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第2話 アバレて目覚めろ!闘争本能 (ダイノガッツ)!! 中編 投稿者:クローンウィング 投稿日:08/16-20:11 No.1117  

Side ネギ

唐突だった。
目の前の女生徒がいきなり不気味な何者かに襲われたのだ!
それは青い色をしていて、顔は骸骨、体には申し訳程度に筋肉がついていて…一言で言うならまごう事なき怪物だった。

「なにアレ!?」
「な!?その人を放せ!」

ただ呆然と見ていたネギはハルナの言葉ですぐに我にかえり、持っていた杖で怪物を殴りつけた!
その際に持っていた恐竜図鑑が地面に落ちる。
反射的にネギはその本を掴もうとしたが、一ページだけ破いて紙がその手に残る形となった。

「皆さん!逃げてください!」

ネギは声を張り上げる。
今、自分達が何を相手にしているかは分からない。
だが、とりあえず理解していることがある。
目の前にいるモノタチは危険だ。
あまりにも危険だ。

だから、生徒達を逃がさなければ。
ネギは怪物達を杖で殴りながら、逃走を開始した。
(一匹でも多く引き付けなきゃ)

「こっちだ!僕の後について来い!」
「ネギ先生!」

案の定、単純な怪物たちはすぐに全員がネギを追いかけ始めた。
のどかはネギの後を追おうとしたが、その手を夕映が掴む

「今、行っても私達に出来ることはありません。助けを呼びにいきましょう!」

そういうと彼女は自分と同じバカレンジャーである友人、古菲と長瀬楓へ電話をかけようとした。
だが…。

「×××!!」

石と石をこすり合わせるような音をたてさっきの怪物が地中から現れたのだ!
反射的に逃げようとした夕映だが、自分の腕をつかまれてしまった。

「いやぁ!!」

眼前に化け物の顔があり、妙に生臭い息が自分に吹きかけられる。
そしてそれは人肌などたやすく切り裂けるだろう爪を振り上げ、自分の頭に振り下ろした―!!



Side ネギ

「はぁっはぁ、ラス・テル マ・スキル マギステル…」
「兄貴、一体一体まともに相手してたらキリがねぇぜ!」

魔法で脚力を強化しながら呪文を唱え続ける。
光の矢が2体のヒドラー兵を打ち抜いた。
だが、5本中の2本があたっただけだ。まだ20体近くの怪人がネギとその肩に乗っているオコジョ妖精、カモに襲いかかろうとしている。

「はぁ、はぁ、」

ネギはあまり兵隊たちと距離を開けないように先を走る。
あまり距離を離すと連中が自分達の追跡をやめてしまう可能性もあるのだ。
だが、もうだいぶ遠くまで来た。
いま自分がいるのは麻帆良学園の敷地内にある小さな森だ。
ここで雷の暴風を使いあの連中をまとめてなぎ払えば、戦闘は終了する。

「うおお!」
「わぁ!」

だが突如、物陰から出てきた何者かに襲われネギは地面に叩きつけられる。
その際に千切り取った図鑑の一ページがネギの手から離れた。

「兄貴!」
「だ、…大丈夫だよ。カモくん」

頭部から転んだというのにネギは気丈にも立ち上がる。
だが、立ち上がり、さっき自分に襲い掛かった影の姿が見えた瞬間、ネギは硬直してしまった。 

「子供の割には中々やるな」
「な、てめぇは何もん…でぇ!?」

硬直したネギに対しカモの方は素っ頓狂な声をあげた。
無理もない。先ほどから破壊行為を続けているヒドラー兵はあんなにもグロテスクで恐ろしい外見をしているのに、目の前にいるアレは頭に煙突、腰のあたりには車輪、おまけに肩の辺りにはヘッドライト、その姿は誰がどう見たって…。

「…機関車?」
「…カモ君にもそう見える?」

男(?)は自分を見て二人が恐れおののいていると思っているようだった。
それに気をよくした彼は勢いよく自分の名を名乗る。

「ワシの名はダークアライアンスが突撃隊長 機関車仮面さまだ!!(ポッポー!!)」

「…」
「…」

蒸気音をやかましく響かせ、そいつは自分の名を名乗った。
…まんまである。
もはや言葉も出なかった。
ダークアライアンスって何?とか、色々つっこむべきところもあるだろうに機関車仮面の正面にいる二人は口をあけて硬直したままだ。

「…だっせ~」

数秒の空白のあとカモが呟く。その一言はマントを翻らせポーズを決めている機関車仮面の心に深く、深く、突き刺さった。


そして、アブレラの開発した偵察用小型こうもりを通してモニターを見ていた幹部の三人は…。

「…俺の耳が確かなら、『ヤツ』は今、ダークアライアンスの名を大々的に口にしたな」

確か作戦では自分達は魔法使いに作られたモンスターとして暗躍し、一般人達に不審の念を抱かせるはずである。
その作戦目的をモニターに移っている尖兵は最初から無視したのだ。
ウルザードは二人を見た。

サーガインは顔の部分が割れ中の本体である虫型宇宙人が口をあけっぱなしにし、アブレラの方は、

「……ヤツに『自分の正体を偽れ』という命令を出し忘れた」
「ふっ」

ウルザードは思わず失笑した。


そして場面は戻り、ネギVS機関車仮面。

「よ、よくもせっかくの決めポーズをバカにしてくれたな(シュシュポポ!シュシュポポ!ポッポー!!)」

怒りと同時に機関車仮面の闘争本能に火がついた!
ちなみにカモがバカにしたのは決めポーズではなく、彼の頭である。

「貴様ら、ワシの実力を舐めているな!?思い知らせてやる!!」

そう言った直後、機関車仮面が消えた!

「な、あの人(?)はどこ…!?」

そこまで言ってネギは反射的に横へ飛んだ。
普段、風の魔術を扱うネギだから気づけたのだ。
急に風の流れが変わった。
本能的にその場所から離れたくなるくらいに異常な風の動きを感じたのだ。
そして、回避運動を取ったネギの判断は正しかった。

「SLヘディング!!」

自分のすぐ脇を黒煙と熱風が過ぎていく感覚。
そして、すぐに聞こえるドォオンという衝撃音!
背後を振り返る。
10本以上ある大木が直線状に軒並み倒されていた。
そして、その倒した木を踏みつけ一息つく男。

「一本倒しただけで止まるつもりだったけど、力加減を間違えたか…」

ネギとカモはそれぞれ汗をぬぐい、唾を飲み込んだ。
今この男は一体何をしたんだ?
いや、予測はつく。
でもそんなことは不可能だ。
なぜなら…。

「何を不思議そうな顔をしてるんだ?ワシは全力で駆け抜けただけだ」
「な!?ふざけんな!魔力も気も使ってない『ただの人間』にいきなりそんな真似されてたまるか!!」

機関車仮面の答えにカモが怒る。
そうだ。ネギもそこは疑問に思っていた。
だが、機関車仮面はおかしそうに笑い出した。

「ハハハ!ワシがただの人間に見えるのか?こいつは傑作だ!ハハハ!!(ポッポー!!)」

ひとしきり笑った後、機関車仮面は改めて名乗った。

「教えてやる!ワシの名は機関車仮面!!闇の力を受け継ぐ改造人間だ!」

そこには先ほどとは違う迫力があった。
それに思わず気圧され、後さずる一人と一匹。

「か、改造人間だって……うそだろ!?そんなふざけた姿でそんなハイスペック詐欺じゃねえか!!」

カモの言葉も頷ける。
目の前のアレは改造人間というより汽車の着ぐるみだ。

「……悪いが、もう話す事はない。気の毒だがここで死んでもらう」

そういうと、機関車仮面は足踏みを始めた。
おそらく、スピードを調整しているのだろう。
その足踏みが死へのカウントダウンであることは容易に想像できた。

「兄貴、空中へ逃げるんだ!!そうすりゃいくら足が速くたってやつは手を出せねぇ!!」
「させるか!ヒドラー兵!!」

唐突だった。
いや、連中の出現する方法は一度見ていたから気づくべきだったのだ。
突如地面から現れた青い手につかまれ、ネギは動きを封じられる。

「な!?」
「よし、そのまま動きを封じていろよ、それとそのガキをしゃべらせるな」
「てめぇ!部下ごと兄貴を轢き殺す気か!?」

機関車仮面は何もいわずネギを見据えた。

ネギは死ぬことの恐怖を感じた。
修学旅行で感じた死の気配がよみがえる。
(僕はまだ死にたくない!やらなきゃいけないことがあるんだ!偉大なる魔法使いに僕はなるんだ!!)
死が少年の足元に迫る。
生還は絶望的だ。
だが、諦めない心を持つ少年を運命の女神はまだ見捨ててはいなかった!!
初めに気づいたのはネギを押さえつけているヒドラー兵だった。
何か紙切れのようなものが光を放っている。
ネギもそれに気づいた。
そして、その紙切れは宙に浮かび、人に形を変えた!

「アバレイザー!!」

その人は腰から銃を抜き、光を打ち出す!
光線が機関車仮面に直撃した!
火花を吹き、倒れる機関車仮面。

「な…貴様何者だ!?」
「あの人は……?」

彼…機関車仮面を打ち抜いた人物は全身を赤く染め上げ、腕や足にはウロコのように施された白い文様。そして顔には恐竜の顔のようなマスクを被っている。
この日、ネギは彼と出会った。
心優しき、魂熱き、ダイノガッツをその身に宿す、35の伝説の一柱を担う戦士を。

彼は自分の名を名乗った!

「元気莫大 アバレッド!」

返すように腕で恐竜のアギトのような形を造り彼はもう一度叫んだ!!

「荒ぶるダイノガッツ!爆竜戦隊 アバレンジャー!!」

機関車仮面は怒り心頭である。
煙突から吹き出る煙の量も2割り増しで怪人は怒鳴った。

「ええい邪魔をするな!ワシはこのガキを殺さなきゃいけねえんだ!ヒドラー兵!!(シュッポー!!)」

そして、自分の言葉がもとで『彼』は寿命を大幅に縮めることになる。

「そんなことさせるか!ティラノロッド!!」

棍の様な武器をベルトのバックルから召喚し、アバレッドは吼える!

「うおりゃあああ!!」

彼の動きは荒々しく、まるで帝王のような風格を見せた。
たった一回、棍を振り回すだけで彼の周りから湧き出てくるヒドラー兵が一度に3人、4人まとめて宙に飛ばされる。

「ウォ・オ・オ・オ!!」

その動きはとどまる事を知らない!彼自身の中から燃え上がる太古の野性…ダイノガッツ
が目を覚ます。
そして燃え上がるのは自分自身だけではない。
ロッドの先端…ティラノサウルスの口を敵に向けると、それは恐ろしいまでの勢いで敵にかぶりついた!

「ギュッ!!」

断末魔を上げティラノロッドの胃袋(?)に納まるヒドラー兵達。
驚いたことにティラノロッドは5体のヒドラー兵を一瞬で食べてしまった。
そしてアバレッドは機関車仮面へと開いた道を前進……否、爆進する!!
だが、彼の背後、物陰に隠れていたんだろう。一匹のヒドラー兵が襲い掛かった!

「危ない!」

反射的に叫ぶネギ。
ヒドラー兵はどこから出したのか円状の刃を持っている。
考える前に体が動いた。
ネギはヒドラー兵の背後から体当たりをかました、が 先ほど自分で叫んだのが仇になったのだろう。
体当たりをかわされ、ネギは首をつかまれ持ち上げられる。

「よし、よくやった!動くな!武器を捨てろアバレッド!!動けばその子供の命はないぞ!(ポッポー!!)」

元から殺そうとしていた子供を人質にとる機関車仮面。
だが、こうなってしまっては動けないのが現状だ。
アバレッドは持っていたティラノロッドを地面に投げ捨てた。

「よし、そのまま動くなよ(ポッポー!!)」

機関車仮面はアバレッドに報復しようとした、が…彼はヒドラー兵の頭が悪いのを忘れていた。

「××!」

なんと、ヒドラー兵はそのままリングカッターを振り上げたのだ

「な!?」
「おい!まだ早…!」

アバレッド、機関車仮面の両方が慌てる中でネギは冷静だった。

『ガリッ!!』

ヒドラー兵の体に張り巡らされたパイプが白い勇士の必殺前歯によって噛み千切られる!
それと同時にヒドラー兵は消滅した。

「ぺっぺ!ゲ、ゲロマズ!!」

オコジョ妖精カモはそういいながら、シュタッと地面に降りた。

「だ、大丈夫ですかい?兄貴!?」
「ありがとう、カモくん」

ネギはヒドラー兵との戦闘で彼らの弱点を見抜いていた。
そして、タイミングを見計らい、その弱点をカモに攻撃してもらったのだ。

「よくも……あんなに小さい子供を酷い目に合わせたな!!」
「学園の皆を……大切な生徒を傷つけようとしたな!!」

ネギとアバレッド、二人の怒りは頂点に達する!

『怒れ!怒れ!ダイノガッツをこめるんだテラ!!』

どこからか響く声にいわれるまま二人は怒りに身を任せた!

「ウォオオオン!!」

アバレッドのマスクが声を上げるように一瞬だけ形を変える!
それにあわせ、ウロコのような白い文様が伸び、刃と化す!
これこそが、アバレッドの怒りが具現した姿、アバレモード!!

その変化を見てネギは若干驚いたが、すぐさま詠唱を開始した。

「うぐう!出て来い!ヒドラー兵!!」

もはや退路なしと感じた機関車仮面は自分も戦いの構えを取りながら配下を呼ぶ。
が、出てこない。


「おい、サーガイン。『卵』はどうなった?」
「一個師団分は全部使い果たしたぞ。アブレラ」


そんな二人の会話も知らず、機関車仮面はあせる。

「ええい!こうなったら!!」

彼は、走って逃げようとしたのだろう。
実に賢明である。
だが後ろを振り向くその時点で彼の敗北は決定していた。
いや、背後を向きつつもアバレッドには警戒していたのだ。問題はその彼のさらに後ろ。
ひたすらに言葉を唱え続けていたその少年。
機関車仮面自身、彼のことを『なかなかやるな』といったのに関わらずうっかりその存在を失念していた。

「ラ・ステル マス・キル マギステル 風の精霊20柱!! 集い変化し 敵を噛み砕け!! 魔法の射手・覇龍の風牙!!」

大いなる力…その名はダイノガッツ。
遥かな過去から永遠の未来へと続く力である。
そしてダイノガッツはネギの魔法をより強いものへと変えた!
魔法の射手・戒めの風矢を20本以上収束させ、名が示すとおりに矢をエネルギー体の龍そのものに変えた今までに見たことのない魔法!!

「な、なんだあれは!?」
「ウォオオ!!」

咆哮をあげた龍は唖然としている機関車仮面の体を飲みこんだ!

「あだだだだ!いた、いた!煙突が、車輪が外れる~!!」

そのまま龍は昇竜し、空中で機関車仮面は開放される。

「でぇやあああ!!」


アバレッドが落ちてくる機関車仮面を逃さず、両手についている白い刃鱗で彼の顔面をXの字に切り裂く!!
完璧な連携である。

「ぐうぅ…」

地面に倒れる機関車仮面。

「よっしゃー!」
「やった!」

ネギとアバレッドはお互いの連携に手をたたき合う。

「君、すごいね。まるで魔法使いみたいだ」

アバレッドの問いにあはは、と笑い言葉を濁すネギ。
『みたい』ではなく、彼は本物の魔法使いである。

だが、楽しく会話を続ける二人だが一見終わったかのように見える戦いもまだ終わってはいない。


まだまだTo be continued?



キャラクター紹介

機関車仮面(秘密戦隊ゴレンジャー)

ゴレンジャーの宿敵、黒十字軍の改造人間。
必殺攻撃は走ることで勢いをつけた体当たり、スピードをつけた頭突きである、SLヘディング。
そのスピードは新幹線を追い抜くくらい速く、普通の人間が食らえば間違いなく致命傷である。



アバレッド(爆竜戦隊アバレンジャー)

本名、白亜凌駕 22歳の青年で明朗活発、きわめて楽天的な性格。
ダイノブレスを使用することでアバレッドに変身する。
個人武器はダイノロッド。
本編ではおそらくネギと行動を共にすることになる。

(補足説明)

魔法の射手・覇龍の風牙

ネギの中のダイノガッツと呼応した呪文が今までにない形で造り出した全く新しい呪文。
本来なら捕縛しか出来ない戒めの風矢を20本以上束ね、ドラゴンを模した矢が敵に襲い掛かる。
通常の「魔法の射手」とは違い、地球の果てまで追いかける追尾性と攻撃が炸裂した後ドラゴンの鱗のような模様の真空の渦が一定時間相手の動きを封じ、ダメージを与え続ける。元が捕縛属性でダメージは少ないが、攻撃している間に味方が必勝の一撃を用意しておくという戦法が使える。

麻帆良レンジャーズストライク!! 第2話 アバレて目覚めろ!闘争本能 (ダイノガッツ)!! 後編

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