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第2話 アバレて目覚めろ!闘争本能(ダイノガッツ)!! 前編 投稿者:クローンウィング 投稿日:08/13-16:29 No.1095  



薄暗い研究室、そこで一人の男が巨大こうもりに掴みかかっていた。

「どういうつもりだ!アブレラ」
「何のことだ?」

かれのはぐらかした問いにウルザードの声のトーンがいよいよ低くなる。

「アーカイブから開放されたデータ…『ヒドラー兵』だったか。アレを戦いに送り込んだのは貴様の差し金だな?」
「あれは事故だ。連中は少々頭が悪くてな、偵察任務だけ任せたつもりだったが、どうやら奴らの血が騒いで我慢が出来なかったらしい」

ウルザードは声だけではなく腕にも力を入れた。

「貴様…!」
「よさんか!ウルザード」

彼の腕を掴む黒い影があった。
サーガインである。

「結果的にこの地の戦力を1つ潰し、貴様の望む冥獣帝の復活も早まったのだ。それで良しとしろ」
「…ふん」

ウルザードはアブレラを掴んでいた腕を離した。
辺りに険悪な雰囲気が漂う。
…元々いい雰囲気ではないが。

「して、アブレラ…次の策はどうするつもりだ?」
「封印が解除されたばかりだが、『ヤツ』を使う」

サーガインの問いに答えるアブレラ。
だが、問いかけたサーガインは少々面食らったようだった。

「なに、本気か?…どんな任務を与えるつもりだ?」
「昨夜のウルザードの戦いで、ここでは魔法使いが存在していることが分かった。そういった連中と戦うのが『ヤツ』の役目だ。」

アブレラの答えにサーガインは考え込む。
(アブレラめ…あの怪人を捨石にする気か?しかし、果たして『ヤツ』に満足な戦闘ができるだろうか?)

サーガインの思惑をよそにアブレラは話しつづけた。

「『ヤツ』には名目上、前線の指揮官に置きヒドラー兵の軍団を与えてやるつもりだ。ヒドラー兵は私の使っていたアーナロイドよりも耐久性では劣るが、あの外観を使えば士気を下げるくらいは出来るだろう、なにより『卵』のデータを開放してしまえば後のコストはタダだ」

アブレラの身も蓋もない意見にサーガインは感心すると同時に警戒心を抱いた。
(つくづく計算高いなこの男。俺も捨て駒にされないよう注意しておこう)

「私の持つ携帯端末で魔法使いの戦闘データを収集し、こちらに有利な情報を集める。 
さらに『ヤツラ』にはひとしきり暴れさせたあと、また別の場所で暴れさせる」

そこまでいって、策士アブレラはホログラムの地図を出した。

「作戦を実行する場所はここだ」

ウルザード、サーガインが地図を見つめる。

「連中は魔法と自身の存在を秘匿しているらしい。これは後々の作戦になるが、我々は魔法使いを白日の下に曝け出す」
「ふむ…そうすると、未知の敵(我々)と戦う魔法使いという図ができるな」

サーガインは言った。
だが、アブレラはそんな勢力図を作るつもりは毛頭ない。

「襲撃を続けるうちに魔法使いではない一般人はこう思うだろう。『あの化け物達は何が目的なのだろう?』と」

アブレラは一回言葉を区切り、二人を見回した。

「そこでさらにこういう情報を流す。『実はあの化け物を作り出したのはここの魔法使いだ!』とな」
「ほぉ」
「…」

「さらに結界も操作してこちらの管理下におく」
「なるほど」
「魔法使い達の権威は地に落ち、一般人たちにも我々からの刺客をもぐりこませ暴動を煽る」

アブレラの作戦は戦力が少ない時点ではまあまあというところだ。
少なくとも、ウルザードの単身殴りこみより、目標に近づく可能性は高い。
ときおり相槌をはさみつつサーガインは自分の気になる疑問をぶつけた。

「その作戦、成功確立はどのくらいだ?」
「およそ10%」

「また随分と…低いな」
「あのメガネをかけた人間の戦闘力をてらし合わせた結果だ。今回の作戦はあれだけの力を持つ戦力が5人いたと仮定した上での話だ」

アブレラはそこまで言って二人を見た。

「われ等、幹部クラスが揃うまでは当面、この作戦で行くつもりだ。異存はないな?」
「仕方あるまい」
「…」

了承するサーガインと何も言わないウルザード。
結局、魔導騎士はアブレラの作戦については一言も口を開かなかった。

「さあ、それではヤツを呼ぶか、『開放!』」

アブレラが一枚のカードを空中に投げる。
その瞬間、カードが闇に飲み込まれその闇の中から、何者かが現れた。
ズシャズシャと足を鳴らし、機械が駆動するような重い音を響かせて。

「任務を伝える、学園都市で戦闘員を引きつれこの世界の戦士のおもな戦いを収集しろ。なお人間がいた場合、なるべく『殺害すること』、以上だ」

「了解した。エージェントアブレラ」

そういって男は消える。
否、走っていったのだ。
ただ普通の者には彼の出すスピードがあまりに速すぎて見えないだけである。

「…さあ、あの男は布石としてどれほどの価値があるかな…?」

アブレラの呟きに答える声はなかった。





同刻、メインコンピュータ 「オリジナルアーカイブ制御室」

「急げ!すぐにデータをかき集めて転送しろ!」
「はい!!」

一人の男の支持の元、大勢の研究員が走り回っていた。
彼らはこの研究所に出所した時にアーカイブの異変に気づき処置を取っているのだが、すでにダークアライアンスのほとんどのデータが開放されていた。
今彼らが行っているのは連中の解放された世界の特定と、ワクチンデータである、コードネーム『HERO』の転送である。

職員達は必死に作業をしているが、彼らの半数以上は顔色が悪い。
顔色が悪い理由はただ1つだ。

『人間が住む異世界が消滅するかもしれない』

自分達がそれを止められなければ、間接的に自分達が世界を滅ぼしたことになる。
いや、ひょっとしたらダークアライアンスの連中が自分達に復讐にくるかもしれない。
だが、そんなことを微塵も考えていない人物がいた。
先ほどから研究員に指示を出している男である。
彼は中々に特徴的な外見をしていた。
頭部には髪の毛一本なく、そのかわりあごには胸まである立派なひげがふさふさと蓄えられている。
研究員達から『教授』と呼ばれているその男性はあまりにも落ちている暗い雰囲気に一回全員を集合させた。

「おい、何で教授は俺達を集めさせたんだ?」
「さあ?」

研究員達のひそひそ声が響きあう中、教授は全員の前に立ち壇にあがり、おもむろにエヘンエヘンと咳払いをするとゆっくり話し始めた。

「諸君、我々が尊敬する数々のヒーロー達の戦いが終わって数十年。今や世界のほとんどの悪はこのオリジナルアーカイブに封印され、我々が悪の脅威に怯えることもなくなった。
だが今再び、小さな過ちによって大きな災いが目覚め、ひとつの世界が危機に瀕している。
だが諸君、恐れることはない。彼らがいれば世界は滅んだりしないのだから!」

そういって彼は壇から降り、その部屋一杯に広がるアーカイブへと歩み寄る。
高さが十メートルを超え部屋の中心に大木のようにそびえたつコンピューター。
それを見ながら改めて彼は呟いた。

「なにせ…彼らは正真正銘の『英雄』なのだからな」

教授は大勢の研究員が見守る前で『forwarding』と書かれたボタンを押す。
ゴウンゴウンとひときわ大きな駆動音を立ててアーカイブが動き出した。
それと同時にその動作を見ていた研究員達にも変化が出てきた。

「教授…そうか教授は大丈夫だって言うために俺達を集めたのか」
「そうだよな、いままで彼らは30以上ある組織を全部倒してきたんだ」
「彼らならきっと罪のない人達を守りきれるよな」

研究員達は口々にそういいアーカイブを見あげた。
もはや、彼らの目に不安を宿す闇はない。
かわりに、鋭い光がその目に宿っていた。


今 ヒーローが麻帆良へと召喚される。
最初に、彼らと出会うのは…麻帆良にて物語を紡ぐ、一人の少年だった。



同刻 麻帆良中央病院

「ここは…」

タカミチは起きて目を開けた。
周りに人の気配がある。
ゆっくりと体を起こし見回すと、彼の脇に椅子に座った1人の人物がいた。
自分と同じ魔法使いで学園長の近衛翁である。

「おはよう、高畑先生」
「おはようございます、っつ…」

肩を抑える。
熱を持った痛みがそこにとどまり続けていた。

「発見したのがあと一時間遅かったら命が危なかったらしい…君がそこまで手傷を受けるとはのう」

教師、高畑は拳を開いたり閉じたりして感覚を確かめる。

「ええ、驚きました。エヴァから結界を破った者が出た、なんて情報も聞きませんでしたし…このこと、他の人たちには?」
「魔法先生達には君が手傷を負ったことを通達し警備の強化を頼んである、ネギ君や魔法生徒、一般の人々には君は臨時の出張に行った事になっておるよ。病院のほうにも口裏を合わせてもらってな」

その言葉を聞きながら、彼はいつもの癖で胸ポケットからタバコを取り出そうとした。
…が、ここは病院で、しかも彼は入院患者が着る病院からあてがわれた白いパジャマを着ていた。
ちなみにそのパジャマに胸ポケットはない。

「ほれ」

学園長は彼に禁煙パイポを渡した。

「どうも、…そうですか」
「すまんな。君が望んだわけでもないのに」
「いえ。正しい判断です。今は事を荒立てないほうが言い」

パイポをとりだし口にくわえる。
その動作は少しぎこちない。

「…連中のことですが、」

タカミチは話し出した。
どうやら彼は、口に何かをくわえていると思い出す力も増すようだ。

「連中の目的は一切不明です。かろうじて分かったのが未知の魔法を使うこと、最低二人のリーダーと戦闘員がいること、その幹部の一人が紫の鎧をつけ自分を『魔導騎士ウルザード』と名乗り、もう一人の名が『アブレラ』という名であることだけです」

「未知の呪文というのは?」
「ウルザードは我々、西洋魔術師の始動キーのようなもので呪文を構成していました。使い魔を出すときは『ドーザ・ウル・ザザード』 武具を取り出すときには、何の媒介もない状態で『ウー・ザザレ』と唱えるように」

タカミチの言葉に学園長は考え込んだ。
いままで数々の魔法を見てきた彼ですら、そのような魔法は見たことも聞いたこともない。

「…ご苦労じゃったな。タカミチ。しばらく休みたまえ」

麻帆良学園の学園長 近衛近右衛門は考える。

「まいったのう、せっかく3-Aが修学旅行を無事に終えたと思ったら今度は危険度AA+の不審者騒ぎか…これでは無事に学園祭を行えるかどうかもわからん」
「ケガが治ったら僕もすぐ復帰しますよ」

だが、彼らの決意も空しく、すでに計画は実行されてしまっていた。
その事をまだ彼らは知らない。
自分達の目と鼻の先で争いが起きている事を。



麻帆良学園 世界樹前広場

10歳くらいの少年と顔を3人の少女が楽しそうに談笑しながら歩いていた。
少年の名はネギ・スプリングフィールド。
年は10歳だが、すでに大学を卒業し、この麻帆良で教師をしながら偉大なる魔法使いになるために日夜修行を続ける日々を送っている。
そして、彼の右脇にいるのは宮崎のどか。
ネギの受け持つクラスの生徒の一人で、図書委員をしている。
つい先日、修学旅行中に愛の告白をし現在は良き友人として二人は付き合い、良き日々を送っている。
ついでに言うなら左脇にいる二人組みは早乙女ハルナと綾瀬夕映。
一人では緊張してしまうのどかに付き添い今日は共に外出している。

のどかは今日、勇気を出してネギを図書館のサービスである古本譲渡会へと誘ったのだ。
古本譲渡会とは図書館で管理していた本のうち、古くなりぼろぼろになった本を市民に無料で引き取ってもらうというもので本好きな麻帆良市民に愛されているイベントの1つである。のどかも夕映もこのイベントの常連だ。

「でも以外だったよ。ネギ君 恐竜が好きだったんだね」

ハルナがネギに言った。
ネギは『恐竜大図鑑』と書かれた分厚い辞書のような本を大事そうに抱えている。
ネギの抱えているその本は、はたから見るとほとんど新品だ。
というよりも新品である。
ただこの本は図書館が注文したのではなく勝手に紛れ込んでいて、しかも乱丁本だったものだから…という理由で譲渡されたのだ。

「はい。もしタイムマシンがあるなら僕はぜひこの目でティラノサウルスを見てみたいんです!」

全国の美少年好きのお姉さんのハートを全員ゲットできる笑顔でネギは答えた。

「そうですか~。ネギ先生は恐竜の中でもティラノサウルスが好きなんですね」
「はい、ティラノサウルスってすごく強いし、大きいし、カッコイイじゃないですか」

にこにこ話すネギに頬を終始赤く染めっぱなしののどか。
みていてとても初々しい。
二人を見つめる夕映とハルナも笑顔だ。
そのときである。妙な声が聞こえてきたのは。

「いやいや、そこまで褒められると照れるテラ」
「え?」
「ん?」

今、なにかが聞こえた。
ネギたち四人はきょろきょろと辺りを見回す。
大勢の人がいるが、ニュアンス的に今の言葉は自分達に向かって言われたような気がした。
なにより大勢の雑踏の中ではっきり今の言葉が全員にはっきり聞こえるというのが少々おかしい。

「…気のせい?」
「まあ、別に気にしなくてもいいのでは?」

ハルナと夕映が同じ方向に首をかしげている
ネギたちは、声の主が少し気にかかったが、そのまま寮に帰ることにした。




Side ダークアライアンス


今日は日曜日であり大勢の人間が外に繰り出している。
作戦を決行するにはいい日だ。

「行け、ヒドラー兵!!」

青い体を日光に照り返し、不気味な兵士達が罪のない生徒達に襲い掛かった!

平穏な学園で最初の地獄が始まる…救いの手は、未だ差し伸べられない。

果たして救いは間に合うのだろうか?



超 to be continued


キャラクター紹介

ヒドラー兵 (電撃戦隊チェンジマン)

ダークアライアンスで一番初めに開放された下級兵士。
グロテスクな外見で見る者に恐怖を与え、卵によって増殖を繰り返す。
裏話だが、彼らと戦ったチェンジマンは第一話で、空腹に耐えかねてヒドラー兵の卵をハムエッグにして食べようと言い出した。…本編では間違いなくそんなシーンは出てこないのでご安心を。

麻帆良レンジャーズストライク!! 第2話 アバレて目覚めろ!闘争本能 (ダイノガッツ)!! 中編

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