきてるし図書館島の地下にはドラゴンがいるではないか。

「だれかー、いっそあたしの生涯ゲーム化してー」

「……わりぃ、俺つっこみ苦手なんだわ」

 明日菜は嘆きを中断して、出雲を見た。

「あんた、気楽そうでいいわよねえ」

「そうか?いつも千里にシメられてるから、気は抜けねえけどな」

「様子見る限り、痴話喧嘩の延長みたいだけど?」

「スキンシップ、ってあいつは言ってるけどな」

「っていうか家庭内暴力!?」

 出雲は周りに浮かべていた符を回収する。見れば、拳と脚にも張り付いていた。

「ま、それでいいんならそれでもいいんだろ。俺が死なないからこそのスキンシップだしな」

「死なない?」

「だからこそ、背後からチョークされたときの乳の当たり具合を堪能できるんだよなぁ」

「たぶん一回死んでみたほうがいいわよ」

 はぁ、とため息をつき、あたりを見渡す。修学旅行の時のように強制退去とならなかったため、きちんと全員が戦闘不能になっているかどうか心配なのだ。

 それを察したのか、

「大丈夫だ。もう概念空間が閉じたし、知覚概念もある」

「本当?」

「『・――気配は悟られる』っつーやつだ。自分に意識が向いてる気配はこっちで分かる。こっちのも向こうにいっちまうんで、今さっき使ったけどな」

 明日菜は概念の理屈を完全には把握していない。そもそも理解も何も、「そうであるから仕方ない」「それがそうである」というものなのだから、意外と簡潔なのだが。

 しかし明日菜はそこで好奇心を覚えた。何しろ自分は魔法が使えない身であるからにして、道具だけで使える概念はお手軽に思えたからだ。

「ねえ、なんかあたしが使えるようなのない?」

 言い訳としては、まだ敵のいる可能性があるから、使えるものは把握しておきたいからというもの。

「そうだなぁ……向こうにゃ浸透化の概念使ってるから面と向かって言われるのは新鮮だなぁ。けどまぁ、概念フェアとかいうバカの神が決めたキャンペーン中だしな、わかった。」

 出雲はさして深く考えるでもなく、懐から符を出した。

「ほらよ、概念符。使うにゃ念じるだけでいい」

「ありがと」

 三枚の符。明日菜は真ん中の符を使うことにした。


・――初心忘れるべからず


 自分に近い声がしたその瞬間、

「ちょ、ちょっとぉっ!」

 明日菜を突風が包んだ。出雲は大して驚きもせず、また風になびいてもいない。

 いや、出雲は驚いていた。

「中学生でパイパぐふぁ!」

「うるさい見るなーっ!」

 口より先に大降りの刃物が出雲の頭部を薙いでいった気もするが、明日菜はそんな些細な事を気にしていられない。

 なぜなら、「自身がこのような状況に至った、最初の出来事を自動的に繰り返す」という概念によって、記憶消去の際にやられたパンツ消去が繰り返されたからであり、無論彼女が密かに気にしている部分も出雲に丸見えだったわけで。

『アスナさーんアスナさーん、聞こえますかー?』

「聞こえてるから召喚はしないでよねっ!」

 仕舞ってあった仮契約カードにそう怒鳴ったのであった。



『概念空間は展開できたが、久々の実戦だからかどうかは知らんがな、どうも出力が落ちた気がする』

『飛行する分には問題はありませんですの』

 ゴォォォ、と風が吹き付けてくる。上空にいれば、それだけで風圧を受けるというのに、飛行を行っていればなおさらだ。

 だが、刹那はこれしきのことにはものともしない。

 彼女もまた、飛行の可能な身だからだ。

「でも敵は片付けてきたんでしょ?どんなやつら?」

『それについては私が説明しよう。それと初めまして、桜咲刹那女史』

「あ、はい、こちらこそ」

 突然湧いた第五の声に驚きつつも、冷静に返した。

『私はこの機竜・サンダーフェロウだ』

「意思があるのですか」

『そうだ。――さて、敵機についてだが、我が同士、おそらく米国のブランカシリーズに類する機竜が三機ほど、それと何か得体の知れない怪物?とでも表現すればいい生命体が二体ほどいた』

 風見たちの敵と、刹那たちの魔法生物、両者が同じ箇所に出現した、とはどういうことか。

「位相的に風見様の世界と魔法界が近いから……いえ、詮索しても仕方ありませんね」

『機材は全て大樹先生に任せていたからな、風見・千里』

「何であたしに振るのよ」

『風見さんでは概念空間の発生プロセスを理解するのが限界だとヒオは思いま……って思いっきり先端でヒオを傷物にしないでくださいですのーっ!』

『相変わらず誤解を招く日本語だな、ヒオ・サンダーソン』

 ガシガシ、と自分が乗っている機体へ切りつける風見を見て、刹那は改めて彼女らのテクノロジーの凄さを思い知った。

 機竜・サンダーフェロウ。突如として目の前に現れた、否、サンダーフェロウが展開した概念空間に取り込まれたために視認が可能となった機体は、夜闇を背景として輪郭を際立たせ、見る者に恐怖と、そして何故か安堵を抱かせた。

 それは強者が持つ雰囲気を、同じく有していたからか。

 それとも、自分と同じ空を統べる存在であったからか。

「ん?どうしたの?」

 今、自分はその存在の上に立っている。その行為が、はたまたそうなのか。

「何でもありません。――それにしても、これほどの兵装をどこに?」

 まだあるかもしれない戦闘を考慮し、雑念となる事柄を振り払うために、実務に走る。下げた夕凪を、強く握って。

『ヒオ専用の概念空間に、ですの。母体自弦振動が変わったのでもしかしたらダメかと思っていましたが、問題はありませんでした』

「大雑把に言うと、四次元ポケットみたいな?」

『いささか以上に表現が陳腐だな。こういう日本語遣いにはなるなよ、ヒオ・サンダーソン。――そして尾翼を折ろうと意気揚々踏みしめるな、風見・千里』

 風見は小さく舌打ちして、元に戻る。

「それはそうと、これからどうする?」

「まずは合流が一番かと思われますが」

 こちらが敵の存在を感知出来る以上、あまりその場に留まっておく意味は薄い。散開中に一箇所が襲われた場合、持ち場を放棄して駆けつけなければならないが、事前に一箇所に集まっていれば、必要に応じて必要数を割り振る事が出来るし、一点突破される心配もない。そもそも、こちら側にとってこの戦いは「迎撃戦」なのだ。

「先ほど、我々の通信手段がこの空間では行使出来ないことがわかりましたので、明日菜さんの居る地点を通過しつつ、佐山様の下へ集うのが適当かと」

『同意見だ。だが、先ほど明日菜嬢のいた概念空間が閉じた。拾っていくのがいいだろう』

『佐山さんのところはまだ展開中……おそらく3rdの金属概念ですわ』

 分析が何処からともなく響く。

「金属、ねえ。まあ片付けてるだろうから問題ないと思うけど」

 刹那もそれに肯定を示した。

 今のネギは、修行中の身とはいえ並の相手には引けを取らない。ましてや二人も味方がいるのだ、いざというときには魔法使いとして後衛に立てばいい。佐山と新庄の戦闘能力は未知数だが、リーダーというからにはそれ相応の能力があるのだろう、とこれも経験となるのですねと一人ごちた。

『カグラザカさんと出雲さんを確認しました』

 地上から手を振る影を認めて、サンダーフェロウは彼らをその背に乗せた。何本か木がなぎ倒されたが、それなりに成長したものなので土木建築研が麻帆良祭用にでも使ってくれるだろう。

「うわ、なんかカッコイイわね……」

「そりゃそうだ。俺らの主戦力だからな」

 手ごろな突起を見つけると、出雲はそこに腰を落ち着けた。

『生徒会長、自分の手柄のように聞こえるぞ』

「私たちの自慢のヒオなんだから。ね、ヒオ」

『あっ、いえ別にヒオはみなさんの所有物とかそういうわけでも、でも皆さんに使われてるのも確かですし、えっとどうなんでしょう』

『惑わされるなヒオ・サンダーソン。あとなじみない人間の前でうかつに発言しないほうがいい』

『……どうしてですの?』

『――知らないほうが幸せということもあるさ』

 サンダーフェロウが離陸。木々が凪ぎ、乗員の髪が暴れ狂う。

「で、神楽坂……いや、明日菜ちゃん。うちの覚になんかされなかった?」

「は?いや、別に……」

 強風に対して気を強めていた明日菜は、どちらの意味でも気が抜けそうになった。

「概念を教えてもらったくらいですけど」

「嘘つきなさい。ならなんで覚のコートで前隠してるの?」

「う……」

 明日菜は話すべきか迷った。あの後、合流するのに着替えに向かうわけにもいかず、時間もないので、渡された物で適当に前を隠していたのだ。要するに、現在の彼女に風は天敵である。

 しかし、

(でもこれコートかなぁ。ん、コート、なのかなぁ……。でも、なんだか単なる布っぽいけど……)

 色は分からない。漆黒の下でかつ彼女はそれほど夜目が利くわけではない。ただ、なんとなく服っぽくないと直感しただけだ。根拠は特にない。

(よくわかんない力使う人たちだし、別の意味で言ってるのかも)

 というわけで頭を切り替え、どう話したものか考えていたのだが、

「あんた何全部長からのいたづら用概念符渡してんのよ!」

「千里!ギブギブ!たまには脚の絞め技もいいもんだがァァッ!」

 夫婦漫才が始まってしまったので、そのまま話題はその終わってしまった。大したことでもなさげなので、明日菜は自分から申告はしなかった。

 刹那は、何の疑念も、確信もなく、得た情報は皆無だというように先を見据えていた。

ネギまのクロニクル
ネギまのクロニクル第六話

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