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第2話 アバレて目覚めろ!闘争本能 (ダイノガッツ)!! 後編 投稿者:クローンウィング 投稿日:08/22-20:55 No.1149  



少し時は戻り、機関車仮面が撃破されたすぐ後…。

戦闘を終えた二人…アバレッドとネギは改めて互いの事を見据えた。
ネギは彼を見上げ、

(さっきは助けてくれたけど、この人は本当に何者なんだろう?) 

アバレッドは彼を見下ろし、

(すごい力だな。見た限り、まだ舞ちゃんと同じ位の年なのに)

そんな二人の思いが交錯する中、

「俺、アバレッド!よろしく!!」

先に動いたのはアバレッドの方だった。彼はすっと手を出し、握手を求める。
一緒に戦闘をした者同士が行うにふさわしい儀式といえるだろうその仕草。
無論、ネギもその手を取った。
こちらからは見えないが、きっとその恐竜のマスクの下では彼は笑っているだろう。

「僕は…えっと、その…こ、ここで教師をしています、ネギ・スプリングフィールドといいます」

ネギは散々考えた末にそう答えた。
中々に無理のある自己紹介。
先ほど、あれだけ派手に魔法を披露しつつもやはり自ら魔法使いは名乗れないようだ。

「君、そんなに小さいのに先生やってるんだ。すごいねぇ!」

だが、アバレッドと名乗った青年は、目の前の子供先生の正体を気にすることなく、
バンバンとネギの肩を叩く。
先ほど見た魔法の正体を聞きだそうとしないあたり、結構大物だ。
ネギはアバレッドの人格に圧倒されながらも照れ笑いを浮かべ頭をかいた。
そして、先ほどから疑問に思っていた事を彼にぶつける。

「あの、アバレッドさんは何者なんですか?さっきは紙の中から出てきたように見えたんですけど」
「俺?えっとね、本名は白亜凌駕(はくあ・りょうが)でアバレンジャーです。よろしく!!」

答えになっていない。
だがそれでも二人の会話は進む。

そんな二人がワイワイと友好を深めている横でひくひくと痙攣を繰り返す機関車仮面。
その機関車仮面の煙突に一匹のこうもりが舞い降りた。
そしてこうもりはなんと、彼の金属質の固そうな煙突に噛み付いたのである!

「ポッポー!!」
「な、なんだー!?」

二人が脇を見ると、ずももももと音を立て巨大化する黒い影。
身長がおよそ30m以上まで巨大化した機関車仮面がそこにいた。

「あ、兄貴アレ…」
「そ、そんな倒したと思ったのに…」
「苦節30年、黒十字軍の怪人もついに巨大化じゃ~!!」

わけの分からない事を叫びながら、超巨大型自走式兵器がネギたちに向かって突貫する!

「危ない!」
「うぁ!」

攻撃はかわすことができたが、機関車仮面はそのまま走り続けている。
彼の走るコースはランダムだが、いつ自分達がそのコースに交わるかと思うと油断はできない。
なにより、あの速度で動かれては攻撃があたらない。
アレだけの重量を捕らえるトラップ型の捕縛結界もネギは作れない。
無論、アバレッドも彼一人であれば太刀打ちは出来ない。
そう、『彼一人』であれば。

だから彼は呼ぶ。頼りになる相棒を。
自身と同じダイノガッツを胸に秘める戦士を!

「ティラノ!!」
「ウォォ!!そう急かすんじゃねぇテラ!!」

アバレッドの呼び声と同時に大地が唸りを上げた!
あまりに激しい振動に思わずしゃがみこむネギとカモ。
激しすぎる揺れに立っていられないのだ。

「おらおら~!!邪魔だテラ~!!」

ダァン!と地を駆け、山を越え、やってきた巨大な何かはあちこちを走り回っていた機関車仮面をその逞しい尾で弾き飛ばした!!

「よっしゃ~!ナーイス!ティラノ!!」

ガッツポーズをとるアバレッドに対し、ネギのほうは機関車仮面を弾き飛ばしたソレに目を奪われて何も言えなかった。
やっとのことで言えたのはただ1つ。

「…本物だ。なんか機械みたいだけど……」
「あ、兄貴?」
「本物だよカモ君!!生きているティラノサウルスだ!!」

ネギは絶叫した。
そして、カモは耳元で叫ばれ失神した。
一方の『ティラノサウルス』は、ぴょんぴょん飛び跳ねて自分に手を振る少年を見ながらその鋭い緑眼に優しい笑みを浮かべている。
見かけこそ中々に恐ろしいが彼は意外と子供好きらしい。

「凌駕、あの坊主がさっきの…テラ?」
「ああ、ネギ君っていうんだ。10歳なのに頭がいいんだぜ」
「すごいダイノガッツを感じたテラ。そこの坊主!お前は将来きっと大物になるテラ!!」

しゃべる恐竜から御墨付きをもらい、ネギはいよいよおおはしゃぎである。
その脇でいい加減に目を覚ます機関車仮面。

「痛いじゃないか!(ポッポー!)」

しごく、人間らしい主張を訴える改造人間(LLサイズ)。

「痛くしたんだテラ!いちいち言うのもむかつくが、貴様さっきりょ…アバレッドに言った台詞を忘れてんじゃねえだろうテラな?」

その言葉に、機関車仮面はシュポッと軽く黒煙を噴きつつ、考え込む。

「はて、ワシはなんと言ったんだっけ?」

…機関車仮面は思い出す。

『ええい!邪魔をするな!ワシはこのガキを殺さなきゃいけねぇんだ!!』

「…あ、」
「思い出したかテラ。…なら吹っ飛べテラ!!」
「ぽぅ!?」

彼は機関車仮面に最後まで言わせず、全身全霊を込めた爪の一撃でその鋼鉄の体を抉った。
というか、戦闘中に目を閉じて動きを止めるあたり、機関車仮面は良くも悪くも怪人止まりなのであった。

「き、貴様 不意打ちとは卑怯だ!」
「やかましいテラ!おれは子供を平気で傷つけるヤツが大嫌いなんだテラ!!」

グオオンと天に向かい吼える、ティラノサウルス。

「こ、このぉ!ワシを完璧に怒らせたなぁ!!」

機関車仮面はそういうと、ガションガションと音を立てて巨大なSLへと変形した!
人面である事を覗けば中々に渋くかっこいいデザインといえるだろう。

「SLの底力見せてやるわ~!!」

ドッドッドッドっと激しい音を立てて、ティラノサウルスへと迫る機関車仮面!

「やれるもんならやってみやがれテラ!!」

当方に迎撃の用意あり!
そんな言葉が似合いそうな咆哮をあげながら、ティラノの尾が回転を始める。
ギュリギュリと音をたてるそれはどんなものでも抉り、穿つ力を持つ!
一方の機関車仮面もさらにそのスピードを上げる。彼の時速は300kmを超え、二人は交錯した!!

「失せろテラァ!!」
「おおおおおお!!」

ギュリィィン!!と音を立て、その一撃は機関車仮面を貫通した!

「が、が…」

体から火花を散らしながら、機関車仮面は口を開いた。。

「ここまでか。所詮、人気でも馬力でも、機関車では恐竜に勝て…」

閃光が辺りを包む。
最後まで、言い切らぬまま、黒鋼色の怪人は爆発と共に塵と消えた。

「終わった。それにしてもあの人たちは一体何だったんだろう?」
「……」



時は遡り、ネギが図書館探検部の生徒達から離れ、少女 綾瀬夕映がヒドラー兵の牙にかかろうとしていたのを皆さんは覚えているだろうか?

ここからはその話をしよう。
いかにして少女が救われたのか?という話を。





Side夕映

ヒドラー兵はその爪を振り上げた。

「夕映――!!」

死にゆく少女の周りで時間がゆっくりと流れる。
そのたゆたう時の中でハルナの声が聞こえた。
自分はここで死ぬのか?
せっかく魔法使いというものすごく神秘的な存在を知ることが出来たのに。
残念だ。
自分の生を諦めることも出来ないくらい残念だ。
死にたくないほど残念だ。
死にたくない。

そう、死んでたまるか――!!

半ば、意地のような決意。
だが、少女のそんな決意は空しく。
必殺である断頭の爪は、かくも無情に少女の首をかき切ろうと振り下ろされ――!

「おおぉ!」

ザシュッと何かを切り裂く音が聞こえた。
自分が殺された音だろうか?
きっとそうだ。
だって何か生暖かいものが自分の体に降りかかっている。
ああ、あれほど死にたくないと思ってもやはり死は訪れるのか…。
せめて事切れる前に、友人に一言…。
そんな事を考えながら薄目を開ける。
目を開けて気づいた。
生きている。
綾瀬夕映は生きている。
自分の体に降りかかったのはあの化け物の血だ。
この体は傷1つ負っていない。

そして少女は自分を守るように、赤い背中が前に立ち塞がっているのが見えた。

「間に合ってよかった。大丈夫か?」

彼は誰だろう?
薄れ行く意識の中でそんな事を思いつつ彼女はそこで気を失った。

Side ハルナ

ハルナは夕映が殺されると思い、反射的にのどかを自分の胸に押し付け、彼女の視界を塞いだ。
どうやっても届かない。
魔法や超能力でもない限り、あの20m先の化け物に追いつくのは無理だ。
(ごめん、夕映。せめてアンタの死は見届けるから)
彼女は涙で曇りそうな目で眼鏡越しに友人の最後を見届けようとした。
彼女は漫画を好む割に現実主義者だったのだろう。
だから、ここで救いが現れるなんて思わなかった。
ましてや、あんな形で現れるなんて全く予想だにしなかったのだ。

ネギがただで譲り受けた恐竜図鑑。
1ページだけ破り取られたその図鑑は、夕映が襲われているところから2mも離れていないところに落ちている。
その図鑑は乱丁本だった。
そのことは先に言ったが、実はその乱丁は少々おかしかった点があった。
いや、乱丁だからおかしいのは当たり前なのだが、その図鑑は1ページも抜けてはいなかった。ただ、同じページが重なっていたのだ。

――そう、その図鑑は『ティラノサウルス』が印刷されているページが重複していた――

初めにその図鑑が宙に浮かんだ。
その本は金色の輝きを放ち、そのうちの1ページがまるで見えざるものに切り取られたかのように裂かれる。
本は地面に落ちたが依然として、眩く輝いていた。
そして、頭の悪いヒドラー兵は思わず攻撃を止めそのキラキラしているものに惹かれ、攻撃の手を休める。
数々の仕組まれた偶然によって少女は生かされた。
もし、ネギがその図鑑を手に入れなかったら。
もしネギが図鑑をそのまま持って行ったら。
なにより、ネギが2/300の確率でティラノサウルスのページを切り取ったのは果たして偶然といえるのか。
もはや、必然ともいえるその試行はさらに偶然を生み出す。
極めつけに切り取られたそのページは人の形へと姿を変え、手に携えた剣で化け物を一刀の元に切り捨てたのだから!!

「な、なにあれ…?」

圧倒されながらもそれだけ呟くハルナ。
視界が開け、友人の無事を確かめるのどか。
そして自分がまだ生きていると実感する夕映。
自分の友人が無事なのを確認するとハルナ、それにのどかは夕映の下へと駆けた!

Side ?RED

召喚されて初めに目にしたのは、少女を殺そうとする怪人の姿だった。
叫ぶより速く自分の愛剣、『龍撃剣』を抜き地獄の亡者のようなそれを切り裂いた!
――許せない!どんな理由があるのか知らないがこんな年端もいかない少女を傷つけようとするなんて!!

彼の背後では襲われそうになった少女と二人の友人が抱き合いながら無事を確認している。
その声を聞きながら、赤い戦士は剣を構え、改めて少女達の正面に立つ!

彼は古代の王族…その末裔だ。
彼の一族は正義の魂を受け継ぎ、彼自身も仲間内で一番正義感が強かった。

だから、ヒドラー兵が湧き出し自分に向かってくるのを見ても彼は足がすくむ事もなかったし、怖いとも思わなかった。
ただ、後輩に教えられたダイノガッツが自分自身の中で猛るのを感じる!
故に彼は破壊と争いの権化であるソレをことごとく切り捨て、少女達の道を切り開く!
曇りなき剣が閃くたび、刃に写る影が1つまた1つと減っていった。

「急ぐんだ!ここは危ない。速く逃げろ!!」

その言葉に三人は我に返ったように逃げようとする。
ただ逃げる瞬間に前髪を隠した少女が聞いてきた。
貴方は何者なんですか?と。
戦士は叫ぶ。己の名を。
古代人類ヤマト族の末裔にして1億7000万年前の封印から再び解き放たれし戦士…その名は!!

「ダイノ伝記に名を刻む者、ティラノレンジャー・ゲキ!!」

彼は剣を収めると、両の手で型を決めながらもう一度叫んだ!!

「恐竜戦隊ジュウレンジャー!!」




第2話 了
第3話へTo be continued



今回の新規登場

爆竜 ティラノサウルス
ダイノアースと呼ばれる人類が住むのとは別のもう1つの地球で生まれた恐竜が進化した爆竜と呼ばれる種族。
爆竜ティラノサウルスは一見乱暴だが悪の組織、エヴォリアンとの戦いで子供を亡くしており子供好きである。
本編ではネギと仲良くなるだろう。間違いなく。

ティラノレンジャー(恐竜戦隊ジュウレンジャー)

かつて古代に封印されていた戦士の一人。本名はゲキ(苗字はない)。
熱血漢で正義感が強い24歳。
本作ではアバレッド・白亜凌駕と面識がある。ちなみにゲキのほうが先輩。
ちなみに作中の名乗りは作者のオリジナルである。

補足説明

舞ちゃん
アバレッド・凌駕の姪。両親が死に凌駕に育てられているが本作では出演しない。

ダイノ伝記
大昔のさまざまなことが記されている書物。
詳しくは次の話で。

機関車仮面に噛み付いたこうもり
アブレラが作り出した。
怪人に噛み付くことでその怪人を巨大化させることが出来る

麻帆良レンジャーズストライク!! 第三話 闇の暗躍

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